オーストラリアで多国間演習 中国けん制 自衛隊初参加

オーストラリアで多国間演習 中国けん制 自衛隊初参加
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM193OH0Z10C22A8000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『シドニー=松本史】オーストラリア空軍が主催し、日本、米国、英国など計17カ国が参加する多国間軍事演習「ピッチブラック」が19日、豪北部で始まった。航空自衛隊によると、日本は初参加。9月8日までの約3週間、防空戦闘や空中給油を訓練する。インド太平洋地域で海洋進出の動きを強める中国をけん制する狙いがある。

ピッチブラックは隔年での実施が基本。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年は見送られたため、4年ぶりの開催になった。合わせて2500人の要員と、100機の航空機が参加する。航空自衛隊からの約150人、「F2」戦闘機6機を含む。

ドイツ空軍は6機の主力戦闘機「ユーロファイター」を初めて、インド太平洋地域に派遣した。演習後の9月下旬には日本にも寄る見通しだ。

豪空軍幹部は19日の声明で「ピッチブラックは戦闘機による戦闘を想定した大規模な訓練だ」と指摘。そのうえで「今年は多くの参加国の間で空中給油能力を向上させる重要な取り組みが実施されている」と主張した。

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日中首脳会談を「検討」 林外相表明、秋の実現探る

日中首脳会談を「検討」 林外相表明、秋の実現探る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194NS0Z10C22A8000000/

『日中両政府は岸田文雄首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席による首脳会談の調整を始めた。国交正常化50年の節目を9月に控え関係の改善を探る。林芳正外相は19日の日本経済新聞とのインタビューで会談の実現に向け「具体的に検討する」と表明した。

首相と習氏の対話は2021年10月の電話協議以降ない。対面での首脳間の協議は19年12月以降開いていない。

日中両政府は対面やオンライン、電話での協議など形式を含め検討する。現状では今秋のオンラインでの協議が有力だ。11月にインドネシアで開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の場など日中以外の第三国で会談する案もある。

中国は4日、ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発し台湾周辺で大規模な軍事演習を始めた。日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルが5発落下した。

林氏は中国の行動を非難したうえで「こうしたときこそ意思疎通が重要だ」と言及した。「建設的で安定的な日中関係を双方の努力で構築する必要がある」と語った。

17日には秋葉剛男国家安全保障局長が中国・天津で中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員と7時間会談をした。日中間の対話を継続する方針を確かめた。

【関連記事】

・日中首脳会談、オンラインや第三国案 国交正常化50年
・林外相インタビューの要旨
・日中、対話継続で一致 国交正常化50年を前に高官会談

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中ロ首脳、9月に直接会談も 米紙報道

中ロ首脳、9月に直接会談も 米紙報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19CX00Z10C22A8000000/

『【ニューヨーク=西邨紘子】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が9月15~16日にウズベキスタンのサマルカンドで開催される上海協力機構(SCO)年次総会に対面での参加を検討しているようだ。19日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が関係筋の話として伝えた。同会議にはロシアのプーチン大統領も対面での出席を予定しており、近く中ロ首脳の直接会談が実現する可能性がある。

習氏の対面出席は8月のペロシ米下院議長の訪台後に検討が始まったという。中国は台湾問題を巡り米国と対立を深めており、ウクライナ問題で欧米と対立するロシアや親ロシア派諸国とのつながりを深める目的とみられる。

関係者によると、9月のSCO会議中に習氏はインド、パキスタン、トルコの各首脳と個別会談する方向で調整が進んでいる。プーチン氏と習氏は今年2月、ロシアによるウクライナ侵攻の直前に北京で会談している。

18日には20カ国・地域(G20)議長国インドネシアのジョコ大統領が米メディアに対し、11月に同国内で開かれるG20首脳会議(サミット)に中ロ両トップが対面で参加する予定と明かし、直接会談の可能性が浮上した。ただ、プーチン氏のサミット出席には欧米諸国が強く反発している。

SCOは中ロが主導する地域協力組織。旧ソ連と中国国境地帯の安全保障を目的に2001年に発足した。近年は地域の軍事問題や貿易問題などを取り扱う。』

狙われる自民党総裁選 世論分断に中国・ロシアの影

狙われる自民党総裁選 世論分断に中国・ロシアの影
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE125X70S2A810C2000000/

『「日本の政治に本気で影響を与えようと思ったら、日本国籍を取得するより自民党員になる方が簡単だ」。中国共産党員の一人は真顔で話す。

もし与党・自民党の党員になって総裁選に参加すれば事実上、首相選びに関わることができる。

自民党は入党資格として「満18歳以上で日本国籍を有する方」と掲げる。実際は身分証明書の提示といった厳格な確認をしない例もあるという。過去には党員になった覚えのない人に総裁選の投票用紙が届く「幽霊党員」問題が指摘された。

いま自民党は国会議員1人あたり年1000人以上の新規党員の獲得をノルマとして課す。党勢拡大のための活動も行き過ぎれば危うさをはらむ。

中国は民主主義の脆弱な部分を突く。それは権威主義的な国の特徴でもある。トランプ氏が勝った2016年の米大統領選はロシアの介入が取り沙汰された。

「オルタナ右翼の台頭、ブレグジット国民投票の可決、トランプ大統領の誕生。16年の主要イベントは裏ですべてつながっていた」

SNS(交流サイト)などのデータを駆使してトランプ氏が当選するよう大がかりな世論誘導をしたと内部告発したクリストファー・ワイリー氏は著書「マインドハッキング」で明かす。

同氏は16年6月の英国での欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票について、半年後に迫った米大統領選の予行演習のような位置づけだったと告白する。トランプ氏支持へと誘導する過程で、ロシア情報機関が関わったとも証言する。

事実なら16年や20年の大統領選での米国社会の分断状況をみるにロシアの情報戦は成功したといえる。

日本でも21年の自民党総裁選は異様な盛り上がりをみせた。

SNS上で高市早苗氏と河野太郎氏の支持者とみられる人が互いに批判し合う書き込みが目立った。党内が分裂しかねないと懸念した高市氏自身が「(総裁選は)たとえ正反対の意見であっても尊重し合う場です」と沈静化を呼びかける事態になった。

公安調査庁の元幹部は「証拠は見せられない」と断った上で、党内対立をあおる投稿は中国発が多かったと語る。発信は北京時間の午前9時から午後5時の間が目立ち、組織的な関与を裏付けると話す。

次の総裁選は岸田文雄首相が党総裁の任期を終える24年9月までにある。

この年は東アジアの民主主義を混乱させたい勢力にとって標的にしやすい時期に当たる。1月に台湾総統選、4月に韓国で国会議員を決める総選挙、11月に米大統領選があるからだ。

自民党は次期総裁選前に外国籍の人の不正な入党を防ぐ本人確認システムの導入を検討する。首相官邸も外国の諜報(ちょうほう)活動から守るカウンターインテリジェンスに力を入れ始めた。

それでも悪意を持って日本を狙う勢力への防波堤として十分とはいえない。

新型コロナウイルス禍で露呈したように、権威主義的な体制に比べて民主主義は意思決定に時間がかかる課題もある。「それでも民主主義には価値がある」と説くには備えが必要だ。

SNSが身近になるほど外国勢力による世論の分断工作は人ごとでなくなってきた。どんな人の心にも社会を分断する芽は潜む。あおられやすい環境だと個々が自覚し冷静さを保つことが第一歩になる。

(島田学)

【関連記事】

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

中国やロシアが日本の国会議員選挙に介入しようと思った場合、何をどうすればいいかなかなか判断がつかないだろう。無論、「親中派」を当選させるようにし、「嫌中派」を非難したり、あるいは与党を混乱に陥れるようなスキャンダル映像なり言説なりを流すことはあろう。しかし、大統領選に比べれば、議会制民主主義を採る日本への選挙介入は容易ではない。だとすれば、もっとも簡単なのは自民党総裁選になる。中国に都合のいい候補を応援するとか、あるいは混乱させるとか、様々な工作がフェイクニュース、議論誘導、さまざまな方法で行われる可能性がある。中国による智能化戦争、ハイブリッド戦は日常生活の中でなされることを意識すべきだ。
2022年8月20日 14:05
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

社会を混乱させるために偽情報を提供し、それで陰謀論者などが騒ぎ立つといったことは外部勢力でも可能だろう。ただ、日本は米英よりははるかに政治的に保守的で、組織が有効に機能し、少々のスキャンダルや噂で自民党総裁選が揺さぶられることはない。むしろマスコミが世論の方向性を誘導し、それによって大きな流れが作られることが多い。大統領選やBrexit投票のように「Yes/No」の二項対立なら煽りやすいだろうが、自民党総裁選となると、派閥や支持団体などの動きが重要で、二項対立になりづらい。こんな中で中ロが介入しようとしても、何をすれば有効なのか、見えないのではないだろうか。
2022年8月21日 18:32』

習近平氏「共同富裕」再び強調 党大会前に封印解く

習近平氏「共同富裕」再び強調 党大会前に封印解く
李克強氏は「改革開放」 外資にらみ役割分担か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1880J0Y2A810C2000000/

『【北京=羽田野主】中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)が政治スローガンである「(ともに豊かになる)共同富裕」を再び強調している。秋の党大会で3期目入りを視野に入れる習氏は党大会で読み上げる活動報告にも盛り込む準備に入った。

一方で、李克強(リー・クォーチャン)首相は鄧小平が打ち出した「改革開放」の推進を強調しており、党内で臆測を呼んでいる。

16日、中国国営中央テレビ(CCTV)で約半月ぶりに動静が伝えられた習氏は東北部の遼寧省錦州市にいた。地元の公園を視察した習氏は「中国式の現代化とは、全人民の共同富裕の現代化だ。少数の人々だけが豊かになるのではなく、全人民が共同富裕(の状態)になり、皆で大いに喜ぶべきだ」と力説した。

共同富裕は習氏が昨年来くり返し言及した政治スローガンだが、経済の減速に伴って事実上封印していた。今年3月に公表した1年間の経済・財政運営の基本方針を示す政府活動報告でも一度だけ触れたにすぎなかったが、ここにきて再び掲げた格好だ。

