ジャクソンホール会議で見せたパウエル議長の決意

ジャクソンホール会議で見せたパウエル議長の決意 : 机上空間
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『26日(現地時間)、アメリカの景勝地であるジャクソンホールで、世界主要国の金融関係者が集結する会議が行われました。通称ジャクソンホール会議です。参加するのは、各国の金融政策担当者、中央銀行総裁、経済学者など、金融界の政策決定権を持つオールスターチームです。

あくまでも、シンポジウムであり、ここで何か政策が決まるわけではないのですが、何しろ各国で実権を持つ金融政策担当者が集い、世界中のマスコミが集結するので、過去に胸の中にしまっておいた事を、講演している時に、ポロッと言ってしまう事が起きています。

一度、このブログでも言及した事のある1970年代にFRB議長を努めていたポール・ボルカー氏が、当時、今のアメリカ以上のインフレ14%越えを退治する為に、20%の政策金利引き上げで、ガチ対決して、強制的に終了させた事があります。実は、ジャクソンホール会議が、開催場所を、ここに定めた理由の一つとして、強気のインフレ対策を提唱していたポール・ボルカー氏を、会議に招聘する為に、渓流釣りの名所として知られていたジャクソンホールで開催する事にしたという実話があります。基軸通貨の政策金利決定権を持っている彼の参加なしに、会議を開いても実のあるものにならないのは明白だったからです。ボルカー氏の趣味が渓流釣りだったんですね。

その時のポールボルカー氏の言葉ですが、「インフレは自己増殖している。より安定した生産的な経済に戻すには、インフレ期待の支配を、ほどかねばならない」という、どちらかと言うと、将軍が敵国を叩くような力強い言葉で、インフレ退治を宣言しています。この言葉の言い回しは、少し迂遠なんですが、簡単に言うと、「皆がインフレが長期化しそうと考えると、実際にそうなってしまう。短期で徹底的にインフレの芽を潰す対策が重要だ。インフレは、経済に係わる全ての人々から共通して冨を奪う」という事です。

実際、この会議中で起きた事は、世界経済に大きな影響を過去に与えています。2010年の会議では、当時のFRB議長であったバーナンキ氏が、アメリカ経済立て直しの為に、金融市場に大量のドルを供給する金融緩和をやる事を示唆しました。この時、日本は円高に苦しんでいたので、会議に参加していた白河日銀総裁が、予定を早めて急遽帰国し、追加の金融緩和を指示して、円高阻止に動きました。しかし、努力のかいなく、会議後に5円も円高ドル安になっています。

2014年の会議では、当時のヨーロッパ中央銀行総裁のドラギ氏が、一段の金融緩和を示唆。実際に、会議の翌月の理事会で政策金利の引き下げを決定しました。というように、故意にしろ、うっかりにしろ、ジャクソンホール会議で話す言葉は、爆弾級に世界経済を動かします。

今年は、どうだったかと言うと、現在のFRB議長のパウエル氏が、インフレを抑え込むまで、金融引き締めの手を緩めないという決意を語った為、タカ派的発言と解釈されて、ニューヨークダウは、1000ドル越えの暴落、ドル円の為替レートは、再び円安ドル高の基調に復帰し、先日つけた139円/ドルを越えて、140円を目指す動きを見せています。つまり、「経済を犠牲にしてでも、インフレは退治するべき最優先事項である」と宣言したようなものだからです。相変わらず「9月の会議では、7月、8月の各種経済指標を慎重に検討しながら」という予防線は張りましたけどね。

そもそも、今年に入ってからのアメリカのインフレは、現FRB議長のパウエル氏の読み間違えに大きな要因があるという批判があるので、会議開催前から、少なくてもインフレに対して、強い発言があるだろうという予想は出ていました。どこまで、踏み込んだ表現をするかが問題だったのですが、少なくても最近の経済指標で、高止まりしているものの、予想よりインフレが弱くなったという傾向が、金融引き締めに、大して影響しない事は、十分に感じられる内容でした。つまり、インフレ退治が最優先という事です。まあ、ボルカー氏ほど明確ではありませんが、パウエル氏の言葉の中に、金融引き締めを緩めるという傾向を見つけるのは難しいです。

このブログで何度も言っているように、経済は生き物なので、予想は困難です。現時点での判断でありますが、一時期的に反発していたアメリカの株価は、再び下落トレンドに入り、ドル安は再び進行する可能性が高いです。安易に「底打ちした」とか判断していた方は、傷が浅いうちに対策をうったほうが良いでしょう。実際にインフレが起きている社会に住めば、それが深刻な問題である事は、肌身で感じます。「経済を犠牲にしてでも、インフレを退治する」は、単なるリップサービスでも、なんでもなく、その通りの意味です。それだけ、その国の経済にとって癌だという事です。』