ウクライナ侵攻半年 避難民延べ1700万人、死者3万人も

ウクライナ侵攻半年 避難民延べ1700万人、死者3万人も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB212UB0R20C22A8000000/ 

 ※ 今日は、こんなところで…。

『ウクライナ侵攻
2022年8月24日 2:00 [有料会員限定]
破壊された学校近くを歩く男性(22日、東部ドネツク州)=ロイター

ロシアによる半年間の侵攻で、ウクライナ国内は大きな被害を受け、国際情勢は一変した。ウクライナからの避難民は国内外で延べ1700万人にのぼり、全人口の3人に1人超となった。両軍の兵士や民間人の死者は3万人規模、負傷者も合わせれば10万人に達したもようだ。今後も第2次世界大戦後の欧州で「最大の危機」が続く。

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ウクライナ軍のザルジニー総司令官は22日、2月の侵攻開始以降で約9000人の同国兵が死亡したと明らかにした。自国の兵士の犠牲者数を公にするのは異例で、ウクライナ政府高官は1万人ほどと6月に発言していた。

ロシアも自国の死者数公表を控え、双方が相手軍に甚大な被害を与えたと主張している。米国はロシア兵の死者が1万5000人ほど、負傷者とあわせると7万~8万人に及ぶとみている。

民間人の被害も拡大している。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は22日、ウクライナ国内の民間人死者が21日までに5587人と発表。両軍兵士の死者数と単純に合わせると、3万人規模になる。

これは、わずか半年でソ連崩壊前後のアルメニアとアゼルバイジャンによるナゴルノカラバフ紛争(1988~94年)に匹敵する死者が出た計算になる。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(92~95年)の「推定20万人以上」に並ぶペースだ。

ウクライナでは南東部マリウポリの地元当局が同市だけで2万人超が死亡したと説明しており、死者数はさらに多い可能性もある。終戦や停戦の動きはなく、欧州は第2次大戦後で最大級の危機に直面し続けている。

避難を余儀なくされた国民も多い。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、侵攻後に延べ1115万人がウクライナを出国した。「第2次大戦後の欧州で最も速いペース」で隣国ポーランドなどに避難民が押し寄せた。国際移住機関(IOM)の調べでは国内避難民も人口の15%にあたる664万人(7月時点)を数える。

首都キーウ(キエフ)から4月にウィーンに避難したヤロスラフ・オメルチェンコさんは「安全になったら帰りたい」と話す。地元の東部ドネツク州には親戚や友人が残り「砲撃のしらせを聞く度に心配でたまらない」。ワルシャワに逃れた西部出身の女性も徴兵された息子を案じ再会する日を待ちわびる。
ミサイル攻撃で破壊された住宅で救出活動にあたる隊員ら(17日、ハリコフ)=ロイター

避難民の多くが経済的な苦境に直面し、危険を覚悟して故郷に戻るか、避難先にとどまるかの選択を迫られている。IOMによると、国内外から帰還した避難民は550万人。国内の避難民については6割が失業しており、元の場所に戻る要因となっている。

経済面でも「消耗戦」の様相は深まる。国際通貨基金(IMF)は2022年の実質国内総生産(GDP)がウクライナで前年比35%減、ロシアで同6%減と予測する。ウクライナでは21年のGDPの半分に匹敵する1104億ドル(約15兆1000億円)のインフラが被害を受けた。政府は復興に100兆円ほどかかると見積もる。

各国・地域からのウクライナへの支援の継続も焦点となる。

ドイツのキール世界経済研究所によると、8月3日までに表明されたウクライナへの支援は総額842億ユーロ(約11兆5000億円)。4割が軍事で、7月にドイツやフランス、イタリアなど欧州主要国からの大きな支援表明はなかった。同研究所は「新たな支援の流れは枯渇している」と指摘した。

ロシアも経済的な疲弊を隠せない。今回の侵攻に伴い日米欧などは9000以上(米民間調査会社調べ)の制裁を科した。ロシア事業の撤退や停止、縮小を決めた外国企業は1000を超えた。

それでもプーチン政権は強気な姿勢を崩していない。

戦闘継続に加え、南部ヘルソンなど占領地域でのパスポートの発給や通貨ルーブルの流通など「ロシア化」も進めている。同国への併合の是非を問う住民投票は9月11日に予定されるロシア統一地方選との同時実施が有力視されていたが、戦闘の激化で遅れる公算が大きい。ロシアの独立系メディア、メドゥーザは18日、同国大統領府が今冬に延期する可能性を検討していると伝えた。

一方、ウクライナは8月下旬までだった成人男性の出国を禁止する総動員令や戒厳令を11月下旬まで再延長した。国内の被害は拡大しているが、長期戦に向けた態勢を整えている。

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ゼレンスキー氏、クリミア「あらゆる手段で奪還」

ゼレンスキー氏、クリミア「あらゆる手段で奪還」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR23DLF0T20C22A8000000/

『【ウィーン=細川倫太郎】ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、ロシアが2014年に一方的に併合した南部クリミア半島について「あらゆる手段を使って奪還する」と強調した。24日はロシアのウクライナ侵攻が始まってから半年の節目となる。南部や東部を主戦場に戦闘は続いており、停戦交渉の再開も見通せない。

ロイター通信によると、ゼレンスキー氏は「我々はクリミアを取り戻す。世界のどの国とも相談せず自分たちで決める」と語った。ウクライナ政府は23日、クリミアの返還をめざす国際枠組み「クリミア・プラットフォーム」の首脳会議をオンラインで開催し、多くの参加者がウクライナ支援の継続を表明した。

首脳会議では、ウクライナがクリミアの領土支配を回復するために「ロシアへの圧力を維持する決意を改めて表明する」と明記した共同声明をまとめた。ロシアが2月の侵攻後に占領した地域の実効支配を強め、同国に編入しようとしている試みも非難した。ロシアは編入の是非を問う住民投票の準備を進めているとされる。

24日はウクライナのソ連からの独立記念日にもあたる。ウクライナ国防省情報総局はロシア軍のミサイル攻撃などが激しくなる恐れがあるとして、23~24日は特に注意するよう国民に呼びかけている。首都キーウ(キエフ)当局は25日まで大規模イベントの開催を禁止。一部の州は住民に在宅勤務を求めるなど、緊張が高まっている。

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中国CATL8割増益、1~6月 電池の出荷拡大

中国CATL8割増益、1~6月 電池の出荷拡大
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM238U50T20C22A8000000/

『【広州=川上尚志】車載電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が23日発表した2022年1~6月期決算は、純利益が前年同期比82%増の81億元(約1600億円)だった。電池の原材料高の影響を受けたもの、主力の中国市場で電気自動車(EV)などの販売が急増し、電池の出荷も伸びたことで増益を確保した。

売上高は2.6倍の1129億元だった。主力の車載電池事業は2.6倍の791億元で、リチウム電池材料や蓄電池の事業も大きく伸びた。海外売上高は2.2倍の222億元で、全体に占める比率は約2割だった。

一方、車載電池事業の利益率は8ポイント低い15%になった。リチウムなど電池の原材料の価格上昇が響いたとみられる。研究開発費は2.1倍の57億元に増えたが、政府補助金も7割増の10億元になった。

中国汽車工業協会によると、中国でのEVを中心とする新エネルギー車の22年1~6月の販売台数は前年同期比2.2倍の260万台になった。22年後半も販売拡大が続くとみられている。

ただ、販売が急激に伸びたことで原材料の供給が追いつかず、価格は高止まりしている。競合との受注競争も激しさを増す。こうした外部環境の変化が、CATLの業績の伸びを鈍化させる可能性もある。』

ロシア非難の文言削除 NPT最終文書案、決裂回避狙う

ロシア非難の文言削除 NPT最終文書案、決裂回避狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN22CJE0S2A820C2000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな、吉田圭織】国連本部で開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書案が22日夜(日本時間23日午前)、加盟国に配布された。ウクライナ南部のザポロジエ原発をめぐり「ロシアの軍事活動により」ウクライナ当局の管理が失われたと指摘していた文言を削除したことが明らかになった。

最終文書を出せずに閉会した2015年の前回会議のような事態を回避すべく、ロシアの反発にも配慮した。26日の閉会までに最終文書案の採択につなげる狙いがありそうだ。

再検討会議は1日に開幕した後、①核軍縮②核不拡散③原子力の平和利用――の3テーマを扱う委員会に分かれ、最終文書の素案や修正案を議論してきた。ただ、いずれも合意できないまま、22日に全ての討議が終了した。各委員長の権限でとりまとめた素案を基に、再検討会議のスラウビネン議長が最終文書案として同日、一本化した。

日本経済新聞が入手した最終文書案は「ザポロジエ原発などウクライナの核施設周辺での軍事活動で同国当局の管理が失われ、安全と核物質の防護を含むセキュリティーと保障措置に深刻な負の影響を与える」として重大な懸念を表明した。軍事活動についてロシアを名指ししていた21日の委員会修正案の文言から後退した。

ロシアは22日の公開会合で「核施設を脅威にさらしているのはウクライナ当局だ」と主張した上で、同原発をめぐる文言は「非常に一方的で、コンセンサスの基礎になり得ない」と修正を要求した。この問題が「会議の最終段階での作業を複雑にしうる最も困難な問題の一つだ」とも警告していた。

一方、「ロシアからウクライナ当局への管理権限の回復と、国際原子力機関(IAEA)による検証活動の効果的実施を要請する」との文言は最終文書案でも維持された。

核軍縮をめぐっては「核廃絶が核兵器の使用またはその脅威に対する唯一の絶対的な保障であることを再確認する」と強調した。核保有国に対し「核の先制不使用」の採用を含めた核兵器の役割を減らす措置を取るよう求めた。

非核保有国に核を使用しない「消極的安全保障」では、締約国に非核保有国を保護する国際的な取り決めの議論を直ちに開始し「国際的な法的拘束力のある手段を除外しない」よう呼びかけている。

ロシアによる核使用の示唆も念頭に「核保有国はいかなる状況下でも非核保有国に核兵器を使用せず、使用するとの脅迫をしないよう約束する」との文言を盛り込んだ。ウクライナ侵攻前の1月に米国、ロシア、英国、フランス、中国が発表した共同声明に触れ「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」との文言を再確認した。

当初の素案では核保有国に対し、核使用を原則として核攻撃への反撃に限定する「唯一の目的」構想の採用も求めていたが、修正案の段階で削除され、最終文書案にも盛り込まれなかった。米国は3月、核政策の指針に同構想を採り入れることを見送った。ロシアや中国、北朝鮮への抑止力低下への懸念が背景にある。

中国が反対していた核兵器向け核分裂性物質の生産の即時モラトリアム(一時停止)についても、締約国の宣言・維持を求める文言が最終文書案に残った。NPTが定める核保有国5カ国のうち、米国、ロシア、英国、フランスは核兵器用の核分裂性物質について生産の一時停止を宣言しているが、中国は表明していない。

核兵器の開発、使用、威嚇を禁じる核兵器禁止条約については、21年の発効と今年6月にウィーンで開いた締約国による初会合を「認識する」との文言にとどめた。オーストリアやメキシコなど条約を主導した締約国は「NPTとの補完関係」に触れるよう求めていた。核保有国や米国の核の傘に依存する日本や韓国などの国はNPTを重視する考えを示している。

米国と英国、オーストラリアの安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を念頭に「IAEAが関係国と協議の上、海軍の核推進に関連する取り決めを検討する」との内容を盛り込んだ。オーカスでは米英が豪州向けに原子力潜水艦の配備を後押しする計画だ。「核拡散につながる」と訴えていた中国などの懸念にこたえた。

26日の閉幕までにめざす最終文書の採択は全会一致が原則だ。一部は修正されたものの、22日の文書案にはロシアや中国が委員会の議論で反対していた項目の多くが盛り込まれたままだ。合意に向けた交渉は難航が予想される。

15年の前回会議では中東に非核地帯を設ける構想をめぐり各国が対立し、採択できないまま閉幕した。再び不採択となればNPT体制が大きく揺らぎ、ウクライナ侵攻が冷や水を浴びせた核軍縮の機運をさらに後退させかねない。文言の再修正も含めて、交渉が大詰めを迎えそうだ。

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米国、中国の航空宇宙7団体に禁輸措置 軍事転用防ぐ

米国、中国の航空宇宙7団体に禁輸措置 軍事転用防ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN23DET0T20C22A8000000/