16日発売の共産党の理論誌「求是」も、習氏が共同富裕の重要性を訴える講話を掲載した。折しも8月中旬ごろまで開かれたとされる党幹部と長老らが党の重要人事や政策を話し合う「北戴河会議」が終わった直後の発言だけに、習氏が続投の了承を取り付けた「勝利宣言」との見方がある。

一方、習氏が共同富裕に言及した16日、党序列ナンバー2の李氏は広東省深圳で中国経済の成長のカギを握る広東省や江蘇省など6つの省のトップに向かって経済回復の号令をかけた。

深圳は1992年に鄧小平が訪れて改革開放の重要性を説き、保守派から政局の主導権を奪取した「南巡講話」のエピソードのある因縁の地。李氏は17日に鄧の銅像に献花して、地元住民に「改革開放は必ず断固として前に進める」と熱弁をふるった。

共同富裕はもともと建国の父、毛沢東が提唱した構想で、鄧がのちに豊かになれるものから先に豊かになる「先富論」に修正。改革開放政策を優先し、共同富裕は将来の構想として据え置いた経緯がある。

共同富裕を全面的に打ち出せば外資系企業の警戒を招くため、李氏が習氏と役割分担をしてバランスをとった可能性がある。鄧小平路線を支持する声は党内でも根強く、鄧に引き立てられた経歴を持つ長老らが李氏の背中を押したとの指摘もでている。

当面焦点になるのが8月末に開く見通しの党中央政治局会議だ。秋の党大会の日程を決める重要な場となる。ベテラン党員は「北戴河会議で習氏の思い通りの人事調整が進んだのなら10月の開催を決めるだろう。習氏1強に異論が出ているのなら11月にもつれこむ」と予想する。

【関連記事】

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台湾有事に3つの穴 日本の事態認定、遅れる懸念

台湾有事に3つの穴 日本の事態認定、遅れる懸念
米軍の関与・自衛隊の体制・邦人保護
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA166WG0W2A810C2000000/

 ※ 「邦人」って、どこの邦人?

 ※ 『台湾にはおよそ2万4千人の日本人がいる。』…。

 ※ それだけじゃ無いだろ?
 
 ※ 中国本土には、10万人、韓国には4万人の邦人がいる…。

 ※ 先島諸島には、約10万人の「国民」が居住している…。

 ※ どーすんだろね…。

 ※ まあ、「一気に事態が悪化して、有事に突入する」という事態が起こらないことを、祈るよ…。

 ※ 何らかの「兆候」をいち早くキャッチして、とっとと避難した者が勝ち…、ということだな…。「逃げ遅れた者たち」は、喰われてしまう…、ということだ…。

『中国による台湾周辺での軍事演習が続く。日本の排他的経済水域(EEZ)に弾道ミサイルが初めて落下し台湾有事の切迫度は高まった。偶発リスクへの対応を強化する日本政府にとって備えは時間との戦いになる。

中国の軍事演習は米国のペロシ下院議長の台湾訪問に端を発した。4日以降も継続し、15日には米議員団が台湾で蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談した対抗措置として実行した。

中国の戦闘機は台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を3日以降連日で越えた。一連の行動は日本にも台湾有事の影響が及びかねない現実を突きつける。

米軍は2027年までに中国が台湾に侵攻すると分析してきた。中国は米国の台湾への関与に反発しており、侵攻の時期が早まる懸念も取り沙汰される。

日本の台湾有事への備えには今のところ3つの穴が浮かぶ。

事態認定、米軍の関与が左右

1つ目は事態認定と米軍の関与の問題だ。仮に台湾が中国から攻撃を受けても、日本の現状の法体系では独自の軍事的な支援は難しい。政府は現時点で「客観的、合理的に判断する」とだけ説明している。

日本の集団的自衛権の行使が認められるのは「密接な関係にある他国への武力攻撃が発生した場合」という「存立危機事態」に限られる。

日本には1972年に中国と国交を結び台湾と断交した経緯がある。台湾を「国」とは認めていない。台湾が攻撃を受けても日本の存立危機事態には定義できない可能性が残る。

実際に集団的自衛権を行使するかには様々な条件がある。具体的には台湾有事に米軍が関与し、そのうえで存立危機事態が認められて初めて自衛隊の武力行使に至る。日本が先に有事に巻き込まれる恐れもある。

沖縄県・与那国島から台湾はおよそ110キロの距離だ。

台湾で衝突が起これば与那国島を含む先島諸島なども戦域に入る状況が想定され、日本は独自の対応を迫られる。物理的ではないサイバー攻撃など「グレーゾーン」だと事態認定が追いつかない懸念もある。

日本戦略研究フォーラムの台湾有事を想定した机上訓練の様子(7日、東京都新宿区)
自衛隊の体制、南西諸島は「空白地帯」

2つ目の穴は自衛隊の体制だ。台湾から近い南西諸島は「防衛力の空白地帯」と呼ばれる。これまで自衛隊の拠点整備が遅れていたエリアだ。台湾有事では中国による攻撃の影響を受ける可能性があり、防衛体制の構築が急務になる。

陸上自衛隊は沖縄県の与那国島や宮古島に駐屯地をつくり、石垣島にはミサイル部隊の配備をめざす。米軍が日本を守る状況が整うまで自衛隊が独自に対抗する「継戦能力」も十分に確保されていると言い難い。

弾薬は南西諸島の防衛に必要な2カ月分しか貯蔵がない。その7割は北海道にある。南西方面で即応できる配置にはなっておらず、相手の航空機や巡航ミサイルを迎え撃つ長射程のミサイルやイージス艦の導入計画も途上にある。

邦人保護、台湾有事想定の計画に遅れ

3つ目に邦人保護の問題がある。台湾にはおよそ2万4千人の日本人がいる。政府は朝鮮半島情勢の悪化を想定し、韓国からの非戦闘員退避活動(NEO)についてシミュレーションを重ねてきた。台湾有事の計画策定はできていない。

林芳正外相は19日の日本経済新聞とのインタビューで「退避が必要な様々な状況を想定し、必要な準備・検討をしている」と語った。

自衛隊法84条は在外邦人の保護を巡り、「当該外国の同意」を前提に自衛隊が海外で邦人保護活動をすると定める。空港や港湾施設を使った退避を見込み、日本政府と台湾当局で事前に擦り合わせる必要がある。

先島諸島の住民も避難が必要になる場合がある。沖縄本島や九州への退避が想定されるものの、10万人ほどの住民をいちどに避難させるのは難しい。保護シェルターの整備も課題だ。

ロシアによるウクライナ侵攻で生じた難民受け入れの問題もある。国か地域かに限らず同じ基準で審査するため、制度上は台湾から難民を受け入れられる。

政府は従来の難民認定とは別に、紛争地から逃げてくる人を「準難民」として受け入れるため法整備の検討を進める。

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木村幹
神戸大学大学院国際協力研究科 教授
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別の視点

台湾問題の難しさの一つは、その重要性が関係国にとって大きく異なる事。中国の脅威を前にして、安全保障上の協力が求められる日韓両国ですが、台湾有事がそのまま自らの安全保障を巡る問題に直結する日本とは異なり、韓国では南シナ海の問題等とを巡る「遠い問題」という認識が存在し、その動きは遅くなり、また関与を避けようとする動きも生まれてきます。ロシアの脅威を巡る問題についても、北方領土問題を抱え、直接境界を接する日本と、北朝鮮を間に挟み危機感の薄い韓国との違いは大きく、こうした地政学的な配置は、両国の安全保障上の協力関係にも影響を与えそうです。「グローバル中枢国家」を標榜する尹錫悦政権としても正念場です。
2022年8月21日 17:29

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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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別の視点

台湾有事を想定した取り組みは喫緊の課題。今回の中国の演習で中国のミサイルが日本のEEZ(中国政府は否定)に落ちたように、日本もまた「当事者」だと中国は考えている。日本が蔡英文政権を支えていると見ているからだ。そのため、南西諸島への「影響」だけでなく、「台湾有事」に際して尖閣諸島周辺での中国軍、海警、海上民兵の活動、日本本土へのサイバー攻撃、ウェブサイトの乗っ取り、フェイクニュース攻撃なども考慮に入れ、総合的な対処法を検討すべきだ。日本社会全体へのフェイクニュース攻撃などに対しどの機関が真偽を確かめて社会に示すのか。官庁のウェブサイトは大丈夫か。「台湾有事」対策の穴は三つだけではないだろう。
2022年8月21日 9:12 (2022年8月21日 9:48更新) 』

ラトビア外相、中国の経済枠組みから脱退「最良の判断」

ラトビア外相、中国の経済枠組みから脱退「最良の判断」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1769R0X10C22A8000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】バルト3国のラトビアのリンケービッチ外相はこのほど日本経済新聞の取材に応じ、中東欧など16カ国と中国でつくる「16+1」から脱退表明したのは、対中経済関係より西側諸国の経済枠組みを優先することが「最良と判断した」ためと明らかにした。

ラトビアは11日、隣国エストニアと共に、中東欧など16カ国と中国でつくる「16+1」から脱退すると表明した。

訪問先のトルコで取材に応じたリンケービッチ氏は「しばらく前から枠組みの効果を検討してきた」と明らかにしたうえで「(西側諸国が中心の)経済協力開発機構(OECD)諸国との関係に注力するのが最良と判断した」と説明した。

2012年に発足した「16+1」は中国の広域経済圏構想「一帯一路」の欧州への足がかり。最も多いときには欧州17カ国が参加したが、投資が欧州側の期待通りでなく失速感が出ていた。21年にはリトアニアが脱退し、台湾との関係を強化した。

リンケービッチ氏はロシアのウクライナ侵攻が脱退判断に影響したとも認めた。国連安全保障理事会の常任理事国である中国がロシアを非難しないことを問題視し「物事の見方が違うのは明らかだ」と述べた。今後の対中関係は「民主主義や人権などの原則に基づく」ものになるとした。

ラトビアは旧ソ連の構成国で、人口の4分の1をロシア系が占める。ウクライナ侵攻後はロシア人への観光ビザ発給を停止し、欧州連合(EU)全体でも停止すべきだと主張する反ロの急先鋒(せんぽう)だ。

