北戴河会議が終了したようだ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
      令和四年(2022)8月17日(水曜日)弐
          通巻第7433号  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(休刊のお知らせ)明日(8月18日)から22日まで小誌は休刊です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
北戴河会議が終了したようだ
   共青団、勢力を盛り返したのか? 最高幹部等の結論は?
****************************************
 中国共産党最高幹部とOBらが集まる北戴河会議が16日までに終了したようである。
 というのも、8月16日、中国のシリコンバレーといわれる深センに李克強首相が現れたからだ。
 トウ小平の南巡講話(92年春節)も、広東省の深センで行われた。李克強は、これを意識して、会議後初の訪問地を選んだ筈である。

 深センで李克強首相は党幹部や企業幹部を集め、「中国の技術ハブは、低迷する経済を安定させる上で大きな責任を負う」と呼びかけた。

 この訪問は、経済の冷え込みが懸念される環境にあって、南部工業地帯の現地視察をなし、一方で李は広東の幹部らと面談した。またオンラインで江蘇省、浙江省、山東省、河南省、四川省の幹部と話し合い、「政府の政策を最大限に活用し、経済を安定させ、雇用を確保するために市場の原動力を堅持する」と発破をかけたという。

 ところが、上海と福建省の幹部はオンライン会議には出席しなかった。つまり習近平の影響がつよい地区の党委員会は李克強には非協力という態度を示したことになる。

 李首相は深センの「ギャラクシー ・インダストリアル・ グループ」も訪問し、起業家グループに会った。「広東省は中国の輸出の鍵。深センは半導体製造とデジタル化のハブだ」と李はくり返した。こうした一連の行動に何を読み取るべきか。

     □☆□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇◆◇☆◇◆◇
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 リズ・チェイニー、共和党予備選で敗北
  党内トランプ批判の急先鋒、無名の新人に敗れる
****************************************
 11月の連邦議会下院議員選挙で四期目を目指したリズ・チェイニーが8月16日に開催されたワイオミング州の共和党指名大会で、トランプ前大統領が推薦した無名の新人候補に敗れ去った。
 全米メディアは、このリズ敗北が一面トップニュースだ。

 リズは元副大統領ディック・チェイニーの娘。共和党にありながらトランプ弾劾を主張し、党内主流派から嫌われていた。予備選で敗れるとは、いかにトランプの人気が根強いかを物語る。

父親のチェイニーはブッシュ・ジュニア政権の重鎮で、殆どの外交はチェイニーが主導し「最強の副大統領」といわれた。もともとは政治志向の法律家で、ニクソン政権で法律顧問、フォード政権では大統領首席補佐官、そして下院議員六期を経て、レーガン政権で国防長官。95年から2000年のブッシュ政権誕生まではハリバートン社の重役を務めた。

副大統領八年、引退後も政界に強い影響力を持ち、「ディープステートの黒幕」とも「ネオコンの闇将軍」とも言われたが、過大評価だろう。

 アラスカ州ではトランプ支持のサラ・ペーリンが共和党予備選で下院議員候補に当選の勢い、指名獲得が射程に入ったという。ペーリンは熱心なティパーティ運動活動家としてもしられる。
ペーリンは元アラスカ州知事で、2016年には熱烈にトランプを支援した。2008年の大統領選挙ではマケイン共和党候補の副大統領候補となった。

 2024年の大統領選で「副大統領」候補に有力視されているのはニッキー・ヘイリー元国連大使(元サウス・カロライナ州知事)である。

 2022年の中間選挙結果次第だが、FBIのトランプ別邸捜索にもかかわらず、トランプ人気はまったく衰えを見せていない。

          ◎◎◎

ブラジルで選挙戦開始 ルラ氏とボルソナロ氏の一騎打ち

ブラジルで選挙戦開始 ルラ氏とボルソナロ氏の一騎打ち
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1706R0X10C22A8000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『【サンパウロ=宮本英威】ブラジルで16日、10月2日の大統領選に向けた選挙運動が始まった。左派のルラ元大統領(76)は支持基盤である工場労働者を前に「国を立て直す」と述べ、返り咲きに意欲を示した。現職の右派ボルソナロ大統領(67)は前回2018年の選挙期間中に重傷を負った場所を第一声の場に選び、支持層に結束を訴えかけた。

ルラ氏はサンベルナルドドカンポ(サンパウロ州)にある独フォルクスワーゲン(VW)の工場前を第一声の場所に選んだ。労働運動の指導者だった1970年代に労使交渉のために何度も足を運んだ場所で、通算3期目を目指す選挙での当選に向けた足がかりとしたい考えだ。

03年から2期8年大統領を務めて退任する際の支持率が87%と高かったことに言及し、過去の実績をアピールした。自動車生産や雇用の状況が悪いと主張し「最初に大統領になった時よりも経済は悪い。この国を立て直す」と政権交代に向けて意欲を示した。

VWに13年勤務するジルソン・カンポスさん(51)は「ルラ氏が大統領だった時は経済や雇用が良かった。もう一度大統領として戻って欲しい」と期待した。

ボルソナロ氏は南東部ジュイスデフォラ(ミナスジェライス州)で選挙運動を始めた。前回の選挙中だった18年9月、腹部を刺されて重傷を負った場所だ。有権者の同情を集めて支持率が上昇する契機ともなった。
16日、演説するボルソナロ大統領(南東部ミナスジェライス州ジュイスデフォラ)=AP

ボルソナロ氏は「経済は回復して雇用も生まれており、失業率は下がる」と述べ、景気刺激策による効果を強調した。「我が国に汚職はいらない」とも述べ、汚職疑惑で投獄されていたルラ氏を念頭に訴えた。

今回の大統領選挙には12人が立候補したが、ルラ氏とボルソナロ氏の一騎打ちの様相が強い。調査会社Ipecが15日発表した世論調査によると、支持率が最も高いのはルラ氏の44%で、ボルソナロ氏が32%で続いた。

3位は中道左派のゴメス元財務相で6%、主要野党のブラジル社会民主党(PSDB)などが推す女性候補のシモネ・テベチ上院議員は2%にとどまっている。今後は各地で集会が開かれ、テレビやラジオの政見放送は26日に始まる。

【関連記事】ブラジル大統領選、12人が立候補 10月2日投票 』

北朝鮮、農作物に被害 長雨続き、住民退避も

北朝鮮、農作物に被害 長雨続き、住民退避も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB16A2U0W2A810C2000000/

『【北京=共同】朝鮮半島で集中豪雨を伴った長雨が続き、北朝鮮でも農作物に被害が出ているもようだ。住民が退避しているとみられる場面も先週、中国側から目撃された。朝鮮中央通信は16日、降水量が多かった北西部平安北道などの農場を金徳訓首相が訪れたと伝えた。日時は不明だが、農作物の被害現場を視察した可能性もある。

新型コロナウイルス対策で貿易を絞っている北朝鮮で収穫が減れば食料が逼迫する恐れがある。

北朝鮮メディアは15日夕、平安北道などで大雨が降り、14日午後からの総雨量が270ミリ超に達する地域が出たと伝えた。平壌なども1時間に50ミリ超の豪雨に見舞われたという。

この雨が降る前の先週後半、中国・丹東から見える鴨緑江をはさんだ向かいの平安北道では、中州にある集落の周辺で川の水位が上がり畑が冠水していた。

周辺はそれまで数日晴れが続いていたが、鴨緑江上流で大雨になったとみられ、水位はさらに短時間で目に見えて上昇。集落周辺の道路が数時間の間に水をかぶって完全に通れなくなった。水に囲まれ孤立した中州からゴムボートで住民とみられる人々をピストン輸送する様子も見え、一層の増水に備え退避していたとみられる。

北朝鮮メディアは連日水害への「備え」の強化を求めているが、被害が出たとの報道はない。』

ドイツ領ニューギニア

ドイツ帝国
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E5%B8%9D%E5%9B%BD

ドイツ領ニューギニア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E9%A0%98%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%AE%E3%83%8B%E3%82%A2

『ドイツ領ニューギニア(ドイツりょうニューギニア、英: German New Guinea、独: Deutsch-Neuguinea)は、ドイツ植民地帝国が初めて獲得した地域である。1884年から第一次世界大戦勃発後オーストラリアが占領した1914年まで保護領であった。ニューギニア島北東部(カイザー・ヴィルヘルムスラント)及び周辺の島嶼部から構成。総面積は249,500平方キロメートル[1]。