『【ワシントン=鳳山太成】米商務省は23日、航空宇宙分野の研究所など中国の7団体に事実上の禁輸措置を科すと発表した。国家安全保障の観点から、米国の技術やソフトウエアが中国人民解放軍の能力向上に使われるのを防ぐ。

安保上問題のある企業を並べた「エンティティー・リスト(EL)」に中国の7団体を24日付で加える。米国のハイテク製品を対象団体に輸出する場合、商務省の許可が必要となる。企業の許可申請は原則却下する。

安全保障を担うエステベズ商務次官は声明で「航空宇宙の活動を支える米国の技術は、中国の軍事近代化を支えるために使われるべきではない」と強調した。企業と軍が一体化した中国の軍民融合戦略に改めて警戒感を示した。

バイデン政権は、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置を続けるなど、トランプ前政権の政策を引き継いで中国への輸出管理を厳しくしている。今回の措置によりELに載る中国の団体は約600に上る。2021年1月のバイデン政権発足後、110を超える団体を追加した。』

韓国の自動車部品メーカー、米国で児童労働 労働省提訴

韓国の自動車部品メーカー、米国で児童労働 労働省提訴
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN23DJK0T20C22A8000000/

『【ニューヨーク=堀田隆文】韓国の自動車部品メーカーであるSLコーポレーションのグループ会社が、米南部アラバマ州の工場で児童労働法に違反しているとして、当局に訴えられたことが23日までに分かった。米労働省がアラバマ州の連邦地裁に訴状を出した。SL社は韓国の現代自動車グループに部品を納入している。同グループのサプライチェーン(供給網)に対する監視の目が強まる可能性がある。

労働省はSL社のグループ会社である「SLアラバマ」を訴えた。22日付の訴状によると、SLアラバマは法律が禁止している工場業務で16歳未満の未成年者を働かせており、2021年11月以降、繰り返し法に違反したとしている。

訴状とは別に裁判所に提出された書類によると、SLアラバマは担当者の処分など事態の改善に向けた措置を進めていくことに同意しているもようだ。

SLアラバマは約600人の従業員を雇用しているとみられる。SL社は米国では、アラバマ州に加え、テネシー州とミシガン州に拠点を構えている。

SL社は現代自グループにランプなどの部品を納入している。今回のSL社の件とは別に、ロイター通信は7月、現代自グループの部品子会社のアラバマ州の工場で児童労働の実態があると報じた。同グループの供給網の雇用実態に対する監視が厳しくなる可能性がある。』

退路断ったプーチン氏 ウクライナ支配へ分断と停滞覚悟

退路断ったプーチン氏 ウクライナ支配へ分断と停滞覚悟
編集委員 坂井光
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK224OQ0S2A820C2000000/

『ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で半年。戦闘の先行きは読めないが、プーチン大統領についてはっきりしたこともある。時間をかけてでもウクライナを支配下に置こうとする執念と、その実現のためには西側との関係を改善するつもりもないという覚悟だ。
勢力圏の回復が最優先

・7月11日、ウクライナ全土の住民にロシア国籍の取得手続きを簡素化する大統領令に署名

・8月22日、「ロシアは強力で独立した世界の大国だ。我々は祖国の利益に合致する政策のみを国際舞台で追求することを固く決意する」とプーチン氏が発言

・9月にもウクライナ南部ヘルソン州でロシア編入を認める住民投票を実施の見通しとロシア紙が報道

これらの事例が示すのは、プーチン政権はウクライナのゼレンスキー大統領が降伏しない限り戦いを止めるつもりはないということだ。

占領地を拡大して「ロシア化」を進め、何年かけてでもウクライナを勢力圏に取り戻すことを最優先に置いているとみられる。仮に停戦合意しても、占領地をてこにゼレンスキー政権を追い詰めていくのだろう。
占領地では通貨ルーブルでの取引など「ロシア化」が進む(7月25日、南部ヘルソンで)=ロイター

それが西側諸国による制裁強化に結びつくことは覚悟のうえだ。エネルギー、食料、宇宙開発、核兵器――。あらゆることを対西側の政治カードとして利用し、対ウクライナ支援疲れを誘う姿勢が鮮明になっている。

西側との関係で退路を断つ一方で、中国、インドのほか、アフリカ、中南米などの米欧とは一線を画す国との結びつきを強め、制裁の影響を最小限にとどめる戦略だ。
西側諸国に問われる覚悟

西側諸国はウクライナを支援し続ける覚悟だけでなく、世界の分断を図るロシアにどう向き合い、対処していくかが問われている。

ロシア国内の世論はどうなのか。それを左右する経済の先行きに対するロシア人の立場は3つに分類されそうだ。

1つは戦争に反対する悲観論者。インテリ層が多く、一部の品不足やモノやサービスの質の低下などをいち早く感じ取っている。2つ目はプーチン政権を支持し、中国などからの輸入代替政策を期待する人たち。そして、多数派を占めるのが、政治、経済に関心がなく、戦争による変化をまだあまり認識していない層だ。

今後の世論に影響を与えるのが3番目の人たちだが、「異変」は着実に広がっている。それは日本からもうかがえる。

7月中旬の伏木富山港。極東ウラジオストクに向かう貨物船に中古車が満載されていた。新車に近い車もある。日本からロシアへの中古車輸出は侵攻直後の3~5月は制裁に伴う決済への不安から前年同月を下回ったが、6月は前年から24%増え、1万8000台強と単月では2020年以降で最高となった。
7月中旬、伏木富山港に停泊中の貨物船には中古車が満載されていた

日本からの中古車輸出に詳しい富山高等専門学校の岡本勝規教授は「制裁対象外の銀行や第三国の銀行などを利用し、支払いは問題ない。足元は運搬船が足りないほど需要は旺盛」という。

ロシア国内ではトヨタ自動車をはじめ海外メーカーは生産を停止し、新車の正規輸入もなくなった。ロシア車の生産は続くが、人気が高いのは中古とはいえ外国車だ。車以外でも西側製品の多くは並行輸入にシフトしている。
確実に広がる経済のひずみ

制裁の影響を軽減するロシアのしたたかな一面といえるが、その裏返しとして国内産業のひずみも浮き彫りとなり始めた。自動車やIT(情報技術)関連機器など先端分野では空洞化が進み、価格も確実に上昇している。もっと深刻なのは品薄感が出ているワクチンや医薬品だ。乳幼児や病気を抱える人たちの間では不安が急速に広がっている。

サンクトペテルブルクに住む20代の教師はこういう。「最大の苦痛は、毎日多くの人々が無駄死にしているのに声を上げられないこと。戦争に反対する自分が少数派であるかのような孤独感や失望感にさいなまれる。戦争を支持する隣人への嫌悪感も増している」

侵攻は西側との対立を決定的にし、経済的な停滞を招いているだけではない。国民レベルでも分断が深まり、無気力感が広がりつつある。そんな愚策をプーチン氏はやめるつもりはない。

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首相、次世代原発の建設検討を指示 来夏以降17基再稼働

首相、次世代原発の建設検討を指示 来夏以降17基再稼働
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA23DDG0T20C22A8000000/

『岸田文雄首相は24日午後に首相官邸で開くGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で次世代型の原子力発電所の開発・建設を検討するよう指示する。新増設は想定していないという現在の方針を転換し、中長期で電力確保を目指す。来夏以降に最大で17基の原発を再稼働させる。

電力不足や脱炭素の遅れといった2050年に向けた構造的な課題を解決するための対策と位置づける。年末までに時間軸ごとに複数の対応をまとめる。

30年以降の課題として将来を見据えた次世代原発の開発や建設を主要な検討項目に据えた。経済産業省の審議会は次世代原発のうち既存の原発より安全性を高めた改良型の軽水炉について、30年代に商業運転すると盛り込んだ工程表案をまとめていた。

政府はこれまで「新設や建て替えは想定していない」との立場を取ってきた。実際に建設するとなれば11年の東日本大震災後で初めてとなる。

首相は原発の運転期間延長の検討も指示する。原子炉等規制法で原則40年、最長60年と定めており、運転期間を終えれば廃炉になる。北海道電力泊原発1~3号機など審査から10年近くかかっている原発もある。安全審査にかかった時間を運転期間から除外するなど実質的に延ばす方策を探る。

電力会社が原発事業の将来見通しを立てやすくするための対策も検討する。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分など解決していない課題を巡る国の取り組み強化に向けて議論する。

今冬や来年の電力不足の懸念には再稼働を主な対策とする。

首相は7月に今冬へ原発の稼働を最大9基まで増やす方針を示していた。再稼働したことがある10基を活用する内容にとどまっており、来夏以降はあわせて17基の体制に増強する。

国内に原発は33基ある。電力会社が原子力規制委員会に再稼働を申請したのは25基で、17基が規制委の安全審査を通過した。このうち10基は地元の同意も得ていったんは再稼働した。現時点で運転している原発は6基にとどまる。

一方、規制委の審査に合格したのに稼働に至っていない原発が7基にのぼる。来夏以降の再稼働をめざし、安全対策や地元の理解を得るための取り組みについて国が前面に立って対応する。

具体的には東京電力柏崎刈羽原発6~7号機、日本原子力発電の東海第2原発、東北電力女川原発2号機、関西電力高浜原発1~2号機、中国電力島根原発2号機の7基を想定する。柏崎刈羽原発はテロ対策の不備が明るみに出て再稼働が見通せない状態が続いている。

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ニューズレター
多様な観点からニュースを考える

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岩間陽子のアバター
岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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ひとこと解説

「次世代型の原子力発電所の開発」は久々にとても良いビッグニュースです。現在様々な小型モジュール炉の提案が世界中で出されて、アメリカも力を入れています。紛争が起こる可能性が高まっている悲しい現実の中、原子炉も紛争中の安全性と気候変動対策の双方から、これまでとは全く違う視点で見直されなければなりません。是非、今後半世紀を視野に入れて、全く新しい視線で、パートナー諸国との連携も考えつつ検討作業を行っていただきたいです。来年G7に向けても、日本として積極的に国際世論をリードして行ける議題だと思います。
2022年8月24日 11:13

竹内純子のアバター
竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

本日こちらの会議に参加してきます。再稼働できる原発を全てしたとしても、需給ひっ迫の問題がいきなり解決する訳ではありませんが、我々が原発を稼働させてLNGの消費を減らせば、その分を欧州やその他の国が購入することもできますし、エネルギー供給にはこうしたリスクがあるので、日本は原発をやってきたわけですから、この判断は正しい。
また原発の運転期間延長は「最も安い温暖化対策」で、各国が積極的に進めているところです。米国では80年運転の許可を得る炉も6基ほど出てきています。原子力は定期検査時に予防的な機器取替を行い、格納容器などのような主要機器以外は殆ど生まれ変わっているサイボーグとも言われています。
2022年8月24日 10:17

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー

ひとこと解説

ウクライナ戦争が続くなかで、これしかないじゃない?ただ福島の悪夢を繰り返さないために、予備電源などの対策を備えておく必要がある。ガスと電気の料金が大幅に値上げされている。円安が是正される見込みが立たないなか、輸入インフレも続く。発電できる原発を利用しない選択肢はない。ただし、福島のトラウマが残っている。苦渋の決断が迫られている
2022年8月24日 7:34 』

習近平軍事委主席が裁可した日本EEZ内のミサイル着弾

習近平軍事委主席が裁可した日本EEZ内のミサイル着弾
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK199H10Z10C22A8000000/

『日本の排他的経済水域(EEZ)内に5発の弾道ミサイルを撃ち込むという極めて重大な決断を最終的にしたのは、 習近平(シー・ジンピン)その人である――。

中国共産党の軍隊を意味する人民解放軍が実行する軍事行動を決定するのは、共産党中央軍事委員会だ。トップは同委主席である習で、首脳部は主席の下にいる2人の副主席(軍人)と、4人の委員(軍人)という計7人で構成される。7人中、職業軍人ではないのは共産党総書記兼国家主席の習だけだ。

中国建国70年の軍事パレードで人民解放軍を閲兵する習近平国家主席(2019年10月、北京)=新華社・共同

中国では「共産党が鉄砲(軍)を指揮する」という鉄の規律が守られてきた。権力基盤を固めた習は、この規律をさらに前面に打ち出した。「(共産)党の指揮に従い、勝てる、清廉な人民の軍隊に。習近平」。各地の軍施設で習の署名入りスローガンが、元国家主席、江沢民(ジアン・ズォーミン)の言葉と入れ替わったのは、2015年ごろだ。