ビザの一律停止にはドイツなどで慎重論が強いが、リンケービッチ氏は①ロシア国民が侵攻の代償を認識する②観光客に紛れて工作員などが入域するリスク③倫理――などを理由に挙げ、ビザ発給停止を訴えた。侵攻は「『プーチンの戦争』ではなく『ロシアの戦争』だ」とも強調した。

ラトビアは23年からロシア産ガスの輸入を禁止すると決め、ロシア国営ガスのガスプロムは7月、ラトビアへの供給を一時止めた。リンケービッチ氏は「今冬(のエネルギー事情)はとても厳しいものになる」と認める一方、「人々はロシアに資金を流すことを望んでいない」と強調した。

代替エネルギーとしてノルウェーやカタール産の液化天然ガス(LNG)を挙げ「中期的には国がLNGの(受け入れ)設備を建設する必要がある」と述べた。

訪問したトルコでは外相会談で防衛装備品の協力などを協議した。ドローンや対空防衛システムに加え、ウクライナへの軍事支援で備蓄が減った弾薬の調達などについてトルコを含む複数国と交渉中という。調達した装備品をウクライナに送る可能性は「安全保障上の問題」として言及を避けた。

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・ロシア、中国からの輸入が急回復 人民元決済拡大で
・日米で経済秩序づくり主導 2プラス2、中ロの圧力に対処 』

ロシア、中国からの輸入が急回復 人民元決済拡大で

ロシア、中国からの輸入が急回復 人民元決済拡大で
7月、自動車4割増 一般機械は2割増
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM210C20R20C22A8000000/

 ※ 徐々に「グローバル経済」は、死んで行き、「ブロック経済圏」の方向に向かいつつあるように感じるのは、オレだけか?

『【北京=川手伊織】ロシアが中国からの輸入を急回復させている。中国側の統計によると、米欧の制裁で3月から前年同月を下回り続けたが、7月に増加に転じた。主力の一般機械や自動車が2~4割増えた。海外での人民元決済額で、ロシアは世界3位に入るほど元決済を増やしている。ロシアの資本財や日用品の調達でも米欧の制裁効果が薄れる恐れがある。

中国税関総署によると、7月の対ロ輸出は2割伸びた。20日に明らかになった品目別の輸出動向をみると、全体の2割を占める一般機械などが20%、1割弱を占める輸送機械が43%増えた。いずれも3月以来のプラスとなった。

化学製品とゴム製品もそれぞれ前年同月の3倍、2倍となった。いずれも輸出全体に占める割合は1割前後ある。原材料の価格が高騰した分を転嫁する動きが輸出額を押し上げたとみられる。

主要製品は6月と比べても大幅に増えた。伊藤忠総研が季節要因をならして試算したところ、パソコンなど一般機械は44%、自動車部品など輸送機械は33%、スマートフォンなど電気機械は32%それぞれ増えた。いずれも4~6月は前期から3~4割減少していた。

中国の対ロ輸出が6月まで減少し続けたのは、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁を米欧が強めたためだ。ロシアがドルやユーロの決済網から締め出され、決済が滞ったとみられる。

増加に転じた要因として、伊藤忠総研の玉井芳野・客員研究員は「上海市が5月末まで続けたロックダウン(都市封鎖)の悪影響が和らいだことに加え、ロシアによる人民元決済の拡大が支えとなっている」と分析する。

銀行間の国際的な決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)が調べた中国大陸以外での元決済の比率をみると、ロシアは7月に3.9%を占めた。香港(71%)、英国(6%)に次ぐシェアとなった。

ロシアは3月まではSWIFTが公表する上位15カ国・地域に入らず、12番目だった4月と比べても3.3ポイント高い。米欧の制裁を逃れるため、元決済を急速に増やしていることが分かる。

資源輸出や資本規制でルーブル相場が安定していることも理由の一つだ。丸紅中国の鈴木貴元・経済調査総監は「外国為替市場の安定でロシアの購買力が戻り、生活必需品や軍用品に関わる需要が増加している」と指摘する。米欧など制裁参加国からの輸入が難しいなか、上海市の封鎖解除で供給力が回復した中国から調達を増やした構図だ。

対ロ制裁を続ける米国は中国への懸念を強めている。ロイター通信によると、レモンド米商務長官は6月末の講演で「(中国の半導体受託生産最大手である)中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国メーカーがロシアに半導体を売っていると分かれば、閉鎖に追い込む」と強調した。

ロシアは半導体の供給で中国に依存してきた。2020年には半導体の6割近くを中国から調達した。22年もウクライナ侵攻開始後の4~6月は毎月、中国からの集積回路の輸入額が前年同月の3~4倍に増えた。ただレモンド氏の警告後の7月は伸びが2割まで鈍った。中国企業も米国の輸出管理強化などで2次制裁を受けるリスクを警戒しているとみられる。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

ロシア中央銀行は、中銀発行デジタル通貨(CBDC)としてデジタルルーブルの開発を進めており、2024年に全てのロシア系銀行がリンクできるようにする計画を発表した。西側の制裁により大半のロシア系銀行がSWIFTから除外され、ドルなど国際通貨を使った金融取引が禁止されたため、制裁を迂回するためだ。中国のデジタル人民元や友好国のCBDCともリンクさせる計画だ。現在、中国、香港、タイ、UAEがm—CBDCブリッジ・プロジェクト下で、各自CBDCを発行しリンクさせる実験をしており、ここにリンクする可能性がある。米ドルの優位性は変わらないが、ドルの独走を崩したい国で新しい決済システムが進むのか注目する。
2022年8月21日 20:28 』

中国観測船、スリランカ離れる 米印懸念、条件付き入港

中国観測船、スリランカ離れる 米印懸念、条件付き入港
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB22BFD0S2A820C2000000/

『【ニューデリー=時事】中国の観測船「遠望5号」が22日、補給のため停泊していたスリランカ南部ハンバントタ港を離れた。地元メディアなどが報じた。中国の港に戻る予定という。寄港をめぐっては隣国インドや米国が安全保障上の懸念を示していた。

遠望5号は当初、ハンバントタ港に11日に入る予定だったが、スリランカ政府は8日、到着延期を中国側に要請したと表明。ところが13日になって、スリランカ海域で科学調査を行わないなどの条件で入港を再度許可したと発表し、遠望5号は16日に到着した。

インドメディアによれば、インドのジャイシャンカル外相は17日、訪問先タイでの記者会見で「インドの安全保障に関わるいかなる事態も注視している」と表明。インドメディアは遠望5号について自国領内を偵察できる装備を備えた「スパイ船」などと報じていた。

スリランカは2017年、対中債務の返済が滞り、ハンバントタ港の運営権を中国国営企業に99年間リースしている。』

寒帯前線ジェット気流

寒帯前線ジェット気流
https://irokata7.com/2018/11/08/r5-kantaizensen-jet-stream/

『 寒帯前線とジェット気流を合わせた言葉って何?

前回の記事の図で対流圏の顕著なジェット気流として寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流があることを示しました。

今回はそれぞれの言葉の定義と特徴をまとめながら寒帯前線ジェット気流を考えていきます。

上記図は縦を高度、横を南北方向とした大気の鉛直構造を表しています。

 1.ジェット気流

 ⇒ 偏西風帯における風速の極大域

 (A) 亜熱帯ジェット気流(Js)

● ハドレー循環とフェレル循環の境にある

● 蛇行が小さくほぼ定常的に存在

● 高度は12km以上(200hPa付近)

● 冬に強く吹く

● 夏には北緯50度以北に位置し、不明瞭になることが多い

 (B) 寒帯前線ジェット気流(Jp)

● 寒帯前線帯の移動に対応する

● 中緯度の低気圧の発生と関係が深い

● 時期的・空間的に変化が大きく蛇行が顕著

● 水平温度傾度が大きく、特に冬に著しくなる

● 出現高度  冬・・ 約 6~8km

 2.前線帯

 ⇒ 水平方向に温度傾度が特に大きくなっている領域

上記図では例として-45℃ の線を紺色で示しました。前線帯に差し掛かると急激に温度が変化します。(温度と高度はイメージです)

前線帯の意味をもう少し感覚的に言うと

 ⇒ 温度が異なる空気がぶつかり合う境目の地帯

 (A) 亜熱帯前線帯

● 上層のみ

(B) 寒帯前線帯

● 上層から下層まであり、前線帯の暖気側(前線面)が地表に達するラインが前線

● 雲が発生しやすい

 天気予報の解説で気象予報士がよく言っている「偏西風の蛇行」とは つまり、寒帯前線ジェット気流の蛇行のことなんですね。

寒帯前線ジェット気流と温帯低気圧の関係はまたの機会に・・難しいので』

大気の大循環 中緯度の熱輸送は難しい

大気の大循環 中緯度の熱輸送は難しい
https://irokata7.com/2018/11/06/r5-taikino-daijunkan-kaze/

『 大規模な大気循環の目的は熱輸送にあるということを思い出した上で、今回は3種類の大規模循環がどのように熱輸送をするのかに主眼を置いてイメージ図を作ってみました(北半球)。

 1.ハドレー循環と極循環

低緯度のハドレー循環と高緯度の極循環はイメージしやすいですね。

ハドレー循環は地球図の中央あたりにある赤い指輪の形で立体的に表しました。

極循環も同様に紺色の指輪の形で表現しました。

両循環は見た通り 直接 大気をぐるぐる回すことによって南北の温度差を解消しています。

それで両循環は直接循環と呼ばれます。

 2.フェレル循環

やっかいなのは中緯度のフェレル循環です。

フェレル循環は他の循環のように直接風を回しているわけではありません。あくまでトータルで南側の熱を北側に移しているように見えるという意味での循環です。

そのためフェレル循環は間接循環と呼ばれています。

3.偏西風と温帯低気圧

では実際には中緯度ではどのように熱が南北に伝えられているのでしょう?

