中国「香港は植民地でなかった」

中国「香港は植民地でなかった」 教育統制で自決権否定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM129Q70S2A810C2000000/

『【香港=木原雄士】香港政府が8月「香港は決して英国の植民地ではなかった」との見解をまとめ、歴史教育でそれを徹底するよう教育現場に指示した。中国本土と異なる旧植民地としての独自性を否定し、自治拡大の機運を封じる狙いだ。香港では香港大学や香港中文大学が国家安全を必修科目とするなど、中国式の教育統制が強まっている。

香港政府教育局は8月初め、香港は「英国に占領されていた」として、「植民地という言葉を使って香港の地位を説明するのは不適切だ」と表明した。この点に関する香港の教科書の修正が話題になったことで、正式な見解をまとめた。

同局は国連が1972年に中国の働きかけで植民地のリストから香港を削除したことを根拠に挙げ、97年の香港返還は「主権行使の再開」であり「主権の回復」ではないと主張した。植民地は独立などの自決権を持つと解釈される場合があることから、香港におけるそうした可能性を全面的に否定する狙いがある。

こうした主張は中国の長年の持論だが、香港では浸透していなかった。香港は日本が占領した40年代の一時期を除き、97年に中国に返還されるまで150年あまり英国の統治下に置かれた。植民地だったとの理解が一般的で、初代行政長官の董建華氏も「156年前、植民地になったのが香港のもっとも重い歴史だ」と発言したことがある。

ただ、中国当局は2019年の大規模デモを受けて、自由な教育が反中感情の根本的な原因とみなし、若いうちから歴史認識をすり込む愛国教育に乗り出した。

日本経済新聞が教育局に「見解に従わない教員の資格を取り消すか」と質問したところ、直接答えず「歴史的な事実の正確な理解によって生徒の中国国民としての意識を醸成する」と述べた。中国は台湾に関する白書でも「台湾が古来中国に属してきた歴史的経緯は明らかだ」と主張する。

英国在住の民主派、鍾剣華氏は教育局の見解は「無意味な議論だ。教科書を改ざんして議論を禁じても、事実を変えることはできない」と指摘。そのうえで香港当局のやり方は「マインドコントロールであり教育の放棄だ」と批判した。

影響は名門大にも及ぶ。香港大と香港中文大は22年から国家安全教育を必修にした。中文大は「中国理解」と「憲法秩序における香港」の2科目を導入した。香港国家安全維持法(国安法)に沿った措置だとして、交換留学を除く外国籍の学生にも履修を求める。

香港の大学は英誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)による22年の大学ランキングで、アジアトップ10に3校が入った。リベラルで高い水準の教育は経済都市としての強みの一つだったが、政治環境の激変が影を落とす。』