新首都「ヌサンタラ」のインフラ整備にまたもや手を挙げて参入の構え

新首都「ヌサンタラ」のインフラ整備にまたもや手を挙げて参入の構え

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)8月29日(月曜日)
        通巻第7444号 
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 インドネシア新幹線を日本から横取りした中国が工事をそっちのけに
  新首都「ヌサンタラ」のインフラ整備にまたもや手を挙げて参入の構え
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 インドネシア新幹線は第一期工事がジャカルタ~バンドン間の142キロ。中国が日本から横取りして2019年に完成予定だった。工事着工から7年が経過した。
現在の状況? 二割の工事予定区間で土地の整備が進んだ程度、完成は絶望的と見られる。ジャカルタ~バンドンは高速バスが30分毎にでており、また従来線の鉄道もあるので、もし完成しても利用客は期待するほどではないだろう。筆者はこの区間を従来線鉄道で旅したことがあるが、列車はがらがら、ともかくよく揺れた。

 インドネシア新幹線プロジェクトは、もともと日本が2012年に一年以上をかけて予定沿線すべてを測量士、土地の資質や、河には高架橋梁の必要性、トンネル工事予定地の調査などを済ませ「フィージビリティスタディ」をインドネシア政府に提出していた。総工費63億ドルと見積もられた。

 ウィドド大統領はにこにこ顔で来日し、インドネシア新幹線の建設協力に前向きだった安倍晋三首相(当時)と会談、その足で北京へ向かった。
逆転は習近平との会談直後に起きた。
 
 2015年9月、インドネシアは中国に新幹線工事を発注し、日本の関係者は驚いた。中国のオファーした総工費は55億ドルだった。2022年現在、工事費は四割増となり、すでに中国は建設資材、機材を運び込んだ。工事の遅れはコロナで労働者が帰国したためなどと言い訳されたが、それ以前から工事現場では動きが止まっていた。
 これが中国の遣り方で、納入済みの建設資材、建材などはちゃっかりと代金を回収し、儲けをはじき出している。

 中国との契約は対外機密となっており、契約内容は公開されていない。しかし過去の「実績」を見れば、すぐに了解できることがある。
 マレーシアは中国主導の新幹線プロジェクトを止めるとした。ところが、契約ではキャンセルにともなう違約金が工事費ほど高いため、クアラルンプール周辺に限定した部分的な工事をせざるを得なくなった。

 スリランカのコロンボ港近代化工事でもラジャパクサ政権をひきついだシリセナ政権がキャンセルを言うと、違約金が工事費に匹敵することがわかり、しぶしぶプロジェクトを継続している。
その後、またもラジャパクサ政権が復活し、こんどはコロンボ沖に人工島を建設して南アジアのドバイのような国際金融都市にするとした。人工島の埋め立て工事だけは出来たが、そのままとなった。ラジャパクサ三兄弟はスリランカから逃げ出した。

 世界で中国の「一帯一路」が絡む多くのプロジェクトには同様なことがおこり、ニカラグア運河はとりやめ、パキスタンのグアダール港も事実上取りやめとなって、カラチに移転した。
 また当初の予算はかならず途中で値上げになり、たとえばケニア鉄道は三倍、モルディブの病院は費用が2・6倍となった(JBプレス、22年4月11日)。
 まさしく「無用の長物」をおしつけ、カネが返せないと分かると担保物権を取り上げる。パキスタンで、スリランカのハンバントタで、ジブチで。。。

 ▲ウィドド大統領のレガシーは新首都建設だが、日本はつきあいきれない

 インドネシアの新首都はカリマンタン島の「ヌサンタラ」が移転先と決まり、2022年3月、正式にプロジェクトは動き出した。2045年完成予定、総工費は4・3兆円(このうちインドネシア政府は20%負担)。
 新幹線で懲りている日本は、新都心プロジェクトに関心が薄く、参入を期待されたソフトバンクも正式に「見送り」を表明している。

 ところが、ヌサンタラ予定地から700キロ北に「グリーン工業団地」を造成し、付近に水力発電所を建設中の中国が、この新都市プロジェクトのインフラ建設に参入すると言い出した。ウィドド訪問で、韓国、台湾は建設協力を前向きに検討するとしたが、一番近い豪政府は専門情報の提供のみにとどめている。日本企業は2024年の大統領選挙の結果待ちである。
というのもプロジェクトは沙汰止みの可能性があると踏んでいるからだ。
 
 とくにインドネシアに近い豪政府は6月にアルバジーニー首相が、豪財界ならびにウォン外相、ファレル貿易相らを率いてジャカルタを訪問し、洪水対策は港湾開発などに3・4億ドルを支援するとした。環境、気象などの開発に集中するが、新首都プロジェクトへの協力には言葉を濁した。そのうえ、豪訪問団は首都移転先視察をパスしてエネルギー基地があるマカッサルへ向かった。

 カリマンタン島というのはジャワ島、バリ島など1万7000の諸島からなるインドネシアで弐番目に広い面積を誇る。別名ボルネオ島。北西部がマレーシアとブルネイ、南東部(島の三分の二)がインドネシア領で、パリクパパン、サマリンダ、バンジャマシンなど中規模な都市がある。
新都市ヌサンタラは、密林地帯、極めてアクセスの悪い場所が選ばれた。途端に周辺の土地が数倍に値上がりした。
 
 ロシアが石炭鉱山かのタタイバットからパリクパパン(200キロ)の鉄道建設を言い出したことがあった。カリマンタン特産の石炭を奥地から港湾へ運べる輸送ルートが開けるとインドネシアをぬか喜びさせたが、2020年、ロシアは唐突に白紙に戻した。政治的揺さぶりが目的だったと言われた。

 ヌサンタラ(インドネシア語で群島の意味)の位置はバンジャマシンとサマリンダの間の密林地帯で、高速道路も鉄道もない。なぜこのような辺境に?
 
 カリマンタンの東側は、凸凹道を往くかローカル線の飛行機で行き来する。実際に著者は2019年にバンジャマシンとパリクパパンンを取材しているが、当時はスワラシ島のマカッサルも候補とされていたので、マカッサルにも足を伸ばしたことがある。
 凄く不便な地理であり、この首都移転プロジェクト、本当に実現するのかと訝った。

 ▲家康は江戸の建設に半世紀をかけた

 秀吉の命令で板東へ左遷された家康は、むしろこの危機をチャンスととらえ、新都市江戸の建設を決意した。当時の江戸城は掘っ立て小屋、日比谷も銀座も海だった。地質の悪い湿地帯の開墾、埋め立ては難儀をきわめ、とくに留意したのは飲み水の確保だった。

 だが、建設思想をもち、将来の政治都市は京からはなれているほうが良いと判断した家康は、不退転の決断を継続させ、そのための資金を捻出し、労働力は全国の大名から動員し、当時の世界最大の都市を半世紀の歳月をかけて構築した。

 習近平もレガシー造りを思いついた。北京の人口爆発に悲鳴を上げてのことだが、さて、河北省で建設中の北京新都心「雄安新区」はどうなったのか。この新都心は習近平の看板プロジェクトである。

 雄安新区は、2035年完成予定。総工費32兆円、人口200万の新都として、社会科学院など政府機関を強制的に移転し、新幹線も繋ぐ計画だ。なにしろ習近平の肝いりだから、道路は拡張されて、砂利トラ、ダンプカーがうなりを上げて驀進し、クレーンもフル回転していた。

 武漢肺炎が工事の進捗をとめた。プロジェクトは頓挫しているが、習近平の威光を損なうことになるので、公表はしない。

□☆□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□   』