中国、医療機器も外国製排除

中国、医療機器も外国製排除 世界市場の分断深まる
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『【北京=多部田俊輔、上海=若杉朋子】中国が医療機器の市場で外国製品の締め出しに動いている。地方政府が病院に国産機器を調達するよう求め始めたほか、中央政府は設計開発や重要部品の調達を中国に移すための法改正案を公表した。米国はサプライチェーン(供給網)から中国企業を排除する動きを強めており、グローバル市場の分断がさらに深まる。

安徽省や山西省、寧夏回族自治区などの地方政府が4月から相次いで、域内の病院に医療機器や検査機器を国産に限る通知を公表した。海外から輸入した機器は厳格に審査するという。

中央政府が2021年5月、医療などに使う315品目の調達で国産品優先を求める内部通知を出したことに対応したとみられる。公表なしに国産品に限定している地方政府もあるとみられ、関係者は「北京市や上海市、広東省などの有力病院でも国産品に限定する動きが広がっている」と話す。

対象商品は幅広く、磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)、X線機器、内視鏡などのほか、検査機器が含まれる。

中国は内外企業の差別を禁じる世界貿易機関(WTO)の政府調達協定を締結していないが、01年のWTO加盟時に政府調達の透明性の確保と将来の協定への加盟を約束している。

検査機器大手のシスメックスは「機器の購入が先送りになるなど一部で影響が出ている」と明かす。別の医療機器メーカーは「入札への参加を取りやめた」と話す。

経済産業省の担当者は「一部地域で医療機器を含む政府調達で国産品購入を求める動きがあることは承知している。現時点で日本企業に重大な影響が出ているケースは把握していないが、動向を注視していく」と話す。中国の医療機器で外資のシェアは高い。

中国メディアによると、公開入札によるCTやMRIの販売額シェアはゼネラル・エレクトリック(GE)系・シーメンス系・フィリップスの「3強」を中心とした外資が7~8割を握る。医療機器の国産比率は3割程度にとどまり、高性能機種では外資比率が8割に達するとの報道もある。

中国の医療機器市場は巨大だ。中国メディアによると、21年の市場規模は20兆円近くで米国に迫り、公開入札分だけでCTは年5000億円、MRIも年3000億円に達した。高齢化などで25年に医療機器市場は21年の2倍近くに成長する見通しだ。

シスメックスは18年から山東省済南市で血液検査装置を組み立てし、このほど尿検査機器も現地組み立てに切り替えた。日立ハイテクも18年から江蘇省蘇州市で小型検査装置の組み立てを始め、21年から中型装置に対象を広げた。

中国メディアによると、米GEヘルスケアが8月末の北京での展示会で、中国で開発・生産したCTなどを出品した。独シーメンス・ヘルシニアーズも6月、「中国企業」として、国産化の拡大を宣言。オランダのフィリップスもCTやMRIを中国で生産している。

中国生産を広げることで、中核技術が流出する懸念もある。

中国政府は組み立て工程だけでなく、研究開発や設計、重要部品の調達も移管を求める。国内の医療機器産業を35年に世界先進水準に高める計画を21年12月に公表し、外資に技術移転を促す。

7月には政府調達法の改正草案を発表し、中国で付加価値を高めた製品の調達を優遇する項目を追加した。業界関係者は「中国での設計や開発、重要部品の調達が求められる」と分析する。

日米欧政府は警戒を強める。高速鉄道や磁石などで中国が外資の中核技術を導入し、短期間で日米欧メーカーをしのぐ企業を育成したからだ。8月に株式上場した上海聯影医療科技(ユナイテッド・イメージング・ヘルスケア)はMRIやCTで米欧3社に次ぐ占有率を誇り、時価総額はフィリップスを上回る。

中国政府は外資の締め出しを広げている。10年前後から米グーグルや米フェイスブックなどの中国大陸での利用を制限し、国内のネット大手を育成した。さらに、習近平(シー・ジンピン)指導部は18年ごろからパソコンやサーバーなどのIT(情報技術)機器について、「信創目録」とよばれる推奨企業・製品リストを作成し、20年ごろから中国企業に調達先を本格的に絞るようになった。

複写機など事務機でも中国は日本企業に技術移転を迫る。中国政府は4月、中国で設計、開発、生産をするよう求める内容を技術の国家標準に盛り込む検討を始めた。「中国生産した場合、どう独自技術を守るのかが課題となっている」とメーカー幹部は打ち明ける。

中国に進出する日本企業で構成する中国日本商会は7月、中国政府が「国家標準」で外資を排除する検討に着手したことを念頭に「中国企業と外資企業への公平な待遇」を求める意見書を公表した。米企業の団体である中国米国商会も5月公表の白書で、「広範な市場参入障壁、保護主義や不透明な監督管理体系などが米国企業の中国での経営を阻んでいる」と指摘した。

米中対立の先鋭化を背景に、世界の市場とサプライチェーンは分断が深まっている。バイデン米大統領は21年、半導体や大容量電池などの4分野について供給網から中国を排除するための大統領令に署名した。

習指導部は米国の制裁の影響を受けにくい産業構造の構築をめざす。海外企業は巨大市場と引き換えに、どこまでの技術を渡すのか難しいかじ取りを迫られる。

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岡島礼奈
ALE 代表取締役CEO
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別の視点

世界が分断されること、憂慮すべき事態である。
が、冷戦時代にアメリカと旧ソ連の分断の中で、それぞれで宇宙開発が進んだように
技術がそれぞれ独自に進化していくことなどがあり得るかもしれない。
それぞれの側面から新しい技術や手法が出てくることは面白い一面もあるかもしれない。
しかし、分断がなくなっていくことが人類の持続的な方向にとってはよいはずなので、やはり憂慮すべき事態であることに変わりはない。
2022年9月14日 18:49
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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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分析・考察

最先端医療機器の国産化問題は長らく中国国内で議論されてきたが、公表された第14次五か年計画の中で、正式な目標として盛り込まれた。こうした外国製排除の動きは、農業設備など、これから他の分野でも見られるだろう。影響を受ける日本企業も増えそうだ。
2022年9月14日 19:13 』