緊迫の台湾海峡 本当に日本は国民を守れるのか

緊迫の台湾海峡 本当に日本は国民を守れるのか
勝股秀通 (日本大学危機管理学部教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27695

 ※ 与那国島なんての「辺境の地の住民」なんかは、「眼中」に無いんだろう…。

 ※ 天下国家を論じている気になっている連中は、「霞が関」周辺の住人だからな…。
 ※ 江戸の昔なら、「お城(江戸城)」の周辺の各大名の「拝領屋敷」の住人だ…。東大赤門自体が、加賀前田藩の藩邸跡地のものだからな…。

 ※ 御一新で、「新政府」になっても、「皇居」はそのまま「江戸城」を引き継いだから、「構図」は何ら変わっていない…。

 ※ 京都の人たちが、「お上は、いつ御所に戻られますか?」なんて、のたまっても、実現するわけが無い…。

 ※ 江戸時代260数年の間に、五街道を整備し、日本国の物流のために各所の港湾も整備した…。

 ※ そういう骨格は、何ら変わっていない…。

 ※ そういうヤツらが、与那国島の事情なんてものを知っているわけが無いし、その心情を理解できるハズも無い…。

 ※ 「世間の木鐸」気取っている「マスコミ人士」も、ご同様だ…。

『「我々は国に見放された」――。これは1996年3月、台湾初の総統選挙を巡って、中台間で軍事的緊張が高まった第3次台湾海峡危機に際し、当時、日本最西端の沖縄・与那国島の町長であった尾辻吉兼氏(故人)が、筆者のインタビュー取材に対し、真っ先に発した言葉だった。空には中国軍機が飛び回り、目と鼻の先の海にはミサイルが撃ち込まれた。「国境の守りは、国の守りそのものではないのか」との思いから、尾辻氏は町議時代、何度も政府に島への自衛隊誘致を陳情してきたからだ。

緊迫した台湾情勢が続く中、日本は自国を守ることができるのか(ロイター/アフロ)

 それから20年後の2016年、与那国島に初の自衛隊部隊である陸上自衛隊沿岸監視隊(隊員160人)が配備された。そして今回、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問で緊迫化した台湾情勢に即応するように、自衛隊は護衛艦や哨戒機などを出動させ、米軍と連携しながら周辺海空域の警戒監視にあたった。

 20年前と比べ、国境の守りに対する政府の意識が変わったのは確かだ。だが現状で、本当に国民を守ることができるのだろうか。そして、私たちは「国から見捨てられていない」と言えるのだろうか――。ペロシ訪台に反発する中国の激しい軍事演習、ロシアによるウクライナ侵略から、それらの疑問を検証することが本稿の目的である。

「衝撃と畏怖」ではじまる現代戦

 8月4日に始まった中国の軍事演習。台湾を包囲するように6カ所の演習海空域が設定され、中国軍は福建省などの基地から、DF-16などの弾道ミサイルを次々と発射させ、多連装ロケットランチャーからは、台湾本島を直撃できる射程500キロメートルのロケット弾を続けざまに撃ち出す映像がテレビで公開された。

 防衛省によると、発射を確認した弾道ミサイルは9発(台湾は11発と公表)で、台北市上空などを飛翔しながら台湾東部の海域に着弾、このうちの5発が沖縄・波照間島や与那国島近くに広がる日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。弾道ミサイルやロケット弾の発射に続き、5日以降は連日、中国空軍の戦闘機や爆撃機など30機以上が、台湾の基地や空港など重要施設への攻撃を想定したとみられる訓練を実施した。

 これら演習で見せた攻撃の流れを、ロシアのウクライナ侵略と重ね合わせてみる。

 侵略初日の2月24日、ロシア軍は首都キーウ(旧キエフ)を含む複数の都市に対し、ミサイル攻撃を敢行、標的としたのは、ウクライナの軍事施設のほか、集合住宅や病院、学校などだ。国連によると、侵略から1カ月、原子力発電所への砲撃を含めロシア軍の非人道的かつ無差別攻撃は激しさを増し、医療施設だけでも43カ所が攻撃され、子ども90人を含む1035人の民間人が死亡したという。しかし、これは確認できた数字であり、実際の犠牲者数は、3~5倍に達すると指摘している。

 実は、米英軍が2003年に行ったイラク戦争でも、開戦初頭の段階で、米英軍はフセイン大統領(当時)やその親族を含むイラク指導者層の所在地と、イラク軍の指揮・通信機能だけを標的にミサイル攻撃と空爆を集中、わずか3週間でイラク政権を崩壊させている。

 敵の弱点を集中的に攻撃し、相手の度肝を抜く――。これは20世紀前半の英国人戦略家リデル・ハートが、敵の戦力そのものをせん滅するのではなく、心理的な衝撃、つまりショックを与えることを目的とした「間接アプローチ戦略」を唱えたのに通じる手法だ。まさに、ミサイルなどの精密誘導兵器を中心とする現代戦は、中国の軍事演習やウクライナ侵略からわかるように、狙った標的に対する「衝撃と畏怖」そのものだ。』