ドイツ領ニューギニア及びビスマルク諸島の主要地域は現在、パプアニューギニアの一部となっている。カイザー・ヴィルヘルムスラント東側の島々は併合に際しビスマーク諸島(嘗てのニューブリタニア諸島)と改称、最も大きな2つの島はそれぞれノイポンメルン(ニューポメラニア、現在のニューブリテン島)、ノイメクレンブルク(ニューアイルランド州)と名を改めた[2]。

西太平洋におけるドイツ領の島々はドイツ領サモアを除き「ドイツ帝国太平洋保護領」を形成。これらはドイツ領ニューギニアの統治下にあり、ドイツ領ソロモン諸島(ブカ、ブーゲンビル両島及び小諸島群)、カロリン諸島、パラオ、マリアナ諸島(グアム島以外)、マーシャル諸島及びナウルを含む。 』

『歴史

南太平洋における初期のドイツの存在

南太平洋地域に初めて進出したドイツ人は、アベル・タスマンが処女航海を行っていた時期、オランダ東インド会社の商船ヘームスカーク号で船長を務めたドイツ北東部イェファー出身のホールマン(或いはホルマン)という男性であったという[3][4]。その後、ハンザ同盟の商館が初めて足場を築く。ハンブルクのヨハン・セザール・ゴーテフフロイ・ソーン社が1857年以降、サモアに交易の拠点を置き、とりわけコプラ貿易や南太平洋各入植地へのドイツ移民の移送に力を入れながら、太平洋の貿易網を確立したのである[5][6][7]。また、1877年にはハンブルクの商社ヘルンシェイム・ロベルトソン社がニューブリテン島北東部沿岸・ブランチ湾(ここからニューブリテン島やカロリン諸島、マーシャル諸島へ貿易を行っていた)のマトゥピ島でドイツ人共同体を設立[8][9]。この他1875年末までには、あるドイツ人商人をして「他の如何なる国をもほとんど除外してしまう程、ドイツの業者や船に至る所で出会う」とまで言わしめている[10]。

しかし、経済的な動向は兎も角として、1880年以前における太平洋地域の植民地支配は限定的であった。当時のヨーロッパ列強の勢力範囲はニュージーランドやフランス領ポリネシア、ニューカレドニア及びフィジー程度とされ[11]、国家統一に手間取られ植民地獲得競争で英仏両国の後塵を拝していたドイツが、太平洋進出への機会を伺うようになる。

ビスマルク政権下のドイツ植民地政策

1870年代末から1880年代初頭にかけて、右派の国民自由党及び自由保守党を中心とする少数勢力が、ビスマルク宰相に植民地政策を着手させるべく、ドイツ国内に各種植民地協会を設立する。最も重要なものは、「1882年植民地クラブ」及び財界関係者が1884年に設立したドイツ植民協会であった[12][13]。ドイツ植民協会は、植民思想や植民地獲得、在外ドイツ人との経済的文化的連携維持を謳っていた[13]ものの、ビスマルクの当初の返答は、「植民地は国民感情が(互いの)政党の憎悪よりも強い祖国を必要とする」[14]という、1881年に書いたメモに集約されよう。これは、あくまでヨーロッパでの対外政策(なかんずく普仏戦争以後におけるフランスの孤立状態の堅持)こそが関心の的であったビスマルクにとって、国家的事業として植民地獲得を遂行する考えは無かったことを物語っている[13]。

しかし、ビスマルクはやがて方針を撤回。1882年から翌年にかけて、ブレーメンの豪商アドルフ・リューデリッツが政府の支援を受けアンゴラに港(後のリューデリッツ港)を開き[13]、1884年4月24日、ドイツ帝国の保護の下でドイツ領南西アフリカを建設[15]。こうしてビスマルクは同年6月23日、国会に対し「今後私企業へ特許状を付与するものを除いて併合が進むであろう」として、ドイツ植民地政策の転換を伝えた[16]。こうしてドイツによる南太平洋方面への進出も本格化し、1884年には北東ニューギニア及びニューアイルランド諸島、ニューブリテン諸島、ソロモン諸島北部をイギリスとの協議を通じて獲得。前者をカイザー・ヴィルヘルムスラント、後者をビスマーク諸島とそれぞれ改名した[17]。なお、1886年、ベルリン協約に基づきソロモン諸島全島がイギリスの保護領となった[17]。

ドイツニューギニア会社

ドイツ領ニューギニアで演習を行う原住民の新兵

1879年から1882年までの太平洋探検からドイツへ帰国するに当たり、オットー・フィンシュは銀行家アドルフ・フォン・ハンセマン率いる、太平洋地域への植民地の拡大に興味を示す非公式グループへ加入する。フィンシュは、ニューギニア東北東部沿岸及びニューブリテン諸島に植民地を建設するよう懇願し、こうした事業に係る費用の算定まで行った[18]。1884年11月3日、ドイツニューギニア会社の賛助を得て、ドイツ国旗がカイザー・ヴィルヘルムスラントやビスマーク諸島、ドイツ領ソロモン諸島に翻ることとなる。

現地の労働力確保とプランテーションの拡大を行うべく、植民地当局は軍隊を派遣し部族の居住する地域を支配下に置いた。その後、原住民に年4週間の労働と現金での人頭税納付を義務付ける新法を公布。労働者が駆り集められ選択肢も少なかったものの、ここにおいて初めて賃金が支払われた。

アルベルト・ハールら植民地高官の中には、原住民の著しい人口減少を危惧する者がおり、東南アジアから労働者の徴発を試みるも、成功はしなかった。それは、マラリアや赤痢、インフルエンザの他天然痘といった病気により多数の労働者が命を落としたためである[19]。とりわけ1894年に猛威を振るった天然痘については、ニューギニア島にいた農業労働者のうち、4分の1程度が死亡したとの記録も残されている[19]。

こうした中、1910年以降、ハールは北部ニューアイルランド島での女性の徴発を禁じ、他地域でも募集を打ち切ることで、積極的な労働力動員が引き起こす否定的な影響を最小限に抑えようとした。これにはドイツ人入植者も反発、ハールは労働者を追加的に確保するため、未征服地にまで植民地支配を広げることを余儀無くされた[20]。

ドイツ帝国保護領

1899年、ドイツ政府はカロリン諸島およびマリアナ諸島(前年にアメリカ合衆国へ割譲されたグアム島を除く)を、米西戦争にて敗北を喫したスペインから25,000,000ペセタ(16,600,000金マルクに相当)で購入することで合意した。両諸島は保護領となりドイツ領ニューギニアの統治下に置かれた[21]。1906年にはマーシャル諸島が追加。

第一次世界大戦とヴェルサイユ条約

第一次世界大戦が勃発すると、オーストラリア軍は1914年、カール・フォン・クレヴィッツ船長らの抵抗叶わずカイザー・ヴィルヘルムスラント及び近隣の島々を攻略。また、日本も現存する太平洋地域のドイツ領のほとんどを占領した。1914年9月11日にオーストラリア海陸軍遠征部隊(en:Australian Naval and Military Expeditionary Force)がビタパカの戦い(en:Battle of Bita Paka)でノイポンメルン島(後のニューブリテン島)の無線局を攻撃したのが、唯一の大きな戦闘であった。オーストラリア側は6名が死亡し4名が負傷、第一次世界大戦初の被害を出した。一方ドイツ側はこれより深刻で、ドイツ人当局者1名及び現地警察30名が死亡、ドイツ人当局者1名と現地警察10名が負傷。こうして、9月21日には植民地の全ドイツ軍が降伏した。

ドイツ領ニューギニア植民地カイザー・ヴィルヘルムスラントの地図(1884年–1919年)

しかしながら、ドイツ人当局者ヘルマン・デツナーと20名程度の現地警察は戦争中ニューギニアで捕虜とならなかった。デツナーがオーストラリア領パプアとの境界を地図に描くため調査探検を行っていた時、彼に知られること無く戦争が始まっていたためである。1920年の著書『人食い人種との四年間』の中で、ドイツ領(カイザー・ヴィルヘルムスラント)の内部にまで入っていたと主張しているが、この主張は様々なドイツ人宣教師の非難を浴び、1932年には前言のほとんどを撤回するに至る。

1919年のヴェルサイユ条約以後、ドイツはニューギニアを含む全植民地を喪失。旧ドイツ領ニューギニアは35年の歴史に幕を閉じ、日本による占領を挟み1949年までオーストラリアの国際連盟委任統治領ニューギニア (信託統治領)となった。なお、同年オーストラリア領(パプア (準州))に編入されパプア及びニューギニア準州となり、後に現在のパプアニューギニアを形成する。

