中国「スパイ船」が入港 スリランカ、債務巡り関係苦慮

中国「スパイ船」が入港 スリランカ、債務巡り関係苦慮
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『中国の調査船「遠望5号」が16日、スリランカに入港した。スリランカは当初、「スパイ船」と懸念するインドに配慮し、中国に入港延期を求めていた。経済危機に陥るなか、国際通貨基金(IMF)から支援を受けるには、中国との債務再編交渉が欠かせないと判断。最終的に対中関係を優先する形で入港を認めた。

遠望5号は16日、南部ハンバントタ港に入港した。同港は直近まで政権の要職を占めていたラジャパクサ兄弟の地元にあり、中国からの投資で開発が進んだ。

その後、スリランカは債務返済に行き詰まり、2017年に同港の99年間の運営権を中国に引き渡した。援助と引き換えに権益を失う「債務のワナ」の典型例と指摘されてきた。

中国外務省の汪文斌副報道局長は16日の記者会見で、調査船の入港について「国際法と国際慣習に合致しており、いかなる国家の安全や経済利益にも影響しない。第三国の妨害も受けるべきではない」と強調した。

遠望5号は当初11日にハンバントタ港に入港予定だった

ロイター通信によると、遠望5号は、中国人民解放軍の戦略支援部隊によって運用されている。同船は衛星などの観測任務に従事してきたとされるが、インドのメディアは周辺領域を偵察するスパイ船だと報じた。

スリランカは中東・アフリカと東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)上の要衝にあたり、かねて中国とインドが影響力を競ってきた。

インド外務省の報道官は7月下旬、同船の入港を巡り「注視する」とコメント。そのうえで、インドの安全や経済的利益を守るうえで「必要なあらゆる手段を講じる」と述べていた。スリランカに対し、外相会談なども通じて懸念を伝えたとみられる。

スリランカは足元で、中国寄りだったラジャパクサ前大統領らが経済危機で退陣。代わってインドや欧米に近いとされるウィクラマシンハ氏が7月下旬に新大統領に就任した。

遠望5号は当初11日に入港する予定で、スリランカの許可も得ていた。だが、スリランカ外務省は8月に入って「さらなる協議の必要」があるとし、中国に入港延期を申し入れていた。

だが、中印でスリランカを巡る応酬が続くなか、スリランカ外務省は13日に「外交チャンネルを通じて全ての関係者とハイレベルで広範囲な協議を実施した」と表明。遠望5号の停泊を16日から22日まで認めると発表していた。「近隣の安全保障と協力が最も優先される」とインドへの配慮をみせたものの、結果としては中国側の意向に従った格好となった。

スリランカの対応が揺れた背景にあるのは、同国が直面する経済危機がある。かねて経常赤字に苦しんでいた同国財務省は4月、財政再建策がまとまるまで対外債務の返済を一時停止すると発表した。

IMFに金融支援を要請しているが、ロイター通信によるとIMFは支援にあたりスリランカに対中債務などの再編などを求めている。

国際金融協会(IIF)によると、スリランカの対中債務は65億ドル(約8700億円)と推定されている。すでにスリランカのラジャパクサ前大統領は1月に中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談し、対中債務の支払いの条件緩和を求めたとされている。

経済立て直しに向けてインドだけでなく中国の協力も欠かせない。スリランカは当面、中国とインドとの外交バランスに苦慮しそうだ。

(ムンバイ=花田亮輔、伊地知将史)』