米国、大企業への課税強化に転換 利益の15%負担が下限

米国、大企業への課税強化に転換 利益の15%負担が下限
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『【ワシントン=高見浩輔、ニューヨーク=堀田隆文】大企業への課税を柱とした米国の歳出・歳入法が16日、成立した。法人税は1980年代から各国で引き下げ競争が続いてきたが、課税を強化する方向に転換期を迎える。税逃れを続けるグローバル企業に対する不公平感の高まりが背景にある。

新法の目玉は利益に対する課税額が15%を下回る大企業への新たな課税だ。米国の法人税率は21%だが、さまざまな税控除を組み合わせることで実際の納税を抑えている大企業は多い。財務諸表を基準にして少なくとも15%の税負担を求める。

バイデン政権は発足当初、2017年のトランプ減税で21%まで低下した法人税率を28%まで引き上げる増税を検討したが頓挫した。気候変動対策などを実施するための財源確保の代案として民主党内の左派から出てきたのが、200社程度の大企業を対象にした法人税の最低税率案だった。 今回、課税の強化が初めて実現した。

背景にあるのは節税対策を進めてきた巨大IT(情報技術)企業などへの不満だ。金融情報サービス会社カルクベンチのデータによると、米アマゾン・ドット・コムやインテルでは、法人税の支払額を税引き前利益で割った比率は、足元で15%を下回る。

ペンシルベニア大によると、法人税の下限設定と自社株買いへの課税を合わせて10年で約2700億ドル(約36兆円)の税収増が見込まれる。歳出規模は気候変動対策や医療保険の補助延長などで計約4500億ドル。その大半を大企業への課税でまかなう計算だ。

「富裕層や大企業がようやく公正な負担の一部を(税金として)支払うようになる」。16日、法案に署名したバイデン米大統領はこう強調した。

今後の課題は国際連携だ。21年に経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む140弱の国・地域が合意した「グローバル法人最低税率」を実際に実現するには、米国側が多国籍企業に対する別の税制を改める必要がある。

課税強化については「(減税合戦という)自滅的な世界的競争を止めるのに役立つ」(米コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授)と評価する声がある一方で、独自の方式で課税を始める米国が国際的に歩調を合わせられるか危惧する声もある。

そもそも財務諸表を基準にした課税は異例だ。税法や税制に詳しいシカゴ大のダンミカ・ダルマパーラ教授は「過去の経験に乏しいため効果は不透明だ。企業の財務諸表上の利益に大きなゆがみが生じる可能性がある」と指摘している。

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