クリミア情勢、不安定に ロシア軍弾薬庫でも爆発

クリミア情勢、不安定に ロシア軍弾薬庫でも爆発
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『ロシアが2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島の情勢が不安定化してきた。9日のロシア軍航空基地に続き、16日には北部ジャンコイのロシア軍弾薬庫で大規模な爆発が発生した。ウクライナ側の攻撃とみられ、ロシアの補給網や出撃拠点をたたくことで戦局を打開する狙いがありそうだ。ロシア側が強力な報復行動に出る恐れもある。

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ジャンコイでは弾薬庫で爆発があったほか、変電所で火災も発生した。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は16日、SNS(交流サイト)で「(クリミアの)非武装化の活動を行っている」と投稿し、爆発は同国軍による攻撃だったと示唆した。

ロシア国防省は爆発の原因を「破壊工作」とし、ウクライナ側の攻撃との見方を示した。クリミアでは、9日に西部のロシア軍航空基地で爆発が起きたばかりだった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は16日夜のビデオ演説でクリミアや東部ドンバス地方などの占領地域の住民に「ロシア軍の施設に近づかないでほしい」と呼びかけた。

クリミアの奪還に向けて新たな諮問機関を設置したことも明らかにした。ウクライナが同地域を取り戻す世論形成へ向け、21年に創設した国際枠組み「クリミア・プラットフォーム」と連携して活動を行う予定という。

同枠組みは17日、オンラインで23日に開催する会合に、岸田文雄首相を含む主要7カ国(G7)の3首脳が参加すると発表した。

ゼレンスキー氏は2月の侵攻開始前の状態までロシアを撤退させれば「ウクライナ側の勝利」だと以前は語っていた。今月9日のビデオ演説では「戦争はクリミアで始まった。それはクリミアの解放で終わらなければならない」と奪還への決意を語った。

侵攻当初、南部へルソン州、原子力災害のリスクが懸念されるザポロジエ原発などを制圧したのはクリミアから向かった部隊だった。

ウクライナ軍はへルソン州などの奪還を優先しており、補給ルートなどを攻撃している。さらにクリミア内のロシア軍施設を攻撃することで、補給や増援の能力を低下させて戦局を優位に動かす狙いがありそうだ。

一方、ロシアのプーチン大統領にとってクリミアへの攻撃激化は看過できない事態だ。同氏は当時国民の大多数が支持した14年の併合を自身の大きな功績と位置づけており、クリミアを「聖なる地」と呼ぶ。

クリミアは1954年にソ連最高指導者のフルシチョフがウクライナへ移管した。ウクライナで親欧米派による政変で親ロ派政権が倒れると、ロシアはクリミアに侵攻。住民投票を経て併合した。ロシア黒海艦隊の主力基地があり軍事的な要衝でもある。

ロシアのメドベージェフ前大統領は7月、クリミアにウクライナ側の攻撃があった場合、「終末の日が訪れる」と述べていた。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

現在起きているクリミア半島の軍事拠点に対する攻撃は、クリミア半島の奪還に向けてというよりは、南部における攻防や黒海におけるロシア軍の優位性を奪い、より戦いを優位に進めていくための措置。ここでいくつかの拠点を叩いただけではクリミア半島は奪還できない。まずはクリミア半島の付け根にあるヘルソン州を奪い返すことが重要で、そのための攻撃と見るべきだろう。メドベージェフが言っている「終末の日(≒核兵器の使用)」というのはいつもの脅しなので、気にする必要はないと思われる。
2022年8月18日 1:23 』