ウクライナ侵攻半年、砲撃は南部2州が4割超 衛星分析

ウクライナ侵攻半年、砲撃は南部2州が4割超 衛星分析
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『ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して24日で半年がたつ。ウクライナ側が奪還を急ぐ南部で戦闘が激化、米航空宇宙局(NASA)の衛星データによると南部2州が爆撃や砲撃の4割超を占める。戦火はロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島にも広がった。戦局は消耗戦の様相を深めている。

衛星データを使い、地表面の温度が常温よりも明らかに高温の「熱異常」を調べることで、爆撃や砲撃の標的となっている地域を検証した。

侵攻直後の3月は首都キーウ(キエフ)周辺に集中していたが、7月以降は検知地点がロシアが制圧を狙う東部ドネツク州やウクライナが奪還を目指す南部のザポロジエ、ヘルソン州などに移った。2州が全体の4割超を占めており、戦闘の激化を裏付ける。

9日以降、ロシア軍施設の爆発が相次いでいるのが南部クリミア半島だ。16日には弾薬庫で、20日には黒海艦隊の司令部で爆発が起きた。ウクライナは公式には攻撃を認めていないが、補給混乱などを狙い破壊工作を強めているとみられる。
ロシア軍は住宅など生活インフラを破壊し続けている(22日、ウクライナ南部ニコポリ)=AP

ゼレンスキー大統領は占領された地域が残ったままでは停戦には応じない構えだ。ウクライナ政府は23日、クリミア返還を目指す国際協力の枠組み「クリミア・プラットフォーム」の首脳会議をオンラインで開いた。演説したゼレンスキー氏は「ロシアの侵略との戦いに勝利し、クリミアを占領から解放することが必要だ」と強調した。

岸田文雄首相は「侵略は欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ」とロシアを非難、ウクライナ支援を続けるとのビデオメッセージを寄せた。

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はロシアによるクリミアの「違法な併合は決して認めない」と述べた。ドイツのショルツ首相はウクライナの復興会議を10月に開催する方針を示した。「国際社会はウクライナの長期にわたる復興に積極的に携わるべきだ」と連帯を呼びかけた。

24日はウクライナが1991年にソ連からの独立を宣言した記念日に当たる。ロシア軍が攻撃を激化させる恐れがあるとして、北東部ハリコフ州が23日夜から25日朝にかけて住民の外出を禁じるなど各地で警戒が高まる。

欧州最大級のザポロジエ原子力発電所周辺では8月に入り砲撃が相次ぎ、放射性物質が漏れ出るリスクが高まっている。国際原子力機関(IAEA)は調査団派遣へロシアやウクライナと協議するが、両国は現地入りの経路を巡って対立する。
ザポロジエ原発では重大な事故が起きる懸念が強まっている(22日)=ロイター

ウクライナ軍は米国から提供された射程が長い高機動ロケット砲システム「ハイマース」を有効活用し、前線の後方に位置するロシア軍の弾薬庫などを相次ぎ破壊。東部での進軍を食い止めている。南部では攻勢を強めるが、主要都市ヘルソンなどの奪還には至っていない。一方が優位に戦局を動かすのが難しい状況で、膠着状態が続く。

クリミアへの攻撃継続などでロシアが劣勢と判断すれば、大量破壊兵器の使用に踏み切る可能性もある。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4日「欧州は第2次世界大戦後以降で最も危険な状況だ」と指摘した。

国際平和研究所(ウィーン)のハインツ・ゲルトナー氏(安全保障専門)は「ウクライナ軍、ロシア軍ともに一方的に優位になることは予想しにくい」と指摘する。戦争が終結に向かうシナリオとして①戦闘の長期化でロシアが弱体化する②ウクライナの領土が分割される③ウクライナが「中立化」する――の3つを挙げた。

エネルギーをロシアに依存してきた欧州では、経済面の影響の大きさから戦争継続への支持が必ずしも高いわけではない。

欧州外交評議会が6月に発表した欧州10カ国の8000人を対象にした世論調査では、ウクライナが領土を失ってでも早期に停戦すべきだとした「和平派」が35%、たとえ戦争が長期化してもロシアに代償を支払わせるべきだとした「正義派」が22%だった。

イタリアやドイツ、フランスなど主要国では和平派が圧倒的に多い。記録的なインフレなどに直面し、ウクライナに寄り添う余裕がないと感じる市民が増えている。

(ウィーン=細川倫太郎、並木亮)

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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別の視点

ハインツ・ゲルトナー氏とは一緒に仕事をしたこともありますが、根っからの中立論者です。オーストリアが生きてきた道に自信と誇りを持っているのだと思いますが、オーストリアとウクライナとでは置かれた地政学的状況が全く異なります。また、ドイツで「和平派が圧倒的に多い」というのはどこの世論調査か不明ですが、「エネルギー価格の高騰にもかかわらず、ウクライナを支持するべきですか」というZDF局のPolitbarometerという調査では、8月は71%が「はい」と答えています。支持が半分に達しなかったのは極右と極左だけで、緑の党の支持者に至っては、95%が「はい」と答えています。
2022年8月24日 2:54 (2022年8月24日 7:20更新)』