分断の世界、岐路に立つアフリカ支援

分断の世界、岐路に立つアフリカ支援
TICAD27日開幕(日経・FT共同特集)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE15AHV0V10C22A8000000/

 ※ 『農家は自給自足の生活をなかなか抜け出せない。種子、肥料、収穫増の技術に関する知識が足りないからだ。』…。

 ※ そうは言うが、そもそも、「気候」(気温、降水量)というものがある…。

 ※ それが、何万年、何千年と積み重なって、「土壌」に反映されるんだ…。

 ※ そういう「自然のありよう」を、たかだか「数十年」の「農業技術」で、「変革」しようとするのは、難しい…。

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農業の生産性、向上急務

マダガスカル南部の農家、モンジャ氏は、カラカラに乾いた畑から痩せたサツマイモを引き抜くと「もっと雨が降ればよく育つのに」とため息をついた。ほとんど育っていないトウモロコシにはもはや期待していない。

アフリカの大半の小農と同じく、モンジャ氏は農業用水を降雨に頼る。妻や2人の子どもと暮らす同氏の家計は逼迫している。マダガスカル南部は厳しい干ばつに襲われている。飢えが広がり、モンジャ氏の一家も牛のえさだったサボテンの葉を食べるようになった。
アフリカには耕作面積が2ヘクタール以下の小農が数千万人いる。「アフリカの角」と呼ばれる大陸東端やサハラ砂漠南部も深刻な食料難に陥っている。

干ばつがマダガスカルの農家を苦しめる=FT

農家は自給自足の生活をなかなか抜け出せない。種子、肥料、収穫増の技術に関する知識が足りないからだ。

知識があっても余分に生産しようとしない農家は多い。輸出は言うに及ばず、国内都市への出荷に必要なしっかりとした輸送路や公正な価格決定の仕組みすらも存在しないためだ。

耕作規模が小さいので、融資を受けても機械化や灌漑(かんがい)は検討できない。気まぐれな雨に農業用水を頼る。降雨パターンは一段と予想が難しくなっていると、専門家は指摘する。

結果として生産性は向上しない。人口1人あたりの農業従事者がほかの大陸より多いのに、食料は輸入が輸出を上回る。食料価格の高騰で輸入金額はさらに膨らみそうだ。農家が貧しいままなので、国の成長も困難だ。

エコノミストらは、1960年代以降の日本などアジア諸国の高い成長の基盤には農業の生産性向上があったと考える。

アジア諸国の成長要因を分析したジョー・スタッドウェル氏は、自家消費を超える量の作物を生産したことが発展につながったと指摘する。

輸出に回せば農家も外貨を稼げる。銀行に預金すれば、ほかの産業への融資に回る。この好循環はアフリカ諸国の大半で機能していない。

アフリカ各国は一貫性のある農業政策をなかなか策定できない。いくつかの国は政治面で影響力の低い農家の生活向上よりも、不安定になりがちな都市住民をなだめるため食料への補助金を維持する。多くの国の政府は農家の種子や肥料確保、農村での道路建設などへの資金拠出に消極的だ。

こうした長期の課題に加え、小麦を輸入に依存する国では目先、ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料危機をいかに克服するかに関心が向く。ナイジェリアでは7月、パン職人がストライキを起こした。ケニアでは、食料価格の高騰の話題でもちきりだ。

アフリカ輸出入銀行のチーフエコノミスト、ヒポライト・フォーファック氏は、今回の危機が農業の改善を促す可能性を指摘する。「西アフリカではキビ、キャッサバなどを小麦の代わりに活用する。こうした代替作物の収穫量は短期間で大きく増やせる」

同氏は肥料も国内調達を増やせると話す。ナイジェリアでは2022年、天然ガスから最大で年300万トンの尿素やアンモニアを生産する新工場が稼働を始めたという。

(デイビッド・ピリング)

ODA、対中ロで重み増す

政府開発援助(ODA)をはじめ日本のアフリカ支援が新たな局面に差し掛かっている。日本は世界に先駆けてアフリカ開発会議(TICAD)を創設し、インフラなどの整備を手助けしてきた。ウクライナ侵攻を受けて中国やロシアとの競争という役割の重みが増してきた。

4月に開かれた国連の特別会合。ロシアの人権理事会の理事国の資格を停止する採決にあたり、日本の外務省の担当者は目を疑った。

ロシアの資格停止を巡って93カ国が賛成したものの24カ国が反対し、58カ国が棄権に回った。このうち反対9と棄権24はアフリカだった。

会合に参加しなかった11カ国を加えると54カ国のうち44カ国が決議の賛成を見送った。

当時、日米欧は相次いでロシアへの経済制裁に踏み切り、世界に「ロシア包囲網」を形成しようと動いていた。

それでも中国やインドは制裁の網をかいくぐってロシアの原油を買い支える。アフリカでもロシアと結びつきが強い点が浮き彫りとなり、日本政府は衝撃を受けた。

その背後には中国の存在があった。中国は2013年から18年に「アフリカ地域へ年平均でおよそ30億ドルの援助をした」との推計がある。同じ時期の日本のアフリカ向けODAの2倍ほどに相当する規模だ。

1993年から紡いできたアフリカ戦略をどうすべきか。ODAの効果は乏しいのか。

日本政府はTICAD8を前に戦略の再検討を迫られ、アフリカ向けの新たな融資のしくみの検討に入った。

熟慮の末に出した解は、いわゆる「債務のワナ」に陥りかねない国に手を差し出すことだ。中国からの融資を再検討することを条件に資金を供与し、中国の影響力の切り崩しを狙う。

中国は2018年末時点で世界51カ国で最大の資金の貸し手になった。圧倒的な影響力を持つように思えるが、サブサハラ地域の実情をみると中国への不信はむしろ高まりつつある。
8月のケニア大統領選でも中国の債務問題が争点の一つになった。

ここ数十年の時間軸でみれば日本はアフリカ支援のフロントランナーともいえる。93年に首脳級の枠組みとしてTICADを立ち上げた。

中国と欧州連合(EU)は追随した側だ。2000年にそれぞれが中国・アフリカ協力フォーラム、いまのEU・AUサミットをつくった。米国とロシアも14年と19年に支援の会合を設けた。

日本にはこの間、ODAを通じて道路や港湾の整備のほか巡視船の供与などの案件を積み重ねた実績がある。足元では伸び悩みに直面しているものの企業進出にも一定の結果が出ている。

創設から30年近くがたったいま、環境の変化に応じて戦略も変わる。

TICAD創設時には日本が外交目標に掲げていた国連常任理事国入りの手段という意味合いが大きかった。豊富な資源や市場の将来性に着目していた面もあった。

ウクライナ侵攻後の世界で目立つのは米欧側でも中ロ側でもない「中間国」だ。実利重視の国々をどう引き寄せるか。支援の形も変革を迫られている。

(重田俊介)』