フランス、マリから完全撤収 てこずるアフリカ外交

フランス、マリから完全撤収 てこずるアフリカ外交
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『【パリ=白石透冴】フランス大統領府は15日、西アフリカのマリに治安維持のため駐留していた仏軍が完全に撤収したと発表した。マリ暫定政権との関係悪化で、約9年間の作戦を終えた。アフリカ大陸で中国やロシアなどが勢力拡大に力を入れる中、フランスは存在感を思うように高められずにいる。

「最後の仏軍兵が撤収した。だがフランスは地域のテロ対策に関わり続ける」。仏大統領府は15日の声明で強調した。オランド前政権が2013年に治安維持のためなどとして部隊を派遣していたが、マクロン大統領が今年2月に撤収の方針を発表していた。

マリでは20年に軍事クーデターが起き、大統領が辞任に追い込まれた。その後誕生した暫定政権はフランスに批判的な言動を繰り返し、マクロン氏は撤収を決めた。人的、財政的な負担が大きくなりすぎた背景もある。仏メディアによると、仏軍は西アフリカのニジェールやチャドなどで部隊の駐留を続けている。ただ地域全体の兵員数は22年末までに従来の半数である約2500人まで減らす予定だ。

マリ暫定政権はロシアの民間軍事会社ワグナー・グループに治安維持の支援を依頼したとされ、同社の約千人が活動しているとの情報がある。ただ同社はウクライナ侵攻に要員を振り向けている。国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)系の武装組織がマリなどで活動しており、治安悪化が懸念されている。

17年に大統領に就任したマクロン氏は旧宗主国としてのつながりを生かし、アフリカ北部、西部などを積極的に訪問し関係を強めようとしてきた。植民地時代にフランスが奪った美術品をアフリカ諸国に返還する動きもみせた。

それでも関係強化の実績は乏しいとの声が上がる。新型コロナウイルスの流行やウクライナ情勢が重なり、マクロン氏が欧州域内の対応を優先せざるをえなかった事情もある。マリでは国際治安維持部隊の駐留がテロ根絶につながっていないとの反感が強まり、フランスなどの撤退を求めるデモが相次いだ。

独立戦争を巡るわだかまりが残るアルジェリアとは険悪な関係が続き、同国のジャーブブ労働・雇用・社会保障相(当時)は21年、フランスを「永遠の敵」と呼んだ。仏メディアによると、マクロン氏は8月下旬にアルジェリアを訪れ、テブン大統領と会談する。両国の関係修復が議題となる見通しだ。

アフリカ大陸の人口は50年までに現在の約2倍の24億人に達するとの試算がある。経済の発展により地政学的な重要性が高まるとして、フランスを含む各国が勢力拡大を狙っている。

中国は大規模なインフラ投資で関係を深めている。近年では軍事的な接近も目立ち、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、アフリカ54カ国のうち7割近くが中国製の装甲車を持つ。東部タンザニア軍の装備の約半分は中国製だという。

ロシア政府はワグナーを通じ各国政府に影響を与える戦略だ。マリのほかリビア、中央アフリカ、モザンビークなどでの活動が報告されており、同社が鉱山の権益を得るなど経済的な結びつきも強めている。

中ロ両国とも、アフリカ大陸を欧米の民主主義陣営に加わらせないという戦略で共通し、一部は「成果」も出している。中国のウイグル弾圧問題やロシアのウクライナ侵攻を巡り、アフリカの多くの国は沈黙する。

欧米諸国も巻き返しを図る。欧州連合(EU)は2月、1500億ユーロ(約20兆円)の大規模支援策を公表した。高速通信網の整備などで結びつきを強める考えだ。米国は今月8日、サハラ砂漠以南のサブサハラ地域向けの戦略を公表。気候変動やテロ対策などで米国が協力を深めるなどとしている。中国は「ルールに基づく国際秩序に挑戦する重要な活動の場としてアフリカ地域を位置づけている」などとし、露骨に警戒感をみせた。』