郵便切手

マトゥピ島の消印付20ペニヒ切手(1902年3月11日)
ステファンソートで使用されたものと思われる5ペニヒ切手(1899年)

植民地初の郵便切手は1897年、ドイツ本国の切手に「ドイツ領ニューギニア」(“Deutsch – / Neu-Guinea”)と加刷されたものだった。1901年には植民地共通のヨットを描いたシリーズが発行された。1914年5ペニヒ、10ペニヒおよび5マルク切手が透かし入りの用紙で再発行されたものの、植民地自体が占領されてしまったため日の目を見ることは無かった(1919年に発行された3ペニヒ切手も同様)。

これらの切手は現在1アメリカドル程度から500アメリカドル以上(使用済5マルク切手の場合)で取引されている。高額面切手の使用済は殆どなく、未使用に比べ10~20倍の価格で取引されている。偽の消印も存在するため収集に当たっては注意を要する。なお、オーストラリア占領以後、在庫していた透かしなし切手や、書留郵便のラベルに「G.R.I.」(Georgius Rex et Imperator(ゲオルギウス・レクス・エト・インペラトル)の略、イギリス国王およびインド帝国皇帝を兼務するジョージ5世の意)の銘と、当時英連邦の通貨単位であったペンスまたはシリング建の額面が加刷された。』

ドイツ戦闘機を太平洋へ初派遣 豪で演習、9月に日本へ

ドイツ戦闘機を太平洋へ初派遣 豪で演習、9月に日本へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB15B540V10C22A8000000/

『【ベルリン=共同】ドイツ空軍は15日、インド太平洋地域に向けて戦闘機を初めて派遣した。空軍が明らかにした。オーストラリアで合同演習に加わるほか、9月後半に日本を訪れる予定。安全保障面で同地域と連携を深めることが狙いで、緊迫する台湾情勢を巡り中国をけん制する意図もあるとみられる。

ドイツは近年インド太平洋地域への関与を強化しており、2020年にインド太平洋戦略を策定。昨年には海軍フリゲート艦を同地域に約20年ぶりに派遣し、海上自衛隊と共同訓練も実施した。

ドイツ国防省によると、戦闘機「ユーロファイター」6機と輸送機などが南部バイエルン州にある基地を15日午後に出発。日本には9月28日に入り、航空自衛隊と交流する。韓国やシンガポールも訪れる。

オーストラリア国防省によると、合同演習は8月19日から約3週間の予定で、日本や韓国、米国など17カ国が参加する。』

進む中印デカップリング VCやアリババが撤退モード

進む中印デカップリング VCやアリババが撤退モード
ASIA TECH
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK160G10W2A810C2000000/

 ※ 安全保障と経済活動(経済的利益)が衝突した場合、安全保障に軍配が上がる…。
 ※ 安全保障は、身体・生命の安全に直結するからだ…。

 ※ 何事も、「命あっての物種。」「生きていればこそ。」の話しだ…。

 ※ 人間、命さえ拾っておけば、「明日のおまんま」なんてのは、どうにかこうにかなる…。どうにかこうにか、して行くモンなんだ…。

『5月、インドと中国の間で進む経済デカップリング(分断)の流れを象徴する出来事が起こった。アリババ集団とその傘下の金融会社アント・グループが、インド電子商取引(EC)大手ペイティーエム・モール(Paytm Mall)への出資を一気に全て引き揚げたのだ。


大損確定でも出資引き揚げ

同社は2019年に時価評価額が30億ドル(約4000億円)近くに達し、当時はインドに20社程度しかなかったユニコーン(時価評価が10億ドル以上の未上場企業)の一角を占める有力新興企業だった。しかしその後、米アマゾン・ドット・コムや米ウォルマート傘下のフリップカートなどとの競争で劣勢になり取扱高が減り、時価評価も縮小した。

今回のディールでは、中国2社が合計で4割を超えていた持ち分をペイティーエム・モールに買い戻させた。その株価で計算した時価評価は1300万ドル程度と、30億ドルから10分の1未満に縮小したと現地メディアは伝える。買い取り側の負担を抑える割引価格だったとみられる。数億ドルで買った株を数百万ドルで売却し、大損を確定する形での撤収だった。約2割を持つ大株主のソフトバンクグループも似た規模の評価損を出したはずだ。

ペイティーエム・モールの創業者、ビジェイ・シェカー・シャルマ氏は21年に新規株式公開(IPO)したモバイル決済大手ペイティーエム(Paytm)の創業者でもある。同社もソフトバンクGとアリババ系の出資でインド有数のユニコーンに成長した。

シャルマ氏(右)はアリババ集団をモデルにしてきた(21年11月、ペイティーエム運営会社の株式上場式典)=ロイター

ペイティーエム・モールの先行き不安説にもシャルマ氏は「我々にはママ(アリババ創業者の馬雲=ジャック・マー氏)とパパ(孫正義・ソフトバンクG会長兼社長)がついている」と、両グループの後ろ盾を頼りにしきっていた。ECとモバイル決済を親子関係にしないで並立させるモデルもアリババとアントGのやり方をまねた。アリババ系の出資引き揚げのショックは大きそうだ。

アリババは21年、食品宅配大手ビッグバスケットの株を全てタタ財閥に売却。ソフトバンクGと一緒に出資していたもう一つのインドEC企業スナップディールの株も売り払った。料理宅配のゾマトが同年新規株式公開(IPO)した際にも、アリババは持っていた株を売却しており、インド新興企業投資からは完全に撤退モードに入っている。

バイトダンスや小米系も続々

撤退モードにあるのはアリババ系だけではない。簡易動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国系の字節跳動(バイトダンス)はこの4月、簡易動画投稿アプリの「ジョシ(Josh)」とローカル言語ニュース表示アプリの「デイリーハント」を運営する会社の株を全て売却した。

スマートフォン大手小米(シャオミ)系の大手ベンチャーキャピタル(VC)、順為資本(シュンウェイ・キャピタル)は20年秋にインド拠点を閉鎖。21年春には「インド版ツイッター」と呼ばれるクー(Koo)への出資を解消した。

45年ぶりにインド軍に死者を出した20年6月の中印国境紛争後、インド政府はTikTokなど中国製スマホアプリの使用を禁止する一方、中国資本によるインド企業への投資を許可制にするなど、中国の製品と投資を排除する姿勢を打ち出している。中国自動車大手の長城汽車が6月末、米ゼネラル・モーターズ(GM)のインド工場の買収を断念したのも投資許可が出なかったからといわれる。

中国企業はモバイル・インターネット革命を通じたスタートアップの急成長が中国に続いてインドでも再現できるとみて投資を重ねてきたが、流れは完全に変わったようだ。他方で、米中、中印の経済デカップリングが進めば、日本や米国の新興企業投資マネーがインドと東南アジアに向かう流れは今後さらに加速しそうだ。

(編集委員 小柳建彦)
スタートアップGlobe 』

中国「スパイ船」が入港 スリランカ、債務巡り関係苦慮

中国「スパイ船」が入港 スリランカ、債務巡り関係苦慮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM168770W2A810C2000000/

『中国の調査船「遠望5号」が16日、スリランカに入港した。スリランカは当初、「スパイ船」と懸念するインドに配慮し、中国に入港延期を求めていた。経済危機に陥るなか、国際通貨基金(IMF)から支援を受けるには、中国との債務再編交渉が欠かせないと判断。最終的に対中関係を優先する形で入港を認めた。

遠望5号は16日、南部ハンバントタ港に入港した。同港は直近まで政権の要職を占めていたラジャパクサ兄弟の地元にあり、中国からの投資で開発が進んだ。

その後、スリランカは債務返済に行き詰まり、2017年に同港の99年間の運営権を中国に引き渡した。援助と引き換えに権益を失う「債務のワナ」の典型例と指摘されてきた。

中国外務省の汪文斌副報道局長は16日の記者会見で、調査船の入港について「国際法と国際慣習に合致しており、いかなる国家の安全や経済利益にも影響しない。第三国の妨害も受けるべきではない」と強調した。

遠望5号は当初11日にハンバントタ港に入港予定だった

ロイター通信によると、遠望5号は、中国人民解放軍の戦略支援部隊によって運用されている。同船は衛星などの観測任務に従事してきたとされるが、インドのメディアは周辺領域を偵察するスパイ船だと報じた。

