政府・日銀、苦渋の為替介入準備

政府・日銀、苦渋の為替介入準備 急速な円安に危機感
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『政府・日銀と市場関係者の為替相場を巡る緊張感が高まっている。13日夜に米物価統計が公表された後の急速な円安を受け、日銀は為替介入の準備のための「レートチェック」を実施した。当局者が市場の動きをけん制する「口先介入」から一歩進んだが、金融緩和のもとで円安の基調が変わるとの見方は乏しい。協調介入のハードルは高く、円安を止めるのは難しい状況だ。

14日午前、銀行などの外為担当者に日銀から電話が入った。「ある程度の規模で円買い・ドル売り取引をする際のレートはいくらですか」。通常、政府・日銀が為替介入をする前の準備として行うレートチェックだ。

14日の円相場は午前7時ごろに1ドル=144円台後半を付け、145円が迫っていた。市場関係者は「145円の節目を突破するとどんどん円安が進む可能性があり、危機感が高まっていた」という。

実際に為替介入を準備している姿勢を市場に示す。政府・日銀のこの動きは3月から進む円安について、介入以外にとりうる策が尽きた結果の苦渋の選択でもある。

3月上旬の1ドル=114円台から強まった円安基調に対し、鈴木俊一財務相らは過度な為替の動きをけん制する「口先介入」を繰り返してきた。足元では輸入物価の値上がりへの企業や消費者の不満も無視できない。鈴木氏は4月には「悪い円安」、最近では「あらゆる手段を排除しない」とまで語るようになったが、円安の動きは止まっていない。

鈴木氏は14日午後には円安に対応する手段に為替介入を含むかどうかについて「あらゆる手段であり、そう考えていい」と記者団に述べた。同日夕になると介入は「やるときは間髪入れずに瞬時にやる」と述べ、神田真人財務官も「適切な対応を取る準備ができている」と語った。レートチェックが進む中、当局による円安けん制のメッセージは近年になく強まった。

しかし、市場関係者は「介入のふり」とみているようだ。日経電子版が日銀によるレートチェックの実施を報じたのは午後1時半ごろ。1㌦=144円30銭台だった相場は円高に振れたものの、143円台後半でいったん止まった。

シティグループ証券の高島修氏は過去に介入する際に使っていた「断固たる措置をとる」という表現が政府関係者から発せられていないことから「1ドル=150円に乗せるまでは介入に動く可能性は低い」とみる。

円安に対抗する円買い・ドル売り介入は手持ちのドルを売る必要があり、外貨準備の範囲内でしか実施できない。これまで円高に対応する円売り・ドル買い介入を319回実施したのに対し、円買い・ドル売り介入は32回にとどまる。1998年6月を最後に封印している。

ドル安に転じれば米国の輸入物価は上がる。インフレに苦しむ米国の理解を得るのは難しく、協調介入の機運は乏しい。7月に鈴木氏とイエレン財務長官の会談でまとめた文書に為替安定の記述が入ったのは日本側の働きかけによるものだった。日米の温度差は大きい。財務省幹部は「日本単独でも介入できる」と話すが、効果は限られる。

このまま介入に踏み切れば投機的な動きはけん制できる可能性がある。しかし、日米の金利差が埋まるわけではなく、円安の圧力は残り続ける。今後の大きな焦点が、日銀が21~22日に開く金融政策決定会合だ。

黒田東彦総裁は前回7月の決定会合後の記者会見で「少し金利を上げても円安が止まることは到底考えられない」と述べ、円安に対応するための金融政策の変更に否定的な見解を示した。

現在も金融政策の変更を予想する市場関係者は少数派だが、日銀内でも急速に進む円安を無視できない状況になりつつある。ある日銀関係者は「為替は経済を構成する重要要素。(利上げの)リスク、効果などを見極めた上で政策を考える必要がある」と指摘する。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

レートチェックは、「実弾介入」の一歩手前の動き。介入実行の準備をしていることを市場参加者に対して、強くアナウンスする効果を有する。ドル/円相場の市場実勢は、取引端末や情報スクリーンなどから、リアルタイムで通貨当局も知ることができる。それでもあえて、民間銀行に対して取引可能な相場水準を日銀がきくことには、そうした意味合いがある。市場における円売りに対するそうしたけん制に効果がなく、レートチェックをした水準を超えて急ピッチで円安ドル高が進むようなら、日本単独での介入実施が真剣に検討されるだろう。ドル/円での介入実施には米財務省の容認姿勢が必要とみられる中、岸田首相の米国訪問が近く予定されている。
2022年9月15日 7:48

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

遅いが、やらないよりはやったほうがいい。むろん、円買い介入しても、円安を止めることができない。円買いしながら、金融緩和・ゼロ金利を転換する。そうすれば、状況はかなり変わる。あと2週間で10月に入る。さらなる物価上昇が予想される。需要が供給を上回って物価が上昇しているのではない。輸入インフレだ。輸入インフレは企業経営に直撃する。最近、毎日のようにこのようなコメントを書いている。昨日、ガソリンスタンドにいって給油したら、高い。
2022年9月15日 7:23 』