ロシア石油が欧州へ裏流通 ギリシャ沖経由、日経分析

ロシア石油が欧州へ裏流通 ギリシャ沖経由、日経分析
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE026G50S2A800C2000000/

 ※ 「瀬取り」は、北の専売特許かと思っていたが、トンでもない話しだったな…。

 ※ それと、この記事で重要な話しは、もう一つある…。

 ※ それは、「万が一の事故」のことだ…。

 ※ やや荒天でも、ムリをして瀬取りをおこなっている最中に、ホースが外れる事故が起きた場合なんかだ…。

 ※ 当然、海面上に原油が撒き散らされ、生態系に手ひどい打撃を与える…。

 ※ 隠密裏になされる場合が、多かろうから、夜間とかでもなされるかもしれない…。
 ※ 事故のリスクは、当然、高まるだろう…。

 ※ そういう「事故」の、「後始末」はどうするのか…。

 ※ 瀬取りに関わっていた船舶・勢力が、まさか、「損害保険」に加入しているものでもあるまいよ…。

『【この記事のポイント】
・ロシア産石油が海上で移し替える方法を使い欧州に流入している。
・ギリシャ沖がハブとなり、移し替えは半年間で20倍の175件に急増した。
・12月に完全禁輸する英国の港にも2隻のタンカーが入港している。

ウクライナに侵攻したロシアの石油が隠れたルートで欧州に流入している。ギリシャ沖でロシア発タンカーから石油を受け取り欧州の港に入港した船が半年で41隻と、1隻だった前年から大幅に増えていることが日本経済新聞の調査で明らかになった。欧州連合(EU)や英国がロシア石油を完全に禁輸するのは年末以降だが、取引が明るみに出ると企業は批判を受けるリスクがある。船の移し替えで産地を曖昧にする流通手法は、制裁の抜け道として残りかねない。

【関連記事】ロシア石油が裏流通、英発表「輸入ゼロ」実態とズレ

8月24日、ギリシャ南部のラコニア湾。日経は2隻のタンカーが横付けして石油を移し替える「瀬取り」の瞬間を写真に捉えた。1隻はギリシャ籍の「シーファルコン」で、8月4日にロシア北西部の石油積み出し基地であるウスチ・ルガ港を出港。もう1隻は8月4日にトルコのアリアガ港を出たインド籍タンカー「ジャグロック」だ。2隻の周りには、瀬取りを補佐する小舟が取り巻くように位置していた。
ギリシャ沖で瀬取りをする2隻の石油タンカー(8月24日、ギリシャ・ラコニア湾)=長尾里穂撮影
写真を拡大すると「シーファルコン」(右)と「ジャグロック」であることがわかった

ラコニア県の港町、ギティオ在住のサリス・ラダカキスさん(55)は「事故が起こって石油が海上に流れるリスクがある。石油タンカーが出す排ガスやごみも問題で、漁業も観光業も迷惑している」と顔をしかめる。この海域でタンカーが急増したのは、2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってからだという。

ロシアは西側諸国から経済制裁を受けており、主力産業の石油の輸出には一部、歯止めがかかっている。出先を模索している石油はどこに向かうのか。日経はロシア石油の海上輸送の実態を探るため、英リフィニティブのデータを用いて、2月24日以降にロシアの港を出た石油タンカーと、接触した船の動きを分析した。
ロシア関連の瀬取りは半年で175件

対象区域に選んだのは、瀬取りが頻発している地中海のギリシャ沖。船舶が発信する自動識別システム(AIS)の信号をたどって航路を追跡し、積み荷が重いと値が大きくなる船底から水面までの距離(喫水)の変化と照らし合わせて、瀬取りの発生数を調べた。

8月22日までの約6カ月間で、ギリシャ沖のロシア発タンカーに関係する瀬取りは175件確認できた。前年同期は9件で、実に19.4倍の急増だ。リフィニティブのデータによると、この期間にロシアからギリシャ沖での瀬取り向けに出荷された石油は2386万バレルで、434万バレルだった前年同期の5倍超に膨れた。

では、石油を受け取ったタンカーはどこに向かったのか。

航跡を追って入港が確認できたのは89隻(前年同期は3隻)で、向かった先はギリシャ、ベルギーなど欧州が41隻と半数近くを占めた(同1隻)。その中には、ロシア制裁に強硬な英国の港に入港した船も2隻あった。ギリシャ沖がロシア―欧州航路をつなぐ「ハブ」となっている構図が浮かんできた。

EUは2023年2月までにロシア石油の海上輸入を止める。英国はこれに先立ち、今年12月までに完全に禁輸する。国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシア石油の7月のEU向け輸出量は1月比26%減の日量280万バレル。現時点で取引は違法ではないが、政府や市場の目にさらされる企業は表向きロシアとの関係見直しに動いている。
国営会社ロスネフチの石油が英国に

日経は6月に英国に渡った石油について取引内容の検証を試みた。

リフィニティブの航跡・喫水データ、米プラネット・ラブズの衛星画像で分析したところ、ロシアの港を出た2隻のタンカーからギリシャ沖で瀬取りを受けたマルタ籍タンカー「マリノウラ」が、6月4日に英東部のイミンガム港に入り、同6日までに荷降ろししていた。