『高まるサイバー攻撃と「認知戦」

 ペロシ訪台の直前に公表された2022(令和4)年版『防衛白書』では、台湾側の分析として、中国による台湾侵攻のシナリオが初めて記載された。中国は演習名目で軍を中国沿岸に集結させ、偽情報を流布させる「認知戦」を行使し、台湾民衆のパニックを引き起こした後、ミサイルの発射とサイバー攻撃で重要施設を攻撃するという流れが示されている。

 まさに今回の軍事演習は、分析通りのことが行われていた。台湾総督府によると、公的機関に対するサイバー攻撃は、過去最多だった時の23倍という膨大な規模の攻撃が確認され、攻撃に使われたIPアドレス(ネット上の住所)は、中国やロシアが多かったという。8月5日付けの読売新聞によると、台湾外交部(外務省)や国防部(国防省)のウェブサイトが一時ダウンしたほか、市民に身近なコンビニエンスストアの電光掲示板が至る所で乗っ取られ、「ペロシは台湾から出ていけ」という文字が表示されたと伝えている。

 これらの事実から日本が導き出さなければならない教訓は、ミサイル攻撃とサイバー攻撃に対する強固な防衛体制の構築であることは明らかだ。併せて、ミサイル攻撃から国民を守るシェルターの設置など、国民の避難や保護を円滑に実行できる体制を早急に整えることにほかならない。

迷走するミサイル防衛

 北朝鮮の核とミサイル開発への備えとして、日本は04年に弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備を開始した。日本を標的に飛翔する弾道ミサイルを、洋上のイージス艦がSM3ミサイルを発射し、大気圏外の宇宙空間で迎撃、撃ち漏らした場合は、地上に配備するPAC3ミサイルが破壊するという2段階の防衛システムだ。

 しかしその後、北朝鮮がミサイル発射を繰り返すようになり、虎の子のイージス艦がミサイルを待ち受けるだけの〝砲台〟となってしまったため、政府は17年、同じ能力を持つ「イージス・アショア」、いわゆる陸上配備型イージスの導入を決め、24時間365日連続したミサイル防衛体制の確立を目指してきた。ミサイル対応に専従する海上自衛隊の負担を減らし、イージス艦を機動的に運用するのが目的だったが、20年6月、異変が起きた。

 当時の河野太郎防衛相が突如、イージス・アショアの配備停止を決定したからだ。迎撃ミサイルを発射した後に、燃え尽きたブースター(ミサイルの推進装置・重量約200キログラム)が発射地周辺の住宅地に落下する恐れがあり、これを防ぐにはミサイルの改修に2000億円の巨費と10年の歳月が必要だというのが理由だった。

 だが、迎撃ミサイルを発射する事態とは、ミサイルが日本に着弾する恐れがある時だ。弾頭に核兵器が積まれていれば、広島と長崎に続く第三の被爆地が現実のものとなる国家危機にもかかわらず、極めて限定的な住民被害が優先されるとは……。説明に耳を疑ったが、計画中止の口実に過ぎないことも明らかだった。

 なぜなら、ブースターの落下が理由であれば、改修など不要な発射適地を探せばいいだけだ。沿岸の埋め立ても可能だ。何より住民被害を理由にするなら、地上配備のPAC3ミサイルも同じだからだ。

 結局、代替地を探すこともせず、半年後の20年12月、イージス・アショアに代えて、イージスシステムを搭載する2隻の艦船を建造することが閣議決定されてしまった。ミサイル防衛が迷走しはじめたと言っていい。

 理由はいくつかある。安価な弾道ミサイルを超がつくほど高価なミサイルで迎撃する費用対効果の視点がその一つ。加えて「弾道ミサイルを待ち受けるだけでいいのか」と安倍晋三首相(当時)は、ミサイル防衛そのものを白紙的に再検討することを指示していたからだ。』

『陸上イージスの再検討も俎上に

 ミサイル防衛の白紙的再検討――。その延長線上で長射程ミサイルの保有など、かつて敵基地攻撃能力と呼ばれた〝反撃能力〟についての検討が進んでいる。

 だが、イージス・アショア導入を決めた大きな理由は、海自の負担軽減だったはずだ。少子化で自衛官への新規応募は減り続け、そのうえ海自の水上艦勤務は不人気職種の代表格だ。新たに建造する2隻の艦の運用をどうやりくりするつもりなのだろうか。

 最近の北朝鮮のミサイル実験でも明らかなように、ミサイル技術は高度化し、旧来のBMDシステムだけで守れないのは事実だ。日本が衛星や電磁波など使って迎撃能力を高め、同時に反撃能力を向上させておくことは必須である。

