8月米サービス業景況感、改善続く 景気底堅くドル高に

8月米サービス業景況感、改善続く 景気底堅くドル高に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06D4M0W2A900C2000000/

『【ニューヨーク=斉藤雄太】米サプライマネジメント協会(ISM)が6日発表した8月の非製造業(サービス業)景況感指数は56.9と前月から0.2ポイント上昇した。小幅ながら2カ月連続の上昇になり、低下を見込んだ市場予想も上回った。新規受注が拡大し、供給制約にも改善の兆しが出ている。世界経済の減速懸念が強まるなかで米景気の底堅さが目立ち、米金利上昇やドル高を誘っている。

ISMの景況感指数は50を境目に経済活動の拡大・縮小を評価している。サービス業は新型コロナウイルス禍からの回復局面に入った2020年6月以降、2年3カ月連続で50を上回った。コロナの感染再拡大やインフレの加速、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和から引き締め方向への政策転換が重なり、21年末から22年6月にかけて同指数は低下基調にあったが、現在は小康状態にある。

ISMの製造業の景況感指数も8月は市場予想に反して下げ止まった。FRBが利上げに積極的な姿勢を保ち、米景気の後退懸念はなおくすぶるものの、足元では粘り腰をみせている。
サービス業の指数を項目別にみると、企業の活動状況を示す指数は60.9と1ポイント上昇した。新規受注は61.8と1.9ポイント上がり、小売業や教育サービス、金融・保険など幅広い業種で上向いた。雇用は50.2と1.1ポイント上がった。ゴールドマン・サックスは各項目の上昇を踏まえ「(米景気の)基調の強さを示した」と指摘した。数値が高いほど遅れを示すサプライヤーの納期に関する指数は54.5と3.3ポイント下がり、サプライチェーン(供給網)の混乱がやや和らいでいる様子も浮かんだ。

一方、6日発表のJPモルガンとS&Pグローバルが算出する世界の企業の景況感を示す総合指数(購買担当者景気指数=PMI)は8月に49.3と前月から1.5ポイント下がり、20年6月以来の低水準になった。好不況の分かれ目になる50も下回った。ISMの調査とは対象が異なるため、米国のPMIも低下傾向にあるが、ドイツや英国、日本などの主要国も落ち込んでいる。

景気の先行きを巡っては、特にエネルギーの調達不安を抱える欧州で急減速懸念が強まっている。前週末にはロシア国営の天然ガス会社ガスプロムが欧州向けガスパイプライン「ノルドストリーム」の再開を当面延期すると発表し、天然ガス価格が高騰した。インフレ加速を踏まえ、欧州中央銀行(ECB)は8日の理事会で通常の2倍の0.5%か、3倍の0.75%の利上げに動くと市場はみている。大幅利上げは通貨安や輸入インフレの圧力を和らげうる半面、景気への負荷も重くなる。

6日の米市場ではISMのサービス業指数の公表後、米金利上昇を手がかりにドル買いが進んだ。主要通貨に対するドルの強さを示す米インターコンチネンタル取引所(ICE)算出のドル指数は110台半ばまで上昇し、20年ぶりの高水準を更新する場面があった。対ドルの円相場は一時1ドル=143円台まで下がり、24年ぶりの円安・ドル高水準になった。米景気の相対的な底堅さや「安全通貨」としての需要拡大によるドル高が加速し、どこで歯止めがかかるか見通しにくくなっている。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

米国のサービス業の景況を示す代表的指数が、FRBが利上げを加速する中でも、2か月連続で上昇した。0.2ポイントというわずかな幅ではあるが、「利上げ→リセッション(景気後退局面)入り」のシナリオを想定している市場関係者(筆者を含む)にとって、強い逆風である。ワイオミング州ジャクソンホールで8月下旬に行った講演でパウエルFRB議長は、インフレ抑制に向けた強い決意表明を行った。利上げをさらに大幅に実施し、政策金利を高い水準に長くとどまらせて金融引き締め効果を十分に浸透させる作戦(higher for longer)が、従来の想定を超えて実施される可能性を、債券市場は意識。米長期金利は大幅に上昇した。
2022年9月7日 7:38 』