今回の軍事行動も党トップとして軍の指揮権を持つ習が、米下院議長、ペロシの台湾訪問に対抗する「軍事演習」として最終判断を下したのは間違いない。もし習が裁可・決裁していないとすれば、鉄の規律が破られ、軍の暴走を許したことになる。

太平洋上EEZに係争拡大も

問題はここからだ。対日関係を中長期的に傷つける日本のEEZへのミサイル撃ち込みという威嚇の裁可も習が下したのか。答えは「イエス」である。

中国外務省報道官は「中日間では台湾以東の海域でなお境界を画定していない。中国側はいわゆる日本のEEZという言い方を受け入れない」と言明した。他国のEEZ内での軍事演習が禁じられているわけではない。それでもペロシ台湾入りを逆手にとって、日本を威嚇し、反応を試す行為は公然たる挑発だ。日中国交正常化50年の歴史の転換点になりかねない事態である。

これは、結果的にミサイルによって太平洋上での日本のEEZに関する主張を崩そうとしたことになる。これまで日中間の問題は主として東シナ海だったが、今後は太平洋にも拡大する可能性が出てきた。日本側が身構えるのは当然だ。

重大な問題であることを認識していた中央軍事委、中国軍には、ある種の迷いがあったと考えられる。それが透けてみえる興味深い傍証がある。

中国国営の新華社は、ペロシが台北・松山空港に着陸した直後の8月2日深夜、日本のEEZにかかる台湾東部海域への軍事演習地域の設定を伝えた。6つの演習地域の一つ(地図中の①、以下①)だ。演習開始は中国時間4日正午としていた。ところが、奇妙なことに中国当局は4日未明、航空固定通信網などを通じて、もう一つの臨時危険区を追加した。

詳細な位置は台湾の交通部が4日午前、布告した安全情報からわかる。「8月4日10時から8月8日10時(台北時間)、(台湾)東部海域に新たに軍事演習地域(地図中の②、以下②)を設定した。その期間、船舶は演習地域を避け、注意して航行するように」とある。この7つ目の演習地域の設置は、一部中国メディアも転載した。

臨時危険区(②)は、2日発表の台湾東部の演習地(①)に一部重なっていた。注意すべきは、より台湾の本島に近い位置に移動し、ほぼ日本のEEZを避けていたことだ。日本への恫喝(どうかつ)とみなされにくい穏当な場所である。

日本にとって脅威が大きい「8月2日案=強硬案」(①)と、脅威が小さい「8月4日案=妥協案 」(②)という2案の存在がにじむ。ことの重大性を認識していた中央軍事委は、様々な観点から少なくとも2つの案を用意していた。表の強硬案と、裏の妥協案だ。日本のEEZを外す選択肢は最後まで残っていたことがうかがわれる。

台湾当局は4日午後になると「8月4日案」に関する布告をいったん取り下げ、間を置かず改めて公表した。範囲、時間に変更はないが、中国側の軍事演習との関連を示す表記を削る修正が加えられた。同じ頃、中国軍のミサイル発射は始まっていた。4日午後4時以降、沖縄の波照間島南西部の日本のEEZ内に5発が着弾した。

防衛省によれば、うち4発は、福建省沿岸から発射され、台北のはるか上空を通過して着弾した。500~550キロメートルほど飛翔(ひしょう)したミサイルは、まさに台湾と沖縄を同時に威嚇するものだった。

150キロ先の尖閣諸島をにらむ与那国島の陸上自衛隊レーダー基地

残る1発は浙江省沿岸から発射され、650キロメートルほど飛翔。台湾の陸地の上は経由せず、日本のEEZ内に着弾した。自衛隊部隊が駐屯し、レーダーも設置している南西諸島への直接の脅しとも解釈できる。

7つ目の演習地域と目された「8月4日案」の臨時危険区に落下したミサイルはなく、全て「8月2日案」の範囲だった。「8月2日案」の範囲内でも日本のEEZを外す選択肢があったが、それは選ばれず、より東側にある日本のEEZにかかる部分を正確に選んで着弾させた。

1発なら「たまたま」という説明もできるが、5発となると明確な意図がある。裏の妥協案を排除し、日本に強硬なメッセージを送る。軍最高指揮官である習の最終決断なしに、この重大な「軍事行動」はあり得ない。

驚いた王毅外相

実は、これに驚いたのは日本だけではなかった。中国内でも多くの関係者が目を見張った。外交を担う中国外務省も寝耳に水だったようだ。中国では、軍事的な決断について、外交部門が全て知っているわけではない。4日、国務委員兼外相の王毅(ワン・イー)は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に関連する外相会議のためカンボジアにいた。会議の途中で、日本のEEZ内への着弾の知らせを聞いた王毅は、かなり驚いた様子だったという。

習の裁可をカンボジアで知った王毅や、中国外務省は、これまでの対応が生ぬるかったことを認識し、一気に日本に強く出始めた。珍しく中国側が積極的で、自ら開催を明らかにしていたカンボジアでの日中外相会談は急きょ、キャンセルになった。主要7カ国(G7)外相が「台湾海峡の平和及び安定の維持に関する共同声明」で「不当に中国を非難した」というのが理由だった。

それだけではない。北京では駐中国大使の垂秀夫が、中国外務省に呼び出されて、G7外相声明に関して抗議を受けた。この声明の最終とりまとめは、議長国のドイツであり、調整過程でも日本はさほど深くかかわっていない。

9月29日に日中国交正常化50周年の行事を控える日本は慎重に対応していた。それは、官房長官の松野博一の発言からもわかる。「G7外相共同声明の文言のほうが、より強く中国への懸念を表明しているのは明らかだ」。G7を構成する主要国の外交官は、日本の政府と外務省の慎重姿勢を証言する。

記者会見する岸田首相(10日、首相官邸)

一方、日本側はどうだったか。ミサイルのEEZ内着弾を受けて、外務次官の森健良が8月4日夜、駐日中国大使の孔鉉佑に抗議した。こちらは電話だけである。緊急性を考えたという理由になっている。

防衛省は4日夕、ミサイルEEZ着弾を直ちに公表したが、岸田文雄内閣がすぐに国家安全保障会議(NSC)を開くことはなかった。首相の岸田は、日本の安全に危害を与える問題ではないと判断したことになる。過去の北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応と明らかに違っていた。台湾問題を議論した安保会議4大臣会合が開かれたのは改造内閣発足後の 12日になってからだ。事案発生から8日後だった。

腹を割った本音の首脳対話を

中国が万一、台湾へ武力行使する場合、自衛隊が駐屯する与那国島など先島諸島も巻き込まれる。太平洋上の日本EEZにまでミサイルを着弾させた今回の選択は、それをあえてにおわせた。

習にとっては、この威嚇行為も鄧小平時代、江沢民時代、胡錦濤(フー・ジンタオ)時代ならできなかった「業績」とする意図がある。習による「鄧小平超え」という個人的な使命感は、日本にも甚大な影響をもたらす。かつてない威嚇は、中長期的に日本を中国から遠ざける。中国側はそれを忘れている。

17日、中国・天津で会談した秋葉剛男国家安全保障局長(左)と外交担当トップの楊潔篪共産党政治局委員=新華社・共同

それでも日本側は感情的にならず冷静に対処すべきだ。国交正常化50年を前に、国家安全保障局長の秋葉剛男が中国・天津で中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)と7時間会談したのは評価できる。中国側の姿勢は「北戴河会議」を経た微調整の結果でもある。

岸田と習の首脳会談の調整も始まる兆しがある。習と首相の李克強(リー・クォーチャン)が22日、新型コロナウイルスに感染した岸田に見舞い電報を送ったのもその一環にみえる。電話、オンラインという選択もあるが、できれば最後は、対面での会談が望ましい。その過程は極めて困難なものになるだろう。習が裁可したミサイルによる脅し。そんな危機的な状況だからこそ、腹を割った本音の対話が必要である。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。』

米国、ウクライナに過去最大の軍事支援へ 侵攻半年

米国、ウクライナに過去最大の軍事支援へ 侵攻半年
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2407W0U2A820C2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米政府はロシアが侵攻を続けるウクライナに30億ドル(4100億円)規模の追加の軍事支援を24日にも発表する見通しになった。ロイター通信などが23日報じた。一度の支援額としては過去最大で、侵攻から半年になる節目に米国が長期戦を見据えた支援を継続する姿勢を明確にする。

米政府は19日に7億7500万ドルの支援を発表したばかりで、新たに防衛システムや弾薬などを盛り込む。米国はロシアによる侵攻後、すでに100億ドルに迫る軍事支援を決めており、さらに上積みする。

米国は侵攻当初は携行型の対戦車砲「ジャベリン」や地対空砲「スティンガー」など小型の武器を中心に提供してきた。戦況が長引くにつれて射程が長い高機動ロケット砲「ハイマース」など大型の火砲に対象を拡大し、東部でのロシア軍の進軍を食い止める効果が出ている

AP通信によると、追加の軍事支援では無人偵察機など今後1〜2年間は戦地に投入されない可能性がある武器も含む。過去に譲渡したことがある武器が対象になるもようだ。

欧州も米国と足並みをそろえて対ウクライナ支援を維持する構えだ。ロイター通信によると、ドイツは5億ユーロ(680億円)超の防空システムや精密弾薬などを新たに供与する計画で、中長期的な防衛態勢の強化する支援する狙いがある。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は23日、ウクライナが主催した会合で「我々がいま目にしているのは消耗戦だ。ウクライナが独立した主権国家として勝利するために長期にわたり支援を維持しなければならない」と表明。「ウクライナは欧州の安全保障に不可欠で、これからもともに歩み続ける」と訴えた。

24日はウクライナが旧ソ連からの独立記念日でもあり、米欧はロシアが猛攻をしかけるおそれがあると警戒を強める。ウクライナ側が奪還を急ぐ南部で戦闘が激化しているほか、ロシアが2014年に併合したクリミア半島にも戦火が広がる。』

「友を呼ぶ」米エリート層 固定化が招くトランプ現象

「友を呼ぶ」米エリート層 固定化が招くトランプ現象
本社コメンテーター 小竹洋之
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2020P0Q2A820C2000000/

『8月1日、英科学誌ネイチャーの電子版に興味深い論文が掲載された。格差問題の実証研究で知られる米経済学者ラジ・チェティ氏らのグループが、エリートの生態に迫った力作である。

25~44歳の米国民7220万人を対象に、フェイスブック上の交友関係を調べた。所得などで上位10%に入る富裕層の友人をみると、34%が同じ上位10%、84%が上位50%の階層に含まれる。

下位10%の貧困層とは、友人の階層が明らかに違う。「類は友を呼ぶ」というが、11月8日投開票の中間選挙を控える米国の分断軸を浮き彫りにした格好だ。

誰もが能力と実績によって成功への階段を上れる「アメリカン・ドリーム」――。その形骸化が米国で叫ばれて久しい。

仏経済学者トマ・ピケティ氏らがまとめた2022年版の世界不平等報告書によると、米国では上位10%の富裕層が所得全体の46%、資産全体の71%を握る。下位50%の貧困層・中間層のシェアはそれぞれ13%、2%にすぎない。
偏在を助長する教育の格差

米経済学者のブランコ・ミラノビッチ氏は、所得も資産も上位の富裕層が増えるさまを「ホモプルーティア」と呼んだ。「同一の人間が保有する富」という意味のギリシャ語の造語である。

こうした富の偏在を助長するのが教育の格差だ。米ピーターソン国際経済研究所のリポートによると、10~18年に国内で博士号を取得した米国民の50%は、修士号以上の学位を持つ親が少なくとも1人はいる家庭の子だった。学士号以上の学位を持つ親がいない家庭の子は26%にとどまる。

豊かな者が最良の教育を受け、富や権力のチケットを手にする確率は、貧しい者よりはるかに高い。そんなエリートが似たような境遇の友人とつき合い、同じ高学歴・高収入の結婚相手を見つける。同質な支配層の固定化は、容易に止められそうにない。

エリート同士が同類婚などで結びつく「マッチング」が広がり、非エリートとは交わらない世界を創り出す――。そんな米国の行く末を案じたのは米経済学者のタイラー・コーエン氏だった。

エリートのマッチングは政治性もはらむ。米経営学者のビヤチェスラフ・フォス氏らが米主要企業の08~20年のデータを調べたところ、経営陣が同じ党派のチームを組みたがる傾向が強まり、リベラルと保守の違いを理由に退社する幹部も増えていた。同じ期間に経営陣のジェンダーの多様化が進んだのとは対照的だという。
「まじめな労働者に耳貸さず」

