産油国、価格維持へ覚悟示す 米圧力避け来月から減産

産油国、価格維持へ覚悟示す 米圧力避け来月から減産
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『石油輸出国機構(OPEC)に非加盟のロシアなどを加えた「OPECプラス」が5日、10月に原油の減産に転じると決めた。バイデン米政権の要請に一定の配慮を示した9月の小幅増産は、早くもご破算になる。米欧日などがエネルギー高への懸念を強める冬を前に増産をやめるのは、一致して相場を下支えするとのメッセージだ。

減産の発表後、ニューヨークの原油先物相場は一時前週末比4%高い1バレル90.39ドルまで上昇する場面があった。

OPECプラスは新型コロナウイルス禍からの需要回復で2021年から22年8月まで毎月、段階的に増産してきた。9月に追加で10万バレル増産すると決めたのは、バイデン米大統領が7月にサウジアラビアを訪れ増産拡大を求めた直後だった。ごく小規模の増産で米国に最低限の配慮を示した形だが、わずか1カ月での政策転換となる。

今回決めた日量10万バレルの減産幅は、世界の需要の0.1%にすぎない。現物市場への影響はないに等しい。それでも市場が注目するのは、原油の需給が緩めばOPECプラスが自らの都合で「介入」する姿勢を示したことだ。

OPECプラスは5日の声明で「必要な場合、いつでも閣僚を招集するよう議長に求める」とし、市場の動向次第で10月の次回の会合を待たずに生産調整について話し合う方針を示した。議長のサウジに随時介入を委ねるものだ。

「この微調整は市場の安定を支える上で我々が注意深く、機先を制することを示す」。減産についてサウジのアブドルアジズ・エネルギー相は5日、米ブルームバーグにこう述べた。米国などの増産圧力にさらされ続けたOPECプラスが一転、供給を絞っていく可能性を市場に織り込ませるガイダンスの意味合いが強い。

ロシアのウクライナ侵攻で原油の供給不安が高まり、欧米からの増産圧力が強まる中、OPECプラスが減産に転じた背景には原油需給の緩みがある。国際エネルギー機関(IEA)の8月の月報によると、世界の原油需給は22年4~6月期から小幅な供給過剰に転じた。

世界経済の減速に伴う原油需要の鈍化が響いた。多くの国の中央銀行はインフレを抑えるため金融政策の引き締めを加速しており、需要に下押し圧力がかかる。中国では新型コロナの感染が再拡大し、都市封鎖に動いており経済回復が減速した。米国では6月に一時ガソリンの小売り価格が初めて1ガロン5ドルを超え、消費が鈍化している。

IEAの予測では、22年10~12月期には供給過剰幅が日量100万バレル程度まで広がり、23年まで供給過剰が続く。ロイター通信によるとロシアのノワク副首相は5日の協議後「我々は余剰も不足もないよう市場への十分な供給について話し合っている」と述べ、世界経済の成長鈍化に警戒感を示した。

イラン核合意の再建交渉が進展すれば、イラン産原油が市場に復帰し、さらに需給が緩む可能性もある。

国際通貨基金(IMF)の推計では、サウジの22年の財政収支を均衡させる原油価格は1バレル約80ドルとなっており、同国は安値を招く需給の緩みは避けたい。サウジは石油に依存しない経済への転換に向けて改革を進めており、今のうちに多くの収入を得たいという意向も働いた。

海外メディアによると、当初、市場に供給過剰との印象を与えたくないとして減産を支持していなかったロシアは、ウクライナ侵攻のための戦費を確保する狙いもあり、最終的にサウジなどとの合意を決めたもよう。タス通信によると、早くもロシアのシュルギノフ・エネルギー相は5日、22年末までに自国の原油生産量が2%減るとの見通しを示した。

ジャンピエール米大統領報道官はOPECプラスの決定後に「価格を下げるためエネルギーの供給は需要に応えなければならないと(バイデン)大統領は明確にしてきた」との声明を出した。米国とOPECプラスのすれ違いは続きそうだ。

野村証券の大越龍文氏はOPECプラスが減産というカードを切ったことで「原油相場は1バレル90ドル前後の水準で下支えされやすくなった」と指摘する。OPECプラスの政策転換により世界でインフレ圧力が続く可能性がある。(カイロ=久門武史、コモディティーエディター 浜美佐)』