エルサルバドル、ビットコイン決済拒否も 通貨名ばかり

エルサルバドル、ビットコイン決済拒否も 通貨名ばかり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240W50U2A820C2000000/

 ※ 結局、「通貨」の要諦は、「信用」だ…。

 ※ だれが、「ドンドン価値が下がっていく(or この先、下がることが見込まれる)通貨」を保有したり、使ったりするかね?

『【サンサルバドル=清水孝輔】中米エルサルバドルで2021年9月7日に世界で初めて法定通貨に採用した暗号資産(仮想通貨)ビットコインの普及が遅れている。国民は従来の法定通貨である米ドルを決済手段として使い続けており、1年たっても多くの店舗がビットコインに対応していない。法定通貨とは名ばかりの実態が浮き彫りになっている。

「ビットコイン?もう使えないわ」。首都サンサルバドル中心部にある携帯電話店。従業員のサンドラ・バケラノ(50)さんはこう言うと、店内の張り紙をはがし始めた。張り紙には「ビットコインで支払えます」と書かれている。法定通貨になったときに受け取りを始めたが、利用者が少ないため数カ月前に対応をやめた。

エルサルバドルの携帯電話店は以前ビットコインの支払いに対応していた(21年12月、首都サンサルバドル)

エルサルバドルは21年9月7日に発効した「ビットコイン法」でビットコインを法定通貨と位置づけた。同法は顧客がビットコインでの支払いを希望した場合、店舗は原則として拒否できないと定めている。税金もビットコインで支払える。従来の法定通貨であるドルと併用している。

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ビットコインを法定通貨にした後も、商品やサービスの価格はドルに基づいている。商品の値札に書いてあるドルの価格は変わらず、決済時の交換レートに応じてビットコインで支払う金額が決まる仕組みだ。例えば1ビットコインが2万ドル(約280万円)のときに1ドルの商品を買うと、スマートフォンアプリを通じて0.00005ビットコインを支払う。

小規模な店舗の多くは1年たってもビットコインの決済に対応していない。法律が義務付けていても、実際には政府が店舗にビットコインの受け取りを強制していないからだ。エルサルバドルのルース・ロペス弁護士は「ビットコインでの支払いを拒否して罰則を受けた事例はない」と指摘する。

エルサルバドル商工会議所が3月に公表したリポートによると、法定通貨になってからビットコインで支払いを受けたのは調査対象の企業の14%にとどまった。全米経済研究所(NBER)による1800世帯を対象とした調査では、税金の支払いにビットコインを使ったのはわずか5%だった。

普及が進まない背景にはビットコイン価格の下落がある。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに乗り出し、ビットコイン価格は足元で2万ドル以下と直近ピークの21年11月に比べて7割落ち込んだ。足元の価格が低迷しているため、高値で買ったビットコインで支払うのは損だという考えが消費者に広がっている。

衣料品店を営むフレディ・ランダべルデさん(45)は受け取ったビットコインをすぐにドルに替えている(首都サンサルバドル)

ビットコインに対応している店側も、急激な価格変動に苦慮している。サンサルバドルで衣料品店を営むフレディ・ランダべルデさん(45)は「ビットコインを受け取ったらすぐにドルに替えている」と話す。法定通貨になる前からビットコインを取り入れてきたビーチでレストランを営むフリオ・マルティネス(40)さんは「ビットコインの場合は20%上乗せした金額をお願いしている」と打ち明ける。

エルサルバドル政府は決済インフラの整備を急いできた。専用のスマートフォンアプリ「チボ」を用意し、ビットコインとドルを両替するためのATMも設置した。政府が1人当たり30ドル相当のビットコインを配ったことで、チボは急速に普及した。ところが多くの国民は30ドルを使い果たすと、アプリから離れていった。

米ドルとビットコインを両替できるATM(首都サンサルバドル)

エルサルバドルは外国に住む出稼ぎ労働者からの送金が国内総生産(GDP)の2割超に相当する。政府は専用アプリを通じてビットコインを送れば手数料や受け取る手間を減らせると訴えてきた。だが同国の中央銀行によると、1~7月には外国からの送金額のうちビットコインの比率は1.7%にとどまった。

エルサルバドルの経済団体ANEPのエグゼクティブ・ディレクター、レオノル・セルバ氏は「ビットコイン法の実態は外交政策だ」と訴える。ブケレ大統領はツイッターでビットコインについて英語で発信し、人口約650万人の小国の国際的な知名度を高めた。法定通貨になった直後は世界各国から新興企業やメディアが相次ぎ調査に訪れた。

空港に飾られたブケレ大統領夫妻の写真

だが、この発信は既存の国際金融の枠組みにおいては通用しなかった。国際通貨基金(IMF)はビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルに反発し、同国が13億ドルの新たな融資を受ける交渉が停滞している。同国は総債務残高がGDPの9割に迫り、米格付け会社は信用格付けをデフォルト(債務不履行)の一歩手前まで引き下げている。

在エルサルバドル日本国大使館の7月時点の試算によると、政府はビットコイン購入で約5900万ドルの含み損を抱えている可能性がある。中米のシンクタンクICEFIのシニアエコノミスト、リカルド・カスタネダ氏は「ビットコインの実験が成功すればブケレ大統領の成果だ。だが失敗すれば犠牲になるのは税金を払う国民だ」と指摘する。

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