[FT]経済の大動脈、世界の河川の水位が記録的な低下

[FT]経済の大動脈、世界の河川の水位が記録的な低下
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB230P10T20C22A8000000/

 ※ アメリカでもか…。

 ※ 山火事騒ぎは、聞いていたが、水運にまで支障が出ていることは、知らんかった…。

『工場は操業を停止し、農作物の収穫は壊滅的な打撃を受けている。貨物船は積載量を減らして運航せざるを得ず、停電のリスクに直面する住民は数百万人にのぼる――。米国、欧州、そして中国が干ばつに見舞われ、河川の水位が記録的水準にまで低下した結果、各地で深刻な影響が出ている。

米国では、南西部で「メガドラウト」と呼ばれる大規模な干ばつが長く続いており、地域の不可欠な水資源であるコロラド川流域の水位が過去最低水準に低下した。そのため、米政府は内務省開拓局を通じて今後1年間の割当水量をアリゾナ州は21%、ネバダ州は8%削減するよう指示した。

長江、中国では水力発電への影響で工場が操業停止

中国では水力発電の出力が低下し続け、トヨタ自動車や台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)などの企業が少なくとも1週間工場の操業を停止した。アジア最長の川、長江(揚子江)が流れる四川省は水力発電に大きく依存している。その長江は8月としては過去最低の水位を記録した。その結果、同国にとって最も重要な水路による貨物の輸送にも支障が出ている。

中国・重慶を流れる長江の支流では、水位の低下で川底が見えるところも出ている=ロイター

異常な暑さと乾燥に苦しむ欧州では、ドイツ、スイス、オランダの産業界が頼みとする大動脈ライン川の水位が低下している。貨物船は積載量を減らして運航せざるを得ず、運送費の上昇と物流の停滞を招いている。一部で恵の雨が予想されていたが、その影響は限定的と見られる。
ライン川、欧州の貨物船は積み荷を減らして運航

欧州宇宙機関によると「スイスアルプスを源流として北海にそそぐライン川は、穀物から化学製品、石炭など多くの製品を運ぶ重要な輸送ルートとなっている」という。「川の水位が下がると、貨物船は座礁しないように荷重を下げて運航しなくてはならない」

ドイツ・ライン川の水位低下で操業できなくなったフェリー=ロイター

イタリアでは深刻な干ばつは農業部門に打撃となっている。経済的に重要なポー川の水位が異例の低さを記録したためだ。

干ばつは複雑な事象で、時には農業あるいは水資源分野での現象を意味するなどさまざまな定義があり、必ずしも明確に気候変動の影響と関連づけることはできない。とはいえ、2022年は世界各地で異常な高温と乾燥が長期化し、それに伴って河川の水位が低下しているため、その影響はますます顕著になっている。

例えばアルプス地方では、氷河が溶けると温暖化の影響が大きくなる。黒っぽい岩が露出して乾燥すると太陽の熱を反射するのではなく、吸収してしまうためだ。

「干ばつの定義は簡単ではないし、すべての干ばつが同じというわけでもない」と英国王立気象学会の最高責任者であるリズ・ベントレー氏は指摘する。「気候変動によって降雨の変動幅が大きくなり気温が上昇するとみられ、今後水の管理が難しくなる可能性がある」
コロラド川、米国西部の水使用は「限界近い」

米国では、干ばつが数十年続いているためカリフォルニアなどの州ではここ数年、水の使用制限を課すなど苦闘が続いている。22年は、ネバダやアリゾナ、カリフォルニア州などにとって重要なコロラド川流域の水位が低下しているため、当局は水力発電の電力不足による停電の可能性について警告を発した。

米国南西部で長く続くメガドラウトの影響で記録的な低水位となったコロラド川流域のパウエル湖=ロイター

米内務省のトミー・ボードロー副長官は「米西部地域で長く続く干ばつは我々の市民社会と国家が直面する最大の課題の一つだ」と記者会見で述べた。

「干ばつの危機が高まっているのは、猛暑や異常降雨など気候変動の影響によるもの」と指摘し、米国西部の約93%が干ばつまたは異常な乾燥状態にあるとした。

米開拓局のカミール・カリム・トゥートン長官は、現在の水使用のシステムは「限界に近づきつつあり」、コロラド川水系に依存する州は水の使用量を大幅に削減する必要があると警告した。

米海洋大気庁によると、22年1~6月は上半期としては過去6番目に暑い期間となった。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」によると、21年までの7年間は過去最高の暑さだったという。

国連の科学者グループの報告書では、世界の平均気温は産業革命前に比べてすでに約1.1℃上昇しており、すべての国が明日から温暖化ガスの排出を実質ゼロにしても、しばらくは気温の上昇が続くという。
世界経済に大きな負担をかける異常気象の継続

科学者は異常気象が続くと予想しており、その結果として世界経済やインフラ設備は今後も大きな負担を強いられることになるとみられる。

ジェット気流が変化したことで北半球では熱波や山火事、干ばつが起こり、ラニーニャ現象が立て続けに起こるという異常気象のおかげで南半球の住民は洪水や季節外れの寒さを経験している。オーストラリアや南アフリカでは大きな洪水が起きた。ニュージーランドでは8月中旬の集中豪雨により推定1200人が避難を余儀なくされた。

スイス再保険の8月初旬の発表によると、22年上半期の自然災害による世界の推定損失補償額は350億ドル(約4兆8000億円)で、過去10年間の平均を22%上回ったという。気候変動の影響は異常気象の増加に明確に表れていると指摘した。

「過去6カ月の過酷な気象現象は、自然災害がすべての地域で、頻度及び深刻さがともに増していることを改めて示した」。同社で災害危機を担当するマージン・ベルトグ氏は結論づけている。

By Camilla Hodgson and Steven Bernard

(2022年8月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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