習近平氏、党大会直前に異例の外遊

習近平氏、党大会直前に異例の外遊 政権安定を誇示か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM143MT0U2A910C2000000/

『【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が新型コロナウイルスの世界的流行後に止めていた外遊を再開した。中国共産党幹部の人事を決める5年に1度の党大会を10月に控えた中での外国訪問は異例だ。3期目入りを固めた習氏が、内外に政権基盤の安定を誇示する狙いがあるとみられる。

習氏は14日に隣国カザフスタンに到着し、トカエフ大統領と会談した。ローマ教皇フランシスコも15日までカザフに滞在する予定で、習氏との会談の可能性に関心が集まっている。

15~16日はウズベキスタンで開く上海協力機構(SCO)首脳会議に出席する。ロシアのプーチン大統領らと会談する。

習氏を含む共産党最高指導部は2020年1月に習氏がミャンマーを訪問して以来、海外訪問を止めていた。最高指導部内で新型コロナ感染が広がる事態を避けるためだったとみられる。外遊は2年8カ月ぶりとなる。

第20回党大会の開幕が10月16日に迫ったタイミングでの外遊は、中国内外で予想外と受け止められている。

党大会の約1カ月前に外遊したのは、02年に国家主席だった江沢民(ジアン・ズォーミン)氏が米国などを訪問して以来となる。当時は胡錦濤(フー・ジンタオ)氏への権力委譲がすでに決まり、党大会の準備も胡氏が取り仕切っていた。

習氏は党大会で、2期10年が原則とされる党総書記のポストの3期目入りを目指している。党内の調整に時間がかかり、党大会は11月になるとの観測もあった。本来いまの時期は党幹部の人事や習氏が読み上げる活動報告の内容を巡り、最終調整をする時期に当たる。

党幹部や長老らは8月上中旬に北京に近い河北省の北戴河に集まり、党大会の人事案などを話し合ったとされる。習氏の3期目が事実上固まり、外交の立て直しに動けるようになったとの指摘がある。

東京大の松田康博教授は「国内で後顧の憂いがあれば外遊はできない。習氏は党内で不満を持つ勢力の意見を聞き入れ、バランス型人事を敷いたのではないか」と予想する。

習氏は13日、カザフの新聞に寄稿し、経済圏構想「一帯一路」に基づいて貿易を拡大し、人工知能(AI)など先端分野でも協力を進める方針を示した。

13年に同国を訪問し、陸路で中央アジアを通り欧州に向かう「シルクロード経済ベルト」の建設を提唱した。一帯一路の根幹をなす構想だ。一帯一路を巡っては中国内でも途上国へのばらまき批判が出ている。習氏肝煎りの政策だけに、正統性を誇示して継続を訴える思惑もありそうだ。

中国人民大学国際関係学院の時殷弘教授は「新型コロナの流行やロシアとウクライナの戦争で一帯一路は大きな困難に直面している」と指摘する。中国がてこ入れに乗り出すとの見方を示した。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

青山瑠妙のアバター
青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
コメントメニュー

ひとこと解説

第20回党大会の前の外遊は、確かに政権安定を誇示するという意味合いが強い。しかし、それだけではない。ウクライナ戦争でロシアが身動きの取れないなか、中国は中央アジアで影響力をじわじわと伸ばしている。中央アジアは今、中国の外交戦略で重要な位置を占めている。それだからこそ、習近平国家主席の外遊が実現した、ということでもある。
2022年9月14日 19:05 』