欧州エネルギー調査会社ケプラーの取引記録によると、マリノウラが英国に持ち込んだのはロシア国営石油会社ロスネフチが生産した30万バレルの石油だった。資源商社大手でスイスに本拠を置くトラフィギュラが荷主となって仲介し、英石油元売り中堅のプラックスグループに売却していた。

プラックスの英本社を訪ねて取引の照会を求めた日経に対し、同社は「個別取引に関する業務上の機密情報にはコメントできないが、英国政府の制裁の方針に従っている」と答えた。トラフィギュラはメールへの返信で「当社は顧客や関連する政府の要求に応じている」とし、ロスネフチは日経が設けた期日までに回答しなかった。
BSテレ東「日経ニュース プラス9」でこのニュースを解説
米国は「制裁回避の瀬取り」に警告

瀬取りはそれ自体が悪いものと言い切れない。石油取引では長距離航路で輸送効率の高い大型船に石油を集約することがあり、出港後に買い手が変わり他の船に石油を移す場合もある。ただ、積み荷の移し替えにより、もとの出荷地は判明しにくくなる。

各国は国内法などで輸入者に税関への原産地の届け出を求めているが「出どころを隠すために瀬取り地点などを原産地として申告する事業者もいる」(海事法に詳しい津留崎裕弁護士)。英ロイズ保険組合系アナリストのミシェル・ボックマン氏は「瀬取りによって取引が複雑になると、当局がモノの流れを検証することは極めて難しくなる」と指摘する。

米情報会社エナジー・インテリジェンスのジュリアン・マトニア氏は「瀬取りの過程で他の石油とブレンドされると、追跡できる可能性はさらに低くなる」と話す。米国務省は20年の業者向けの資料で「制裁を回避するためにも瀬取りは頻繁に利用されている」と言及し、不正に関与しないように警告した。
ラコニア湾に面する港町ギティオの住民は石油タンカーの瀬取りが原因の事故を懸念している(ギリシャ・ラコニア県)=長尾里穂撮影

近海での瀬取りの急増を、ギリシャ政府はどう見ているのか。同国海運・離島政策省は日経に対し「船の動きは港湾局が監視しており、領海への侵入があれば罰則を科す用意がある」と答えた。隣国との関係からギリシャは東寄りの領海を通常の半分の6カイリ(約11キロメートル)としており、波が穏やかなラコニア湾内の瀬取りスポットは「領海外」なのだという。

ラコニア県選出の国会議員スターボラス・アラホビトゥス氏は「ラコニア湾の(瀬取りタンカーに対する)閉鎖など対策を議会に提案しているが政府は動かない」と話す。背景には、豊富な資金力と政治力を持つ同国の海運業者の影も浮かぶ。

主要7カ国(G7)は12月からロシア石油の価格に上限を設け流通を絞る。一方、ロシアは石油の値引き販売を進めている。制裁はロシアの資金源を断つ目的だが、産地があやふやなロシア産品が流通すれば効果は限定的だ。国際連携を強化し、不透明な取引をあぶり出す方策が必要となる。

(長尾里穂、朝田賢治、関優子、三浦日向、北本匠、横沢太郎)

【関連記事】

・ロシアタンカー、寄港先不明3割 制裁の抜け道か

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ある海外の分析でも、ロシア産の石油の海上貨物量はウクライナ戦争前と後でほぼ同じであることを示しており、ロシア産の石油の輸出は減っていない。船主がギリシャの船籍が非常に多く使われているという。IEAも制裁が上手くいっていないことを認めている。12月5日から施行されるロシア産石油価格の上限設定が上手く機能するためには、上限を超えた場合に、G7それぞれが金融、保険、輸送などのサービス取引が行われないよう取り締まりできるかに依存している。監視は各国にまかせられているが果たして有効な監視ができるのか、また違反した行為に対して二次制裁をきちんと適用できることが重要になる。
2022年9月7日 18:38 (2022年9月7日 19:44更新)
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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ここまでしなければならないほど、エネルギーは必要な財だということ。ロシア制裁だけでなく、温暖化対策でも同じですが、化石燃料を買わない、消費しないといっても「武士は食わねど高楊枝」というわけにはいかない究極の生活財・生産財ですし、全世界が一致団結して「買わない」を貫かねば意味がありません。ロシアの化石燃料による収入を定期的に試算しているフィンランドの研究機関は、侵攻開始から半年で、ロシアは化石燃料の輸出で1580億ユーロ(約22兆円)の収入を得たとする報告書を9月6日に公表しています。うち半分以上は欧州連合(EU)向けだったともされており、実効的な制裁が可能かどうかは難しいところです。
2022年9月7日 18:11 (2022年9月7日 19:12更新)
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

ほかの専門家の方がすでにしっかりコメントされているので、個人的感想。6人もの記者を投入し、実地調査もしっかり行った労作で、調査報道として価値が高いように思う。ちょうど新聞協会賞が発表されたばかりだが、次回の候補に十分なリ得るのではないか。「瀬取り」というと、北朝鮮への密貿易で過去に関連する報道があったが、ロシア産の石油でもあるのではないかという目のつけどころがまず秀逸。衛星画像の分析、関係会社への突撃取材、ギリシャ沖で記者が「瀬取り」現場を撮影するという、エキサイティングな展開である。筆者は若い頃、ジャーナリズムの世界に関心を抱いたことがあった。この記事を読んで志を抱く若者がいるかもしれない。
2022年9月8日 8:04 (2022年9月8日 8:33更新)』