それは偏西風波動、つまり偏西風の蛇行によってです。

偏西風の蛇行によって北側の寒気が下降しながら南側に入り、一方南側の暖気は上昇しながら北側に入ります。その結果、平均すると南北の温度差が小さくなります。このようにして熱輸送がされるという仕組みになっています。

大気の大循環

図では偏西風(寒帯前線ジェット気流)が南側に向かっているところを青い線で描いています。このライン付近で高気圧が生じます。

また、偏西風が北側に向かっているところを赤い線で描きました。このライン付近で温帯低気圧が発生、発達します。

 温帯低気圧は空気の入れ替えに重要な役割を果たしています。南側の暖気は温暖前線を境に上昇しながら北上し、北側の寒気は下降しながら南下して地上に達して寒冷前線を作ります。

 偏西風と温帯低気圧の関係はかなり複雑なので別の機会にじっくり取り上げるつもりです。

また、寒帯前線ジェット気流の「寒帯前線」は寒冷前線と紛らわしいですが、寒帯前線についても近いうちに取り上げる予定です。

あ、ジェット気流も2つ描いてありますが、それもまたの機会に。

何から取っかかればいいやら 🙄 』

[FT]経済の大動脈、世界の河川の水位が記録的な低下

[FT]経済の大動脈、世界の河川の水位が記録的な低下
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB230P10T20C22A8000000/

 ※ アメリカでもか…。

 ※ 山火事騒ぎは、聞いていたが、水運にまで支障が出ていることは、知らんかった…。

『工場は操業を停止し、農作物の収穫は壊滅的な打撃を受けている。貨物船は積載量を減らして運航せざるを得ず、停電のリスクに直面する住民は数百万人にのぼる――。米国、欧州、そして中国が干ばつに見舞われ、河川の水位が記録的水準にまで低下した結果、各地で深刻な影響が出ている。

米国では、南西部で「メガドラウト」と呼ばれる大規模な干ばつが長く続いており、地域の不可欠な水資源であるコロラド川流域の水位が過去最低水準に低下した。そのため、米政府は内務省開拓局を通じて今後1年間の割当水量をアリゾナ州は21%、ネバダ州は8%削減するよう指示した。

長江、中国では水力発電への影響で工場が操業停止

中国では水力発電の出力が低下し続け、トヨタ自動車や台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)などの企業が少なくとも1週間工場の操業を停止した。アジア最長の川、長江(揚子江)が流れる四川省は水力発電に大きく依存している。その長江は8月としては過去最低の水位を記録した。その結果、同国にとって最も重要な水路による貨物の輸送にも支障が出ている。

中国・重慶を流れる長江の支流では、水位の低下で川底が見えるところも出ている=ロイター

異常な暑さと乾燥に苦しむ欧州では、ドイツ、スイス、オランダの産業界が頼みとする大動脈ライン川の水位が低下している。貨物船は積載量を減らして運航せざるを得ず、運送費の上昇と物流の停滞を招いている。一部で恵の雨が予想されていたが、その影響は限定的と見られる。
ライン川、欧州の貨物船は積み荷を減らして運航

欧州宇宙機関によると「スイスアルプスを源流として北海にそそぐライン川は、穀物から化学製品、石炭など多くの製品を運ぶ重要な輸送ルートとなっている」という。「川の水位が下がると、貨物船は座礁しないように荷重を下げて運航しなくてはならない」

ドイツ・ライン川の水位低下で操業できなくなったフェリー=ロイター

イタリアでは深刻な干ばつは農業部門に打撃となっている。経済的に重要なポー川の水位が異例の低さを記録したためだ。

干ばつは複雑な事象で、時には農業あるいは水資源分野での現象を意味するなどさまざまな定義があり、必ずしも明確に気候変動の影響と関連づけることはできない。とはいえ、2022年は世界各地で異常な高温と乾燥が長期化し、それに伴って河川の水位が低下しているため、その影響はますます顕著になっている。

例えばアルプス地方では、氷河が溶けると温暖化の影響が大きくなる。黒っぽい岩が露出して乾燥すると太陽の熱を反射するのではなく、吸収してしまうためだ。

「干ばつの定義は簡単ではないし、すべての干ばつが同じというわけでもない」と英国王立気象学会の最高責任者であるリズ・ベントレー氏は指摘する。「気候変動によって降雨の変動幅が大きくなり気温が上昇するとみられ、今後水の管理が難しくなる可能性がある」
コロラド川、米国西部の水使用は「限界近い」

米国では、干ばつが数十年続いているためカリフォルニアなどの州ではここ数年、水の使用制限を課すなど苦闘が続いている。22年は、ネバダやアリゾナ、カリフォルニア州などにとって重要なコロラド川流域の水位が低下しているため、当局は水力発電の電力不足による停電の可能性について警告を発した。

米国南西部で長く続くメガドラウトの影響で記録的な低水位となったコロラド川流域のパウエル湖=ロイター

米内務省のトミー・ボードロー副長官は「米西部地域で長く続く干ばつは我々の市民社会と国家が直面する最大の課題の一つだ」と記者会見で述べた。

「干ばつの危機が高まっているのは、猛暑や異常降雨など気候変動の影響によるもの」と指摘し、米国西部の約93%が干ばつまたは異常な乾燥状態にあるとした。

米開拓局のカミール・カリム・トゥートン長官は、現在の水使用のシステムは「限界に近づきつつあり」、コロラド川水系に依存する州は水の使用量を大幅に削減する必要があると警告した。

米海洋大気庁によると、22年1~6月は上半期としては過去6番目に暑い期間となった。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」によると、21年までの7年間は過去最高の暑さだったという。

国連の科学者グループの報告書では、世界の平均気温は産業革命前に比べてすでに約1.1℃上昇しており、すべての国が明日から温暖化ガスの排出を実質ゼロにしても、しばらくは気温の上昇が続くという。
世界経済に大きな負担をかける異常気象の継続

科学者は異常気象が続くと予想しており、その結果として世界経済やインフラ設備は今後も大きな負担を強いられることになるとみられる。

ジェット気流が変化したことで北半球では熱波や山火事、干ばつが起こり、ラニーニャ現象が立て続けに起こるという異常気象のおかげで南半球の住民は洪水や季節外れの寒さを経験している。オーストラリアや南アフリカでは大きな洪水が起きた。ニュージーランドでは8月中旬の集中豪雨により推定1200人が避難を余儀なくされた。

スイス再保険の8月初旬の発表によると、22年上半期の自然災害による世界の推定損失補償額は350億ドル(約4兆8000億円)で、過去10年間の平均を22%上回ったという。気候変動の影響は異常気象の増加に明確に表れていると指摘した。

「過去6カ月の過酷な気象現象は、自然災害がすべての地域で、頻度及び深刻さがともに増していることを改めて示した」。同社で災害危機を担当するマージン・ベルトグ氏は結論づけている。

By Camilla Hodgson and Steven Bernard

(2022年8月20日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

「怒り」が振り回す民主主義 米中間選挙への胸騒ぎ

「怒り」が振り回す民主主義 米中間選挙への胸騒ぎ
上級論説委員 菅野幹雄
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK197SB0Z10C22A8000000/

『洗面所の紙タオルにまで「TRUMP」の紋章が刻まれていた。4年前、日米首脳会談の取材で訪れたトランプ前米大統領の豪華な邸宅、マール・ア・ラーゴは、まさに自己顕示欲の象徴といえた。その「私の美しい家」が米連邦捜査局(FBI)に捜索され、同氏は「民主党リベラル派の攻撃だ」と憤怒する。

大統領在任中の機密文書を持ち出すのは犯罪にあたる。FBIは11の機密文書を押収したが、米共和党は「司法省の権限の政治利用だ」と猛反発する。FBIへの多数の脅迫行為や米連邦議会への車での突入未遂など、2021年1月6日の議事堂占拠事件を思わせる不穏な動きがある。

11月8日、米連邦議会の中間選挙まで3カ月足らず。筆者が現地で取材した18年の中間選挙や20年の大統領選挙に比べても、米社会の緊張は一段と進んだ感がある。相手への敵意を隠さず、怒りと反発を自らの推進力にする傾向が、ますます強まっている。

「偽りの怨念」ともいうべきか。20年の選挙は不正だったという、どこにも証拠がないトランプ氏の訴えが、いまなお共和党の結束の源だ。

元副大統領の長女で、下院共和党ナンバー3だったチェイニー下院議員は16日の党予備選でトランプ氏が送る「刺客」候補に大敗した。選挙結果を覆そうとするトランプ陣営の企てを非難し、前大統領の弾劾に賛成したが、党支持者からしっぺ返しを食った。

民主党も敵意にすがる。「すべての共和党議員が、薬価の引き下げや医療費の削減、公正な税制の実現に反対した」。バイデン大統領は大型の歳出・歳入法への署名後、野党を突き放した。「強力な既得権者を守るのか、平等な機会がある将来を築く勇気を持つか」。就任時の「国の結束」への誓いは聞かれない。

政権支持率が40%程度で低迷するなか、選挙は近づく。民主党の支持獲得への頼みは、人工妊娠中絶の権利を覆した連邦最高裁への怒りだ。「中絶禁止」への反発を、支持に向けて呼び覚ます策だ。

米世論調査の専門家であるジョン・ゾグビー氏は中間選挙の争点にインフレ対策や犯罪、気候変動、教育や人種などを挙げつつも、「最重要の問題は民主主義の将来、法の支配、そして選挙の敗北を認めること」と明言する。

怒りと敵意に振り回される米民主主義には危うい兆しがある。共和党には選挙制度や結果の認定で州単位での権限を高める動きがあり、トランプ陣営が企てた選挙結果の転覆に道を開きかねない。

「24年の大統領選はたとえ接戦でなくとも、結果を巡り本当のバトルが展開されるだろう。両党とも単純に結果を受け入れるとは思えない。それが海外に対する影響力をまたも傷つけることになる」とゾグビー氏は懸念する。

法制度や選挙をゆがめようとする試みは他国にも広がる素地がある。10月の選挙で再選に臨むブラジルのボルソナロ大統領は選挙制度の不備への批判を繰り返す。敗北時に結果を受け入れない「トランプ流」の伏線ともいわれる。

新型コロナウイルス禍に、ロシアのウクライナ侵攻が加速させた世界的なインフレ。生活の困窮に人々のやり場のない怒りは蓄積する。

金融危機やコロナ禍は財政出動や金融緩和で対処できたが、いまは逆の方向でインフレを抑えねばならない。政府のやれることは限られる。欧州の有力国でも政権与党は支持の低下に悩み、極左や極右勢力の伸長の余地を残す。