同質なエリートの固定化は、アメリカン・ドリームの実現を妨げるばかりではない。政界から官界、学界、実業界までの中枢を担う人々が富裕層の価値観や経験に縛られ、貧困層や中間層の思いをくみ取れない原因にもなる。

米国の庶民はそこにいら立つ。イプソスが21年に実施した世論調査では、「政治や経済のエリートがまじめな労働者の声に耳を貸さない」との回答が78%、「社会の主たる分断は、庶民と政治・経済のエリートとの間にある」との回答が68%にのぼった。

バイデン大統領はデラウェア大とシラキュース大で学んだ。ハーバード大やエール大を含む「アイビーリーグ(東部の名門私立大8校)」の学位を持たない大統領はレーガン氏以来だ。

ただしバイデン氏の外交・経済チームには、アイビーリーグの卒業生がきら星のごとく並ぶ。政権発足時はホワイトハウス高官の4割を占め、トランプ前政権の2割を超えたと報道された。

その「チーム・オブ・エリート」が、アフガニスタン戦争の終結やインフレ退治などで失態を演じた。今回の中間選挙で与党・民主党が劣勢に立たされているのは、バイデン氏が率いる賢者たちの不人気の結果でもある。

トランプ氏はアイビーリーグの一角を占めるペンシルベニア大のOBだ。それでもエリートの支配に風穴を開けられる指導者はほかにないと、多くの有権者がなお異端児の復権を渇望する。
左右ポピュリズムに危うさ

ポピュリズム(大衆迎合主義)の語源は、ラテン語の「ポプルス(民衆)」だといわれる。社会の現状に不満を抱く民衆の立場から、既存の政治に「NO」を突きつける運動と定義される。

グローバル化の痛みや格差の拡大といった経済的要因もあれば、人種構成の変化や伝統的な価値観の揺らぎといった文化的要因もあるだろう。そこにエリートへの根深い反感が絡み合う。

米国の「ベスト・アンド・ブライテスト(最も優秀で賢明な人々)」は、確かに数々の過ちを犯してきた。ケネディ、ジョンソン両政権を支えたエリート集団がベトナム戦争の深みにはまる姿は「賢者の愚行」と評された。アフガニスタン・イラクの2つの戦争やリーマン・ショックを招いたエリートたちの責任も大きい。

しかし貿易と移民をやり玉にあげる右派のポピュリズムや、富裕層と大企業を敵視する左派のポピュリズムに傾くのは危険だ。強権的で排斥的なトランプ氏の再登板が米国、ひいては世界の未来にとって最善の選択とは思えない。

新型コロナウイルス禍とウクライナ危機で加速したインフレのせいで、非エリートの困窮は深まった。エリートへの憤りがポピュリズムの火に油を注ぎつつあるのは欧州なども同じだ。成長・分配戦略や政治・教育改革の知恵を絞り、「ポプルス」の不満を和らげる努力を続けるほかはない。
ニュースを深く読み解く「Deep Insight」まとめへDeep Insight https://www.nikkei.com/opinion/deepinsight/?n_cid=DSREA_deepinsight 』

ウクライナ侵攻半年、砲撃は南部2州が4割超 衛星分析

ウクライナ侵攻半年、砲撃は南部2州が4割超 衛星分析
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR19CQW0Z10C22A8000000/

『ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して24日で半年がたつ。ウクライナ側が奪還を急ぐ南部で戦闘が激化、米航空宇宙局(NASA)の衛星データによると南部2州が爆撃や砲撃の4割超を占める。戦火はロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島にも広がった。戦局は消耗戦の様相を深めている。

衛星データを使い、地表面の温度が常温よりも明らかに高温の「熱異常」を調べることで、爆撃や砲撃の標的となっている地域を検証した。

侵攻直後の3月は首都キーウ(キエフ)周辺に集中していたが、7月以降は検知地点がロシアが制圧を狙う東部ドネツク州やウクライナが奪還を目指す南部のザポロジエ、ヘルソン州などに移った。2州が全体の4割超を占めており、戦闘の激化を裏付ける。

9日以降、ロシア軍施設の爆発が相次いでいるのが南部クリミア半島だ。16日には弾薬庫で、20日には黒海艦隊の司令部で爆発が起きた。ウクライナは公式には攻撃を認めていないが、補給混乱などを狙い破壊工作を強めているとみられる。
ロシア軍は住宅など生活インフラを破壊し続けている(22日、ウクライナ南部ニコポリ)=AP

ゼレンスキー大統領は占領された地域が残ったままでは停戦には応じない構えだ。ウクライナ政府は23日、クリミア返還を目指す国際協力の枠組み「クリミア・プラットフォーム」の首脳会議をオンラインで開いた。演説したゼレンスキー氏は「ロシアの侵略との戦いに勝利し、クリミアを占領から解放することが必要だ」と強調した。

岸田文雄首相は「侵略は欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ」とロシアを非難、ウクライナ支援を続けるとのビデオメッセージを寄せた。

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長はロシアによるクリミアの「違法な併合は決して認めない」と述べた。ドイツのショルツ首相はウクライナの復興会議を10月に開催する方針を示した。「国際社会はウクライナの長期にわたる復興に積極的に携わるべきだ」と連帯を呼びかけた。

24日はウクライナが1991年にソ連からの独立を宣言した記念日に当たる。ロシア軍が攻撃を激化させる恐れがあるとして、北東部ハリコフ州が23日夜から25日朝にかけて住民の外出を禁じるなど各地で警戒が高まる。

欧州最大級のザポロジエ原子力発電所周辺では8月に入り砲撃が相次ぎ、放射性物質が漏れ出るリスクが高まっている。国際原子力機関(IAEA)は調査団派遣へロシアやウクライナと協議するが、両国は現地入りの経路を巡って対立する。
ザポロジエ原発では重大な事故が起きる懸念が強まっている(22日)=ロイター

ウクライナ軍は米国から提供された射程が長い高機動ロケット砲システム「ハイマース」を有効活用し、前線の後方に位置するロシア軍の弾薬庫などを相次ぎ破壊。東部での進軍を食い止めている。南部では攻勢を強めるが、主要都市ヘルソンなどの奪還には至っていない。一方が優位に戦局を動かすのが難しい状況で、膠着状態が続く。

クリミアへの攻撃継続などでロシアが劣勢と判断すれば、大量破壊兵器の使用に踏み切る可能性もある。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4日「欧州は第2次世界大戦後以降で最も危険な状況だ」と指摘した。

国際平和研究所(ウィーン)のハインツ・ゲルトナー氏(安全保障専門)は「ウクライナ軍、ロシア軍ともに一方的に優位になることは予想しにくい」と指摘する。戦争が終結に向かうシナリオとして①戦闘の長期化でロシアが弱体化する②ウクライナの領土が分割される③ウクライナが「中立化」する――の3つを挙げた。

エネルギーをロシアに依存してきた欧州では、経済面の影響の大きさから戦争継続への支持が必ずしも高いわけではない。

欧州外交評議会が6月に発表した欧州10カ国の8000人を対象にした世論調査では、ウクライナが領土を失ってでも早期に停戦すべきだとした「和平派」が35%、たとえ戦争が長期化してもロシアに代償を支払わせるべきだとした「正義派」が22%だった。

イタリアやドイツ、フランスなど主要国では和平派が圧倒的に多い。記録的なインフレなどに直面し、ウクライナに寄り添う余裕がないと感じる市民が増えている。

(ウィーン=細川倫太郎、並木亮)

【関連記事】

・ウクライナ侵攻半年「終戦へ決め手欠く」 識者に聞く
・退路断ったプーチン氏 ウクライナ支配へ分断と停滞覚悟
・米国、ウクライナに過去最大の軍事支援へ 侵攻半年

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授
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別の視点

ハインツ・ゲルトナー氏とは一緒に仕事をしたこともありますが、根っからの中立論者です。オーストリアが生きてきた道に自信と誇りを持っているのだと思いますが、オーストリアとウクライナとでは置かれた地政学的状況が全く異なります。また、ドイツで「和平派が圧倒的に多い」というのはどこの世論調査か不明ですが、「エネルギー価格の高騰にもかかわらず、ウクライナを支持するべきですか」というZDF局のPolitbarometerという調査では、8月は71%が「はい」と答えています。支持が半分に達しなかったのは極右と極左だけで、緑の党の支持者に至っては、95%が「はい」と答えています。
2022年8月24日 2:54 (2022年8月24日 7:20更新)』

中国経済が米国を追い抜くとの予測、世界で崩れる

中国経済が米国を追い抜くとの予測、世界で崩れる…中国が衰退期突入か、不動産危機
文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

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https://biz-journal.jp/2022/08/post_313539.html

『「中国がやがて米国を上回るとの予測は過去の外れた予言と相通じる部分がある」

 このように述べるのはサマーズ元米財務長官だ(8月19日付ブルームバーグ)。半年前までは「中国経済が近い将来、米国経済を追い抜くことが自明だ」と受け止められていたが、サマーズ氏は「今ではそれほど明確ではない。1960年代の旧ソ連や90年代の日本が米国を追い越すという(間違った)予測と同様のことが現在の中国でも繰り返されるのではないか」と主張する。

中国、住宅ローン返済拒否が拡大…相次ぐマンション建設工事中止が国を揺るがす
債務危機に陥っている中国の不動産開発大手、恒大集団は7月22日、「同社のCEOとCFOが辞任した」と発表した。両氏が傘下の不動産サービス企業の預金(134億元<約2…
中国、住宅ローン返済拒否が拡大…相次ぐマンション建設工事中止が国を揺るがす
BJ
BJ
2022.07.29

中国、企業で50%の自主減給申請を要求も…公務員も大幅賃下げラッシュ
中国南部は60年ぶりの豪雨に見舞われ、土砂崩れや河川の氾濫などの被害が広がっている。地元気象当局は「広東省と福建省、広西チワン族自治州では5月初めから6月半ばまでの…
中国、企業で50%の自主減給申請を要求も…公務員も大幅賃下げラッシュ
BJ
BJ
2022.06.24

 たしかにこの半年で世界の中国経済に対する見方がガラッと変わった感が強い。中国人民銀行は8月22日、事実上の政策金利と位置づける「ローンプライムレート」を3カ月ぶりに引き下げた。今年3度目の引き下げを実施したが、「これにより経済が再び上向く」との期待がまったく生じてこない。

 7月の人民元建て新規融資は6790億元となり、前月の2兆8100億元から急減した。新型コロナの感染拡大や不動産危機の悪化で企業や消費者が借り入れに慎重になったことがその要因だ。7月の不動産投資は前年比12.3%減となり、減少幅は今年最大となった。市場で安価なマネーがあふれているものの、財務力が低下している不動産企業の資金繰りはさらに困難になっている。当局が潤沢な資金を供給して再生を図ろうとしても経済が一向に回復しないという、1990年代の日本経済が直面した「流動性の罠」に中国経済も陥ったのではないかと思えてならない。

中国の国力の陰りが鮮明に

 中国政府に対する市場の信頼感もがた落ちだ。半年前は当局による思い切った政策に対する期待が高まっていたが、今では「中国経済は脆弱さに対応できるだろうか。当局の行動は不十分で遅すぎたとの懸念がある」との声が高まるばかりだ。中国で長期金利の指標となる10年物国債の利回りが約2年3カ月ぶりの水準に低下している。足下の不安要素に加え、人口減少といった中長期の構造要因も金利の下げ圧力となっており、2002年に付けた過去最低水準に接近しつつある。急成長する経済をバックに台頭してきた中国の国力の陰りがここに来て鮮明になってきたかたちだが、このことは日本をはじめ国際社会にとってどのような影響を与えるのだろうか。

「浮上する中国」よりも「頂点を極めやがて衰退期を迎える中国」のほうが国際社会との間で大きな対立を引き起こすという指摘がある。新興大国はパワーが拡張し続ける間はできる限り目立たずに行動し、覇権国との対決を遅らせるが、成長が天井に達し衰退期が目の前に近づくと悠長ではいられなくなる。これ以上の発展を期待できなくなった新興大国が「挑戦の窓」が閉ざされる前に戦略的成果を得るため、より大胆かつ軽率に行動するようになるというわけだ。

