国策でEVを推進した中国の夏

国策でEVを推進した中国の夏 : 机上空間
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『中国は、工業化に力を入れて富国強兵を推進した結果、他の国がたどってきたような順当な社会の発展ではなく、テクノロジー・ジャンプという発展の仕方をしました。判りやすく単純化して言うと、昔の中国の映像でみた人々が自転車で、広い道いっぱいに通勤する様子から、今のEV車が走り回る社会に変化し、現金決済から、スマホによる電子決済が当たり前になったわけです。実際、中国の都市部では、財布を持ち歩く必要が無いくらい、電子決済が進んでいます。

未だに現金決済が一般的な日本と較べて、進んでいると言えるわけですが、EVも電子決済も、常に電気の供給が途切れないのが前提で成り立つシステムです。それが担保されていれば、便利ですが、停電すると、一気に麻痺してしまいます。EVは充電スタンドから使用不能になり、広域停電なら家庭のコンセントからも充電できません。電子決済は、まったく役立たずになってしまいます。

中国は、国策としてEVの推進を進めました。その理由は、ガソリン内燃機関の車では、国際競争に勝つ事ができないからです。中国で自動車を作っている会社はありますが、殆どが外資との合弁会社であり、技術供与を受けている上、多くの場合エンジンは、まるごと提供を受けています。つまり、自身で設計して作る事のできない部品です。初期の燃費や排ガス基準を考えずに、動けば良いだけのエンジンなら作る事は可能でしょうが、特に自家用車での競争に耐えうる水準のエンジンは、数える程の国でしか製造できません。

その為、世界的に地球環境問題で、ガソリン車からEVへの転換が起きているのを機会にして、ガソリン車で追いつく手を捨てて、EVで世界の市場を取る道を選んだのです。その為には、EVで市場を埋め尽くして、まず自国の市場からガソリン車を締め出す必要がありました。自動車の一大消費国である中国で、EVのシェアが伸びて、ガソリン車が廃れれば、世界市場に影響が出ますし、すでにヨーロッパは、全てEVに転換する事を宣言しています。

しかし、ここのところのエネルギー問題や、異常気象で、そもそもの命綱である電気の供給が頻繁に止まるという問題が噴出しています。20年くらい前にも、中国の停電問題というのは、注目されたのですが、これは単純に発電所の数が、急激な社会発展による需要の増加に間に合わずに起きた事で、不便はあるものの、経済発展を示す喜ばしい兆候でした。

今回の停電は、日照りの渇水による水力発電所の出力低下、石炭・天然ガスの不足による火力発電所の出力低下による、広範囲に及ぶ停電が原因です。つまり、建造済みのインフラを稼働する事ができない事で停電になっています。中国は誘致に影響が出るので、外資の工場だけは、電気を止めないという政策を取っているのですが、無い袖は振れぬで、今回の停電では、中国のトヨタの工場も停電しています。

また、電子決済が不可能になったり、EVの充電が不可能になったり、地味に恐ろしいのが、高層ビルのエレベーターが止まる事です。仕事をしにオフィスに行くのに、階段で何十回も昇る事になります。そして、ビルは全館空調ですから、建物内全ての空調が止まります。そもそも、ビルの窓は開ける事ができず、換気もできないので、記録的な猛暑が続く中で仕事をする事になります。そもそも、電気が供給されていないと、仕事ができるかも怪しいです。

今年の中国は、全国的な干ばつで、国内最大の淡水湖である鄱陽湖は、水量が33%にまで低下し、湖底が露出して、草がはえて、草原のようになっています。また、本来ならボートで渡る、湖に浮かぶ島に建設された寺へ歩いて渡れます。最大の河川のある長江も、水量の低下で川底が露出しており、川を利用して行っている水運が、水深の低下で甚大な被害を受けています。長江は川と言っても、日本のスケールでは無い、大陸の川なので、海を航行するような大型船も普通に通っています。なので、内陸のど真ん中に大きな港があります。それが、水深が足らない為に機能が制限されています。

内燃機関を止めて電気にしようと、まるで、それが正義であるかのように、環境保護団体が世界中で暴れていますが、電気が止まった時に、社会がどうなるか、ちゃんと考えてモノを言っているのでしょうか。その電気を作るエネルギーは、結局、貧しい産油国から、札束で頬を叩いて、買い集めてきたものでしょう。そして、買い占めた側は、最後まで困らないかも知れませんが、値段が高騰しすぎて、入札にも参加できない発展途上国は、毎日のように停電するわけです。そんな国が石炭火力発電所を作ろうとすると、まるで大罪を犯す罪人のように口汚く罵る。まともな議論が成り立っていません。

いくらCO2排出が比較的少ない天然ガス火力発電所でも、EVの普及で爆増する電気需要を賄おうとするなら、ガンガン発電所を建設して、大量にガスを燃やす事になります。この状態で、原子力発電所も止めようとか言っているのですから、頭が狂っているとしか思えません。確かに、目の前で排気ガスが出るのを見る事は無いでしょうが、僻地に建てられた発電所からは、今までの何倍ものCO2が排出される事になります。

電気が止まった時、社会生活が根こそぎ破壊されないか考える時期に入っています。何がなんでも、電化で丸投げして良い時代が、自ら課した数々の制限の中で、持続可能なのか考えるべきだと思います。そうしないと、エネルギーを確保する為に戦争を起こす国が、必ず出てきます。』