[FT]中国、半導体の国産化を加速

[FT]中国、半導体の国産化を加速 米国の技術封鎖に対抗
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『米国が半導体技術の中国企業向けの輸出に新たな規制を課したことに対し、中国政府は強く反発した。だが中国は、うわべだけでなく本気で半導体の国内生産を強化するために、新たに多額の補助金を投じるとみられる。

半導体業界はグローバル化が進んでいるため、1国だけの競争力を高めることは困難との見方もある=ロイター

米政府は中国のハイテク業界に対して、最先端半導体の部品や製造装置の利用を制限する制裁を着実に強化してきた。最近では厳しいライセンス要件を導入したことで、米半導体大手のエヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が製造するハイエンドプロセッサーは輸出が阻止される公算が大きい。これらのプロセッサーは人工知能(AI)システムに使われる。

中国外務省は1日、米国は自らの技術的「覇権」を維持するために中国を「技術封鎖」しようとしており、国家安全保障の概念を拡大解釈していると非難した。一方、米国は自国の技術が中国に軍事利用されることへの懸念を表明している。

こうした「封鎖」を突破できないなかで、「輸出規制は中国が国産技術で代替する動きを加速させることになる」と中国半導体メーカーの幹部は指摘する。

中国政府はすでに多額の資金を半導体業界に投じており、国有投資ファンドは外国企業を代替すると約束する半導体スタートアップに重点的に投資してきた。だが、気前のよい資金投入はムダや腐敗、誤った経営判断のもとになったとの批判も浴びている。中国半導体大手、紫光集団は政府から数百億ドル規模の補助金を受けたにもかかわらず、2020年に社債の債務不履行(デフォルト)に陥った。

半導体自給をあきらめない中国

アナリストは、米政府がさらなる締め付けにより中国のハイテク業界に対する包囲を強める限り、中国政府は有名企業の破綻が相次いだとしても半導体自給への追求をあきらめることはないと考えている。

米政府はエヌビディアとAMDの最先端半導体の供給を阻止する措置を導入した数週間前にも、ハイエンド半導体の設計に必要なEDA(電子設計自動化)ソフトの中国向け輸出を禁止した。これらの動きを受けて、中国企業は海外サプライヤーからの切り離しに備えて国内半導体メーカーへの切り替えを急ぐだろうと、上海市に拠点を置くHWASアセッツは短信で指摘した。

米議会は7月、米国での半導体工場の建設に総額527億ドル(約7兆5000億円)の補助金を支給することを盛り込んだ画期的な「CHIPS・科学法(半導体法)」を可決した。中国でのハイエンド半導体の生産に投資しないことに同意した企業が対象となる。

スイス金融大手クレディ・スイス・グループのアジア半導体業界調査担当責任者、ランディー・エイブラムズ氏は短信で、中国での先端半導体への投資が禁止されることで「中国は国内の半導体産業を強化するために海外から人材や投資を獲得することが一層制限される」との見方を示す。

以前は、韓国のサムスン電子や米インテル、台湾の聯華電子(UMC)が中国で稼働させる半導体工場が「国内の半導体産業を発展させたい中国にとって知的財産、人材、資源の優れた供給源となっていた」とエイブラムズ氏は解説する。

現在は米国製ツールがリード

米投資銀行ジェフリーズのアナリストによれば、エヌビディア製品の顧客の中で今週の事実上の禁輸措置で最も影響を受けるのはクラウドサービス、インターネット、AIの企業だという。ジェフリーズは国産のGPU(画像処理半導体)に切り替える動きが出ると予測するものの、「AIのための基本ソフト(OS)」とされるエヌビディアのソフトウエアツール「CUDA(クーダ)」が普及していることから互換性の問題が生じるとみられる。

中国半導体メーカー幹部は、中国が機能的に申し分のないEDAソフトを独自に開発するのは時間の問題だと語った。米国製のツールは「信じられないほど複雑で洗練されているため、一朝一夕に模倣することはできないが、十分な資金と創意工夫があれば近づくことは可能だ」と強調する。

中国が半導体の自給を達成できるという予想には否定的な見方もある。米情報技術イノベーション財団(ITIF)のディレクター、スティーブン・エゼル氏は、中国は「クローズドループ(閉ざされた輪)の半導体エコシステム」を構築しようとする取り組みに失敗してきたと語る。

「ハイテク産業の国が何でも自前でやろうとするのは自滅的だ」と同氏は述べた。

米政府が20年に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に科した制裁がもたらした破壊的な影響は、世界的な半導体サプライチェーン(供給網)がもつ相互連結的な本質を浮き彫りにした。米国の技術を利用した半導体の輸入を禁止する措置により、ファーウェイのスマートフォン事業はまひさせられた。

かつては日本勢の優位を懸念し米半導体企業の連合体も

オランダも米政府の圧力に屈し、AIやブロックチェーン技術を動かす半導体の製造に必要なEUV(極端紫外線)露光装置の中国向け輸出を禁止した。中国半導体産業の専門家、ダグラス・フラー氏は「米国がオランダを追従させたが最後、中国はプレーヤーではなくなった」と説明する。

半導体業界の関係者は、中国による外国の半導体技術の利用を制限できたとしても、米政府が世界のサプライチェーン(供給網)から中国を完全に締め出すことは不可能ではないかと予想する。

米政府が対立国と競争しようとした前回の試みは、政治的な意欲の後退と資金の枯渇によって失敗したと、ある日本の業界でのベテランは話す。1980年代末、半導体での支配的な地位を日本に不当に奪われたという懸念を受け、米政府は半導体企業の連合体を立ち上げた。

「しばらくの間はおおむね成功していた。インテルをはじめとする大企業の強い支持があったことが大きい。しかし、政府の助成は変わりやすく、米政権が変われば干上がってしまう」とこのベテランは言う。

「半導体産業はグローバルだ。友好国や競争相手国に対して1つの国の競争力を高めようとする取り組みは困難だ」

By Eleanor Olcott and Anna Gross

(2022年9月4日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/

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