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『8月上旬のペロシ米下院議長の台湾訪問を契機に、東アジアの緊張がにわかに高まっている。中国軍は台湾周辺を対象とした史上最大規模の軍事演習を実施するなど台湾に軍事的圧力をかけ、日本など周辺国を巻き込む国際問題となっているが、今後の動向を読み解く際に見逃せないのは中国国内の世論の動向だ。

 中国政府がペロシ氏の訪台を阻止するための措置を採らなかったことへの不満が噴出するという異例の事態になっている。ネット空間では「あまりにも恥ずかしい」「メンツが丸つぶれじゃないか」とのコメントが飛び交っている。昨年9月の米国のアフガニスタンからのぶざまな撤退ぶりを目の当たりにして、多くの中国人は「現在の米国なら台湾を見捨てるだろう。千載一遇の好機が訪れた。台湾侵攻は間近だ」と考えるようになっており、今回の中国政府の弱腰ぶりに憤懣やるかたないのだ。

 こうしたネット世論を気にしてか、中国外交部は定例の記者会見の場で「中国人民は理性的に国を愛する(理性愛国)ものだと信じている」と述べているが、中国国民の愛国感情をあおり立ててきたのは、他国を攻撃的な言葉で厳しく非難する「戦浪外交」を展開してきた外交部自身に他ならない。

ナショナリズムからショービニズムへの暴走

 中国では今、ナショナリズムが猛烈な勢いで台頭しているが、ナショナリズムの風潮が強まったのは1990年代からだった。ソ連崩壊により「共産主義」という統治の根拠を失った中国政府が国民の支持を取り付けるためにナショナリズムを利用したのが始まりだ。中国のナショナリズムはリーマンショック後に中国が世界経済を牽引するようになると攻撃的なものに変わり、2012年に誕生した習近平政権が「中国の夢」を語るようになるとその傾向はさらにエスカレートした。

 中国のナショナリズムは政府に奨励されてきたが、最近では国民のほうが過激になっており、皮肉にも政府は自らつくりだしたナショナリズムを制御できなくなっている。気がかりなのは「中国文明は世界で一番優れている」と信じ、ナショナリズムの傾向が強い若者の雇用をめぐる状況が過去最悪になっていることだ。ナショナリズムがショービニズム(好戦的愛国主義)へと暴走してしまうことは過去の歴史が教えるところだ。

 3期目の続投を目指す習近平指導部は5年に一度の共産党大会を年内に控え「台湾侵攻」というギャンブルに出る可能性は低いとの見方が一般的だが、衰退期を意識し始めた中国政府が国民の不満をそらすために対外的な強硬手段に出る可能性がこれまでになく高まっていると言わざるを得ない。

 軍事専門家が指摘するように、「台湾有事」は「日本有事」に直結する。日米同盟を強化していくのはもちろんだが、台湾有事をなんとしてでも回避するための日本の外交力の真価が問われているのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職

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北戴河会議と習近平第三期

北戴河会議と習近平第三期
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220822-00311424

『北戴河会議終了を受け、習近平三期目に対する否定願望からか、日本のネットで多くのフェイクニュースが飛び交っている。講演をした聴衆から二つの関連記事に関して質問された。長いのでコラムで間違いを指摘したい。

◆北戴河会議の位置づけと今年の時期

 北戴河の会議は正式なものでなく、しかも習近平政権に入ってからは、引退した「長老」に口出しをさせないことをモットーとしてきたので、長老を中心とした北戴河の秘密会議は重要視されない傾向にある。

 というのも、習近平政権の前の胡錦涛政権が、その前の江沢民に徹底してコントロールされて身動きできなかったことから、胡錦涛は腐敗撲滅に専念したかったが、とても許される状況ではなかった。しかし「腐敗撲滅をしなければ党が滅び、国が亡ぶ」という共通認識を胡錦涛と習近平の二人は持っていたので、習近平は政権の座に就くと同時に、長老たちが中南海にいつまでも住み続けていることを禁止した。

 江沢民こそが中国に腐敗を蔓延させた張本人だったからだ。

 そのような事情があるにせよ、一応、北戴河会議は開かれてはいる。

 今年も7月31日に開催された中国人民解放軍建軍95年記念(8月1日)行事には中国の指導層全員が出席しており、8月1日からはメディアでの露出がなくなったので、8月1日から10日過ぎ頃までは北戴河会議が開かれていたと見ていいだろう。

 というのは、8月13日に国務院副総理の孫春蘭が海南島に現れているし、8月16日から18日までは習近平が遼寧省に視察に行き、16日、17日には李克強が広東省の深圳に赴いて会議を開催しているからだ。

◆講演で受けた2本の記事に関する質問

 日頃、ZOOMを通して講演をすることが多いが、一昨日の講演で、2本の記事に関する質問があった。

 一つ目は8月18日のJBpressに掲載された<「北戴河会議」で習近平が炎上? 李克強とのパワーバランスの行方 一帯一路もコロナ政策も失敗、追及される習近平の責任>(以後、JBpressの記事と略記)で、二つ目は8月20日付のJapan In-depthの<中国北戴河会議(続報)>(以後、Japan In-depthの記事と略記)だ。2本とも類似の内容なので、これが正しい現状なのか否か教えてほしいという質問だった。質疑応答時間におけるいきなりの質問だったので、とても瞬時に読み取って一言二言で回答できる内容ではない。多くの中国問題に関心のある他の日本人読者も類似の疑問を持っておられるかもしれないので、コラムで回答するとお約束した。


 JBpressの方は主として以下のような推論から成り立っている。

 1.存在感を強める李克強:北戴河会議終了後、最初にシグナルを送ったのが、習近平ではなく李克強だった(李克強に関する報道が8月16日で、習近平のは8月18日だったことを指している)。したがって北戴河会議の内容は李克強にとって有利なものであったにちがいない。

 2.李克強は「鄧小平の改革開放の成果の1つである経済特区の深圳」で経済問題に関する座談会を開催した。習近平の経済政策は改革開放逆行路線とみなされている。おそらく習近平は党内で批判を受けたにちがいない。

 3.8月16日に共産党理論誌「求是」の巻頭に、昨年(2021年)1月28日の政治局集団学習会での習近平の講話が掲載された。講話から1年8カ月後にもなって「求是」で発表されたのは、北戴河会議で習近平がいろいろ批判されたことに対する反論のためではないか。

 4.8月13日に孫春蘭副総理が海南島を視察したが、孫春蘭は「ゼロコロナ」という言葉を使わなかった。ゼロコロナに関して全く口にしなかったのは珍しく、これは北戴河会議でゼロコロナ政策への批判が起き、習近平自身がゼロコロナ政策の失敗を認めざるを得ない状況があったのではないか。


 Japan In-depthの方は【まとめ】として、以下のような項目が立ててあった。

 ●北戴河会議後、孫副首相は、海南省での「ゼロコロナ政策」の失敗を宣言した。

 ●習主席は北戴河会議で新旧党幹部らから「ゼロコロナ政策」を非難を浴び、“敗北”したのではないだろうか。

 ●一方、李克強首相は、北戴河会議で地位を高めたのではないか。


 たしかに類似の傾向にある。そこでまず、JBpressの方から考察していこう。

◆JBpressの1のミス:北戴河会議後、李克強の情報が先に報道されたので、習近平が批判されたという推論のまちがい

 たしかに李克強に関する報道は8月16日にあった。李克強に関しては8月18日にも報道している。しかし文字数はいずれも1200文字ほどで、写真も前者は1枚、後者は2枚だ。

 一方、習近平に関する報道はやや速報的に8月17日に3本(17日の1本目、17日の2本目、17日の3本目)あり、18日には2本あり(18日の1本目、18日の2本目)、19日にも2本(19日の1本目、19日の2本目)、最終的には8月18日に非常に本格的に編集した総合バージョンが報道された。

 少なくとも、この総合バージョンを見る限り、この1本だけで5600文字を超えており、写真も23枚もある。ほかに7本も報道があるので、合計したら、比較にならないほど習近平に関する報道の方が圧倒的に多い。習近平に関する最初の報道日時が8月17日になったのは、慎重を期してミスがないように編集しているからだ。

 JBpressでは、「1」の現象を以て李克強が存在感を強めたとしているが、それは早計ではないだろうか。こういう推論をするときには「人の噂」ではなく、あくまでも自分で「ファクト」を執拗なほど追いかけ、自らの目で第一資料を入手し確認しなければならない。

◆JBpressの2のミス:深圳の経済特区を言い始めたのは習近平の父、習仲勲

 拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』でしつこいほど追いかけたように、深圳を「カエルも鳴かない」ほどの荒地から、こんにちの繁栄まで持っていくきっかけを作ったのは、習近平の父・習仲勲だ。「経済特区」構想を提案して「対外開放」を断行した。1970年代末から1980年代初期にかけてのことだ。

 1962年に鄧小平の陰謀により失脚し、16年間も牢獄や軟禁生活に耐えて政治復帰した習仲勲を、鄧小平は1990年にも再び失脚させている。

 だから習近平ほど(父・習仲勲の奮闘と永眠の地でもある)深圳にこだわり、習仲勲が最初に描いていた「深圳と香港・マカオを結ぶグレーターベイエリア構想」にこだわっている人はいないほど深圳に執着している。2012年に中共中央総書記になったあと、最初に視察したのは深圳だった。民主を無くしてでも「香港の治安」にこだわるのも、父・習仲勲の無念の思いを遂げるためグレーターベイエリア構想を達成させたいためだ。

 「共同富裕」は改革開放の基本である「先富、后共富」(先ず先に富める者が富み、後から他の人を共に富ませる)の後半部分である。それを知らずに「改革開放」と「共同富裕」を分けて考え、習近平が改革開放路線に後ろ向きだと分析するのは、根本的に間違っている。

◆JBpressの3のミス:『求是』への掲載日と実際の講演日は一般に離れている

 以下に示すのは、習近平が講演した日と、『求是』に掲載された日の日時とその「差」を2022年に関して列挙したものである。つまり、講演してから「何日後」に『求是』に掲載されたかを、少なくとも今年に関してみた。

 何年間かの記録を列挙すれば、「掲載日」と「講演日」が、どれだけ離れているかが、もっとわかると思うが、取り敢えず、今年の分を見ただけでも、その「差」がどれくらいあるか、どれくらい離れているかが、お分かりいただけるだろう。

中共中央の資料に基づき筆者作成

 特に今年7月31日の『求是』の内容を見ていただきたい。2017年8月1日という講演日から「1825日」も離れている。

 したがってJBpressの「3」に書いてあるような、タイミングのずれが、「習近平が北戴河会議で批判された証拠」になど、なり得るはずもないし、「反論」であるはずもない。

 推論の根拠が間違っているので、その結論は成立しない。

 もう少し中国政治のメカニズムのイロハを勉強した方がいいだろう。

◆JBpressの4のミス:孫春蘭は「ゼロコロナ政策」に関して触れている

8月14日付の中国中央人民政府のウェブサイトが、孫春蘭が海南島に行った時の様子に関して報じている。それによれば、第一段落の最後の行に「尽快実現社会面清零」という中国語がある。これは「できるだけ早く社会面ゼロコロナ(隔離ゼロコロナ)を実現させる」という意味だ。その前には、もちろん、「習近平総書記のコロナ予防に関する一連の重要指示の精神を深く理解して貫徹しなければならない」と孫春蘭は強調している。

 その証拠を一応以下に貼り付けよう。

中国中央人民政府のウェブサイトより

 字が小さくて見にくいかもしれないが、中国中央人民政府のウェブサイトに、赤で囲んだように、きちんと「ゼロコロナ政策(清零)」に関して触れているのをご確認いただきたい。

 したがって、JBpressの「4」に書いてある事実は存在しないし、そのフェイクニュースを以て、「習近平は北戴河会議で相当に批判されたため、李克強の存在感が強まった」という憶測は成立しないことになる。

 原文を読み、第一資料に当たって、「ファクト」に基づいて論理展開をしなければ、そのような推論は妄想に等しく、日本人にいかなる有益な情報も提供し得ないことを学んでほしい。

◆Japan In-depthの分析も同様のミス

 講演の聴衆によるご指摘通り、前掲のJBpressとあまりに似ている。となると、共通の情報源があるはずだ。

 その一つに、台湾のRFAが、孫春蘭が迷惑を掛けた約15万人の観光客に謝ったという部分だけを抜き出して書いているということがあり、アメリカ在住の華人ジャーナリスト陳破空氏個人の「感想」を「事実として扱っていること」や、最も驚くべきは、新華社の権威ある雑誌『瞭望』をもじった『中国瞭望』という、偽物『瞭望』の記事が情報源として扱われているという事情があることがわかった。

