アフリカ諸国、実利求める等距離外交 ロシアも軍事協力

アフリカ諸国、実利求める等距離外交 ロシアも軍事協力
アフリカ 逆風下のフロンティア㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR17BXY0X10C22A8000000/

『人口増加と技術革新を追い風とするアフリカに、世界の注目が集まっている。米欧や中国、ロシアといった大国が関係強化を競い、現地発の新興企業に投資マネーが流入する。世界の外交や投資におけるアフリカの存在感は高まる一方、食糧不足や貧困などの課題もなお根深い。

アフリカの人口は14億人から2050年に25億人に膨らみ、世界の4分の1を占めると国連は推計する。鉱物資源が豊富なうえ原子力技術などの市場としても有望だ。28日に閉幕した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)では、岸田文雄首相が日本とアフリカは「ともに成長するパートナー」だと強調。関係強化を訴えた。

だが、実際は大規模な干ばつやウクライナ侵攻で食糧危機が深刻化したこともあり、実利を求めるアフリカの軸は欧米日の「西側」からロシア・中国へと一段と傾きかねない状況にある。

「マリの主権を尊重するパートナーシップを称賛する」。10日、西アフリカのマリで昨年クーデターを主導した暫定大統領ゴイタ大佐は、ロシアのプーチン大統領と食糧や燃料支援について電話協議し、協力を歓迎した。

旧宗主国フランスが駐留仏軍の完全撤収を発表したのは15日。マリの「乗り換え」先とされるのがロシアの民間軍事会社ワグネルだ。

ロシア軍の「別動隊」と呼ばれるワグネルの雇い兵はスーダンや中央アフリカで強権的な指導者を支えてきた。見返りに資源権益を握ったとの見方は絶えない。アルジェリアやアンゴラではロシアが最大の武器供給国だ。多くの国は小麦や肥料もロシアに輸入の大半を頼る。

アフリカ諸国は歴史的には欧州の旧宗主国と関係が深かったが、近年は中国がインフラへの投融資など豊富な資金力をテコに存在感を強めてきた。ロシアも軍事協力や食糧供給で食い込む。中ロは経済面だけでなく、国際舞台で欧米と対抗するうえでもこの地域を戦略的に重要とみなしている。

アフリカへの輸出額では中国が首位を独走する。近年はトルコ企業の進出も建設業を中心に活発だ。20世紀まで広大な植民地を支配した英国やフランスの影響力は、相対的に薄れている。

中国やロシアの台頭は、権威主義的で腐敗した政権との関係強化をいとわないことも一因になっている。人権問題や民主主義で注文を付ける欧米は多くのアフリカ指導者の目には煙たく映る。

一方で不透明とされる援助を続ける中ロは、腐敗体質の政権には歓迎すべき存在になっている。アフリカ諸国の独立後も現地の利権を握り続けた旧宗主国への反発も根強い。

ロシアの影響力はウクライナ侵攻後の外交舞台で一層あらわになった。ロシアに対しウクライナからの即時撤退を求めた3月の国連決議で、アフリカの半分にあたる計26カ国が反対・棄権・不参加に回った。アフリカの国連加盟国は54カ国と全体の3割に迫る。その一大勢力が同様に棄権した中国と歩調を合わせ、ロシアに制裁を科す米欧日との温度差を明確にした。

「アフリカは(米欧・中ロの)対立から距離を置く」。ウガンダのムセベニ大統領が3月に日本経済新聞に語った言葉は、アフリカの指導者の多くを代弁する。アフリカ連合(AU)議長のセネガルのサル大統領は6月にロシアを訪れ、穀物輸出再開を求めた。輸入代金の支払いを阻むとして対ロ制裁には冷ややかだ。

8月上旬、南アフリカを訪れたブリンケン米国務長官はアフリカを「対等なパートナー」と呼んだ。このままではアフリカ諸国が米欧から離れていくとの危機感がにじんだ。直前にロシアのラブロフ外相はアフリカ4カ国を巡り、食糧危機は「米欧の制裁のせいだ」と訴えていた。

日本とアフリカの関係も心もとない。日本はアフリカへの政府開発援助(ODA)で長い実績があり、支出総額ベースで20億ドル(約2800億円)前後と先進国で米独英仏に続く5位を保つ。だがビジネス面ではつながりを深められないままだ。

日本からアフリカへの輸出額は21年に約100億ドルと中国の10分の1、トルコの半分だ。直接投資残高は国連貿易開発会議(UNCTAD)がまとめた上位10位に日本は出てこない。英仏や米国、中国はおろかシンガポールにも及ばないのが実態だ。』