相手と折り合おうとしない政治状況の定着は、政策停滞という不安定を作り出す。慶応大学の小林慶一郎教授は「従来は意見が違う相手のことも考えて物事を決めてきたが、最近は自分と同じ狭い世界しか考えないように思考の習慣が変わってきたのではないか。政策や政治的意見も極端になっており、経済政策は非常に立てづらい」と語る。社会や経済の分断は修復どころか、拡大が進みかねない。

欧米に比べ、日本では「怒り」の要素がまだ少ない。だが、それは財政や社会保障の改革を単に先送りしているからなのかもしれない。世界の民主主義の揺らぎは、日本にも決して無関係ではない。

【関連記事】

・トランプ氏、第三者の監査求め提訴 FBIの家宅捜索巡り
・家宅捜索、トランプ氏に逆風吹くか(The Economist)
・[FT]家宅捜索受けたトランプ氏 共和党にマイナス効果も

中外時評
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説

今年に限らず、大統領1期目の中間選挙は対立党の「怒り」が決定要因。94年の「クリントンのアマチュアさ」、2010年の「ティーパーティ運動」という名の反オバマ、2018年の反トランプ。これは投票率が低いための必然的な現象です。

例外はテロとの戦いの最中の02年。このときは上下両院で大統領の政党が議席を伸ばした南北戦争以降2度目の例外。
2022年8月23日 12:08 (2022年8月23日 12:11更新)
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

24年の次回米大統領選挙の主役はトランプ前大統領であるかのようなムードが、早くも漂っているように思う。共和党下院予備選でのチェイニー氏の敗退は、ほぼダブルスコアだった。事前の世論調査の結果通りではあるのだが、「トランプ信仰」がいかに根強いかを示すものであり、筆者には衝撃的だった。米国で国論の分断が深まることにつながっている大きな要素に、新聞やテレビなど既存の伝統的メディアの影響力低下がある。自分の政治的選好に沿うオンラインの情報ツールばかりに浸って情報に接していると、考え方はより先鋭的になり、妥協の余地は乏しくなる。それがおそらく、共和党のトランプ支持者に限らず、広く起こっていると考えられる。
2022年8月23日 11:26』

中国利下げ22年で3度目 振るわぬ景気、ゼロコロナが壁

中国利下げ22年で3度目 振るわぬ景気、ゼロコロナが壁
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2234J0S2A820C2000000/

『【北京=川手伊織】中国人民銀行(中央銀行)は22日、今年3回目の利下げに踏み切った。今春に悪化した景気の回復が鈍いためだ。金融緩和で資金需要を刺激する狙いだが、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策が経済活動の正常化を阻む。潤沢な資金を市場に供給しても消費や投資が増えない「流動性のワナ」に陥りつつあるとの見方もある。

人民銀行は毎月、最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を公表している。事実上の政策金利と位置づけている。

優良企業向け貸出金利の参考とする8月の1年物は3.65%だった。7月までの3.70%から小幅に引き下げた。住宅ローン金利などの目安となる同5年超の金利は4.30%となり、0.15%下げた。

前回利下げした5月は、期間5年超の金利のみ0.15%下げた。期間が異なる2つのLPRを同時に下げるのは1月以来、7カ月ぶりとなる。

追加利下げは中国政府が停滞から抜け出せない経済に抱く危機感を映し出している。7月の工業生産や小売売上高は市場予想に反して、6月と比べて減速した。資金需要も冷え込んだ。企業や家計向けの中長期融資の純増額も前年同月より5割近く減った。

新型コロナの感染が一部の都市で再び広がり、移動制限が厳しくなったためだ。8月に入っても景気回復はもたつき、中国政府が描く「年後半の回復シナリオ」は揺らいでいる。
中国の証券会社、広発証券によると、8月前半のトラック輸送量は7月平均を3%下回った。厳しい移動制限が全国に広がる前の3月上旬と比べると2割近く少ない。

もっとも利下げ効果が経済に波及するかは見通せない。壁となるのが、習近平(シー・ジンピン)指導部が堅持するゼロコロナ政策だ。

これまでのゼロコロナ政策で、厳しい移動制限が外食や娯楽、旅行などサービス産業を直撃した。就業者の5割が第3次産業で働いており、サービス業の収益悪化で雇用の回復は遅れている。

人民銀行の預金者向けアンケート調査が所得不安の強まりを示している。次の四半期の所得見通しを聞くと、新型コロナがまん延した20年以降、「減少」が「増加」を上回るようになった。

最新の4~6月調査では、所得見通しを示す指数が遡れる2001年以降で最低を更新した。家計が将来への不安を拭えず、根強い貯蓄志向が常態化している。

家計の預金は1~6月に10兆3300億元(約200兆円)増えた。増加額は前年同期より4割多く、遡れる09年以降、半期ベースで最大となった。人民銀行が金利を下げても銀行にお金が積み上がるだけで実体経済に回らない「流動性のワナ」を指摘する専門家もいる。

地方経済が依存してきた不動産市場が持ち直すかも読めない。人民銀行は住宅購入の需要を刺激しようと、今年3回の利下げで期間5年超のLPRを計0.35%下げた。新型コロナが初めて中国経済を直撃した20年の累計下げ幅(0.15%)の2倍以上だ。

それでも不透明感が消えないのは、住宅市場が混乱しているためだ。

政府の規制強化で不動産開発企業の資金繰りが悪化し、全国で工事を中断する物件が続出した。7月には引き渡しの遅れに抗議する住宅購入者が住宅ローンの支払いを拒否する動きも広がった。

混乱を目の当たりにして、新規購入を控える人も少なくない。主要30都市の1日あたりの不動産取引面積をみると、8月前半は7月より15%減り、市場の調整に終わりは見えていない。

世界では、米欧を中心に高インフレに対応するため利上げを進めている。異次元緩和を続ける日本のほか、利下げによる景気刺激を狙うのは中国やトルコなど一部の国に限られる。

中国の消費者物価指数(CPI)も7月に前年同月比2.7%上昇し、政府の抑制目標である「3%前後」に近づいた。ただ値上がり幅が大きいのは豚肉などの食品や燃料のみだ。家計の購買力を映すとされる「食品とエネルギーを除くコア指数」の伸びは0.8%と、21年4月以来の低さだ。需要けん引型の物価上昇圧力が弱いことも、追加利下げへ人民銀行の背中を押したとみられる。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

利下げするのは良いとしても、幅がいかにも小さい。優良企業向け貸し出しの基準金利である1年物は、昨年12月に引き下げられるまで3.85%で長く据え置かれていた。その後、今回を入れて3回引き下げられたが、下げ幅は合計で0.2%ポイントにすぎない。欧米流の利上げ・利下げの近年の基本形は0.25%である。中国の1年物の利下げはその1回分も満たない。一方、5年超(多くのマスコミが5年物と表記しているが、正確には日経報道の通り5年超)は、住宅市場の不振への配慮がある程度されているようで、5月と今回の合計で0.3%ポイント引き下げられた。だが、それでも迫力不足である。中国の景気下振れリスクは拭えそうにない。
2022年8月23日 7:53

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

悲劇が起きるのはすべてのマイナス要因がそろって訪れるとき。クライシスに対処するには、政治のレジリエンスが必要。強権政治の特徴はまさに硬直性である。いったん方向を決めて動き出したら、たとえそれが間違いだとしても、修正されにくい。プーチンのウクライナ侵攻も中国のゼロコロナ政策も同じ。プラス6%前後の成長からゼロパーセントぐらいに落ち込んだ現実を考えて、この程度の利下げは焼け石に水に過ぎない。否、手当する一番いいタイミングを逃したのかもしれない。
2022年8月23日 7:19 (2022年8月23日 7:56更新)』

ロシアの反プーチン勢力が犯行声明 極右思想家の娘爆殺

ロシアの反プーチン勢力が犯行声明 極右思想家の娘爆殺
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB231AU0T20C22A8000000/

『ロシアの極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘でジャーナリストのダリア氏が自動車爆発で死亡した事件を巡り、プーチン政権に反対するロシアの地下組織が21日に犯行声明を出した。一方、ロシア当局は実行犯としてウクライナ国籍の女を特定したと発表した。

ウクライナメディアなどによると、ロシアのイリヤ・ポノマリョフ元議員が21日、ロシアの反体制派地下組織「国民共和党軍」による犯行声明を公表した。声明はプーチン大統領を「権力の強奪者」と非難している。

犯行声明の真偽や同組織について日本経済新聞は独自に確認できていない。米NBCはほとんど知られていなかった同組織が犯行声明で急速に注目を浴びたことに対し「極めて疑わしい」とする在英のロシア専門家の声を伝えている。

ロシアの防諜(ぼうちょう)・治安組織、ロシア連邦保安局(FSB)は22日、爆殺事件はウクライナ情報機関による計画的なものと断定、実行犯としてウクライナ国籍の女を指名手配した。同容疑者はエストニアに逃亡したと発表した。タス通信が伝えた。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はSNS(交流サイト)投稿で「ロシアによる虚構のプロパガンダだ」などと説明し、ウクライナ側の関与を否定した。

ダリア氏は20日にモスクワ郊外で運転中の車が爆発して死亡した。各種報道によるとこの車は父親のドゥーギン氏が利用する予定だったことから、ドゥーギン氏を狙ったものとみられている。

ドゥーギン氏は、ロシアは欧米と異なる価値観を持つという「ネオ・ユーラシア主義」を提唱し、ウクライナ侵攻を推し進めるプーチン氏の思想的な支柱の一つとなっていた。死亡したダリア氏もジャーナリストとして、プーチン氏のウクライナ対応を支持していた。
【関連記事】

・ロシア極右思想家ドゥーギン氏の娘、車爆発で死亡
・ウクライナ、独立記念日控え緊張 ロシアの残虐行為警戒 』

理想にばく進するマスク氏 支える「7人のサムライ」

理想にばく進するマスク氏 支える「7人のサムライ」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC193690Z10C22A8000000/

『イーロン・マスク氏は誰もが実現不可能と捉えてきたビジネスを型破りな発想で可能にしてきた。その代表格であるテスラとスペースXの成功を裏付ける数字は、今や誰もが認めざるを得ない。

