[FT]中国、不動産主導成長モデルは終わった(社説)

[FT]中国、不動産主導成長モデルは終わった(社説)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB010SH0R00C22A9000000/

 ※ 「(社説)」とあるから、これが「社としての公式見解」だと、考えてよい…。

『少なくとも過去20年間、世界経済をけん引してきた中国の不動産主導の成長モデルが、今急速に崩壊しつつある。これを修復する、あるいは、世界第二の経済大国が不動産に代わる成長エンジンを見つけるには、何年もかかる可能性がある。中国政府が現在直面している政策判断は極めて重要だ。

中国・広東省深?で建設中のマンション=ロイター

まずは、問題の原因を究明する必要がある。表面上は単純に見える。史上最大の不動産ブームが終わり、バブルがはじけたということだ。しかし、より深く分析すると、中国の政治経済システムの核の部分にあるより複雑で厄介な問題が見えてくる。

中国の地方政府は、投資活動の資金を基本的に土地を不動産開発業者に売って調達してきたが、債務が膨らみ、返済や金利の支払いが難しくなってきている。開発業者の資金が枯渇し、土地を購入する意欲がなくなったためだ。20社近くが資金繰りに困窮しており、今年に入ってオフショア債の債務不履行に陥った。

1100兆円の隠れ債務

この力学が連鎖反応を引き起こしている。地方政府が所有するインフラ投資会社である融資平台(LGFV)が全国で数千もあり、規制が行き届かないまま、多額の「隠れ債務」を抱えている。ゴールドマン・サックス証券の推定によると、その総額は2020年末の時点で、国内総生産(GDP)の52%に当たる53兆人民元(約1100兆円)に上るという。中央政府は地方政府に対し、こうした貸借対照表に記録されない債務を一掃するよう求めており、融資平台の活動にブレーキがかかっている。

その結果、今年になって固定資産投資(FAI)が急減している。FAIは、都市近郊の開発や道路、鉄道、港湾の建設、その他のあらゆるインフラ整備の資金源だ。FAIの伸び率は1996~2022年の間は平均17.87%に上ったが、今年の1月から7月の間では5.7%に低下し、経済をけん引する重要な力の1つが失われた。

中国政府は、不動産部門を救済するために公的資金をいくらか投入しているが、問題の抜本解決は厳しい。世界の繁栄に大きく寄与した成長エンジンが過剰債務で止まってしまった今、それを代替するものはあるのだろうか。

個人消費主導経済への転換

明らかな答えが一つある。中国経済は抜本的に、不動産投資へ過度に依存する従来のモデルから、消費者支出がけん引する経済に移行する必要がある。中国では、名目GDPに占める個人消費の比率は昨年末で38.5%にすぎない。米国や欧州連合(EU)で一般的な水準に比べ格段に低い。

従って、中国政府は、今後数年かけて地方政府の過剰債務問題の出口を探るなかで、一般家庭に負荷を掛けてはならない。給与が堅調に増え、管理の行き届いた活気ある金融市場が貯蓄に対し、健全で長期的な利益をもたらす経済を築く必要がある。

加えて、中国政府は、同国の過去40年に渡る異例の経済発展が民間企業の力強い活動によってもたらされてきたことを忘れてはいけない。だが現実には、ネット通販最大手アリババ集団の創始者、馬雲(ジャック・マー)氏が失脚し、代表的な大手民間ハイテク企業の存在感が低下しており、世界は、中国政府が民間企業への支援を後退させていると見ている。

消費者や民間部門の成長を受け入れるよう、経済モデルをシフトするということは、従来の常識に反する考え方の転換が必要になる。権威主義の政府は、自らが管理できる経済手段を志向する。強靱(きょうじん)な公的投資を通じて供給をもたらすことで、支配政党が支配的地位を維持できるためだ。だが、消費者の民主主義志向に応えると支配的な地位を保つことは難しくなる。

中国政府は、経済の転換に備えるべきだ。長く、困難だが、避けられない道だ。そして世界は、40年に渡った中国過剰成長の時代が終わることを覚悟しなければならない。

(2022年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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