民衆に対するプロバガンダは、日常から始まる。

民衆に対するプロバガンダは、日常から始まる。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29444351.html

『 銀河英雄伝説という小説をご存知だろうか。田中芳樹氏による、あきらかに共和制体制国家をモデルにした自由惑星同盟と、独裁帝国体制国家をモデルにした銀河帝国の星間戦争を描いた作品です。単にドンパチを描いた作品ではなく、それぞれの社会制度が生み出しやすい膿を、群像劇として描く事で、人類史における戦争と社会というものをテーマにした叙事詩的作品です。1982年に第一巻が刊行され、本筋の10巻の他にも複数の外伝も刊行されています。最近、増刷が100を越えて、数十年に渡って愛読者を生んできた人気の作品です。

その小説の中で、若き英雄にして才気に溢れるラインハルト・ローエングラムが、合法的な皇位の簒奪を企む場面があるのですが、それに呼応する形で、帝国の圧政から逃れて銀河の反対側に共和制国家を築いたはずの自由惑星同盟側で、いわゆる「狡猾な部下に国家を乗っ取られた王子が、紆余曲折の末に、王位を取り戻す」的な、中世騎士物語のようなドラマや出版物が大量に世の中に流布される様子が描かれています。

これは、両者を手玉にとって漁夫の利を得ている商業国家のフェザーン自治領が、両勢力のバランスを保つ為に、既に没落が見えたゴールデンバーム家の皇嗣を、そもそも敵勢力であった自由惑星同盟内に亡命政府を樹立し、生き長らえさせる事で、帝国を牽制しようとして意図的に画策されたプロバガンダでした。

もともと、帝国の圧政から逃げてきた人達なのですから、心情的に抵抗があるのは見えているので、いわゆる「悪い部下に裏切られた、正義の王子が王位を取り戻す」的なメロドラマを流行らせて、忠臣とか騎士道みたいな価値観を煽り、自由惑星同盟内に、皇位を追われた皇嗣に対する同情と受け入れをさせる為の下準備だったわけです。

安っぽい話ですが、実は安っぽい感動というのは、流行る流行らないで言うと、バリューゾーンです。この手の安っぽい感動しか理解できない層もいます。何せ、アニメですら、言葉を省いて、身振りや演技で表現しようとすると、「不親切」とか言われて、言葉で「説明」する事を求められる時代です。目で演技できる役者が日本で育たないのは、全部セリフにして説明しないと、「不親切」と言われてしまうからです。なので、日本の箱が埋まる映画は、スッカスカの作品ばかりですが、興行的には正解なのです。お客が入るのですから。

プロパガンダというのは、街宣右翼のような判り易い形ではなく、頭の回る人間は、社会に空気を造成するところから始めます。つまり、メディアや小説・娯楽に、特定の価値観を賛美するように仕向けるのですね。それによって、社会に特定の事に対して、偏った価値観を植え付けます。

この視点で展望すると、ロシアのウクライナ侵攻の空気は、既に2010年あたりから始まっていたと言えます。何があったかと言うと、「スターリンの自国民虐殺は嘘だ」とか「ある朝目覚めたら、ロシア帝国の皇帝ニコライ2世に転生していた男が、ロシア革命を阻止して、世界の一大帝国皇帝として君臨する」とか、「過去に飛んだタイムトラベラーが、ヒトラーの体に乗り移って、イギリスのチャーチルを打倒し、ロシアと共闘してアメリカを打倒する」といった、異世界転生とも歴史修正とも言える小説が、大量に出版されました。

つまり、「本当のロシアは偉大で、世界を支配する資格がスラブ民族にはある」という価値観を、今から10年以上前から流布させていたという事です。その為、情報統制されて、都合の良い情報しか報道されないモスクワの市民の中には、「ロシアがウクライナ軍を蹴散らして、快進撃をしている」と本気で信じている頭の弱い人が、そこそこの人数います。良くありがちですが、彼らはスラブ民族に生まれただけで、周りに対して優生であるとナチュラルに信じているので、えらい差別的な行動を取ります。自分の出生という、自身の努力が欠片も必要も無い事を誇りにするのは、国粋主義者の定番です。

彼らの歪んた視点で見ると、他国がロシアを批判するのは、優秀なスラブ民族と、優れたロシアに対して、嫉妬しているのだという事になります。実際には、ロシアの軍事技術の殆どを担っていた、ウクライナ人に対して、羨望の気持ちを持ち、暴力で支配したいと思っていたのはロシアの方です。

何しろ、旧ソ連時代から、原子力発電所の運営、戦闘機・空母・潜水艦の設計・製造など、軍需産業の核技術は、殆どがウクライナでしたし、メンテナンスができるのもウクライナでした。中国自慢のステルス戦闘機も、設計はウクライナですし、中国初の空母になる「三東」を「鉄クズ」として売却したのもウクライナです。それと、ヨーロッパのパン籠と呼ばれる豊かな穀倉地帯を、手に入れて、自分達の好きにしたいという願望ですね。まぁ、ウクライナも汚職が蔓延していなければ、技術立国が可能な、非常に技術のある国なのです。溶接一つにしても、ウクライナにメンテナンスしてもらわないと、品質が維持できない製品が中国にはあります。特殊溶接になりますが、潜水艦や船舶では、重要な技術です。

プーチン大統領が、侵攻前に言っていたように、圧倒的なスピードと規模でウクライナを制圧していれば、問題は無かったのですが、中国がロシア支援を躊躇する理由の一つが、ここにあります。つまり、ウクライナがロシアに併合されず、国家として残った場合、中国との関係が拗れて、国内の軍備のメンテナンスが不可能になる可能性すらあるという事です。なので、ウクライナと決裂するところまで、関係を悪化させたくないのですね。なので、全面的にロシア支援はできない状態です。心の中では、習近平氏は、プーチン氏に毒づいていると思います。ウクライナが片付いたら、台湾を殺るつもりだったからです。恐らく、その時のロシアの全面支援の約束まで、オリンピックの時の会談で取り付けていたのでしょう。ロシアが思いの外、弱かったので、予定が全て崩れてしまいました。

日本でも、「実は~の真実は、~だ」とか、陰謀論丸出しの出版物が出ていますが、自分が日本人である事ぐらいしか自慢に思えないメンタルの連中が喜びそうなヨタ話が、堂々とメディアに登場してくるようになると、某かの勢力の意図を疑うべきです。自分で情報を精査する習慣の無い人間が、そういう情報に触れると、心の気持ちの良さで、信じたい事を信じるからです。狂信というのは、「自分のステージが上がった」というような優越意識を感じる事ができるので、油断していると、想像以上の早さで世論として力を持ちます。これは、頭の良さとは、ある意味別の話で、アジアの共産国の自国民虐殺行為が、海外留学でフランスあたりで共産思想を学んだ、インテリ革命家によって行われた事でも判ります。狂信にIQは関係ないのです。』