 さらにそれを日本語訳するときに、「孫春蘭がゼロコロナ政策は失敗だったと宣言した」という、主語を置き換えた表現になっていて(しかも誰も宣言はしていないのだが)、こういうとんでもない間違った解釈が独り歩きしていくのだろうと、興味深く考察した。
 アメリカなど海外にいる中国人(華人華僑)は、その国で生きていかなければならないので、そのために「耳目を引く」ストーリーを創り上げ、生計を立てていることが多い。アメリカには、特にその手の発信が多い。注意しなければならないところだろう。

◆李克強もバリバリの中国共産党員、習近平を倒しても中国は変わらない

 日本には、何としても「習近平より李克強の方が高く評価されている」と結論付けたがる「チャイナ・ウォッチャー」が数多くおり、あたかも習近平さえ引きずりおろせば、中国は中国共産党による一党支配体制から逃れられるような勘違いをしている場合さえ見受けられる。

 これは習近平憎しから来る「錯覚」に過ぎない。

 これに関しては5月30日のコラム<「習近平失脚」というデマの正体と真相>や8月1日のコラム<習近平三期目を否定するための根拠のまちがい>などに書いた通りだ。

 第20回党大会が近づくにつれて、この手の発信が多くなるのではないかと危惧する。このような習近平否定願望を煽ったところで、実際の中国の現状は何も変わらず、日本に利するとは思えないので、注意を喚起したい。
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。』

ドゥーギン氏暗殺未遂に関してFSBが声明を出す。

ドゥーギン氏暗殺未遂に関してFSBが声明を出す。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29499481.html

『 娘さんが爆殺されたロシアの国粋主義者ドゥーギン氏について、FSB(KGBの後継組織)が声明を出しましたね。犯人は、ナターリア・ボフクというウクライナ人の工作員と、特定できたとしています。しかし、これは、実に怪しい。というのは、彼女の入国と、国内潜伏場所までFSBが把握していたにもかかわらず、犯行を阻止できずに許してしまったという事になるからです。さらに、この女性は、既に国外退去をしているとされています。これ、本当だったら、相当にFSBが無能という話になります。実際、ロシア国内でも、FSBを非難する声が圧倒的に出ています。

これは、FSBが自分をピエロにしてでも、隠したい真実があるパターンに見えます。真犯人をウクライナ人とするのは、予定通りとして、これだけ詳細に動向を把握していながら、何もできなかったとなると、組織に対する信頼が無くなります。これが許されるのは、上司であるプーチン大統領を含めて、某かの示し合わせができていて、失態の責任を誰も取らされない事が判っている場合のみです。なので、これは、FSBの作り話と思われます。それに、謀殺事件で、こんなに早く犯人が割れるのも、どう考えても、おかしいです。
状況から見ると、動機はともかくとして、FSBが実行したのは、手口から間違いないように見えます。こうした、偽装爆弾テロ事件は、何かしらの罪を特定の対象に着せる為に、FSBが良く使う手です。未だ、疑惑で処理されていますが、チェチェンと戦争を始める時も、ロシア国内の団地に大量の爆弾を仕込んで、300人以上の犠牲者が出る爆破テロがあり、これをFSBがやったという有力な説があります。目的は、「チェチェン共和国がテロをロシアに仕掛けた」として、戦争を始める口実を、当時首相だったプーチン氏が得る為です。プーチン氏は、FSBの長官でもありましたからね。この事の真実は、未だに闇の中ですが、単なる陰謀論で済ませられない証拠が出ている話です。この事からも、一国が戦争を決意した時、その原因なんていうのは、捏造してでも作られるものだというのが判ります。信義を守っていれば、戦争が起きないという事は、ありません。

そして、もう一つ出てきた説が、ロシア国内のロシア人反体制武闘派組織による犯行というものです。ロシアに生活拠点を持つ人々の中には、親戚がウクライナ人だったりする人も多く、それなりに、今回の戦争に対して批判的な人はいます。そして、単に批判するだけでなく、武力闘争も辞さない人々も存在しています。実際に、国籍がロシア人で結成されたウクライナ義勇軍で、自由ロシア軍という部隊もあります。これは、戦争にあたって、自国のロシアではなく、ウクライナ支援に回った義勇兵の部隊です。ただし、ロシア国外ならともかく、統制の厳しいロシア国内で、テロ行為を起こせる程の組織化が進んでいないと見る向きが大勢で、この可能性が皆無ではないものの、かなり低いと見られています。

最後に、直前になって、暗殺対象者とみられるドゥーギン氏が、娘さんと同乗して帰宅する車に乗るのを止めた(別の車で同じ道を帰っています。なので、爆破事件が起きた時、現場に本人が立ち会っています)という、かなり不自然な行動から、ドゥーギン氏本人がFSBに依頼して、娘を爆殺した疑いも出ています。

この理由は、自身が唱える過激思想に、世論の同調を集める為、極右インフルエンサーとして、有名だった娘をテロを装って爆殺する事で、ウクライナに対する憎しみを煽るというものです。ちょっと考えると、まるで中世の陰謀物語みたいで、突飛に見えますが、思想に傾倒した人間というのは、おうおうにして、この程度の事はやります。私が、常々、思想家と宗教は双子のように似ていると言う根拠なのですが、特定の価値観の為に、全てを、それより下に見て、犠牲する事を厭わないという習性があるのです。まぁ、良く左翼のバカが「戦争を仕掛けられたら無抵抗で滅びればいいんですよ。世界は命がけで、平和を貫いた偉大な国として記憶してくれます。なので、武力で対抗してはいけません」なんて、言うのと同じですね。

無抵抗で滅びたら、「史上最も愚かな選択をした国」として、各国の教科書で笑われておしまいです。ただし、言っている本人は、思想的に傾倒しているので、割りと本気で言っていたりします。つまり、近親者や自国民であっても、思想の為に死ぬのは、気高い行為であり、かまわないと本気で考えていたりします。なので、大ロシア主義、ロシアによる世界帝国の構築という、かなりイカレタ自身の主張を通す為に、娘の犠牲というストーリーで、ウクライナに対する憎しみを煽るという事は、十分に考えられます。残念ながら、そういう思考の人は、確実に存在します。

日本の共産党でも、「思想の伝播や、資金の調達の為ならば、法律は破っても構わない」と考える輩は、普通にいて、集会や勧誘が禁止されている場所で、わざわざビラを配ったり、「資本家から革命資金という浄財を奪う為には、犯罪行為をして良い」と考える輩は、実際にいました。むしろ、自分達が支配していない社会の法律を破る事を、殉教者のように誇りにしていたりします。これが、実に宗教的なんですよね。そして、価値観を共有できない相手に対して、物凄く攻撃的になるのも似ています。

反戦平和とか言ってますが、終戦直後に国防軍が必要(共産体制を守る為に)と言っていたのは、日本共産党です。その後、アメリカと安全保障条約を結ぶにあたって、それにぶつける理由付けとして、反戦平和を持ち出しただけで、仮に共産思想の社会を作る為なら、普通に武力蜂起するというのが、もともとの思想です。後に抹消しましたが、初期の共産党の党是には、「武力蜂起による暴力革命」は、選択肢として認められていました。思想という尊い価値の為には、人が死ぬのは仕方がないという考え方は、特別珍しくないのです。

それと、最後に、私が昨日の記事で書いた、プーチン氏が、行き過ぎた過激思想で、市民を煽るドゥーギン氏を、政治的な判断で切ったという説ですね。戦争というのは、国民の支持が無いと継続できないので、その意味で「国士様」が増えるのは有り難いのですが、昨日の記事でも書いたように、国家間の戦争には目的があって、単に相手を蹂躙するような憎しみにまみれたものでは、そもそも仕掛ける意味が無いのです。政治家であるプーチン氏は、そのあたりはわきまえていますが、思想的指導者というのは、前項で書いたように、思想に溺れる傾向があり、非現実的な事を言い出す事があります。あるべき社会を見ているからで、時にプーチン氏さえ、「弱腰だ」と批判の矢を放ったりします。つまり、決して、有り難いだけの人物ではないという事ですね。

まぁ、この中では、「ウクライナの工作員が起こしたテロ」が、一番ありえないですかね。実際、ウクライナにとって、この行動で得るものが少なすぎます。先に攻め込まれているとはいえ、テロという犯罪認定される攻撃を仕掛けた場合、ウクライナの立場が悪くなりますし、国粋主義者に人気のある指導者を暗殺したら、社会が萎縮するより、ロシア市民の反発の動きのほうが大きくなるのは、予想がつきます。つまり、これで、ウクライナが得する事はなく、単なる私怨を晴らすみたいな効果しか無いという事です。』

プーチン氏の盟友・ドゥーギン氏暗殺未遂事件

プーチン氏の盟友・ドゥーギン氏暗殺未遂事件
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29490407.html

『ロシア国内で、またまた、きな臭い事件が起きました。プーチン氏の思想的なブレーンと言われている、国粋主義者の筆頭であるアクレサンドル・ドゥーギン氏の搭乗する車に爆発物が仕掛けられ、娘のダリアさんが爆死しました。恐らく、標的になったと思われるドゥーギン氏は、同じ車に搭乗する予定でしたが、直前に予定を変えて、死亡したのはダリアさんだけです。

このドゥーギン氏ですが、戦争推進派の筆頭であり、大ロシア主義を唱える思想家で、「現代のラスプーチン」と呼ばれる人物です。もともと、改革派だったのですが、ソ連崩壊と、その後のロシア社会の没落を目にして、ガチガチの右派に転向したという経歴の持ち主です。この日も、主催する戦意高揚の為の決起集会に参加して、帰宅する途中の出来事でした。

ラスプーチンについては、ここで説明するまでも無いですが、ロシア帝国時代に、ロシア皇帝一家に取り入って、たくみに処世術を駆使して、ロシア帝国の内政に大きな影響を与えた「怪僧」と呼ばれる僧侶です。もともと、医者が匙を投げた皇太子の病気を、祈祷で回復させた事で、ロシア皇帝一家の信任を得て、物凄い権力を得て、最終的には国政壟断を憂いた政府内部の勢力に暗殺された人物です。

この爆殺事件ですが、ロシアはウクライナが、やったと言っているのですが、どう考えても無理があります。そもそも、反転攻勢の気運が出ている時期に、ロシア国内の深部に人を派遣して、爆殺という手の込んだ暗殺を仕掛ける意味が不明ですし、余力も無いと思われます。それに、こうした工作は、KGBの後継組織であるFSBが、いかにもやりそうな事です。

このドゥーギン父娘ですが、いわゆるアジテーションが得意な交戦派で、やたら威勢が良いのですが、もちろん従軍経験はありませんし、戦争をデータだけで知っている典型的な煽り屋です。実は、軍のトップというのは、命令されれば戦争を始めますが、実戦の悲惨さを理解しているので、政治交渉で解決な可能な問題であれば、政治力で解決する事を望みます。立場上、日和るわけにはいかないので、言葉は強いのですが、軍人は合理主義者なので、特にロシア政府のように、ハッタリや駆け引きを軍事に持ち込まれる事を嫌います。

その為、無責任に国民を煽り過ぎる存在というのは、政府からしても、軍からしても迷惑だったりします。主戦論を唱える過激派が国民に増えると、それに見合う戦果を上げなくてはならなくなり、世論が交戦論で沸騰するのは、必ずしも歓迎すべき事ではありません。戦争の目的が、国の要求を認めさせる事にある以上、相手に対して憎しみのままに、虐殺やNATOやアメリカにまで喧嘩を売るような論を展開されると、戦争自体の意義が崩れてしまいます。

その為、恐らく、がなり立てるスピーカーが邪魔になった、プーチン氏が切ったのじゃないかと思います。娘のダリアさんも、わざわざ陥落したウクライナのマリウポリまで行って、自撮りした画像をSNSに投稿するぐらい国粋思想のインフルエンサーです。「ウクライナ人は、人間じゃないから、殺してもかまわない」と公言するタイプの人間ですので、もし暗殺の目的が、過激な主戦論者に口を閉じろというメッセージであるなら、どちらが死んでも仕掛けた側からすると、目的は達したと言えます。