スリランカは中東・アフリカと東アジアを結ぶシーレーン(海上交通路)上の要衝にあたり、かねて中国とインドが影響力を競ってきた。

インド外務省の報道官は7月下旬、同船の入港を巡り「注視する」とコメント。そのうえで、インドの安全や経済的利益を守るうえで「必要なあらゆる手段を講じる」と述べていた。スリランカに対し、外相会談なども通じて懸念を伝えたとみられる。

スリランカは足元で、中国寄りだったラジャパクサ前大統領らが経済危機で退陣。代わってインドや欧米に近いとされるウィクラマシンハ氏が7月下旬に新大統領に就任した。

遠望5号は当初11日に入港する予定で、スリランカの許可も得ていた。だが、スリランカ外務省は8月に入って「さらなる協議の必要」があるとし、中国に入港延期を申し入れていた。

だが、中印でスリランカを巡る応酬が続くなか、スリランカ外務省は13日に「外交チャンネルを通じて全ての関係者とハイレベルで広範囲な協議を実施した」と表明。遠望5号の停泊を16日から22日まで認めると発表していた。「近隣の安全保障と協力が最も優先される」とインドへの配慮をみせたものの、結果としては中国側の意向に従った格好となった。

スリランカの対応が揺れた背景にあるのは、同国が直面する経済危機がある。かねて経常赤字に苦しんでいた同国財務省は4月、財政再建策がまとまるまで対外債務の返済を一時停止すると発表した。

IMFに金融支援を要請しているが、ロイター通信によるとIMFは支援にあたりスリランカに対中債務などの再編などを求めている。

国際金融協会(IIF)によると、スリランカの対中債務は65億ドル(約8700億円)と推定されている。すでにスリランカのラジャパクサ前大統領は1月に中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談し、対中債務の支払いの条件緩和を求めたとされている。

経済立て直しに向けてインドだけでなく中国の協力も欠かせない。スリランカは当面、中国とインドとの外交バランスに苦慮しそうだ。

(ムンバイ=花田亮輔、伊地知将史)』

サハリン2、新会社への事業移管通知 九州電や西部ガス

サハリン2、新会社への事業移管通知 九州電や西部ガス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC165N80W2A810C2000000/

『ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、新会社に事業を移管することの通知が複数の日本企業に届いていることが16日、分かった。ロシア政府は新たに設立した運営会社に事業を移管する方針。従来の運営主体であるサハリンエナジーに出資している三井物産、三菱商事は、日本政府とも協議して継続参画するかどうかを検討している。

新会社は5日付でロシア国内に設立された。旧運営会社から事業や権利、義務などを引き継ぐ。サハリン2から液化天然ガス(LNG)を購入する九州電力や西部ガスホールディングス(HD)に新会社へ事業を移管する旨の通知が届いたという。

九電は「新会社への事業移管に関する通知が来た。価格や供給量など契約に関することは回答できない」と説明。西部ガスHDは「新会社と契約するよう正式な依頼が来ている。現在内容を精査している」とコメントした。

旧運営会社のサハリンエナジーにはロシアのガス大手ガスプロムが50%強、英シェルが27・5%弱、三井物産が12・5%、三菱商事が10%を出資している。プーチン大統領は大統領令で、ガスプロムを除く3社に対して、新会社設立後1カ月以内に従来の出資比率に応じた株式取得に同意するかどうかを通知する必要があるとしている。三井物産と三菱商事は日本政府などと協議し、方針を決める。』

ウクライナ南部、戦線中心に 占領地結ぶ要衝 併合懸念

ウクライナ南部、戦線中心に 占領地結ぶ要衝 併合懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR08BZG0Y2A800C2000000/

『ウクライナにおける戦線の中心はザポロジエ原発がある南部に移っている。ウクライナは米国が供与した高機動ロケット砲システム「ハイマース」で、占領地域にあるロシア軍の補給網を攻撃し奪還を急ぐ。主要河川が流れる南部はロシアが実効支配するクリミア半島につながる要衝で、ロシアが併合を目的として形式的な「住民投票」を強行する懸念も強まっている。

ウクライナが南部の奪還を急ぐ背景には、ロシアへの併合を問う「住民投票」を阻止したい考えがある。ロシアは2014年に侵攻したクリミア半島でも住民投票で支持を得たと主張し、一方的に併合を宣言した。住民投票はロシアで統一地方選がある9月半ばの実施が有力視され、ロシアには南部の実効支配を固め、クリミア半島の水源や電力源を確保する思惑もある。

ウクライナの作戦を支えるのがハイマースだ。標的まで誤差2~3メートルで着弾可能とされ、米国が16基の供与を表明した。ウクライナは6月下旬から占領地域にあるロシア軍の弾薬庫や橋に攻撃を重ねた。火力で圧倒する同軍の補給を乱す狙いで、米国防総省高官はウクライナがハイマースで100以上の目標を破壊したと説明した。

ロシアは反発を強めている。国防省はウクライナが米国と調整して標的を定めているとして「米国が紛争に直接関与している」と非難した。9日にはハイマースの弾薬庫を破壊したと主張した。

ウクライナの本格的な反攻には、ハイマース以外の兵器の確保が課題となる。米紙ワシントン・ポストは12日、奪還作戦の失速を報じた。ロシアもヘルソン州で部隊を増強している。ウクライナ軍総司令官は13日、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長と電話協議し、砲撃能力の支援強化を訴えた。

米国防総省は対空レーダーを標的にする兵器の供与も8日に明かした。防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長はハイマースが「切り札ではない」とした上で、ウクライナがロシアの対空レーダーを壊し、航空優勢を確保すれば地上戦を有利に進められるとみる。米欧製の戦車をいつどれだけ投入できるかが次の焦点になるとの見方を示した。

(パリ=白石透冴、小川知世)

ハイマース効果は限定、戦車供与焦点に

防衛省防衛研究所の高橋杉雄・防衛政策研究室長

ウクライナは米国が提供した高機動ロケット砲システム「ハイマース」で、ロシア軍の弾薬庫や橋のような交通の要衝を攻撃している。火力で圧倒するロシア軍の前線に送られる砲弾を減らす狙いで、一定の効果が出ている。ウクライナ軍が南部で反攻を本格化したため、ロシア軍は7月下旬ごろから東部ドネツク州への前進が難しくなっているとみられる。

米国が供与した「HARM(ハーム)」と呼ばれる対レーダーミサイルも反攻を後押しする可能性がある。対空レーダーシステムを標的にする兵器で、ウクライナ軍が使い始めたとの情報がある。ウクライナが航空優勢を確保し、航空機で対地攻撃をできるようになれば、南部の奪還にむけた地上戦を有利に進められる。

もっともハイマースの効果はある分野に限られ、全ての状況を変える切り札ではない。移動する目標や広範囲の攻撃はできないからだ。前線のロシア兵を追い払うには戦車が必要になる。ポーランドがいち早く供与を始めた旧ソ連製の戦車は在庫が尽きつつあるとみられ、次の焦点はドイツや米国製の戦車の供与に移る。

ウクライナが戦闘停止にむけたロシアとの協議を打ち切った理由は首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで起きた虐殺にある。占領地域での人道的な扱いが期待できない以上、占領を前提とした協議は始められない。ロシア側が協議を通じてウクライナ政権を降伏させられる見込みを失ったことも、協議が止まった要因だ。ロシアが方針を変えて侵攻を断念するか、朝鮮戦争(1950~53年)のように双方が消耗し尽くすまで協議が進む理由はない。』

フランス、マリから完全撤収 てこずるアフリカ外交

フランス、マリから完全撤収 てこずるアフリカ外交
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR166EO0W2A810C2000000/

『【パリ=白石透冴】フランス大統領府は15日、西アフリカのマリに治安維持のため駐留していた仏軍が完全に撤収したと発表した。マリ暫定政権との関係悪化で、約9年間の作戦を終えた。アフリカ大陸で中国やロシアなどが勢力拡大に力を入れる中、フランスは存在感を思うように高められずにいる。

「最後の仏軍兵が撤収した。だがフランスは地域のテロ対策に関わり続ける」。仏大統領府は15日の声明で強調した。オランド前政権が2013年に治安維持のためなどとして部隊を派遣していたが、マクロン大統領が今年2月に撤収の方針を発表していた。

