インドネシア首都移転、中国が関与強化に意欲

インドネシア首都移転、中国が関与強化に意欲
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『【ジャカルタ=地曳航也】インドネシアのジョコ政権が進めるジャカルタからの首都移転に中国が関与を強めようとしている。インドネシア側は資金力と技術力に期待する一方、中国が新首都周辺の基幹インフラに大きな影響力を及ぼす可能性もある。日本政府などからは安全保障上の懸念も出始めた。

インドネシアでは議会が1月に首都移転の法案を可決し、ジャカルタから約2000キロ離れたカリマンタン(ボルネオ)島東部の森林地帯に新首都「ヌサンタラ」を建設しようと計画している。

ジョコ大統領は16日の年次教書演説で新首都の建設について「失速させてはならない。新たな経済の推進力になる」と強調した。自身の任期が終わる2024年中に大統領宮殿など一部の政府機関をジャカルタから移したい方針で、先頭に立って取り組みを進めている。

焦点は466兆ルピア(約4兆3000億円)と見積もった費用の予算不足だ。国費でまかなうのは2割のみで、残りは外国を中心に民間企業の投資を想定している。

ジョコ氏は7月下旬、日中韓3カ国を相次いで訪れ首脳会談で新首都建設への支援を要請した。中国政府系の英字紙チャイナ・デイリーによると、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談で、習氏は「進んで積極的な役割を果たす」と伝えた。

インドネシア投資省によると、アラブ首長国連邦(UAE)、中国、韓国、台湾が支援を表明したが、とりわけ資金と技術をあわせ持つ中国に期待が集まる。

中国はすでに新首都周辺のインフラ整備で実績をあげる。新首都予定地から北に約700キロメートル離れた「北カリマンタン・グリーン工業団地」では、中国国有の中国電力建設集団の支援を受け国内で最大規模の水力発電所の建設が進む。同発電所からは新首都にも電力が供給される予定だ。

習氏は7月下旬のジョコ氏との会談で同団地への支援強化も約束した。習氏が首都移転と団地整備への協力に言及したのは初めてとみられ、中国企業の協力が今後、一気に進む可能性がある。

ジョコ氏の側近のルフット海事・投資担当調整相は8日放送の番組で「(中国通信機器最大手の)華為技術(ファーウェイ)には関心を持っている」と述べ、同社による新首都での設備投資に期待感を示した。

米国と中国が覇権を争うインド太平洋地域の中心にあるインドネシアの新首都で、中国が基幹インフラに影響力を及ぼしかねない事態に、日本政府内に懸念が広がる。特に通信分野への中国の進出に警戒は強い。日本政府関係者は「大規模なインフラ整備で中国企業の総合的な競争力にかなわない」と語る。

インドネシア内でも通信設備については「IT分野で先行する中国企業が情報インフラを押さえれば盗聴のリスクが生じる」(政府系機関のインドネシア科学院のアワニ上級研究員)との指摘が出ている。

日本政府は国際協力機構(JICA)から情報収集のため調査員を現地に派遣し、民間投資の環境整備を進める。米国やオーストラリアなど有志国の政府関係者との意見交換も始まった。

日本企業では首都移転計画が頓挫する事態を警戒し、24年2月の同国大統領選まで静観する例も多い。』