昨日、中国の自称・国士である反米インフルエンサーが、実はアメリカに不動産を持っていて、家族もアメリカ住みしていたのがバレて、SNSからアカウント・バンされた話を書きましたが、がなり立てる扇動屋というのは、味方から見ても「無能な働き者」に見える時があり、おうおうにして、その無駄に高い扇動能力が、邪魔になってきます。少なくても、ヤクザ者が政府を運営しているので無い限り、戦争には目的があり、単に相手の領土を蹂躙すれば良いというものではありません。また、手打ちをするタイミングを計りながら、最終的には国家の利益の為にやっています。感情的に煽って、行き過ぎた戦果を期待させる扇動屋というのは、実に迷惑な存在なのです。

その為、暗殺の手段や、標的の選定からして、恐らくはFSBが過激な主戦派を黙らせる為に、見せしめとして、やった可能性があります。もしかすると、娘だけ殺して、まだ利用価値のあるドゥーギン氏に警告をしたのかも知れません。すると、同乗する予定だった帰りの車から、ドゥーギン氏だけ予定変更したのは、そう仕向けた可能性もあります。ロシア政府は、伝統的に、その程度の事は、普通にやりますので、政治に関する考え方が、西側諸国とは違います。反体制派のジャーナリストなんかは、クリムリン宮殿の見えるストリートで、普通に狙撃されて暗殺されています。そうした人は、年間で何人という単位で出ています。』

反米を売りにしていた中国人インフルエンサーの末路

反米を売りにしていた中国人インフルエンサーの末路
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29484088.html

『————– 引用 ————
20日、台湾連合報によると、ペンネーム「司馬南」で活動し、極端な反米主張や強硬な民族主義志向で知名度を高めてきた論客の於力氏(66)が2010年に米国で住宅を購入していた事実が明らかになり、20日正午から同氏の中国内の主要オンラインコミュニティアカウントが使用停止を受けた。

フォロワー309万人に達する同氏の微博には21日現在「関連法律規定を違反したためこのアカウントは使用停止状態になった」という告知が出ている。
————– 引用 ————-

どの国にもいるのですが、ナショナリズムを煽って、生計をたてている人気の中国人インフルエンサーが、実はアメリカ移住を視野に入れて、米国に不動産を持っていた事がバレて、300万人越えのフォローワーを抱えていたSNSからアカウント・バンをくらったようです。

中国の義務教育は、特に歴史や道徳については、政治でもあります。歴史は真実である必要は、ありませんし、道徳は多分に個人に対する崇拝を要求します。論理的な分析とは無縁の世界で、少しでも日本より、アメリカよりの話を授業ですると、生徒が録音していて、それで密告を受けて精神病院に隔離された教師というのは、何人もいます。また、昔は毛沢東でしたが、今は道徳の時間に教わるのは、習近平思想という劣化版の中華思想です。背後に毛沢東を戴く事で、権威付けをして、習近平個人を崇拝する子供を育てようとしています。

———- 引用 ———-
於力氏は普段から「米国は全世界の敵で、各国を搾取する巨大な腫瘍の塊り」と主張し、愛国主義に便乗してスターに浮上した。フォロワーだけで微博307万人、ショート動画プラットフォーム「抖音(TikTok)」2203万人、ニュースプラットフォーム「今日頭条」1031万人など3500万人を超えるほど中国の世論形成に影響を及ぼしている。
———- 引用 ———-

まぁ、いわゆる愛国闘志だったわけですが、実は、こういう表舞台に出てくる人ほど、個人の権利が一番無視されているのが中国で、アメリカのほうが数倍もマシである事を知っています。中国国内で、いくら蓄財しても、中国共産党の気分一つで、いきなり財産が没収されて、刑務所に叩き込まれる可能性があります。実際、行方不明になった富豪もいます。特に、数年前に起きた上海株の暴落の時には、空気を読まずに、相場観を語ったカリスマ・トレーダーが、当局に拘束されて行方不明になっています。まぁ、党を挙げて「株を買い支えろ」と言っていた時期に、まっとうな相場分析で、売れと言ってしまったんですね。中国社会では、罪の重さは、知名度・影響力に比例するので、罪自体が単なる失言であっても、それが中国共産党の意向に反すると、タダではすみません。

最近でも、安倍首相が暴漢に襲われて亡くなった事を伝えた時に、思わず涙を流してしまった女性アナウンサーが攻撃の的になり、職業を追われた上に、自殺未遂をするところまで追い詰められました。これも、大衆の目に触れる職業の人間が、哀悼の感情を示してしまった事が問題になっています。共産党は、現実よりも、どう見えるかが重要なので、軍事パレードは派手にやるし、やたら恫喝を繰り返します。なので、目立つ立場の人間が対応をシクジルと、地獄が待っています。何しろ、政権の中で一番力があるのが、「宣伝部」つまり、事柄をどう伝えるかを考える部署です。

12年程前に、25万7000ドルで購入した不動産は、このところのアメリカのインフレを受けて、58万ドルと2倍以上に高騰していて、これもフォローワーの反感を買った模様です。実際、この不動産には、妻と娘が住んでいて、アメリカで生活をしています。つまり、中国国内で、なにがしかの手段で成功した人間は、カナダやアメリカに不動産を買って、いつでも脱出できるように準備しているという事です。』

建設途中で解体する高層マンションが中国で増える

建設途中で解体する高層マンションが中国で増える
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29475034.html

『 場所などの要件をはずして考えると、既に中国での居住可能な部屋数というのは、34億人分あると言われています。つまり、過剰供給です。最近、中国の不動産部門が、総崩れになっているのには、習近平政権の不動産投機抑制政策という面もありますが、もともと市場が飽和してきたという事があります。不動産ディベロッパーというのは、最初に借金をして、土地の取得・建物の建設を始めるので、基本的に常に借金を抱えている状態です。それが、ディフォルトの財務状態と言って良いでしょう。

中国の不動産は、所有権を売るのではなく、国から借地権を販売する事になります。なので、不動産価格の半分は税金と言われています。所有者が国である事は、変わりません。このお金は、土地を賃貸した時点で収めないといけないので、どうしても借り入れが先行します。そして、借り入れた金というのは、金利が発生するので、なるべく短い期間で建築を終わらせ、売り捌いてしまわないと、不動産ディベロッパーの利益が削られる事になります。

中国の不動産が、設計図と模型の時点で販売を始めるのは、この借入金を減らす為ですし、手抜き工事が疑われるほど、建てる早さを競うのは、一日の工程の遅れが、すなわち損に繋がるからです。そして、自治体の大きな収入源が、この土地の賃貸で入ってくる税収です。そして、今まで、土地と不動産はバブルで上がる一方だったので、中国のGDPは短期間で膨張したわけです。まぁ、世界2位のGDPとか言っても、内需の弱さを指摘される歪な構造になっています。昔、日本のバブルが絶頂の時に、アメリカ全土が買えるとか言われていたのと同じです。実は、余り意味の無い数字です。

既に先が見えた不動産需要で、多くの建設工事が止まったまま放置されています。既にローンを組んでいるのに、不動産が完成せず、顧客がローンの支払いを拒否し始めたのは、以前の記事で詳しく紹介しました。そして、この放置が数年~十数年に及ぶ、骨組みだけの高層マンションが、危険である事から、爆破解体され始めています。一応、支柱と外壁までは完成しているので、窓が取り付けられず、コンクリート剥き出しの棟が、ダイナマイトで何十棟という単位で爆破されています。住居可能な人数でいうと、万単位の世帯の建物が、一度も使用される事なく解体されるわけです。

実は、この爆破解体で、何の価値も生み出さない建造物でも、GDPは押し上げます。お金が動くと、GDPに加算されるので、爆薬の代金・解体業者へ払った費用・瓦礫の片付けなど、費用のかかるものが、全てGDPに加算されます。なので、理屈だけで言うと、新築の建物を建てて、完成直後に爆破解体すると、GDPは最短の効率で上がる事になります。実際、中央に報告する書類の数字を整える為に、これをやった地方自治体も存在したりします。なので、GDPを競っても仕方無いと、最近では言われるようになってきています。広い中国で、土地バブルが起きて、値段が上がれば、何もしなくてもGDPが大幅に上がるからです。』

ミャンマー  国連特使訪問も国軍支配正統化に利用される懸念

ミャンマー  国連特使訪問も国軍支配正統化に利用される懸念 強まる弾圧のなかで“スーチーカード”も
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze

『(ミャンマーのミンアウンフライン国軍最高司令官(右)と握手する国連のヘイザー事務総長特使=ネピドーで2022年8月17日、国軍提供・AP【8月18日 毎日】)

【無策の国軍支配のもとで物価上昇に苦しむ市民】
コロナ禍やウクライナ情勢の影響もあって、食料・燃料などの物価高騰や貧困に苦しんでいるのはミャンマーだけでなく、世界の多くの国で見られることです。

ただ、ミャンマー軍事政権にそうした市民生活困窮に対応する統治能力がないことも事実であり、市民生活はその苦しみの中に放置されたままになっています。

****ミャンマー、主食米価格4割上昇 政変後の生活直撃****
国軍がクーデターで全権を掌握したミャンマーで物価上昇が加速している。

ミャンマー人の主食であるコメの市場価格は平時より4割高い水準に達した。外貨不足で現地通貨チャットの価値が下落し、日用品や他の食品の値上がり率も大半の品目で2桁以上だ。物価上昇で人々は消費を抑え、景気がさらに悪化する悪循環に陥っている。

店は「掛け売り」対応も
8月上旬、最大都市ヤンゴンの公設市場。「政変を期に状況は完全に変わった。モノは全然売れないのに物価は上がるばかりで、一体どうすればいいのか」。雨季特有の激しい雨が降るなか店番の女性(50)はこう話した。

この店の収入で学齢期の子ども7人を含む13人の世帯を養っているという。「普段の食事から肉を減らして何とかやりくりしている」と明かした。

店の売り上げは政変以前の半分以下に落ち込んだ。買い物客も物価高で困窮しているため、掛け売りにして顧客の給料日まで支払いを待つ。「売上高を確保するには仕方がない」と話す。

ミャンマー中央銀行は公定為替レートを1ドル=2100チャットとしているが、実勢を反映する市中両替商のレートは同3000チャット近くまで一時下落した。チャットの価値は政変前に比べて約半分となり、輸入品の価格を押し上げている。

ミャンマー当局によると消費者物価指数(CPI)は4月に前年同月比17.8%上昇した。世界銀行は2022年度(21年10月~22年9月)のCPI上昇率が15%に達すると予測している。だが直近の生活実感はこれよりも格段に厳しい。

通貨安で物価高、一般世帯向けパーム油は3倍

物価上昇は主食米に広がっている。ヤンゴン市内の米屋によると、主要品種の価格は8月中旬時点で1ビス(ビスはミャンマーの伝統単位で約1.6キログラム)あたり3900チャット(約250円)と、政変前に比べ44%も上昇した。

国内で生産するコメの価格は政変後も比較的安定していたが、6月から7月にかけ急速に値上がりしたという。店主は「こちらが希望する量のコメを仕入れられない」と話す。物流事情の悪化や生産減少による供給停滞のほか、肥料や燃油の高騰が価格を押し上げている可能性がある。

国外からの輸入に頼る食用油の値上がりも顕著だ。一般世帯が料理に使うパーム油の卸売価格は1ビス9400チャットと政変前の約3倍になった。価格統制を試みる当局が8月初旬に設定したパーム油の卸値の「参照価格」は3525チャットだが、ほとんど機能していない。ある小売商は「参照価格で調達できるのは政権に近い人々だけだ」とこぼした。

政変前に750チャット前後だったガソリン(オクタン価95)の価格は8月15日時点で2445チャットまで上昇し、タクシーや物流事業者の営業に影響が出ている。

人口の4割が貧困線以下の生活

零細店舗向けに流通事業を手掛ける日系スタートアップが取り扱う商品の価格をみると、物価上昇が幅広い品目に及んでいる。21年1月から22年8月初旬にかけて食用油は3.2倍、粉末飲料は2倍に値上がりした。非食品では蚊取り線香やろうそくなどの家庭雑貨が2.4倍、洗面用品は2.2倍になった。

現地大手スーパーでの小売価格も一部商品で価格の変動を調べた。21年3月と22年8月では、同一ブランドの食用油が2.5倍、インスタント麺は2.3倍の価格になった。ツナ缶詰は60%、ビールは25%値上がりしている。

今のところスーパーの商品が途切れる事態にはなっていないが、一部の商品は欠品していた。国軍当局が外貨不足で民間企業による輸入量の制限を強めており、その影響が出ているとみられる。