テスラの2021年12月期通期の売上高は前年同期比71%増の538億2300万ドルで、売上高営業利益率は同5.8ポイント増の12.1%だった。22年1~3月期の営業利益率は19.2%、4~6月期は14.6%。10%を超えれば御の字とされる製造業においては高収益企業といえる。

テスラが時価総額でトヨタ超えを果たしたことは有名だが、非上場のスペースXも負けていない。22年5月に米ブルームバーグなどが報じた記事によると、同社の評価額は同月時点で1250億ドルとなったもよう。これは時価総額で宇宙業界2位の米ロッキード・マーチンを上回る。

マスク氏はなぜ手掛ける事業が多岐にわたるのに、無謀な挑戦を現実化して事業を成功に導けるのか。その大きな理由に、手掛ける事業のすべてが同じビジョンの上にあり、互いに関連していることがある。

手掛ける領域を3つに限定

まず踏まえておきたいのは、いずれの事業でもマスク氏が目指すのは「人類の永続的な繁栄」にある点だ。幼いころからSF小説やSF映画を好み、人類の未来に思いをはせた。1989年に出身地の南アフリカからカナダに移住し、同地や米国の大学で経済や物理、エンジニアリングを学んでいた頃から、「人類の未来に影響を及ぼす技術は『インターネット』『クリーンエネルギー』『宇宙開発』の3つ」と予見していた。

壮大な構想の中で大きな役割を担うのが、やはりテスラとスペースXだ。マスク氏はあらゆる場所で、テスラは地球環境保護、スペースXは宇宙への人類の生活圏拡大と、役割分担していると説明している。

2002年にスペースXを立ち上げ、テスラに出資して会長に就任したのが04年。06年に太陽光発電のソーラーシティに出資し、後にテスラ傘下に収めた。太陽光で発電した電力を電気自動車(EV)などに蓄えれば、走行はもちろん家庭の電源としても使える。スペースXでは、地球のどこからでもインターネットを使えるようにする衛星通信システム、スターリンクの運用を20年に始めた。衛星をスペースXのロケットで打ち上げられるので相性がいい。どの事業も前出の3つの技術領域に関連する。

少し異質に見えるのが、16年に設立した地下トンネルを使った高速輸送システムのボーリング・カンパニーと、脳の機能拡張を目指すブレインテックのニューラリンクだ。前者は、テスラやスペースXと同じ「輸送インフラ」と考えれば納得がいく。だが、ニューラリンクについては、テスラが今、開発に力を入れているヒト型ロボット「テスラボット」や、市場投入が噂されているテスラの高機能スマホ「Pi」の存在を踏まえると狙いが見えてくる。ニューラリンクで開発する脳の拡張機能は、ボットやスマホの「操作手段」にしようとしているとみられる。

すべてに共通するのは、人類が火星に移住した後の人や物の輸送や人と人とのコミュニケーションに関連していることだ。ツイッターの買収劇や暗号資産(仮想通貨)へのこだわりも、移住後を想定した「インフラ」と見ているのだろう。

マスク氏が描くこの未来予想図ならぬ「未来実現図」は、彼を取り巻くファンたちの信仰の対象になっている。同氏はこの目標を達成するためなら、狂気とも言える執着で現場の技術者を叱咤(しった)し、プロの投資家や優秀な経営陣、科学者たちを味方に付け、まい進していく。

答えがなければ即会議終了

だが、それに付き合うのは並大抵のことではない。スペースX社内をよく知るある関係者は、こんな内部事情を吐露した。

「マスク氏は技術者に出した宿題の答えに少しでも疑問を感じれば、納得がいくまで質問を浴びせる。その技術者が答えを持たなければ、答えを持っている技術者にその場で電話をかけて呼び出す。それでも答えが出なければ、会議は即終了。マスク氏は不機嫌にその場を去る。だから技術者はマスク氏との会議を恐れ、できれば会いたくないと考えている」

だがその関係者はこうも言う。

「それでも技術者が付いていくのは、マスク氏がそうしているのに悪意はなく、純粋に実現したい未来だけを見ているからだ」

経営者も社員も、それを支える投資家や株主も、同じ未来を見ている。マスク氏の頭の中にあるビジョンは、全員を1つにするちょうつがいの役割を果たしているのだ。

といっても、手掛ける事業を成功と呼べるようになったのはつい数年前のこと。19年半ばまで、特にテスラは火の車だった。20年、マスク氏はツイッターでこうつぶやいた。

「(手元資金は)最短で1カ月分。モデル3の量産は長期間、大きなストレスと苦痛となった。17年半ばから19年半ばまで。生産と物流の地獄」

テスラに批判的な評価を下すことで知られる米ガイドハウス・インサイツのアナリスト、サム・アビュエルサミド氏も「4年前は、テスラがまさか生き延びるとは思いもしなかった」と振り返る。

危機の直接的な原因はモデル3の量産ラインにあったが、それ以上のインパクトを同社に与えた事件が18年6月に起きた。当時、大学院の学生だったランディープ・ホシ氏は、実家近くにあるテスラのフリーモント工場に現れた巨大なテントを見つけた。この頃、マスク氏をはじめ経営陣は量産ラインの課題解決のため工場で寝泊まりしていた。テントの下にあったのは、モデル3の組み立てラインだ。

当時、マスク氏やテスラに反発し、不利な情報を見つけ出してはネット上に流す集団「TSLA(テスラ)Q」が勢力を持っていた。ホシ氏も、マスク氏の壮大すぎるビジョンや「虚言」とも受け取れる発言に違和感を覚えていた。ある日、ホシ氏はドローンを飛ばしてテントの下にあるラインを撮影し、ネットに流した。これはテスラQの間で大きな「スクープ」となり、「テスラは倒産する」「こんなラインで造られたモデル3は危険だ」といった臆測が一気に流れた。

テスラQの狙いは空売りといわれている。マスク氏は怒りをあらわにし、ツイッターでホシ氏などを攻撃したが、テスラに向けられた逆風が収まることはなかった。

それでも経営陣や社員は諦めずにラインの改善に取り組み、量産化に成功。これがテスラの業績アップに貢献したことは言うまでもない。

倒産の危機は08年にもあった。02年にマスク氏が創業したスペースXは、06年に初の自社製ロケットを完成させ、打ち上げ試験を実施したが1回目は失敗に終わった。07年の2回目でも失敗し、その次の08年に3回目に挑戦するも失敗。この時、金融危機が世界を襲った。

4回目に失敗すれば後がない。テスラも量産段階に入っておらず、金融危機のあおりで資金繰りに窮していた。にっちもさっちもいかない状況をマスク氏は、米カリフォルニア州で活動するテスラ車所有者団体のインタビューで赤裸々に語っている。

当時、マスク氏がオンライン決済ペイパルの売却で手に入れた2億ドル弱の資金は、残り4000万ドルまで目減りしていた。全額をいずれかに投じてどちらかだけを生かす選択肢もあったが、マスク氏は双方に半分ずつ投じる方法を選んだ。

「会社は子どもと同じような存在だ。2人の子どもがどちらもおなかをすかせているとき、どちらかだけにご飯を食べさせ、もう一方を見殺しにすることなどできない」

幸い、スペースXは4回目の打ち上げを成功させ、米航空宇宙局(NASA)の契約を勝ち取った。問題はテスラだ。

「資金を調達できたのは、この日、この時間までというギリギリの時刻だった。08年12月24日午後6時だ」

「この時に頼れたのは、初期からテスラに出資してくれていた主要投資家の、ほんの数人だけだった。アントニオ・グラシアス、アーロン・プライス、スティーブ・ジャーベットソン……」

それだけ感謝しているのだろう、マスク氏は窮地を救ってくれた人や企業のことをよく覚えていて、折に触れ名前を口にする。地元メディアの報道によると、ここに名前が挙がったグラシアス氏はマスク氏と1990年代からの古い知人だ。マスク氏の会社には早い段階から資金を入れ、テスラにも2005年から投資。役員を07年から15年間務めた。スペースXの役員でもあり、同社が21年にビットコインを15億ドル分購入した際にも尽力した。マスク氏のビジョンにトコトンほれ込んでいるのだ。

社内がざわつけば動く裏方

マスク氏のビジョンの実現を縁の下で支える人材はグラシアス氏以外にもいる。

アレックス・スピロ弁護士やテスラの財務を取り仕切る最高財務責任者(CFO)に30代で就任したザック・カークホーン氏、同社の人工知能(AI)や自動運転技術の開発で陣頭指揮を執っているアンドレ・カーパシー氏などだ。

カーパシー氏はマスク氏が「優秀なコンピュータービジョン関連の技術者の中でも間違いなく世界最高峰」と評価する35歳。マスク氏が立ち上げたAI研究機関オープンAIの初期メンバーの一人でもある。

同じAIの領域ではニューラリンクの幹部であるシボン・ジリス氏が挙げられる。イエール大卒の才女だが、21年にマスク氏との間にひそかに双子をもうけていたことが発覚してからは、その才能よりもマスク氏との関係に世間の視線が注がれている。

スペースX社内で起きる問題の解決や実務の遂行に欠かせないのが、最高執行責任者(COO)で社長のグウィン・ショットウェル氏。「イーロンの思い付きや高すぎる目標を現実味のある計画に落とし込み、現場の技術者との橋渡しをする」(同社関係者)のが彼女の役目だ。

22年5月にも格好の出番があった。マスク氏が同社に所属するプライベートジェットの添乗員にセクハラ行為をし、和解金を支払ったとする報道を受け、社内はざわついていた。ショットウェル氏はこれを受けて全社員にこんなメールを送った。

「20年間、共にイーロンと働いてきて、今回、指摘されているような行為または類似した行為をしているのを見たことも聞いたこともない。だから今回の(添乗員の)申し立ては間違っていると信じている」

またニューラリンクで最高経営責任者(CEO)を務めるジャレッド・バーチャル氏も、マスク氏の右腕だ。同社だけでなくマスク氏個人の資産運用も任されている「金庫番」。16年に同社に加わる前は、ゴールドマン・サックスのフィナンシャルアドバイザー、モルガン・スタンレーではシニアバイスプレジデントを務めていた。マスク氏の財団でも、教育や小児治療、環境リサーチなどの領域で寄付金を配分する役割を担う。

