中国、最新駆逐艦5隻を建造へ 海軍増強で台湾に圧力

中国、最新駆逐艦5隻を建造へ 海軍増強で台湾に圧力
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『【大連=渡辺伸、北京=羽田野主】中国が海軍の増強を加速している。東北部の遼寧省大連市で5隻の最新型ミサイル駆逐艦を建造していることがわかった。習近平(シー・ジンピン)指導部は武力による台湾統一も視野に軍備を拡張している。台湾や沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で軍事的な圧力が強まるのは必至だ。

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中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」で8月下旬、大連で建造中という5隻の写真がユーザーから投稿された。

中国共産党系メディアの環球時報(英語版)などは「中国海軍が052D型の駆逐艦5隻を大連で建造中だ」と伝えた。香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは「5隻は052D型、もしくはこれを改良した052DL型の駆逐艦のようだ」と報じた。

日本経済新聞が入手した8月下旬に撮影された写真によると、中国の造船最大手、中国船舶集団(CSSC)の大連の造船所に5隻の船体が置かれ、作業員が建造作業中だった。このうち2隻は船体がほぼ完成し、甲板で作業が行われていた。

欧州の海軍専門メディア、ネイバルニュースによると、上海市にあるCSSC系列の江南造船も少なくとも1隻の駆逐艦を建造中という。同メディアは「(合計で6隻が)まもなく中国海軍に加わる」との見通しを伝えた。中国海軍は一連の建造計画を発表していない。

ネイバルによると、中国は現在、052D型と052DL型合わせて25隻の駆逐艦を就役させている。他の型を含め2019年に10隻、21年に8隻の駆逐艦を投入した。

中国の052D型は、米国のイージス艦を模して建造した「052C型」を刷新した最新鋭の駆逐艦だ。防空能力が高く、空母の護衛に当たることができる。米国は11の空母打撃群を保有しており、それぞれの空母を複数のイージス艦や潜水艦が護衛している。
中国の国産空母「山東」(7月上旬、遼寧省大連市)=撮影者から入手

習指導部が台湾統一に向けて軍事侵攻に踏みきった場合、現在保有する3隻の空母を投入するシナリオが有力視されている。052D型などの駆逐艦が空母の護衛にあたる可能性がある。

052D型の垂直発射装置(VLS)は巡航ミサイルの搭載も可能だ。空母を守る防御力だけではなく、台湾本島への精密な攻撃能力も備えている。防衛省防衛研究所の門間理良地域研究部長は「台湾軍は中国大陸や軍用機から発射される各種ミサイル攻撃に加えて、多方向の海上からの攻撃に備えなくてはならない。台湾の負担はさらに増すことになる」と指摘する。

中国が空母そのものを増やす可能性もある。米シンクタンクの戦略予算評価センターは7月のリポートで「中国は31年までに空母を5隻、巡洋艦と駆逐艦を60隻以上保有できる十分な資金を確保できるだろう」と推計した。

中国は6月に新たな空母「福建」を進水させ、ウクライナから購入して改修した「遼寧」と初の国産空母「山東」と合わせて3隻体制とした。関係者によると、山東は3月下旬から7月にかけて大連の造船所で補修・点検を実施し、再び配備された。

米インド太平洋軍の推計によると、25年には極東における米中の軍事バランスが完全に逆転し、その差が開く見通しだ。今回確認された急ピッチの駆逐艦の建造は、こうした推計の正しさを裏付ける。

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