 だが、台湾有事を考えれば、中国が保有し、日本を射程内とする1600発に上る短・中距離弾道ミサイルの脅威への備えは別だ。まさしく、今そこにある危機だからだ。

 政府が白紙的に再検討してきたのであれば、その内容を国民に説明するのは当然だが、中国と北朝鮮、ロシアというミサイル強国と対峙し続ける日本が、安定して運用可能なミサイル防衛として、陸上イージスの再検討も選択肢の俎上に載せるべきではないだろうか。
サイバー攻撃できない足かせ

 ロシアは2月、サイバー攻撃でウクライナの変電所に被害を与えた後で軍事侵略に着手し、中国の8月の軍事演習でも、演習開始前に台湾総督府や国防部、各地のコンビニなどへのサイバー攻撃が仕掛けられていた。「次の戦争はサイバー空間から始まる」との指摘は、もはや常識であり、武力攻撃前の平時の対応こそ重要なはずだが、日本にはさまざまな足かせがあって、ほぼ何もできないのが現状だ。

 最大の足かせは「専守防衛」という呪縛だ。敵国からのサイバー攻撃を「武力攻撃」と認定できるまで、自衛隊はサイバー攻撃ができない。しかも、政府が反撃可能な事例としているのは、①原子力発電所の炉心溶融(メルトダウン)、②航空機の墜落、③人口密集地の上流にあるダム放水――の3事例だ。これではミサイルや空爆などによる被害と同じような物理的損害を受けるまで手も足も出せないということだ。

 その上、憲法21条「通信の秘密の保護」により、自衛隊であっても、攻撃元のサーバーに侵入しようとすれば、「不正アクセス禁止法」に抵触する可能性があり、ウイルスを作成すれば刑法の「不正指令電磁的記録罪」(ウイルス作成罪)に問われる恐れがある。

 18年末に閣議決定された「防衛計画の大綱」で、自衛隊が敵からのサイバー攻撃を「妨げる能力」を持つことが明記され、サイバー防衛隊は22年3月、540人規模に拡充された。サイバー攻撃専門部隊が約3万人という中国や北朝鮮の約6800人と比較されるが、これだけの足かせがあっては、単に人を増やせばいいという問題ではない。

 米国では、サイバー軍が軍事システムだけでなく、国家の重要インフラのシステム防護を担っており、日常的に他国のシステムを監視し、米国へのサイバー攻撃を探知した途端に反撃できる体制を取っている。それでもサイバー攻撃を防ぎきることは難しいという。
 これに倣えば、日本は急ぎ、「専守防衛」では対処できない現実を認め、サイバー攻撃への備えを根本から見直す必要がある。最も重要なことは、相手のサーバーに入り込んで発信源を突き止めることであり、平時から自衛隊に国家の重要インフラ防護に関わらせることを含め、国会は立法府としての責任を果たさなければならない。』

『避難場所整備のため「被害見積り」を公表せよ

 ロシアのウクライナ侵略以降、ミサイル攻撃に備えて避難できる場所として、地下鉄の駅舎などを指定する自治体が相次いでいる。6月1日現在、大阪市や仙台市、東京都など409の地下鉄駅が指定され、地下街などを含めれば全国で436カ所に上っている。昨年末に比べ、数字の上では3倍以上と急増しているが、安全性は「?」だ。

 なぜなら、ウクライナの首都キーウの地下鉄では、市民1万5000人が1カ月以上も避難生活を続けていることが報じられたが、それは第2次世界大戦後、駅の通路やホームなどを100メートルの深さに設けるなど、「核シェルター」として整備してきたからだ。それに比べ、国内で最も深い駅は都営大江戸線「六本木駅」の42メートルで、各自治体が指定している地下鉄駅の多くは深さ20~30メートルほどしかない。

 そもそも国民保護法に基づき、全国の自治体が指定する避難施設は約10万カ所に上るが、そのうち地下施設は増えたといっても2000カ所にも満たない。しかも、台湾有事が勃発すれば、戦域内となる沖縄・南西諸島の島々には地下施設はほぼゼロだ。

 政府は25年度末までに、鉄筋コンクリートの構造物などで造られた強固な緊急避難施設を増やす方針だが、その前に防衛省は、弾道ミサイル攻撃による被害見積りを公表すべきだろう。弾頭に核兵器が積まれていた場合と通常兵器の場合とでは、被害に極端な違いはあるが、ミサイル攻撃による被害見積りが公表されなければ、必要な避難施設の数や構造について議論することも、効果的な住民避難の訓練すらできないと思うからだ。

 ウクライナ侵略でロシアは核の使用を示唆し、中国が保有する弾道ミサイルの多くは核兵器の搭載が可能だ。こうした現実を前に、遠方に避難することができない島国の日本において、政府が国民を守るために、避難場所を地下に確保することは必須なはずだ。

 迷走するミサイル防衛と足かせだらけのサイバー攻撃、そしてシェルターなき国民保護。列挙した通り、いずれも問題は山積している。政治の不作為で現状が放置される限り、国民はすでに見捨てられているといったら言い過ぎだろうか。

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