マリでは20年に軍事クーデターが起き、大統領が辞任に追い込まれた。その後誕生した暫定政権はフランスに批判的な言動を繰り返し、マクロン氏は撤収を決めた。人的、財政的な負担が大きくなりすぎた背景もある。仏メディアによると、仏軍は西アフリカのニジェールやチャドなどで部隊の駐留を続けている。ただ地域全体の兵員数は22年末までに従来の半数である約2500人まで減らす予定だ。

マリ暫定政権はロシアの民間軍事会社ワグナー・グループに治安維持の支援を依頼したとされ、同社の約千人が活動しているとの情報がある。ただ同社はウクライナ侵攻に要員を振り向けている。国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)系の武装組織がマリなどで活動しており、治安悪化が懸念されている。

17年に大統領に就任したマクロン氏は旧宗主国としてのつながりを生かし、アフリカ北部、西部などを積極的に訪問し関係を強めようとしてきた。植民地時代にフランスが奪った美術品をアフリカ諸国に返還する動きもみせた。

それでも関係強化の実績は乏しいとの声が上がる。新型コロナウイルスの流行やウクライナ情勢が重なり、マクロン氏が欧州域内の対応を優先せざるをえなかった事情もある。マリでは国際治安維持部隊の駐留がテロ根絶につながっていないとの反感が強まり、フランスなどの撤退を求めるデモが相次いだ。

独立戦争を巡るわだかまりが残るアルジェリアとは険悪な関係が続き、同国のジャーブブ労働・雇用・社会保障相(当時)は21年、フランスを「永遠の敵」と呼んだ。仏メディアによると、マクロン氏は8月下旬にアルジェリアを訪れ、テブン大統領と会談する。両国の関係修復が議題となる見通しだ。

アフリカ大陸の人口は50年までに現在の約2倍の24億人に達するとの試算がある。経済の発展により地政学的な重要性が高まるとして、フランスを含む各国が勢力拡大を狙っている。

中国は大規模なインフラ投資で関係を深めている。近年では軍事的な接近も目立ち、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、アフリカ54カ国のうち7割近くが中国製の装甲車を持つ。東部タンザニア軍の装備の約半分は中国製だという。

ロシア政府はワグナーを通じ各国政府に影響を与える戦略だ。マリのほかリビア、中央アフリカ、モザンビークなどでの活動が報告されており、同社が鉱山の権益を得るなど経済的な結びつきも強めている。

中ロ両国とも、アフリカ大陸を欧米の民主主義陣営に加わらせないという戦略で共通し、一部は「成果」も出している。中国のウイグル弾圧問題やロシアのウクライナ侵攻を巡り、アフリカの多くの国は沈黙する。

欧米諸国も巻き返しを図る。欧州連合(EU)は2月、1500億ユーロ(約20兆円)の大規模支援策を公表した。高速通信網の整備などで結びつきを強める考えだ。米国は今月8日、サハラ砂漠以南のサブサハラ地域向けの戦略を公表。気候変動やテロ対策などで米国が協力を深めるなどとしている。中国は「ルールに基づく国際秩序に挑戦する重要な活動の場としてアフリカ地域を位置づけている」などとし、露骨に警戒感をみせた。』

新「日英同盟」、英国がアジアで狙うミドルパワー戦略

新「日英同盟」、英国がアジアで狙うミドルパワー戦略
編集委員 下田敏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD297Y60Z20C22A7000000/

『国際情勢が大きく動くなか、英国が日本に急接近している。英国の強い働きかけで、日本が2035年に自衛隊への配備を目指す次期戦闘機は共同開発の方向で調整が進んでいる。日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への英国の加盟は23年に実現する見込み。インド太平洋重視の戦略に加え、中国との価値観の隔たりが、英国を1世紀ぶりの「日英同盟」へと走らせている。

次期戦闘機で協力

今春、多くの日本の防衛関係者が英国を訪れていることが国際外交筋で話題になった。英国が開発を進める次期戦闘機「テンペスト」をめぐる水面下での折衝とささやかれた。

事態は5月に入って大きく動く。当時の岸信夫防衛相が訪米し、次期戦闘機の日英共同開発の可能性について米国に説明。直後の英国での日英首脳会談で、岸田文雄首相とジョンソン首相は今年末までに具体策を詰めることで一致した。米国との開発が既定路線だっただけに「まさかと思っていた展開になっている」(日本の防衛関係者)。

英国は次期戦闘機の共同開発を日本に強く働きかけている(次期戦闘機テンペストのモデル)=ロイター

正式発表はまだないが、ウィグストン英空軍参謀総長は7月中旬に「日本を含めたパートナーと(次期戦闘機の開発で)提携の機会を探り、専門技術を共有していく」と語った。これに続いてウォレス英国防相も次期戦闘機の開発で日本およびイタリアと緊密に連携する考えを表明した。英国が次期戦闘機の共同開発を日本に強く働きかけてきたことがうかがえる。

日英は安全保障での連携を強めている。5月の首脳会談では自衛隊と英軍が共同訓練などで相互訪問するときの手続きを簡略化する「円滑化協定」で大筋合意した。21年に英国の最新鋭空母が日本に寄港したのに続き、今年6月には海上自衛隊の練習艦が英国を訪問し、共同訓練に参加している。

TPP、インド太平洋への足がかりに

英国は通商分野での連携にも積極的だ。英国がTPP加盟を申請したのは21年2月。前哨戦である日英経済連携協定(EPA)の交渉をわずか半年で終え、スピード発効させた直後だった。

英国とのTPP交渉はデータ流通や知的財産などのルール審査をすでに終え、関税分野に入っている。英国が目指す年内の交渉妥結は微妙だが、23年初めには協定が締結され、英国のTPP加盟が実現する見込みだ。

英国のTPP加盟は23年に実現する見込みだ(18年、チリで開かれた現加盟国による調印式)=ロイター

経済産業研究所の渡辺哲也副所長は「英国はインド太平洋への足がかりとしてTPPをとらえている。アジアのスタートアップなどでも日本と連携したいという意向があるようだ」と話す。中国がTPPに揺さぶりをかけるなか、データ流通などルール水準や高度の貿易自由化を維持したい日本にとっても、英国は新たな支えと映る。

きっかけはEU離脱

英国は数年前から、日本接近の機会をうかがっていた。きっかけは欧州連合(EU)からの離脱。16年の国民投票で離脱派が過半数を占め、曲折の末に20年1月末に正式離脱した。「政策のフリーハンドを握ったのはチャンス。インド太平洋でのアセット構築が極めて重要だ」と英外務省関係者は語る。

EU離脱後の英国の世界戦略は、昨年公表された外交・安全保障の基本方針「統合レビュー」に描かれている。米国を最も重要な2国間関係と位置付けたうえで、世界経済の成長の原動力はインド太平洋に移っていると強調。高付加価値の製品やサービスへの需要が英国に大きな機会をもたらすとみている。

「日本を必要としている」

注目すべきは超大国ではない中堅国家・ミドルパワーの連携への言及だ。大国間の競争は冷戦期のようなブロックの形成にはつながらないとしたうえで「20年代はミドルパワーの影響力が大きくなり、特にそれらが連携して行動するときに力が増す」と予測する。インド太平洋で英国が影響力を確保するには、貿易や技術利用のルールづくりを含めた日本とのミドルパワー同盟が有効と判断しているようにみえる。

「今の英国がミドルパワーであるのは間違いない。われわれが日本を必要としているのだ」。英エコノミスト誌の元アジア・エディターであるジョン・アンドリュース氏はこう語る。

中国との関係の変化が、英国による日本への急接近に拍車をかけていると分析するのは、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)研究員のダンカン・バートレット氏だ。英国の中国に対する見方は「新型コロナウイルスへの対応、香港での民主主義の抑圧、ウクライナに侵攻したロシアへのスタンスで劇的に変わった」。かつては経済分野で中国と親密な関係にあった英国だが、中国は価値観が異なる国家という認識が強まり、アジアで信頼できる友好国としての日本の重要性が高まったとみる。

英国次期首相候補はともに中国に厳しい姿勢を取る(7月、保守党党首選の討論会)=ロイター

英国は現在、辞意を表明したジョンソン首相の後任を決める与党・保守党の党首選の真っ最中。新首相が選出されれば政策変更は起こり得るが、アジア戦略の基本方針は「どちらの候補者が首相になっても変わらない」(バートレット氏)。決選投票に残ったトラス外相もスナク前財務相も中国には強硬な姿勢で臨んでおり、トラス外相は「ウクライナを侵略するロシアを実質的に助けている中国にはより厳しい態度を取るべきだ」と訴えている。