マスク氏はさまざまな危機を乗り越える中で、情熱とビジョンだけでは現実社会を渡り歩けないことを学んだ。今、見てきた「7人のサムライ」がしっかりと脇を固めることで、マスク氏の前進が可能になっている。

(日経BPニューヨーク支局長 池松由香)

[日経ビジネス電子版 2022年8月18日の記事を再構成]

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インドがロシア原油「爆買い」 安さだけでは語れぬ事情

インドがロシア原油「爆買い」 安さだけでは語れぬ事情
編集委員 高橋徹
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD213VF0R20C22A8000000/

 ※ インドの「立ち位置」も、徐々に明らかになって来ているようだ…。

『「エネルギー価格高騰の影響を和らげるため、国民にとって最善の取引をする。いまはあらゆる国がやっていることで、我が国だって同じだ」

インドのジャイシャンカル外相は今月半ば、訪問先のバンコクでの在留印僑らとの会合で、ロシア産原油の調達拡大の正当性を改めて強調した。

ロシアのウクライナ侵攻から24日で半年がたつ。プーチン政権の戦費調達を妨げるため、主要7カ国(G7)はロシア原油の輸入を原則禁止する方針を掲げた。が、新興国の多くは同調することなく、自らの「国益」を最優先して動く。世界最大の原油輸入国である中国と並び、「最善の取引」を積み上げる同3位のインドはその典型だ。

インドがロシア原油の「爆買い」に走り始めたのは4月からだ。

インド商工省の貿易統計によると、2021年の原油輸入先はイラク、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の中東3カ国で5割を占めた。10位のロシアは日量7万バレル、全体のわずか2%。今年3月単月をみても11位の9万バレルにとどまっていた。

それが4月に日量39万バレル、5月は65万バレルへ急増。6月には98万バレルに達し、サウジを抜いて2位に浮上した。ロイター通信によれば、7月も87万バレルと高水準を維持したもようだ。

理由は輸入価格が雄弁に物語る。サウジ産と比較すればわかりやすい。ロシア産は粘度が低い軽質油で、精製が容易なため、重質油の中東産より通常は高い。実際、3月の輸入単価はサウジ産の1バレル105ドルに対し、ロシア産は118ドルだった。

4月以降は状況が一変した。110ドル台へ上がったサウジ産に対し、ロシア産は4月が108ドル、5月が94ドル、6月は102ドルに下がり、逆転現象が生じた。経済制裁の影響が顕在化し、だぶつき始めたロシア産をインドが割安に買い込み、結果としてロシアの戦時財政を手助けしている図式だ。
ロシア産原油を積み、極東のナホトカ港から出港するタンカー=ロイター

もとよりインドとロシアの関係は密接だ。1971年に旧ソ連と軍事同盟的な性格の強い「平和友好協力条約」を結んで以降、ソ連のアフガニスタン侵攻、インドがパキスタンと領有権を争うカシミール問題のように、互いが批判の矢面に立つ場面でかばい合ってきた。2000年以降にインドが輸入した軍事装備品の3分の2はロシア製で、原子力や宇宙開発にも協力関係は広がっている。

逆にいえば、ロシア最大の輸出品である原油を、インドがこれまでほとんど調達してこなかったことの方が意外に思える。「それはひとえに輸送距離と経済性の問題」と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳・石油天然ガス事業本部調査部長が解説する。

竹原氏によると、ロシアからインドへの原油輸送には10万トン級のタンカーが使われ、黒海の港湾から出荷する場合で3週間、バルト海だと1カ月を要する。一方、中東からは30万トン級が一般的で、1週間程度で到着する。ロシア産は中東産の3~4倍の時間をかけて、3分の1しか運べない計算になる。

また輸送距離が長いほど、積み荷にかける保険料は高くなる。輸送時間が長いと、国内の需給動向をみながら機動的に調達量を調整するのも難しい。これまでインドにとってロシア原油の魅力は薄かった。

対ロ制裁がもたらした中東産とロシア産の価格逆転で、インドは調達戦略を修正した。それにしても「ロシア原油の輸入増加はインドの利益とはならない」(バイデン米大統領)といった警告を無視し、爆買いで手にする国益とは何か。大きく3つある。

第1はインフレ対策だ。インドの7月の物価上昇率は前年比で6.7%に達した。ピークだった4月の7.8%よりは下がったが、インド準備銀行が政策目標とする2~6%を6カ月連続で上回っている。

第2は貿易収支の改善である。商工省の速報値では、7月の貿易赤字は300億ドル(約4兆1千億円)と過去最悪を記録した。経常赤字の拡大により、通貨は1ドル=79ルピー台の史上最安値圏で推移する。通貨安が輸入物価を押し上げ、貿易赤字をさらに膨らませるという、負の連鎖に歯止めをかけたい。

インドは消費原油の85%を輸入に依存する。いまや輸入総額の4分の1を占める原油の調達コストを抑えることで、物価安定と貿易赤字拡大の抑止に期待をかける。

ただ、商品価格の高騰と、各国の中央銀行の利上げで、世界的に景気減速の気配は強まる。それは原油の需要減退に直結する。一時は1バレル120ドルを超えていた中東産ドバイ原油は、足元では95ドル前後と、ウクライナ侵攻前の水準まで低下している。

原油市況が落ち着き、ロシア原油の買い得感が薄れてくれば、インドは調達戦略を原状復旧させるのか。第3の国益であるエネルギー安全保障を考えれば、それほど単純な話ではないように思える。

「インド政府は原油の中東依存度の高さにかねて危機感を抱いていた」と三井物産戦略研究所のギリ・ラム国際情報部研究員は指摘する。エネルギー安保には、価格上昇と供給途絶の2つのリスクがある。ロシア原油の調達拡大は、一義的にはインドが前者を強く意識したからだが、定着すれば後者への対応にもつながる。

紛争やテロ、シーレーン(海上輸送路)封鎖といった有事で、中東からの原油供給に支障をきたす場合への備え、という面では、調達先の多様化をロシアに求めた日本と同じだ。加えてインドには宗教対立のリスクが影を落とす。

今年5月、モディ首相が率いる与党・インド人民党(BJP)の報道官が、テレビの討論番組でイスラム教の聖典コーランや預言者ムハンマドを揶揄(やゆ)する発言をした。その内容は瞬く間にSNS(交流サイト)で拡散され、中東諸国の怒りを買った。

サウジやイラク、クウェートなどが次々と「イスラム教への侮辱だ」とする非難声明を発出した。慌てたBJPは「党の立場とは相いれない」と報道官やその同調者を停職処分にし、火消しを図った。

ただしBJPはもともと「ヒンズー至上主義」を掲げる。モディ政権は国内で少数派のイスラム教徒への弾圧姿勢で国際的に批判を浴びてきた。ヘイトスピーチまがいの発言は、宗教を巡るボタンの掛け違いが、中東との関係を緊張させる危うさを示した。
6月のG7首脳会議に招かれたモディ首相㊧は対ロ包囲網への協力を求められたが=ロイター

ロシアからの原油調達は、万が一に備えたリスク分散だけでなく、一大消費国としての中東諸国との交渉力の底上げにもつながる。目先の損得とは別の文脈で、インドが今後も調達を拡大・継続する可能性は高い。

兆しはすでにみられる。インドの輸入原油の7~8割は中東諸国との長期契約だが「スポット調達の全量をロシア産にすれば、輸入全体の3割にあたる日量150万バレルまで増やせるとの見方が出ている」(JOGMECの竹原氏)。バーラト・ペトロリアムなどの国営石油会社は、ロシアとも長期契約の締結を交渉中と伝えられる。

またロシア極東の資源開発事業「サハリン1」に出資しているインド石油天然ガス公社(ONGC)は、同事業から撤退を表明した米エクソンモービルの権益や、英BPが売却を急ぐロシア石油大手ロスネフチの株式の取得も検討しているという。

制裁への同調圧力に屈せず、国益第一に徹する姿は、インドが掲げる「戦略的自律外交」の本領発揮といえようか。来年には中国を抜いて人口が世界最多となるインドを、民主主義陣営の「こちら側」につなぎ留めておきたい米欧や日本は、バケツの穴をふさぐためのロシア原油の買い手への制裁には及び腰だ。

あす24日は1991年に旧ソ連の構成国だったウクライナが独立を宣言した記念日でもある。国家主権無視のロシアの暴虐に対峙すべき場面で、必ずしも価値観や行動を共有できない異形の大国という意味では、インドは「あちら側」の中国と大差がない。それがウクライナ危機の半年が浮かび上がらせた、インドへの客観的な評価だろう。

=随時掲載
高橋徹(たかはし・とおる) 1992年日本経済新聞社入社。自動車や通信、ゼネコン・不動産、エネルギー、商社、電機などの産業取材を担当した後、2010年から15年はバンコク支局長、19年から22年3月まではアジア総局長としてタイに計8年間駐在した。論説委員を兼務している。著書「タイ 混迷からの脱出」で16年度の大平正芳記念特別賞受賞。

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産原油、中印の輸入最高に G20分断深まる 』

水面下で奔走するデジタル庁 知られざる司令塔の役割とは

水面下で奔走するデジタル庁 知られざる司令塔の役割とは
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27631

『水面下で奔走するデジタル庁 知られざる司令塔の役割とは
漂流する行政デジタル化 こうすれば変えられる

江﨑 浩 (デジタル庁 Chief Architect/東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
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日本のデジタル化というミッションを課され、発足したデジタル庁。チーフアーキテクトの江﨑浩氏に同庁の「現在地」を聞いた。

話し手・江﨑 浩
聞き手/構成・編集部(梶田美有)
江﨑 浩 Hiroshi Esaki
デジタル庁 Chief Architect/
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
1963年生まれ。九州大学工学部修士課程修了。東芝入社、米コロンビア大学客員研究員、東京大学大型計算機センター助教授などを経て現職。著書に『インターネット・バイ・デザイン 21世紀のスマートな社会・産業インフラの創造へ』(東京大学出版会)など多数。

 今、われわれが目指しているデジタル化はこれまでのものとは全く異なる。

 2000年代以降、日本が進めてきたのは今あるものを効率化するという「As-Is」のデジタル化であった。一方で、現在目指しているのは「To-Be」のデジタル化だ。これは、やり方を変えることによって、単なる効率化にとどまらず、それ以上の価値や可能性を見出すことを意味する。