世界銀行が7月に公表した最新の推計では、ミャンマーの人口の4割が貧困線以下の生活を強いられている。物価上昇で人々は生活費を切りつめ、さらなる所得低下を招く。この悪循環をどう断ち切るか、見通しは立っていない。【8月22日 日経】
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【活動家処刑に批判を強めるASEAN】

そうした状況にあっても国軍は民主活動家死刑執行など、民主派への厳しい弾圧姿勢を変えようとはせず、通常は加盟国の内政は問題視しないASEANにあっても、ミャンマー国軍幹部が会議に出席することを禁じるなど、ミャンマー国軍の頑なな姿勢に批判が強まっています。国軍はこれに反発。

****ミャンマー軍、会合締め出しでASEAN非難 「外圧に屈した」****
ミャンマー軍事政権の報道官は17日、東南アジア諸国連合(ASEAN)が同国軍の幹部を地域会合から排除したことについて「外圧」に屈したと非難した。

ゾー・ミン・トゥン報道官は定例会見で「一国の代表が空席であるならば、ASEANサミットと銘打つべきではない」と述べた。

ASEANはミャンマーに対し、昨年合意した5項目の和平計画を順守するよう求めており、軍事政権が民主活動家4人の死刑を執行したことを非難している。

ASEANは、ミャンマー軍幹部が会議に出席することを禁じる一方、軍事政権は政治家ではない代表を派遣する案を拒否している。

軍事政権報道官は、ミャンマーは和平計画の実施に取り組んでいると説明。ASEANは「外圧」に屈し、国家の主権問題に不干渉であるという独自の方針に違反していると述べたが、詳しくは語らなかった。【8月18日 ロイター】
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【初の国連特使も国軍支配正統化に利用される懸念も】
民主派への対応で中心となるのは拘束中のスー・チー氏の処遇です。

****スーチー氏、汚職罪で禁錮6年 ミャンマー裁判所が判決=関係筋****
軍事政権下のミャンマーの裁判所は15日、民主化指導者アウンサンスーチー氏(77)を4件の汚職の罪で禁錮6年の判決を言い渡した。事情に詳しい関係筋が明らかにした。
スーチー氏は、汚職や選挙違反など少なくとも18件の罪で起訴されており、刑期は最長190年近くに及ぶ。スーチー氏はいずれの罪も否認している。

関係筋によるとスーチー氏は15日、保健と教育を促進するために設立した「ドーキンチー財団」の資金を住宅建設のために不正使用し、政府所有地を割引価格で賃貸したことで有罪となった。

首都ネピドーの刑務所の独房で拘束されているスーチー氏は、他の罪で既に11年の禁錮刑を言い渡されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィル・ロバートソン氏は、スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)にも言及して「これはスーチー氏の権利に対する大規模な攻撃であり、スーチー氏とNLDを永遠に葬り去ろうとする作戦の一部だ」と述べた。(後略)。【8月15日 ロイター】
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16日は国連特使が初めてミャンマーを訪問し、民主活動家の処刑停止やスー・チー氏釈放などを求めています。

****国連特使、ミャンマー国軍トップと会談 死刑執行の一時停止要請****
ミャンマー問題を担当する国連のヘイザー事務総長特使は17日、首都ネピドーで行ったミンアウンフライン国軍最高司令官との会談で、暴力停止のほか今後の死刑執行の一時停止などを要請した。国連特使がミンアウンフライン氏と会談したのは昨年2月のクーデター後初めて。

国連によると、ヘイザー氏は会談で今回の訪問目的を、国連の懸念を伝え、紛争と人々の苦しみを軽減するために必要な具体的措置を提案するものだと説明。「国連の関与は(国軍の統治に)正当性を与えるものではない」と強調した。

刑事裁判中のアウンサンスーチー氏との面会や、スーチー氏を含む収監中の全ての政治犯の釈放も求めた。国連は、ヘイザー氏と国軍幹部が今後も率直な話し合いをすることに同意したとしているが、ミンアウンフライン氏がどう応じたかには言及していない。

一方、ミャンマー国軍側は、国連と「いかに信頼を深め協力を進めるか意見交換した」と発表した。ヘイザー氏は17日に国軍側が外相に任命したワナマウンルウィン氏とも会談。ミャンマー外務省はワナマウンルウィン氏が「国連がミャンマーと協力する際は建設的で実際的な検討が必要だ」と強調したとしている。【8月18日 毎日】
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特使は「国連の関与は(国軍の統治に)正当性を与えるものではない」とはしていますが、国軍側は国連特使ヘイザー氏との会談によって統治の正当性をアピールしたい考えです。

民主派勢力の国民統一政府(NUG)の副外相は「今は適切な時期ではない。国軍を(政権として)認識しないよう細心の注意をすべき時だ」と懸念を示しています。

【再び“スーチーカード”か】
これまで頑なな姿勢を貫いてきた国軍側が、ここにきてスー・チー氏処遇について、やや柔軟対応もにおわすような発言を。

****スー・チー氏、判決後に自宅軟禁に移行も 国軍トップが表明****
ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン総司令官は19日、国家顧問兼外相だったアウン・サン・スー・チー氏(77)の処遇について、訴追中の容疑の全てに判決が出た後に刑務所から自宅軟禁に移すことを検討する考えを示した。(中略)

スー・チー氏は昨年、国軍によるクーデターを受け拘束された。その後、収賄や選挙違反など少なくとも18の罪状で訴追され、うち数件ですでに計数年の禁固刑などの判決が出ている。国軍によると、同氏の身柄は今年6月に首都ネピドーの刑務所の独房に移された。同氏は訴追された容疑の全てを否認している。

国営テレビで読み上げられたミンアウンフライン氏の声明は、「この件は全ての判決が出た後で検討する。(スー・チー氏には)強力な容疑を立件していない。もっと強い対応を取ることもできたが、寛大な処分にした」としている。【8月21日 ロイター】
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国連特使との会談が影響しているのかどうかはわかりませんが、あまり大きな期待はしない方がいいかも。
“あいまいな態度で譲歩の姿勢を見せることで、国際社会に対する交渉カードに使う狙いがあるとみられる。”【日系メディア】との指摘も。

スー・チー氏の処遇は、民主化以前の軍事政権時代、スー・チー氏が長年にわたり自宅軟禁されていた時代から、つねに対外交渉用の「カード」として利用されてきました。

国際批判が高まるとスー・チー氏処遇を緩め、国際社会からの批判を軟化させ、しばらくしたら再び軟禁を強めるといったことを繰り返してきました。

仮に、今回スー・チー氏の処遇がやや緩められたとしても、そうした国際交渉の一環であり、弾圧姿勢自体を変えるつもりはないように思われます。

【強まる国軍の弾圧姿勢】
国軍の弾圧姿勢はむしろ強まるようにも見えます。

複数の現地メディアによれば、国軍の統制下にある選挙管理委員会が、国内の全ての政党に対し、外国人と許可なく接触した政党は抹消するとの命令を出したとのこと。この命令によれば、今後は外国人と政治家の面会は許可制となり、面会自体が禁じられたり、当局が政治家の動向を監視下に置いたりする懸念が高まっています。

また、民主派による抵抗運動にとって不可欠なSNSへの統制・制限も強化されています。

****ミャンマー軍政、フェイスブックを制限 自前のSNS設立などで情報戦対策へ****

<民主派の情報があふれるネットを遮断させるためにはSIMカードの課税強化まで>

軍事政権による民主派への強権弾圧が続くミャンマーで、軍政が国内のインターネットの接続制限に乗り出したことが明らかになった。

特にターゲットとしているのがSNSのFacebookで、「しばしば民主派に利用されている」として今後制限を強化するとともにFacebookに代わる自前のSNSを創設する考えを示すなど締め付けを強化する方針だ。

これはゾー・ミン・トゥン国軍報道官が8月17日に明らかにしたもので、反軍政の民主派は「表現の自由」に反する行為だとして反発している。独立系メディア「イラワジ」が伝えた。

ミャンマーでは2021年2月1日のクーデター発生以降、軍政によるメディアやSNSの制限や遮断で民主派の活動、情報発信を警戒する弾圧が続いている。

軍政による人権侵害や市民への拷問、虐殺などの情報、ニュースは独立系メディアによって国内外に伝えられているが、こうしたメディアで働くミャンマー人記者らはタイなどの隣国に逃れて報道を続けるか、国内の国境周辺で軍と戦う少数民族武装勢力の支配地区などに潜伏して活動を続けており、インターネットは「命綱」となっている。

SNSは反軍政の牙城と批判

ゾー・ミン・トゥン国軍報道官はSNS、特にFacebookはクーデター以降、軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官のアカウントを閉鎖し、国軍の公式ページや軍幹部の個人アカウントも次々と閉鎖するだけでなく、軍が所有する企業の広告掲載も拒否している、と批判。

そして「反軍政の勢力が暴力を扇動する重要なチャンネルとなっている」と反軍政の牙城となっていることが明確でこのまま放置しておくのは問題だと指摘している。

「Facebookの掲載基準は一体どこにあるのか、なぜ個人のアカウントや広告掲載を消去するのか」とゾー・ミン・トゥン国軍報道官は疑問を口にして怒りを露わにした。

自前のSNSを設ける方針

そのうえで同報道官は今後Facebookに代わる軍政自前のSNSを創設する方針を示した。しかしいつどのような形で創設するのか詳細には言及せず、早期の実現は難しいとの見方も出ている。

軍政はクーデター以降、インターネットや携帯電話を頻繁に遮断、制限してきた。特に武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」や少数民族武装勢力と軍による激しい戦闘が繰り広げられている地域や地方でこうした通信網の妨害を行って反軍勢力の情報交換や連絡を遮断してきた。

さらにFacebookやインスタグラムなどのSNSの監視も強化して、反軍政活動の動画や写真、コメントをアップした人物を特定、電子情報法違反や扇動罪などで逮捕している。

加えて軍政はSNSに接続するために必要な携帯電話などのSIMカードの税金も値上げして市民の購入を難しくするという苦肉の策も講じており、なんとかしてSNSにあふれる反軍政の情報発信を抑え込もうとしている。

情報戦で劣勢の軍の焦り

中心都市ヤンゴンではインターネット接続がしばしば遮断されるが、これが軍政による意図的な妨害の一環なのか、単なる接続会社などの技術的問題なのか判然としない、とヤンゴン在住の日本人は話す。

独立系メディアもインターネット上で軍による無抵抗、無実、非武装の一般市民の拷問や虐殺の惨い写真や映像で実態を暴露するために積極的に情報をアップしている。

さらにドローンを使った軍への攻撃の様子もアップして攻勢をアピールするなど、インターネット上の「情報戦」は民主派が圧倒しているのが実態だ。

このように反軍政の民主派による抵抗運動には携帯電話とインターネットが必要不可欠となっており、今回の措置は、その制限や遮断に本格的に軍政側が乗り出そうとしていることを示している。

クーデターから1年半を経過しても国内の治安安定達成には程遠い状況で、各地で軍とPDFや少数民族武装勢力による戦闘が毎日のように続いていることに対するミン・アウン・フライン国軍司令官ら軍幹部の焦燥感が表れているのではないかとの見方が有力だ。【8月23日 大塚智彦氏 Newsweek】
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ウクライナ問題のように世界の関心を集めることはありませんが、ミャンマーなど多くの国で圧制・弾圧に苦しむ市民が多く存在します。

****軍政批判のミャンマー国連大使「ウクライナもミャンマーも苦しんでいるのは市民だ」****

ミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使は19日、読売新聞のオンライン取材に応じ、ノエリーン・ヘイザー国連事務総長特使が初めてミャンマーを訪問したことについて「国軍に(統治を存続させるために)利用されかねない」と懸念を示した。

国軍による昨年2月のクーデター以前に着任した大使は、軍政への批判を続けている。大使は「国軍は国際社会と向き合っているように見せかける一方、市民を殺害している。特使を受け入れたのは国軍の戦術だ」と指摘。弾圧を止めるには「圧力が必要だ」と述べた。

特使と国軍トップの会談を巡り、国軍側が統治の正統性を示すものだと主張していることには「国際社会はミャンマー国民の声を聞いてほしい」と述べ、軍政を認めないよう訴えた。

大使は、ロシアのウクライナ侵略に関心が集まりがちだが、「ウクライナもミャンマーも苦しんでいるのは市民だ。国際社会はミャンマーのことも忘れないでほしい」と求めた。【8月20日 読売】
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