ウクライナ紛争が長期化し、台湾海峡での緊張が高まるなか、社会の分断に直面する米国をともに最も重要な同盟国とする日英の利害は重なり合う。英国は安全保障や通商だけではなく、文化や教育、政策で共感を得るソフトパワーを重視しており、その意味でも価値観を共有できる日本を頼みにしているようにみえる。

日英が同盟を結んだのは120年前の1902年。東アジアでのロシア帝国の膨張に備えてのことだった。歴史は韻を踏むのかもしれない。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。
クリックすると「Nikkei Views」一覧へ

Nikkei Views https://www.nikkei.com/opinion/nikkei-views/?n_cid=DSREA_nikkeiviews 

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

松原実穂子のアバター
松原実穂子
NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト
コメントメニュー

別の視点

日英間では、サイバーセキュリティ協力も深化している。2012年から日英サイバー対話が始まり、2020年東京オリパラをなどの大規模行事のためのサイバーセキュリティ協力などについて議論を進めてきた。また、防衛省・自衛隊は、2021年からNATOサイバー防衛協力センター(在エストニア・タリン)主催の年次国際サイバー演習「ロックド・シールズ」に参加しているが、昨年は米インド太平洋軍、今年は英国防省及び英軍と組んだ。この演習は2カ国ずつチームを組んで参加することになっており、米英の自由で開かれたインド太平洋実現におけるサイバーセキュリティ重視、日本との協力の深化を望む姿勢がうかがえる。
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2022/04/19e.html
2022年8月17日 13:26 』

クリミア爆発、ウクライナ精鋭部隊が関与か 米紙報道

クリミア爆発、ウクライナ精鋭部隊が関与か 米紙報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB16BP30W2A810C2000000/

『米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は16日、ウクライナ南部クリミア半島で同日起きた爆発について、ウクライナ軍の精鋭部隊が攻撃に関与したと同国政府高官の話として伝えた。同半島はロシアが2014年に侵攻し、一方的に併合を宣言した。

【関連記事】ゼレンスキー氏「ロシア軍施設から離れて」 占領地住民に

クリミア半島では9日にもロシア軍の航空基地で爆発が起きた。ウクライナ側による破壊工作の可能性が指摘されていた。ウクライナ軍は同半島に続く南部で、ロシアの占領地域の奪還を急いでいる。今後も同半島の軍関連施設などで爆発が続く可能性がある。

ウクライナ側は攻撃への関与についてこれまで公式には認めていない。ゼレンスキー大統領は9日、ロシアとの戦争はクリミア半島から始まったとして「クリミアで終わる必要がある」と述べていた。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
コメントメニュー

ひとこと解説

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが14年に強制編入したクリミア半島の奪還を、本気で考えているのだろうか。報道によると、同大統領は8月15日、クリミア半島とその中心都市セバストポリ奪還に向けた諮問会議を設立する大統領令に署名した。米国から供与された高機動ロケット砲「ハイマース」などを活用しつつ、クリミアのロシア軍を揺さぶっているようである。むろん、将来浮上するとみられるロシアとの和平協議では、クリミア半島放棄をロシアは受け入れないだろうし、クリミア奪還に固執することは戦争をますます長引かせる恐れもある。それでも、当面の戦略として、兵員不足に悩むロシア軍の戦力を分散させる効果はある。
2022年8月17日 7:58 』

中国、27年までに核弾頭700発 国防費は30年間で39倍

中国、27年までに核弾頭700発 国防費は30年間で39倍
防衛白書を読む②
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA080390Y2A800C2000000/

『防衛白書は台湾有事を念頭に中国の軍備増強への警戒感を強調した。核戦力やミサイルの拡充を例示し「日本や国際社会の安全保障上の懸念になる傾向が近年より強まっている」と明記した。

白書によると中国の2022年度の国防費は24.7兆円にのぼり、日本の防衛費の4.6倍に相当する。過去10年間で2.2倍、30年間で39倍に増えたと指摘した。総額ベースでは世界トップの米国に次ぐ規模がある。

核戦力の拡大に警鐘を鳴らした。27年までに最大700発の運搬可能な核弾頭、30年までに少なくとも1000発の核弾頭を保有する可能性に触れた。27年は中国の軍創設100年にあたり、台湾侵攻の目標年に据えているとの見方がある年だ。

中国が核使用で掲げる「無条件の先行不使用」についても「こうした説明に疑問を呈する指摘もある」と説明した。

武器や装備の能力拡大も詳述した。最新鋭の第4・5世代戦闘機の数は日本の4倍の1270機を保有する。ウクライナ侵攻で注目を浴びた無人機に関しては「ミサイルが搭載可能な機体など、多種多様な無人機の開発を急速に進めている」と言及した。

中国は「遼寧」など3隻の空母を持つ。将来的には原子力空母の建造計画が存在するとの見方を示した。原子力空母は長距離の航行が可能で、中国が目指す海洋進出と密接にかかわる。

サイバー・宇宙・電磁波の「新領域」での台頭が目立つ。さらに人工知能(AI)や無人技術を用いて「智能化」した武器や装備を使う戦い方の研究が進展していると分析した。

日本周辺の中国による軍事動向は沖縄県・尖閣諸島周辺の活動について「海上・航空戦力は行動を一方的にエスカレートさせ、強く懸念される状況だ」と言明した。ロシアとの軍事協力は「日本への示威行動を意図している」と記した。(随時掲載)

【「防衛白書を読む」記事一覧】

・ロシア「緒戦」に3つの敗因 航空優勢確保せず

政治・外交 最新情報はこちら https://www.nikkei.com/politics/?n_cid=MCH999 』

中国製造業、関税回避へメキシコ進出 対米輸出の拠点に

中国製造業、関税回避へメキシコ進出 対米輸出の拠点に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN020PJ0S2A800C2000000/

『中国の製造業大手が米国への輸出拠点としてメキシコへの投資に乗り出している。中国によるメキシコへの直接投資は2021年に6億630万ドル(約800億円)と前年比で76%増え、過去最高を更新した。米国と貿易協定を結ぶメキシコに進出することで、トランプ前米政権が引き上げた対中関税を回避できるという思惑がある。

米国と国境を接するメキシコ北部ヌエボレオン州。国境から車で2時間半ほど走ると、荒野に巨大な赤と銀色の門が突然現れる。皇居の7倍を超える広大な敷地にトラックが資材を運び込み、クレーンが骨組みを組み立てる。急ピッチで建設が進むのは、中国資本の工業団地「ホフサン・インダストリアル・パーク」だ。

中国の工業団地「ホフサン・インダストリアル・パーク」の入り口(メキシコ北部ヌエボレオン州)

中国浙江省に本拠地を置き、国内外で工業団地の運営などを手がける複合企業の華立集団がメキシコ企業などと共同で建設している。17年に建設に着手し、すでに一部の工場が完成している。

中国企業20社が進出を決めており、そのうち10社の工場が生産を始めている。レストランやホテル、集合住宅も整備している。総投資額は現時点で12億ドルを見込む。メキシコ経済省によると、中国(香港含む)によるメキシコへの直接投資は21年に6億630万ドルと前年比で76%増えた。比較可能な1999年以降で最高だった。国別では9位で、8位の韓国(6億8470万ドル)に迫る。

特に製造業の投資が集中するのは米国に近い北部だ。ヌエボレオン州の経済省によると、同州への中国企業の投資件数は発表ベースで21年に18件と前年の7件から2倍以上に増えた。15~18年は年1~2件にとどまっていた。

メキシコに直接投資をした中国企業は22年時点の累計で1289社に達した。企業の進出に伴い、中国メキシコ間の貿易額は増えている。

メキシコ経済省によると、中国は米国に次ぐ2位の輸入相手。中国からメキシコへの輸出額は21年に1010億ドルと5年前に比べて5割増え、米の半分程度の水準に迫る。中国企業がどの程度寄与しているかは不明だが、メキシコから米国への輸出額は3989億ドルと5年前に比べて3割増加した。

背景にあるのが18年にトランプ前米大統領が打ち出した対中関税だ。トランプ前政権は18年7月以降、中国から輸入する幅広い製品に対する関税を最大25%まで上乗せした。米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)によると、中国に対する米国の関税は平均で19.3%と米中貿易摩擦が始まる前の5倍以上に上がった。

