孫正義氏のソフトバンクG、巨額損失でビジネスモデルのほころび露呈

孫正義氏のソフトバンクG、巨額損失でビジネスモデルのほころび露呈
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-23/RH1SKNT0G1KW01

 ※ 米中対立の激化も、微妙に影を落としていると思うよ…。

 ※ ITベンチャーが、「業界1位」を獲得して、「巨額の利益」を手中にするというモデルは、「グローバル市場」があればこその話しだ…。

 ※ その肝心の「グローバル」が、「分断」されて「縮小」するんでは、「利益」の「根底」「前提」事態が、崩壊していく…。

 ※ そして、「経済」と「安全保障」が衝突した場合には、必ず「安全保障」に軍配が上がる…。

 ※ 「巨額の利益」もへったくれも、「生命(いのち)」あればこその話しだ…。

『 黎明期にある業界に巨額資金を投じることで支配しようという戦略
孫氏の投資は、ベンチャーキャピタル市場をゆがめた

孫正義氏

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

振り返ってみれば、懐疑的になる理由はあった。ソフトバンクグループのビジョン・ファンドがシリコンバレーのトップベンチャーファンドと肩を並べようとする試みは、極めて積極的な独占資本主義に基づくビジネスモデルだ。

  ウィーワークやウーバー・テクノロジーズ、ドアダッシュなどに巨額の出資を行ってきた孫正義氏の戦略は、こうしたスタートアップが何年にもにわたる赤字に耐えるようにした上で、市場の寡占状態を確立し、長期的利益を得るというものだ。

理論上はそうだが、ソフトバンクGが8日に発表した4-6月期決算は3兆円を超える創業以来最大の赤字となった。この赤字の一部は円安が原因だが、2兆円余りがビジョン・ファンドの損失だった。前四半期も巨額の損失を計上。孫氏は2022年のこれまでの業績により、21年以来の利益を事実上失ったと認めた。

  英半導体設計会社アームや日本の通信事業者ソフトバンクを傘下に置くソフトバンクGは、投資先を減らし全般的に人員を減らす方針だ。孫氏によると、ソフトバンクGは「徹底した守り」に入っている。同社は市場の混乱とバリュエーションバブルの犠牲になったと説明したが、テクノロジーバブルが生じていたとすれば、そうしたバブルを膨らませる上で重要な役割を演じたのは孫氏自身だった。

  孫氏は2016年、ビジョン・ファンドの売り込みをかけるために中東に向かう機上で、300億ドルと計画していたファンドの規模を1000億ドルに拡大。小さく考えるには人生は短か過ぎると側近に語ったという。

単純なアプローチ

  ソフトバンクGは技術革新に関する期待に加え、出資先企業が相互に支え合うという考えに基づく洗練された投資哲学を持っているように振る舞っているが、実際のアプローチはもっと単純で、黎明期にある業界に巨額資金を投じることにより支配しようという戦略だ。17年以降、孫氏は有望と思われる起業家を見つけると、求められる2倍、3倍以上の資金を提供しようと持ちかけた。創業者が言葉を濁すか、交渉しようとすれば、競合他社に投資すると圧力をかけた。

  こうした戦略が、滴滴グローバルやウィーワーク、ウーバーへの巨額投資につながった。ソフトバンクGは17年から18年前半にかけ3社にそれぞれ55億ドル、44億ドル、77億ドルを投資。犬の散歩サービスのワグやビザのロボット配達のズーム、インドのホテルチェーン、オヨなどにも資金を投じた。

  ある意味で、これはビジョン・ファンドが投資を開始したころの標準だった発展戦略の延長上にあった。ペイパル共同創業者のピーター・ティール氏が先駆者であるこの戦略は、インターネット市場は1社によって独占されやすいという考えに基づいていた。それによれば、例えばスターバックスは赤字であっても集客を続ければ独占を確立した際に値上げをし利益を得られることになる。

  こうした論理は、一部のテクノロジー企業が長年の赤字を経て黒字に転じる説明になる。しかしそこには、消費者に悪影響をもたらし最終的に規制当局と衝突するというリスクがあるほか、確固たる経済理論に基づく本物のテクノロジー企業でなければならないという条件がある。
ウィーワーク

  孫氏が誤ったのはここだ。ソフトバンクGのアプローチは、伝統を変革するというだけで、ほぼ利益のない事業に光を当てることだった。配車サービスも食品デリバリーも犬の散歩もピザもそうだし、特にウィーワークで顕著だ。

  孫氏の投資は出資先企業を水膨れさせただけではなく、ベンチャーキャピタル市場をゆがめた。他のベンチャーキャピタルは、多めの資金を集めなければならなくなり、膨らんだバリュエーションでの投資を強いられた。

  亀裂は19年にウィーワークの新規株式公開(IPO)が頓挫した時に始まった。投資家がウィーワークのビジネスに疑念を抱いたためだが、孫氏はさらに95億ドルを投じて同社を救済することで幻影を保とうとした。20年にはテクノロジー株関連のデリバティブ(金融派生商品)に多額の資金を投じ、さらにその市場を支えた。

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  こうした取引が株式市場を刺激する中でビジョン・ファンドの出資先企業によるIPOが進み、21年のビジョン・ファンドの累積利益は500億ドルを超えた。

  だが、ソフトバンクGは今、2四半期連続の記録的赤字を経てウィーワークなど不採算企業を切り離そうとしている。ビジョン・ファンド出資先企業の公開株を買った投資家は劇的な損失を被った。20年に株式公開した食料品配送のドアダッシュは21年のピークから70%余り下落。孫氏はそのころにドアダッシュ株約20億ドル相当を売却していた。オープンドア・テクノロジーズは昨年前半に比べ約85%値下がりしている。

孫氏のライバル

  孫氏も投資に関する反省を示し決算発表時にはより選択的な投資を約束した。長くビジョン・ファンドを率いてきたラジーブ・ミスラ氏がもはやファンドの主要な投資決定を行わないとも発表。ビジョンは変わらないが、向こう見ずにそれを追求すれば大きな損失もあり得ると孫氏は述べ、コントロールしていく必要性に触れた。

  一方、ベンチャーキャピタリストのチャマス・パリハピティヤ氏はソフトンバンクGの決算発表後に孫氏を擁護。「巨額資金を活用するのは容易ではなく、孫氏はそれを行った」とたたえた。オープンドアのIPOを可能にした特別買収目的会社(SPAC)の支援者である同氏が孫氏の側に立つのは驚くに当たらないが、SPAC市場も現在は低迷している。

  とはいえ、孫氏が自身のビジネスモデルから遠ざかろうとしているにもかかわらず、同氏のライバルはまい進気味だ。ソフトバンクGの損失発表後、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツはウィーワークを創業したアダム・ニューマン氏の新たな不動産事業に3億5000万ドルを投じると発表した。

原題:SoftBank’s Losses Reveal Masayoshi Son’s Broken Business Model(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載) 』