韓国、対中貿易28年ぶり赤字 「経済依存逆転」の衝撃

韓国、対中貿易28年ぶり赤字 「経済依存逆転」の衝撃
国交30年 岐路の中韓㊦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2122H0R20C22A8000000/

『中国と韓国の経済関係が転機を迎えている。韓国側の統計によると、輸出主導型の韓国経済の「お得意様」だった中国に対して28年ぶりに貿易赤字となり、韓国では対中依存からの「逆流現象」として驚きが広がる。一方、中国企業は韓国企業の買収攻勢を強めており、米中対立の先鋭化を受けて韓国を米国市場攻略の足場とする戦略が動き始めた。

「乗用車の組み立て工場は休止状態で、中国企業への売却交渉を進めている」。中国内陸部、重慶市にある韓国・現代自動車の合弁工場を訪れると、管理担当者は打ち明けた。

現代自は重慶市で2017年に年産30万台の組み立て工場などを稼働したが、中国勢の台頭で販売不振に陥った。英LMCオートモーティブによると、現代自の中国乗用車販売台数は1~6月で前年同期比4割減の15万台。一時は10%近いシェアで2位を占めたが、足元は2%を下回り10位以下に低迷する。

スマートフォンや家電も中国市場で苦戦している。かつて首位だったサムスン電子のスマホのシェアは1%未満に落ち込み、19年に中国内でのスマホ生産から撤退した。LG電子のテレビもシェアが一時は5%を超えたが、足元は0.1%。韓国企業の中国市場での失速が足元の貿易赤字にもつながっている。

韓国貿易協会によると、5月の対中貿易収支は11億ドル(約1500億円)の赤字で、1994年8月以来となる約28年ぶりの貿易赤字となった。6月、7月ともに赤字続き。韓国にとって中国は最大の貿易相手国で、韓国企業の「お得意様」だったが、物の流れが逆転する「逆流現象」が始まったとの受け止めが広がる。

同協会傘下の国際貿易通商研究院は「対中貿易赤字診断」とのタイトルでリポートを作成した。「中国の景気鈍化、コロナ対策による生産活動の停滞で中間財の輸出が低迷した」などと分析した。しかし、中国では「韓国企業の失速と中国企業の躍進を反映する」との見方も広がる。

「米国市場向けの輸出拠点として活用するための出資だ」。中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団が5月に発表した仏自動車大手ルノーの韓国グループ会社「ルノーコリア自動車」への34%の出資について、吉利の関係者は解説する。

吉利はルノーコリアでハイブリッド車を生産し、米韓自由貿易協定(FTA)を活用して米国に輸出することを検討しているとされる。米アルファベットの子会社で自動運転技術の開発を手掛ける米ウェイモの自動運転タクシー向けの電気自動車(EV)生産拠点の候補にも挙がる。

中国の杉杉(シャンシャン)グループはLG化学の液晶パネル用の偏光板事業を買収した。海外事業の拡大も目的だ。近年は中国政府の旗振りで、中国の投資ファンドや有力企業が積極的に半導体関連を中心にハイテク分野の韓国企業の買収や出資に向けて物色を続けているという。

韓国企業を狙う中国企業の思惑が実現するのか。米当局の不承認などで頓挫するケースも出ているが、同様に日本企業の買収をテコに世界戦略を描く中国企業も少なくない。中韓企業の動きは、日中ビジネスの今後を占う試金石にもなる。(重慶=多部田俊輔、ソウル=細川幸太郎)』