中国が円を売る日 幻の日中「国債持ち合い」

中国が円を売る日 幻の日中「国債持ち合い」
経済部長 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA232OP0T20C22A8000000/

 ※ なるほど、「中国が、日本国債をどれくらい保有するつもりなのか。」ということも、日本の金融政策に影響を与える「ファクター(要素)」の一つなのか…。

 ※ 次の視点は、「その要素が、どれくらい”円高(or 円安)”に影響を与え得るのか」ということだな…。

 ※ そういう「影響度」を、「定量的」に判定できる「方程式」みたいなものは、確立されているのだろうか…。

 ※ 最近読んだ「地政学」の文献に、「国力の方程式」というものが載っていた…。

 ※ 『クラインの方程式は、次のとおりである。

 国力=((基本指標:人口+領土)+経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)

  (注)国家意思=戦略目的を遂行する意思』…、というものだ。

『いま振り返れば、日本と中国の金融協力が最もうまくいっていた時期かもしれない。

「円高が加速する局面では、日本国債への投資を減らす」。10年前の2012年3月、中国人民銀行(中央銀行)の易綱副総裁(現総裁)は記者会見でこう語った。

いまと違い、日本経済が1ドル=80円前後の超円高にもがいていたときである。

欧州の債務危機でユーロの先行きが懸念され、円に買いが集まっていた。中国も日本国債への投資を増やしているのではないか。そんな観測が絶えないなかで、易氏の発言は飛び出した。

円高を抑えたい日本にとって助け舟になったのは言うまでもない。「日本側は中国からの投資が多すぎ、円相場の上昇につながることを非常に心配している」。易氏はこう述べ、日本に配慮する姿勢をにじませた。

伏線は、3カ月前の11年12月に訪中した当時の野田佳彦首相と、中国の温家宝首相が合意した「国債の持ち合い」にあった。

中国では外国当局が国債を買う場合、人民銀の許可を取らなければならない。中国側が日本に中国国債の購入を認め、日中それぞれが互いの国債を保有する。そんな枠組みは両国の金融協力が新たな段階に入る象徴となるはずだった。

十年一昔である。

日本による中国国債の購入は12年9月の尖閣諸島の国有化で暗礁に乗り上げ、いまだ実現していない。今年9月の国交正常化50周年を前に日中は互いに不信を募らせ、国債の持ち合いを再び前に進めようという機運はない。

ペロシ米下院議長が8月初めに台湾を訪問し、それに怒った中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。中国軍が発射したミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内にも落ち、日中間にはかつてない緊張が漂う。

秋葉剛男国家安全保障局長と中国外交トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員は17日、中国の天津で7時間にわたって会談した。

岸田文雄首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席の首脳対話も議題になったもようだが、実現へのハードルは高い。5年に一度の共産党大会を秋に控える習氏は、米国と歩調を合わせて台湾への関与を強める日本に弱腰を見せられない。

10年前と変わらないのは、中国がなお日本国債を買っているとみられる点だ。21年末の保有額はおよそ24兆円で、前年に比べ5割増えた。

米中対立が激しさを増すなか、中国はドルに偏った外貨準備の運用先を他の通貨に振り分けている。中国からみて、日本国債は有力な選択肢の一つだ。

日本の普通国債の発行残高は1000兆円の大台に迫る。国債の安定消化を考えれば、中国を含む買い手の裾野が広がるのは必ずしも悪い話ではない。

だが、中国にとって日本国債の保有は、日本に圧力をかける手段にもなり得る。実際、10年に尖閣沖で海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件が起きたときは、中国政府内から「日本国債を買い増し、円高に誘導すべきだ」との声が公然と上がった。

いまなら、中国は日本国債の売却をちらつかせるだけで、急激な円安を誘えるだろう。国債の持ち合いで合意した10年前と違って、中国が日本に配慮する理由は見あたらない。

巨額の借金は日本の「弱点」に映る。中国に隙を見せないためにも、財政がいま以上に悪化するのを防ぐ努力が欠かせない。
経済部長(経済・社会保障グループ長) 高橋哲史
大蔵省(現・財務省)を振り出しに霞が関の経済官庁や首相官邸、自民党、日銀などを取材。中国に返還される前の香港での2年間を含め、計10年以上に及ぶ中華圏での駐在経験をもつ。2017年4月からは中国総局長として北京を拠点に中国の変化を報じ、21年4月に帰国した。
日本経済新聞 経済・社会保障Twitter https://twitter.com/nikkei_keizai
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

一般的に金融協力といえば、金融の安定を図るために、助け合う行為。東アジアのスワップ協定はその一例。しかし、日中の間では、ほんとうの金融協力がほとんど行われていない。かつて、中国経済と金融が弱かった時代、中国の金融関係者は日本に来て、不良債権の処理などについて学んでいたが、中国経済は日本を追い抜いてから、彼らはもっぱらウォール街をみている。今、米中対立が激化しているから、一時的に日本にアプローチしている
2022年8月25日 8:37 』