「最後の市場」アフリカ、成長の条件を探る

「最後の市場」アフリカ、成長の条件を探る
TICAD27日開幕(日経・FT共同特集)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD03AW40T00C22A8000000/

『第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が27日、チュニジアで開幕する。将来性が期待されてきたアフリカに今、新型コロナウイルス禍や食料危機、地球温暖化など新たな難題が襲う。テクノロジーも活用しながら、経済・社会両面で世界と日本は「最後の市場」にどう向き合うべきか展望した。

人口爆発、活力か重荷か

2075年、世界最大級のメガシティーになるのは東京でもニューヨークでもない。トロント大学の推計によるとキンシャサやラゴス、ダルエスサラームとアフリカの都市が並ぶ。

人口は世界で曲がり角にある。多くの地域で少子高齢化が進み、都市の人口の多さでも75年に東京は13位、ニューヨークは15位に順位を落とす。中国の上海や北京はトップ20から姿を消し、代わりにアフリカ7都市が入ってくる。

世界が人口減に向かうなかでもアフリカは右肩上がりの人口爆発を続ける。国連の最新の推計に基づけば50年時点で人口は現在の1.7倍の24億8500万人、75年に2.4倍の33億6200万人に達する。

人口の多さだけでなく若さもアフリカの特徴といえる。年上と年下の世代が同数となる中央年齢は日本は49歳、英国は40歳。これに対しアフリカは19歳だ。消費への意欲が大きく豊富な労働力にもつながる若年層の厚みは「老いる世界」のなかで存在感を放つ。

日本をはじめアジアのかつての高成長を支えたのは生産年齢人口(15~64歳)の爆発的な増加だ。製造業を中心に経済が活発になり、その世代の貯蓄が投資を通じ需要をさらに拡大させる。こんな好循環があった。

アフリカの潜在力の高さは誰もが認めるところでもアジア型の成長軌道をたどるかどうか。懐疑的な見方は根強い。

例えば南アフリカには、通学・就業せず職業訓練も受けていないニートが15~24歳で380万人いる。この世代の37%を占める。

海上輸送を含め物流が非効率なアフリカでは製造業などの立地が進まず、教育にも課題を抱える。人口増のペースに雇用が追いつかなければ、失業や貧困、教育などの問題は深刻さが増し、成長の重荷にもなり得る。

「話題になるのは不法移民だが、成長にとって深刻なのは合法的な移民のほうだ」。チュニジアのベンアベス元国務長官(米国・アジア担当)は語る。IT(情報技術)エンジニアや医師らが高い給与や処遇を求め、欧米に移住するケースが後を絶たない。

新興国には世帯あたりの年間可処分所得が5000ドル(約67万円)を超えると、冷蔵庫や洗濯機などの保有率が一気に上がる法則がある。

それでもサブサハラ(サハラ砂漠以南)では人口の4割が1日1.9ドル以下で暮らす貧困層だ。「頭脳」の流出を止めながら所得底上げの道も同時に探らなければ、成長のけん引役となる中間層は育ちにくい。

亜細亜大学の大泉啓一郎教授は「都市の競争力が成長のカギを握る」と話す。人口増を見込んだ都市開発がアフリカ各地で進み、付加価値の高いデジタルサービスも広がりつつある。IT産業に従事する中間層の存在は新たな好循環の担い手として期待される。

日本は「人づくり」をアフリカ支援の柱に掲げてきた。留学生の受け入れや職業訓練を通じて人材を育て、日本企業による投資拡大の環境を整える狙いからだ。食料危機など課題の克服とあわせ、人口増を成長につなげる息の長い取り組みが一層欠かせない。

(編集委員 下田敏)

複合危機のアフリカ、日本外交の好機に JICA理事長

国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長は、食料危機や気候変動などに直面するアフリカに強い連帯を示すことが「将来の日本外交の視野を広げることになる」と強調した。チュニジアで開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)にあわせ日本経済新聞社とのインタビューに答えた。

JICAの田中明彦理事長
新型コロナウイルスの感染拡大や干ばつなどの気候変動、ウクライナ紛争に伴う食料不安が重なり、脆弱なアフリカ経済に深刻な影響が及んでいる。

田中氏は「少子高齢化で高成長が見込めない日本にとってはできるだけ多くの国と友好関係を築くのが外交上の課題だ。これらの複合危機に見舞われるアフリカにどう対処するのかを示すTICADは重要な機会になると考える」と語った。

アフリカ経済のレジリエンス(強じん性)を高めるためには人材育成や技術支援、民間企業の投資拡大が求められるとした。「複合危機を乗り越えれば、アフリカ54カ国のうち20カ国ほどはかなりの成長を見込めるだろう。次の危機に備え、オーナーシップ(自主性)を持つアフリカの自助努力を日本が支える必要がある」と述べた。

1993年から始まったTICADプロセスは30年目の節目を迎える。当初は政府開発援助(ODA)によるインフラ開発が中心だったが、最近は技術支援や人材育成などのソフト面が拡大していると指摘。整理・整頓の徹底や作業のムダを排除するカイゼン運動や、農業の生産性向上で成果が出ていると強調した。

ODAについては「役割がなくなったわけではない。紛争などで成長が遅れている国もあり、民間企業が進出できるところばかりではない。ODAで経済発展を担保する必要がある」と述べた。

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