中国企業によるメキシコへの投資が目立つのは家電や家具メーカーだ。トランプ前政権は18年9月に「第3弾」として2000億ドル分の中国製品に10%の追加関税をかけた。第3弾には冷蔵庫や空調などの家電のほか、家具など消費財が多く対象に含まれた。19年には第3弾の制裁関税の比率を25%まで引き上げた。

ヌエボレオン州の州都モンテレイの投資促進機関インベスト・モンテレイのエグゼクティブ・ディレクター、エクトル・ティヘリナ氏は「18年の米中貿易摩擦以降、中国企業が急にメキシコへの投資に関心を持った」と振り返る。

メキシコの工業団地に中国の家電メーカー・海信集団(ハイセンス)などが進出した(北部ヌエボレオン州)

中国家電大手のハイセンスは2億6000万ドルを投じ、米国向けに冷蔵庫や空調機器の工場を建設している。22年中にも冷蔵庫の量産を始める見通しだ。香港の家具メーカーの敏華ホールディングスは3億ドルを投じて工場を建設する。浙江省の家具メーカーの顧家集団は3月、メキシコで生産能力を引き上げる計画が報じられた。

22年4月、ヌエボレオン州に生産拠点を新設したソファメーカーの中源家居は「国際貿易の障壁を効果的に避ける」と説明し、対中関税の回避が狙いであることを示唆する。米国が主要販売先のひとつである芝刈り機メーカー、寧波大葉園林設備も8月上旬、ヌエボレオン州に工場を建設すると表明した。「未来の貿易リスクに対応する」としており、米中関係の先行きが不透明なことが投資判断につながったようだ。

中国企業の進出を後押しするのは20年に発効したUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)だ。メキシコに拠点を置く企業は、北米で調達する部品の比率などUSMCAの条件を満たせば米国に関税ゼロで輸出できる。ハイセンスのモンテレイ法人でバイス・プレジデント(VP)を務めるサムエル・ペーニャ氏は「メキシコ企業と同じように自由貿易協定(FTA)の恩恵を受けられる」と投資の狙いを説明する。

労働組合が強い米国に工場をつくれば莫大な人件費がかかる。メキシコの一般の最低賃金は日給約170ペソ(約1100円)、北部の国境地帯は日給約260ペソだ。米国の連邦最低賃金は時給7.25ドルで、多くの州ではさらに高い最低時給を設けている。米国に距離が近く賃金水準が低いメキシコは中国企業にとって魅力的な投資先になっている。

中国は経済成長に伴い国内で人件費が上がっており、企業の海外進出が続いている。新型コロナウイルスによる供給網の混乱で消費地に生産拠点を近づける「ニアショアリング」の動きが広がり、メキシコへの投資も増える見込みだ。インベスト・モンテレイによると、新たに中国企業70社以上がモンテレイへの進出を検討しており、国別では米国企業に次いで2番目に多いという。

定例の記者会見で発言するメキシコのロペスオブラドール大統領

メキシコは最大の貿易相手である米国との外交を伝統的に最重視してきた。ただロペスオブラドール大統領は外交問題では「主権を尊重し、干渉しない」と繰り返しており、ウクライナに侵攻したロシアに経済制裁を科していない。対中外交でも対立を深める米国と足並みをそろえておらず、中国企業にとって投資しやすい環境だ。

ロペスオブラドール政権は資源分野で保護主義を強めている。21年には国営電力公社CFEの優遇、22年4月にはリチウムの国有化に関する法律が成立した。メキシコに進出している資源分野の企業は事業活動に逆風が吹く。一方で中国企業が主に投資を増やしている製造業は資源分野に比べるとリスクは低い。

バイデン米政権はインフレ対策として対中関税の引き下げを検討している。すでに一部の製品は産業界の負担を緩和する目的で22年末まで関税の適用を除外している。一方で台湾情勢をめぐる米中対立が深まっており、先行きは不透明だ。企業にとっては地政学リスクに対応を迫られる局面が続きそうだ。

(メキシコ北部モンテレイで、清水孝輔、広州=比奈田悠佑)

【関連記事】

・米中、関税引き下げ前進図る 台湾ウクライナでは溝
・メキシコ、4~6月のGDP1.0%増 原油や車の輸出拡大

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

渡部恒雄のアバター
渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
コメントメニュー

分析・考察

中国のメキシコへの投資増大の良い側面は、中国にとっても米国との通商は引き続き重要であるという現実であり、台湾を巡り緊張が高まる米中関係の安定要素であることだと思います。懸念される側面は、中国が米国のお膝元の中南米への投資と影響力を増しており、その中南米では、メキシコのロペスオブラドール政権やコロンビアのペトロ新政権など、米国と距離を置き、中国に親近感を持つ左派政権が相次ぎ誕生していることです。これは米中間の波乱要因ともなります。
2022年8月17日 8:29

柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
コメントメニュー

ひとこと解説

中国にとって米国は不可欠な市場であり、政治外交的に米国とどんなに対立しても、貿易を続けていかないといけない。とくにコロナ禍に対処するゼロコロナ政策により内需が弱くなり、対米貿易は命綱である。対米貿易を維持できれば、対日、対欧貿易も順調に維持できる。一方、米国の対中貿易赤字がほとんど減少していない。これから中国迂回輸出が増えれば、米国の対中貿易赤字が減少しても、全体の貿易赤字は減ることがないはずである
2022年8月17日 7:04

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
コメントメニュー

分析・考察

かつて日米貿易摩擦で日本が「輸出自主規制」を行った時、それを回避するために米国内に工場を作ったというパターンと似ている。しかし、今回はアメリカが一方的に課した追加関税がきっかけであり、投資先がUSMCAの一角であるメキシコという点が違う。結果的にアメリカが行っている追加関税は中国製品の輸入を止めることにはならず、米中のデカプリングにもならない。メキシコで作ることで中国よりも高い製造コストがかかるとしても、結果的に関税を回避できるなら中国にとってメリットがあるということだろう。グローバリゼーションは死なず、ただ形を変えていく。
2022年8月17日 3:18 』

台湾を読み解く10の数字 米中対立で高まる存在感

台湾を読み解く10の数字 米中対立で高まる存在感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0843Y0Y2A800C2000000/

『米国のペロシ下院議長による8月上旬の台湾訪問は中国の猛反発や大規模な軍事演習を招いた。「台湾有事は日本有事につながる」との認識も強まっている。台湾は名目の域内総生産(GDP)がリーマン・ショック以降の10年余りで約2倍に急増。世界の半導体産業のけん引役であり、日本経済との結びつきも強い。米中対立のはざまで存在感が高まる台湾を10の数字で読み解く。

7749億ドル 名目GDP

台湾の行政院(内閣)主計総処によると、名目GDPは2021年に7749億ドル(約103兆円)だった。人口1人当たりでも3万ドルを超え、東アジアでは香港、日本、韓国に次ぐ高水準だ。台湾経済は1960年代から90年代にかけて製造業を中心に高度成長を遂げ、韓国などとともに「アジア四小龍」と呼ばれた。2000年代以降は工場の中国大陸移転などで成長が減速したが、近年は好調な半導体輸出や新型コロナウイルス対策の成功に支えられ、成長が再加速している。

3万6191k㎡ 面積

日本台湾交流協会によると、台湾の面積は3万6191平方キロメートル。日本の九州本島とほぼ同じ広さの地域に約2300万人が暮らす。人口密度は世界有数で、日本の2倍弱ほどだ。首都に当たる機能を持つのは北部の台北市。主な都市には「台湾のシリコンバレー」と呼ばれる新竹市や最先端の半導体工場が集積する台南市、貿易港がある南部の高雄市がある。観光地では、山の斜面に伝統的建造物がそびえる九份(きゅうふん)などが有名だ。
66% 半導体受託生産の世界シェア

台湾調査会社のトレンドフォースによると、台湾企業は半導体の受託生産(ファウンドリー)で2022年に世界シェア66%を占める見通しだ。特に1987年に設立された台湾積体電路製造(TSMC)は、半導体の設計と製造を別の会社が分担する「水平分業モデル」の先駆けとなり、業界構造の転換を主導してきた。熊本県で建設中の新工場には誘致を進めた日本政府が最大4760億円を助成する。

3ナノメートル 半導体の回路線幅

TSMCは2022年中に回路線幅3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの次世代半導体の量産を始める。米アップルのiPhoneなどが搭載する現行の5ナノ品に比べ演算性能は15%アップする。先端半導体の量産を手掛ける企業はすでに韓国サムスン電子、米インテルを含めた「半導体ビッグ3」に絞られており、TSMCは製品の歩留まり(良品率)を考慮した総合力で独走状態にある。

