中国、対アフリカ巨額融資を見直し 一帯一路が曲がり角

中国、対アフリカ巨額融資を見直し 一帯一路が曲がり角
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『【カイロ=久門武史、北京=川手伊織】中国が、アフリカのインフラ整備に向けた巨額融資が軸の経済協力の見直しに着手した。官民協力で高速道路を建設し、債務再編の交渉に応じる。成長鈍化で「大盤振る舞い」が難しくなり、融資先の「焦げ付きリスク」も警戒する。返済能力を超える貸し付けを巡る国際社会の批判をかわす狙いもある。中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」は曲がり角を迎えた。

ケニアの首都ナイロビで7月末、中心部と空港を結ぶ27キロメートルのナイロビ高速道路が中国の支援で開業した。総工費700億シリング(約790億円)といわれる大型投資で「高速道路ができる前は空港まで渋滞で2時間かかったが、いまは20分。待ち時間が短くなり、稼ぎはよくなった」とタクシー運転手のダンソンさん(53)は歓迎する。

建設資金は中国国有の道路建設大手、中国路橋工程(CRBC)が提供した。以前のように建設費を貸し付けるのでなく、CRBC側が道路運営会社を通じて27年間、通行料を徴収してからケニア政府に引き渡す、広い意味での官民パートナーシップ(PPP)方式で整備した。

この方式にしたのは数年前だとみられるが、中国とケニアの両国に利点があると、道路運営会社のサンディ・フェン氏は強調する。「ケニア側は高速道路と運営ノウハウを手に入れ、中国は通行料で建設資金を回収できる」というわけだ。

アフリカは「一帯一路」の途上にある。中国は、高い経済成長に必要なエネルギーや鉱物資源の供給地としてアフリカを重視し、国有の銀行や企業を通じた巨額融資で道路、鉄道、港の建設を助けた。主に先進国が資金を拠出する国際金融機関は融資の条件として環境保全、人権尊重を厳しく求めるが、中国の2国間融資が求める要件は比較的緩い。工期は短く、アフリカの指導者は中国を歓迎した。

中国は多くのアフリカ諸国に対して最大の債権国になったが、2016年をピークに融資は減少傾向をたどる。米ボストン大のグローバル開発政策センターによると、中国の対アフリカ融資は20年が計19億ドル(約2600億円)で、前年より77%減った。

中国が「焦げ付きリスク」を警戒し、アフリカ側の返済能力を慎重に見極め始めたというのが同センターの見立てだ。

アフリカ諸国の財政は新型コロナウイルスの感染拡大で悪化している。国際通貨基金(IMF)によると、サハラ砂漠以南の国の約6割が債務危機の状態にあるか、そのリスクが高い。中国は21年に開いたアフリカ側との国際会議、第8回中国アフリカ協力フォーラムで「融資の革新的な手法」の模索を打ち出し、支援の見直しを示唆した。

中国は国内総生産(GDP)で米国に次ぐ世界第2の経済大国になったが、成長率は次第に鈍化。19年までは資金流出も続いた。無計画に「チャイナマネー」の力を見せつける余裕はなくなった。

中国は7月末、ザンビアに対しフランスなどほかの債権国とともに債務再編の交渉開始で合意した。中国はこれまで融資先と「一対一」の交渉を好むとされていたが、外国と足並みをそろえた債務減免が実現する可能性がある。

ザンビアの対外債務残高は21年末時点で約170億ドルで、このうち対中債務は60億ドルとの報道がある。中国共産党の関係者は「外交関係が良好な債務国に対しては債務再編の交渉に応じる余地はある」と語る。

中国の対アフリカ融資には汚職の疑惑がつきまとう。アフリカ諸国の中で対中債務残高が最も多いアンゴラは、ドスサントス前政権が中国企業を優遇したとされる。

中国が、返済に窮した融資先から建設した港や道路の運営権を奪う「債務のわな」を仕掛けているとの非難も根強い。中国はこれを米欧の「冷戦思考に基づく偏見だ」と否定してみせる。だが、一定の配慮を示している可能性はある。

中国の経済支援の修正が「本物」ならば、なお若年人口が多く、生産拠点や市場として成長が見込めるアフリカを巡る各国の競争にも影響を与えそうだ。

アフリカ諸国に対しては旧宗主国の英国が東側、フランスが西側に大きな影響力を維持してきた。旧英領のインドは東アフリカに商業ネットワークを広げる。最近ではトルコが建設業を中心に浸透し、ロシアも原子力協力や兵器輸出で影響力を強める。

50カ国を超えるアフリカ諸国は国連でも大きな勢力だ。米国のバイデン政権は8日、サハラ砂漠以南を対象に、食料やインフラに関わる支援を打ち出した。日本は世界銀行などとともに8月下旬、アフリカ各国の首脳を招く第8回アフリカ開発会議(TICAD8)をチュニジアで開く予定だ。』