米国に求められる台湾を中心とした対中政策の再考

米国に求められる台湾を中心とした対中政策の再考
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27865

『米国外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、習近平は権力の正当性を経済成長からナショナリズムに移さざるを得ない、その際台湾に勝る事柄はない、米国等は対中抑止力強化のほか対中貿易依存の縮小等の対応を取って行くことが必要だと、8月11日付のProject Syndicateで述べている。
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 ハースの主張を纏めれば、次の通りである。

(1)中国の軍事攻勢は、意図した過剰反応だった。長い間計画されていたものだろう。

(2)中国指導部の正当性の拠り所であった経済成長は望めなくなり、代わりにナショナリズムに益々依存することになる。その際台湾に勝る事柄はない。

(3)台湾周辺での軍事活動が新常態になれば、偶発衝突が制御不能に発展するリスクが増大する。中国は、台湾の民主主義と独立への動きを止めるために武力行使を決めるかもしれない。

(4)何をすべきか。第一に、対中抑止力を再構築する。第二に、対中貿易・経済依存を縮小する必要がある。第三に、賢明な台湾政策が必要である。「ひとつの中国政策」は維持しながらも、一方的な行動は受け入れられず、台湾の地位は、平和的に且つ台湾人の同意により決定されるべきである。

(5)米中間の非公式、ハイレベルの対話を構築する。中国を変革しようとする試みは優先事項ではない。

 ハースの論説は、バランスの取れた見解である。何れのポイントもその通りであろう。
 台湾に対する政策は、的確に書かれている。台湾の将来は、台湾人が決めるべきことであり、平和的に解決されるべきだとは、その通りである。

 なお、先般のペロシ米下院議長の訪台について、8月20日付のワシントン・ポスト紙は、検証記事の中で、①7月28日習近平がバイデンに電話でペロシの訪台中止を求めてきた、②ペロシは、バイデンが直接要請してくるか、蔡英文が招待を撤回する場合にのみ再考する意向だった、③バイデンはペロシと直接話すことはなかったという。』

『習近平の軍事エスカレーションが中国にとって良かったかどうか。中国の軍事力を使う意図と実力を見せつけ、台湾の敷く中間線を突破し、タブーを破り「新常態」への足掛かりを築いたように見える。恐らくそれで北戴河を無事乗り切り、秋の党大会につなげることができたと思っているかもしれない。

 しかしコストも払ったのではないか。まず、議会を含め米国の台湾へのコミットメントを強める結果になった。また、台湾は、防衛力を強化する決意を高めた。日本など周辺国の警戒と防衛力強化を促した。米軍の台湾海峡の航行は一層頻繁になるかもしれないし、要人の台湾訪問はすでに増している。

 更に、世界での中国の評価を下げた。その意味では、共産党大会後、平和攻勢に転じることもあるのではないか。
台湾を香港の二の舞にしないためには

 最近、米艦船二隻が台湾海峡を航行したことが注目されている。国際法に基づく公海の航行は当然のことである。中国が推進する「国際水域」ではないとの考えはおかしい。狭いところでも100キロメートル近い公海がある。

 台湾が香港の二の舞にならないように警戒が重要だ。香港では、何時の間にか既成事実が出来上がってしまった。国際社会は油断すべきではない。

 対中対話の必要性は言うまでもない。先般、習近平から岸田文雄首相にコロナ感染の見舞が来た。もう一つ興味深いことは、8月26日、米中の証券規制当局が、問題となっていた米株式市場に上場する中国企業の監査状況につき米当局の検査を認めることで合意したことだ。

 中国にとっては実利の判断だったのであろうが、対米協力を閉ざしていないことを示す事例とも受け止められる。問題を一つ一つ解決していくことが大事だ。

 中国を不必要に挑発しないことが重要なことは当然であるが、中国は、世界でもっと責任あるアクターになるべきである。特に台湾や南・東シナ海、海洋法裁判所決定への対応、核軍縮、太平洋への進出等の問題がある。

 最近、ソロモン諸島は、米国の巡視船の寄港を拒否した。また、同国は、中国の資金援助を得てファーウェイによる無線局網建設に関する契約に署名した。中国は台湾への主権を主張するが、中国共産党は過去に台湾を支配したことがあるだろうか。』