日本の製造業は凋落したのか?

日本の製造業は凋落したのか?部品や資本財から考える  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)
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『1990年代の初頭、世界の大都市の一番の目抜き通りに立てば、そこには日本製品の多様な広告があった。ところが、あれから30年、日本製品の広告は見えなくなってしまった。
(Thinkhubstudio/gettyimages)

 これは日本経済の凋落を表すのだという人が多いだろうが、家電製品などの耐久消費財で存在感を失っただけで、部品や資本財ではそうでないという人々もいる。そうであるかどうかをデータによって確かめていきたい。

日本の衰退か、そうではないのか

 以下の図は、日本の輸出入を商品特殊分類のうちの原料(燃料以外の原料)、鉱物性燃料、工業用化学品、金属製品、繊維原料、非電気機械(一般機械)、電気機械(コンピューター、携帯端末、半導体を含む)、輸送用機器、繊維製品、家庭用機器、家庭用電気機器(白物家電とテレビなど)、乗用車の輸出・輸入額を示したものである。

 上記のうち、非電気機械、電気機械、輸送用機器が資本財でこの3品目の合計が36.8兆円、その他の資本財を足して資本財合計では41.0兆円となる(以下の数字はすべて2021年の値)。日本の輸出総額は83.1兆円だから、日本の輸出額の半分ほどが資本財ということになる。

 上記の資本財およびそれ以外の品目の合計で輸出総額の78%、輸入総額の76%となるので、これらの品目の動きを見ることで日本の貿易が理解できるはずである。

 図1-1はこれらすべて品目の動きを示したものである。上位にある非電気機械16.4兆円、電気機械13.7兆円、工業用化学品9.8兆円、乗用車9.4兆円、輸送用機器6.8兆円、金属製品5.9兆円を主要輸出品6品目といって良いだろう。
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 一方、輸入を見ると、総額84.8兆円のうち、鉱物燃料17.0兆円が圧倒的で、以下、原料6.3兆円、工業用化学品9.4兆円、非電気機械7.7兆円、電気機械11.7兆円、金属製品3.9兆円となる。これらを主要輸出品6品目とする。』

『ここで着目すべきは、同じ品目のなかで輸出と輸入をしていることである。一部は繰り返しの数字になるが、非電気機械は16.4兆円の輸出とともに7.7兆円の輸入、電気機械は13.7兆円の輸出で11.7兆円の輸入、工業用化学品は9.8兆円の輸出で9.4兆円の輸入、金属製品は5.9兆円の輸出で3.9兆円の輸入をしている。

 ただし、乗用車は9.4兆円の輸出で1.3兆円の輸入、輸送用機器は6.8兆円の輸出で1.9兆円の輸入と、輸出に対する輸入の比率が低下する。もちろん、同じ品目といっても同じではなく、電気機械では資本財と部品を輸出して最終製品を輸入することが多いだろう。これを見ると、資本財においては大幅な輸出超過となっていることがわかる。

リーマン・ショックから回復できていない輸出

 図1-1と図1-2は輸出額と輸入額の相対的関係を見やすくするために縦軸の目盛りを同じにしている。しかし、そうすると、相対的関係を見るためには良いが、鉱物性燃料の金額が大きすぎてそれ以外のグラフがつぶれて見えにくくなる。そこで、鉱物性燃料を除いたグラフが、図2-1と図2-2である。

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 図2-1で顕著なのは、2009年のリーマン・ショックの落込みが大きく、その後の回復が遅いことである。リーマン・ショック以前のピークを上回ったのは工業用化学品だけである。

 リーマン・ショックによる需要減少とその後の円高で海外への生産移転が進んだということだろう。輸出総額でも2007年の83.9兆円を上回ってはいない。

 一方、輸入を見ると、主要6品目はいずれもリーマン・ショック前のピークを上回っている。総額でも2007年の73.1兆円を上回っている。特に、工業用化学品1.79倍、電気機械1.39倍と伸びている。なお、電気機械の2021年の増加は、アイフォンをはじめとする携帯端末の輸入増によるものである。』

『図3-1と図3-2は、主要輸出および輸入品6品目を除いたものである。輸出を見ると鉱物性燃料1兆円、原料1.4兆円、繊維原料0.7兆円であるが、繊維製品0.1兆円、家庭用電気機器0.15兆円、家庭用機器800億円とわずかなものとなっている。

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 輸入を見ると、繊維製品3.3兆円、輸送用機械1.9兆円、乗用車1.3兆円、家庭用電気機器1.1兆円、繊維原料0.5兆円、家庭用機器0.2兆円となっている。

日本経済はどこへ向かうべきか

 家庭用電気機器で見れば日本の凋落は甚だしい。しかし、部品や資本財の輸出ではまだ世界に伍している。家庭用電気機器の市場がそれほど大きくないことを考えれば、部品や資本財の生産に転換したのは正しかったのかもしれない。

 だが、世界の消費者にアピールする製品では、乗用車はまだ存在感を持っているものの、パソコンや携帯端末では凋落したままである。また、そもそも輸出の総額が増えていない。

 これは日本の国内総生産(GDP)も給料も増えないことと同じと解釈できよう。日本全体の停滞が、輸出でも生じているということである。』