IPEFとは? 対中国の経済枠組み、8日から初の対面会合

IPEFとは? 対中国の経済枠組み、8日から初の対面会合
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『米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が9月8、9日に米ロサンゼルスで開かれる。5月に枠組みを設置してから14カ国の閣僚が対面で集まるのは初めてになる。各交渉分野の参加国や中身を盛り込んだ共同声明を発表する見通しだ。会合ではどのような成果を狙うのか。3つのポイントにまとめた。

・設立した目的は?
・閣僚会合の焦点は?
・関税削減・撤廃は交渉に含まず

(1)設立した目的は?

IPEFはバイデン米大統領が提唱した新たな経済連携の枠組みだ。正式名称は「Indo-Pacific Economic Framework」で、頭文字をとり「アイペーフ」とよばれる。2022年5月にバイデン氏が訪日した時に首脳級で発足を表明した。

米国、日本、韓国、オーストラリアのほか、ニュージーランド、インド、フィジー、東南アジア諸国連合(ASEAN)7カ国が参加する。参加国の国内総生産(GDP)の合計は世界の約4割を占める。

ASEAN諸国の参加が多いのが特徴の一つだ。インド太平洋地域で影響力を強める中国を念頭に、自由や民主主義など共通の価値観をもつ陣営が連携する経済圏を構築する狙いがある。国際秩序をゆるがすロシアにも対抗軸をつくる。

(2)閣僚会合の焦点は?

最大の焦点は正式な交渉入りについて合意できるかどうかだ。

8日からの閣僚会合は米通商代表部(USTR)のタイ代表とレモンド米商務長官が主催する。日本からは西村康稔経済産業相が出席する。

これまで14カ国は非公式で集まったり、特定の分野に絞ったりして、交渉事項の具体化を図ってきた。政府関係者によると、これまでの協議を経て交渉分野は①貿易②サプライチェーン(供給網)③クリーン経済④公正な経済――の4分野になる見通しだ。各国はそれぞれどの分野に参加するか選ぶことができる。

それぞれの交渉分野の閣僚声明を、最終日までにまとめる方針だ。仮に交渉入りについて合意できれば、各国が参加したい交渉分野を表明する可能性もある。日米両国はすべてに加わる見通しだ。

参加国はすべての分野の交渉に参加する必要はない。どれだけ多くの国で交渉を始められるかにも注目が集まる。

閣僚声明には、重要物資の供給網強化や地域間での物流・通信インフラ連携、エネルギー安全保障、デジタル貿易、汚職防止など多岐にわたる協力分野や方向性を盛りこむ方針だ。半導体や医療物資などの在庫を融通する体制づくりも検討する。

(3)関税削減・撤廃は交渉に含まず

正式に交渉が始まっても順調に進むかは読めない。IPEFは従来の自由貿易協定(FTA)などと異なり、関税の引き下げや撤廃などを指す「市場アクセス」は交渉分野に含まない。対米輸出を拡大したいASEANなど多くの国にとっては利点を感じづらいとの指摘がある。市場アクセスに代わるメリットを示せるかがカギを握る。

ルールを守っていない場合にどう解決するかも不透明だ。一般のFTAには紛争解決制度の仕組みがある。こうした仕組みをIPEFにどう取り込むのかはまだ明確でない。

アジアの一部の国からは、デジタル経済や環境・労働分野に関して高い水準のルールになった場合にその水準を満たせるかを懸念する声もあがる。タイやインドなどは海外拠点で集めたデータを国内に持ち帰る「越境データの移動」を規制しており、ルールの水準に達しない可能性もある。人権を巡る対応もアジアは欧米などと比べて遅れている。

‘7月末にオンライン形式で開いた閣僚会合ではASEANなどの一部の国から柔軟な制度設計を求める声が上がっていた。ルールの適用に猶予期間を設けるなど、各国の法規制への理解や技術協力などの配慮が求められそうだ。

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(金子冴月)

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

米国はクオッドが正式に4か国の経済・安全保障面の協力体制に移行しつつある中で、より多くの参加国をつのって協力関係を拡充していく狙いがあるようです。クオッドに参加するインドはIPEFへの参加は慎重な一方で、韓国が参加意向を示したことで、日韓関係が改善する可能性も期待されます。ただ東南アジアは中国経済の影響がかなり大きく、エネルギーや食料の輸入国も多いので、世界の分断につながることを懸念してIPEFに参加することには慎重になるでしょう。いずれにしてもどのように中国に大きく依存する現在のサプライチェーンを多様化していくか、とくに半導体・希少金属などの調達の多様化に関する具体策が必要になります。
2022年5月22日 9:01 (2022年5月22日 12:24更新)

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

IPEFの問題は単に市場アクセスがないということだけでなく、貿易ルールにしても、サプライチェーンにしても、脱炭素にしても、腐敗防止についても、政府がビジネスを規制するという性格を持ち、それを実施しようとすれば、各国とも様々な軋轢を生み出す恐れがある。特に東南アジア諸国においては、いずれも実施が難しいテーマであり、中国を刺激する結果になる可能性もあるだけに、仲間を増やすというのは難しい。
2022年5月23日 9:38 』