ドイツ、電力安定へ苦渋の判断 「脱原発」を先送り

ドイツ、電力安定へ苦渋の判断 「脱原発」を先送り
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『【ベルリン=南毅郎、ヒューストン=花房良祐】ドイツ政府は年内にすべての原子力発電所を停止する方針を見直す。国内で稼働している3カ所の原発のうち1カ所は年内に停止させるが、ほかの2カ所は2023年4月まで動かせる状態にしておく方針だ。ロシアの天然ガス供給が不安定で、この冬の電力の安定を優先する。「脱原発」を掲げてきたショルツ政権にとっては苦渋の決断だ。

「必要なことは全てする」。5日、ハベック経済・気候相は今冬の電力安定へ力を込めた。同日公表した電力供給に関するストレステストでは、電力網で危機的な状況が発生する可能性を「完全には排除できない」との結論に至った。

今回の政策判断は原発を今冬の予備電源として活用するという内容だ。独経済・気候省によると原発は電力網からいったん外し、電力供給が不安定になる場合に稼働させる。ロシアからのガス供給が途絶えるなか、不測の事態に備える狙いだ。経済大国ドイツの電力確保は、欧州全体でのエネルギー供給の安定に寄与する。

ショルツ政権は脱原発の方針を維持する。放射性廃棄物の処理を巡る問題が解決できないためだ。長期では風力を軸とした再生可能エネルギーで国内の電力を賄う戦略を描く。ハベック氏は「原子力はリスクの高い技術だ」と述べ、原発稼働の延長が一時的な措置だと強調した。

ドイツの脱原発方針はメルケル政権だった11年5月に決まった。同年3月の東京電力福島第1原発の事故を教訓に、段階的な廃炉を実施してきた。残る3カ所の原発の取り扱いが焦点になっていた。独メディアが8月に公表した世論調査では稼働の継続を求める声が8割に達した。ショルツ政権は、国民の支持を背景に稼働延長の余地を残した。

メルケル氏から政権を引き継いだショルツ首相は、同氏が率いる中道左派のドイツ社会民主党(SPD)、環境政党の緑の党、産業界に近い自由民主党(FDP)の3党の連立で政権を維持する。FDPは原発の活用に積極的だが、緑の党は否定的だ。ハベック氏は同党の共同党首を務めたことがある。

米国やベルギーでも原発政策の修正が相次ぐ。脱炭素で気候変動対策を進めるほか、ウクライナに侵攻したロシアからの石油や天然ガスへの依存を下げるためだ。

米国のカリフォルニア州議会は1日、25年までの廃炉を計画していた「ディアブロキャニオン原発」の稼働を5年延長するため、総額14億ドル(約2000億円)の救済策を可決した。電力が逼迫するなか、基幹電源(ベースロード)として原発を維持することが得策だと考えた。

米連邦政府のバイデン政権も電力システムを安定させるため、基幹電源としての原発を支援する必要があると判断する。8月に成立した気候変動対策を柱とするインフレ抑制法では、既設の原発に1キロワット時あたり1.5セントの免税措置を設けた。新設する原発への免税措置は同2.5セントに拡大する。

ベルギー政府は3月、25年までに閉鎖する予定だった原発の稼働延長を決めた。運転期間を10年延ばす方針だ。』