ソロモン諸島、すべての軍艦寄港を停止 中国に一層傾斜

ソロモン諸島、すべての軍艦寄港を停止 中国に一層傾斜
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『【シドニー=松本史】ソロモン諸島が中国寄りの姿勢をさらに強めている。8月には米国の巡視船の寄港を認めず、その後にはすべての国に軍艦寄港を見合わせるよう要請したと発表した。米やオーストラリアは専制色を強めるソガバレ首相に懸念を募らせており、外交関係者からは「中国を利する動きが増えている」との声が上がる。

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「巡視船があらかじめ計画していた(首都)ホニアラへの寄港ができなかったことに失望している」。8月30日、在オーストラリア米国大使館は声明でこう述べた。巡視船は違法漁業の取り締まりなどの海上警備作戦に参加するために地域を航行しており、寄港は給油のためだった。

この直後、ソロモンのソガバレ首相も声明を出し、巡視船の寄港を認めなかったことについて「適切な情報が首相府に間に合うように送付されなかった」ことが原因と説明。手続き上の問題だと主張した。そのうえで認可要件の見直しが必要だとして「すべてのパートナー国に軍艦などの寄港延期を要請している」と説明した。

ただ、ソロモンの国会議員で野党党首のマシュー・ウェール氏は巡視船の寄港は「ほとんどの場合、認可は漁業省が対応してきた」と指摘。ソガバレ氏の声明は米国の反発を受けての場当たり的な対応だとの見方を示した。そのうえで「ソガバレ氏が中国の言いなりになる中、米国と豪州に対して非友好的な振る舞いが増えている」と述べた。

8月上旬に開かれた太平洋戦争の慰霊式典には、日米豪の外交関係者が出席する中、ソガバレ氏は欠席した。ある外交関係者は「直前まで同氏が出席する前提で計画が進んでいた」と明かす。中国への配慮から、中国への警戒を強める日米豪の代表との同席を避けたとの見方が出ている。

豪公共放送ABCがソロモンでの中国の影響力拡大を報じた際には、首相府が長文の声明を出した。豪メディアによると、首相府は西側メディアが「中国を封じ込め、反中感情を広めるという自らの利益のためにソロモン国内に分断を作り出している」と批判。過去に記者を国外退去にしたキリバスの例を挙げ、自国もメディアの排除を辞さない姿勢を示した。

ソロモンは2019年、それまで外交関係があった台湾と断交し、中国と国交を結んだ。以降急速に親中姿勢を強め、21年11月にはこうした政府の外交方針に抗議する活動が暴動に発展した。中国系住民の被害が出たことが22年4月の中国・ソロモン間の安全保障協定の締結につながった。

現地では暴動が再発する懸念も出ている。ソロモン議会の任期は4年で、前回総選挙は19年4月だ。そのため次の総選挙は23年前半にも行われる見通しだった。

しかし、ソガバレ氏は23年にソロモンが島しょ国のスポーツの祭典「パシフィック・ゲームズ」の主催国になることを理由に、任期延長を目指す憲法改正案を8月、議会に提出した。専制的な動きを強めるソガバレ氏に対する住民の抗議活動が激しくなる可能性もある。

中国は南太平洋の島国の取り込みを加速している。中国国務院(政府)関税税則委員会は9月1日からソロモンやバヌアツ、キリバスなどの課税対象品目の98%にゼロ関税を適用する方針を示した。農産品などの輸入を増やし、現地での経済的影響力を高める戦略だ。

中国では10月に共産党幹部の人事を決める5年に1度の党大会が開かれる。米国や欧州、日本との関係が悪化する中で、習近平(シー・ジンピン)指導部は南太平洋での影響力拡大を外交成果として誇示したい考えとみられる。』