 例えば、印鑑のデジタル化。単にデジタルの印鑑を使用するのは「As-Is」だ。一方、「To-Be」のデジタル化では印鑑が必要となる手順を整理することから始める。例えば支払い業務の決裁時、紙の書面に押印することがあるとしたら、その過程を見直すことで、そもそも押印という行為が不要となることもあるだろうし、オンライン決裁によって、決裁者がアイコンをクリックするだけで支払いまで完了されるように手順を変えることもできる。これが「To-Be」のデジタル化だ。

 デジタル庁がこれまで日本のIT戦略を担ってきた組織と大きく異なるのは「実行力」。かつての組織は司令塔として規定やガイドラインを策定し、自治体などへ「推奨」することが主たる業務だった。一方、デジタル庁ではIT分野に精通した民間人材を登用することによって、推奨するだけでなく、システム自体を自分たちで開発して提供することが可能となった。

 司令塔だけでなく、ベンダーとしての役割も担うデジタル庁に与えられたミッションはさまざまだ。

 自治体向けに与えられた最大のミッションは基幹業務システムの標準化・共通化・モダン化(デジタルネイティブ化)だ。自治体のシステムはこれまで、各自治体専用にカスタマイズされてしまっていた。標準化・共有化・モダン化によって、自治体間でのデータ連携が可能になるため、自治体の業務効率化や国民の利便性向上を図ることができる。

 この他にも、自治体同士が事例を共有し合える場を提供することにより、各自治体間でのデジタル化も後押ししている。例えばビジネスチャットツールを活用することで、気軽に「前例」を共有できるだけでなく、タイムリーなアドバイスも可能になった。現在、約5000人の自治体職員が参加し、日々活発な議論を交わしている。』

『デジタル庁に与えられた難題と国民への価値提供

 デジタル庁の重要な役割の一つに各省庁が持っているシステムの共通基盤化がある。通常の入れ替えだけでも5年程度かかるシステムを、相互利用が可能な形で連携させるには、10年あっても難しいと考えている。

 施策自体のコントロールを各所管省庁が担う中、共通基盤を構築・運用する側として、デジタル庁も各省庁と共通の考え方をもってシステムの仕様を決めていかなければいけない。ただ、デジタル庁内の人材も限られている中で、今後、多くの既存案件や新規案件にデジタル庁がどこまで関与するべきか、というのは目下検討中の課題だ。

 デジタル庁の取り組みとして国民の目に見える成果を出すことも重要である。厚生労働省と連携したワクチン接種記録システム(VRS)や、総務省と進めているマイナンバーカード機能のスマホ搭載がその例だ。政府や自治体向けの基盤構築という長期的な取り組みと並行して、これからも国民が実感できるデジタル化を各省庁と連携しながら進めていく。

 国民に対する価値提供として、今後は民間企業との情報連携を進めることも視野に入れている。国が持っているデータを民間企業が自由に正しく活用できれば、国民がメリットを享受することにつながると考えているからだ。

 発足から1年が経ち、日本のデジタル化に向けたさまざまな課題が見えてきた。解決までの道のりは長いが、デジタル化によって次の世代に何を残せるか──。そのことを常に考えながら日々の業務にあたっている。

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 コロナ禍を契機に社会のデジタルシフトが加速した。だが今や、その流れに取り残されつつあるのが行政だ。国の政策、デジタル庁、そして自治体のDXはどこに向かうべきか。デジタルが変える地域の未来。その具体的な〝絵〟を見せることが第一歩だ。

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日中、国旗・握手なき高官協議 国内反発を警戒か

日中、国旗・握手なき高官協議 国内反発を警戒か
首脳会談への難路映す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA211NQ0R20C22A8000000/

 ※ 良記事だ…。

 ※ 冷静に、丁寧に分析している…。

 ※ お互いに、どういう「立ち位置」で、どういうことを「考えている」のかが分かる内容だ…。

『日中両政府が17日に開いた高官協議は異例ずくめの形式だった。夕食を含めて7時間にわたりながら、両国が公表した画像は握手やグータッチの場面ではなく距離を置いて棒立ちする写真だけ。背後に国旗もなく、発表は会談の翌日となった。

17日午前8時前、羽田空港を1機のチャーター便が離陸した。搭乗していたのは秋葉剛男・国家安全保障局長。行き先は会談相手の中国外交トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員が執務する北京ではなく隣接する天津だった。

新型コロナウイルス禍で中国は北京に厳しい防疫体制を敷いており、外国要人との会談は別の都市で開いている。

会談場所の天津は新型コロナの影響で日本からの直行便が限られている。外部と接触を遮断する感染対策「バブル方式」をとる必要もあり、主に民航機で移動する安保局長がチャーター便で渡航せざるを得なかった。

この2週間前、中国はカンボジアで調整していた外相会談をキャンセルしたばかりだった。ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて中国が軍事演習をしたことに日本を含む主要7カ国(G7)が非難声明を出したからだと説明した。

会談を呼びかけたのは中国側で、ペロシ氏の訪台前だった。台湾問題で関係が悪化しても、新型コロナによる物理的な制約があっても、秋葉氏とは予定通り会った。秋葉氏との協議を外相会談より重視したのはなぜか。

「第9回ハイレベル政治対話」。中国は今回の会談をこう呼ぶ。

中国で外交戦略を判断するのは外務省ではなく共産党中央外事工作委員会。その事務局長といえる弁公室主任の楊氏は王毅(ワン・イー)外相よりも格上の政治局員だ。楊氏と日本の安保局長との会談を「ハイレベル政治対話」と位置づける。

中国は安倍晋三政権だった2015年ごろ、安保局長を首相へ確実にメッセージを伝えられるパイプだと判断したという。内閣改造で交代の可能性がある外相よりも安定した関係を築きやすいとも考えた。

16年以降、習近平(シー・ジンピン)国家主席との首脳会談はおおむねその3カ月前以内に安保局長と楊氏が会って下準備をしてきた。

今回の協議についても両国は首脳同士の対話を議題にしたことを示唆する。中国側の発表資料に「対話と意思疎通を継続する」、日本側に「重層的な意思疎通の重要性で一致」との表現がある。

林芳正外相は19日の日本経済新聞とのインタビューで会談実現に向け「具体的に検討する」と語った。

「我々の最優先事項は党大会の成功だ。そのための対米関係を考えるなかで日本とどう付き合うかを判断する」。中国で対日政策にかかわる共産党員は語る。

習氏の総書記3期目がかかる党大会を秋に控え、中国側は対外関係を安定させたい。その際に日本が台湾問題でどこまで米国と歩調を合わせるつもりかを確認する必要があるという。

日中は9月末に国交正常化50年を迎える。習氏は両国関係を安定させる節目として重視する発言をしてきた。一方で、中国側には党大会前に日本と接触した後、日本が台湾支持で突出した動きをされては困るという不安もある。

中国にとって日本は接近しすぎれば強硬派や世論から突き上げを受ける国だ。日本との対話を志向しつつ、疑念も抱える結果が、握手や国旗のない写真に表れた。これまで楊氏と安保局長の会談の多くは国旗を背に握手する写真を撮ってきた。

日本側にも安倍晋三元首相が死去した後、岸田文雄首相が対中政策を緩めないか警戒する声がある。お互いに相手国への世論を警戒する状況だ。

国交正常化50年というタイミングは首脳が対話するきっかけの一つになり得るものの、実現に向けた機運が高まっているわけではない。

新型コロナも調整を難しくする一因になる。習氏は新型コロナの感染が拡大した20年1月以降、一度も海外に出ていない。感染防止のためとされる。

海外訪問の解禁は党大会が終わった後、11月にインドネシアで開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)への出席になるとの見方がある。

日中の首脳対話を巡って時期を急ぐならオンライン形式、そうでなければ第三国でという案が浮上するゆえんだ。いずれも両国の内政状況や台湾情勢と連動した調整になる。(永井央紀)

【関連記事】

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・日中、対話継続で一致 国交正常化50年を前に高官会談
・日中、外交部門の高官が対面会談 台湾情勢で意見交換

政治・外交 最新情報はこちら https://www.nikkei.com/politics/?n_cid=MCH999

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国連、原発問題で安保理会合 ロシア議会は評議会開催へ

国連、原発問題で安保理会合 ロシア議会は評議会開催へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR22CJA0S2A820C2000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】国連は22日、ウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所を巡って23日に安全保障理事会の緊急会合を開くと発表した。ロシアによる会合の要請を受けたもの。ロシアメディアによると、ロシア下院は25日に同原発に関する臨時評議会を開く。ウクライナが原発の安全を脅かしていると主張し、自国の正当性をアピールする狙いとみられる。

ロシアの議員によると、ロシア下院の評議会ではウクライナに対し「厳しい声明」を出す見通し。ザポロジエ原発を占拠するロシアは、原発周辺への砲撃をウクライナ側のしわざだと主張している。

一方、ウクライナは自軍による攻撃を否定し、ロシアの攻撃だと主張している。ザポロジエ州に隣接する東部ドニプロペトロフスク州のレズニチェンコ知事はSNS(交流サイト)で、21日にもロシアが原発に近い同州ニコポールに25発の砲撃を加えたと明らかにした。
ロシア下院では、ロシアの極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘で記者のダリア氏が20日に殺害された事件についても取り上げるという。プーチン大統領は22日、ダリア氏の「勇敢さをたたえる」として勲章を贈る大統領令に署名するなど、事件の政治化が拡大している。

ロシア連邦保安局(FSB)は同日、ウクライナ情報機関による計画的殺害だと断定したが、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は「ロシアのフィクション世界のプロパガンダ」などとして改めて関与を否定した。

一方、ロイター通信によると、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は22日、侵攻開始以降、9000人近くのウクライナ軍兵士が死亡したと明らかにした。軍関係のイベントで講演した。国境警備隊などが含まれているかは不明。

子供の死傷者も増えている。国連児童基金(ユニセフ)は22日、確認できただけで972人に上ると発表した。1日あたり5人以上の子供が死傷しているという。実際の犠牲者数はこの数字を上回るとの見方も示した。』