9兆6699億円 日台間の貿易総額

財務省の貿易統計によると、2021年の日台間の貿易総額(輸入と輸出の合計)は前年比27%増の9兆6699億円だった。国・地域別にみると、日本にとって中国、米国に次ぐ3番目の貿易相手で、韓国を上回った。日本からの輸出では高性能の半導体を量産するための製造装置や材料が目立つ。輸入はIC(集積回路)だけで1兆5000億円に達し、輸入額の4割超を占めた。

1310カ所 日系企業の拠点数

外務省の調査によると、台湾にある日系企業の拠点数(現地法人や合弁企業など)は2021年10月時点で1310カ所。近年は増加傾向が続き、直近10年で200カ所余り増えている。半導体が好調なTSMCなどとの取引も多い。在留邦人は2万4162人となっている。台湾の中央流行疫情指揮センター(CECC)は8月15日から、全ての旅客を対象に搭乗前2日以内のPCR検査の陰性報告書の提出を不要とした。新型コロナの感染減少につれ、ビジネス面での交流も活発になりそうだ。

489万人 訪日台湾人

日本政府観光局によると、台湾からの訪日客数は2019年に489万人だった。単純計算すると、台湾の人口のうち2割超が訪日したほどの多さだ。11年の約100万人から10年足らずで5倍近くに急増した。台湾には日本に親しみを持つ人が多く、リピーター率も高いとされる。新型コロナが流行した20年以降は訪日客数は激減しているが、感染が収束して往来が正常化すれば、台湾人旅行者の再訪も期待できる。

45.7% 蔡総統の支持率

台湾民意基金会が8月に実施した世論調査で、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の支持率は45.7%だった。台湾独立志向の蔡政権は2016年の発足後、中国との関係悪化を招き、一時は不支持が支持を上回った。19年以降、中国が香港への統制を強めると、対中警戒感から世論の風向きは逆転。蔡氏は20年の総統選で再選を決め、新型コロナ対策の成功も追い風に高めの支持率を維持している。

129億ドル 軍事費

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、台湾の2021年の軍事費は129億ドル(約1兆7000億円)。統一圧力を強める中国(2933億ドル)と埋めがたい差がついている。台湾は相手とは異なる戦い方で優位に立つ「非対称戦」を念頭に、潜水艦やミサイルの自主開発を急いでいる。22年7月に訪台した米国のエスパー前国防長官は、18年末に終了した台湾軍の徴兵制の復活を提言した。

50年 日台断交の節目の年

2022年は日本と台湾が断交して50年の節目の年にあたる。日本が1972年に「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府である」と承認し、中国と国交を結んだことを受けて日台は断交し、正式な外交関係は無くなった。ただ、1988年の親日的な李登輝総統の就任や、2011年の東日本大震災の発生後に台湾から寄せられた多額の義援金などを受け、日台の交流は民間レベルを中心にますます深まっている。

(東京=新田祐司、台北=龍元秀明、グラフィックス 荒川恵美子)

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

高橋徹のアバター
高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
コメントメニュー

ひとこと解説

台湾にまつわる10の数字で、私が最も印象に残ったのは、日台間の貿易総額(約10兆円)です。GDP総額で世界2位の中国に対し、同21位の台湾は24分の1の規模しかありません。しかし日台間の貿易額は4分の1強と差は大きく縮まります。これは日台間だけでなく、世界の貿易関係の中でも同じことがいえます。アジアの新興工業経済地域(NIES)の一角と称された1970年代以降、軽工業から現在のハイテクまで産業高度化を進めながら、国際的なサプライチェーンの中で生き抜いてきた台湾の凄みが凝縮された数字です。
2022年8月17日 10:11 』

大統領選投票データ入手 トランプ氏側、工作目的か

大統領選投票データ入手 トランプ氏側、工作目的か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN170420X10C22A8000000/

 ※ オンライン投票(電子投票)には、こういう問題もある…。
 
 ※ 裁判所の許可があったようだが…。

『【ワシントン=共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は15日、2020年大統領選で激戦となった南部ジョージア州など3州で、敗北したトランプ前大統領側が投票システムから機微なデータをコピーしていたと報じた。

州の裁判官や選挙管理委員などがデータに触れることを許可していたが、選挙結果を覆すための材料発掘を狙った陣営の工作の一環とみられる。

専門家は、トランプ氏に共鳴する当局者らの協力によって政治的な動機からデータがアクセスされ、その記録も長期にわたって明らかにならなかったことに懸念を表明。「同様の事例が他にもあったかもしれず、極めて危うい」と指摘した。

トランプ氏と協力関係にある弁護士らがデータ入手を指揮したとされる。ジョージア州にあるデータ分析会社を使うなどして、同州のほか、西部ネバダ州、中西部ミシガン州の投票システムにアクセスさせた。

陣営の外部顧問らが、ネバダ州では一部の郡でシステムへのアクセスを裁判所に認めさせ、作業が進行。ミシガン州でも裁判官の許可を得た。ジョージア州でも選管委員が認めたため、システムの記憶装置を丸ごとコピー、投票用紙もスキャンしていたという。』

米国、大企業への課税強化に転換 利益の15%負担が下限

米国、大企業への課税強化に転換 利益の15%負担が下限
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16BSU0W2A810C2000000/

『【ワシントン=高見浩輔、ニューヨーク=堀田隆文】大企業への課税を柱とした米国の歳出・歳入法が16日、成立した。法人税は1980年代から各国で引き下げ競争が続いてきたが、課税を強化する方向に転換期を迎える。税逃れを続けるグローバル企業に対する不公平感の高まりが背景にある。

新法の目玉は利益に対する課税額が15%を下回る大企業への新たな課税だ。米国の法人税率は21%だが、さまざまな税控除を組み合わせることで実際の納税を抑えている大企業は多い。財務諸表を基準にして少なくとも15%の税負担を求める。

バイデン政権は発足当初、2017年のトランプ減税で21%まで低下した法人税率を28%まで引き上げる増税を検討したが頓挫した。気候変動対策などを実施するための財源確保の代案として民主党内の左派から出てきたのが、200社程度の大企業を対象にした法人税の最低税率案だった。 今回、課税の強化が初めて実現した。

背景にあるのは節税対策を進めてきた巨大IT(情報技術)企業などへの不満だ。金融情報サービス会社カルクベンチのデータによると、米アマゾン・ドット・コムやインテルでは、法人税の支払額を税引き前利益で割った比率は、足元で15%を下回る。

ペンシルベニア大によると、法人税の下限設定と自社株買いへの課税を合わせて10年で約2700億ドル(約36兆円)の税収増が見込まれる。歳出規模は気候変動対策や医療保険の補助延長などで計約4500億ドル。その大半を大企業への課税でまかなう計算だ。

「富裕層や大企業がようやく公正な負担の一部を(税金として)支払うようになる」。16日、法案に署名したバイデン米大統領はこう強調した。

今後の課題は国際連携だ。21年に経済協力開発機構(OECD)加盟国を含む140弱の国・地域が合意した「グローバル法人最低税率」を実際に実現するには、米国側が多国籍企業に対する別の税制を改める必要がある。

課税強化については「(減税合戦という)自滅的な世界的競争を止めるのに役立つ」(米コロンビア大のジョセフ・スティグリッツ教授)と評価する声がある一方で、独自の方式で課税を始める米国が国際的に歩調を合わせられるか危惧する声もある。

そもそも財務諸表を基準にした課税は異例だ。税法や税制に詳しいシカゴ大のダンミカ・ダルマパーラ教授は「過去の経験に乏しいため効果は不透明だ。企業の財務諸表上の利益に大きなゆがみが生じる可能性がある」と指摘している。

【関連記事】

・米国歳出・歳入法が成立 大統領「気候変動対策で前進」
・「抜け穴」批判のファンド報酬課税、米新法でも手つかず 』

米中間選挙予備選、「反トランプ」のチェイニー氏が敗北

米中間選挙予備選、「反トランプ」のチェイニー氏が敗北
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN163PG0W2A810C2000000/

『【ワシントン=中村亮】11月の米中間選挙を戦う候補者を決める西部ワイオミング州の予備選は16日、投開票した。共和党では現職のリズ・チェイニー下院議員が、トランプ前大統領の支援を受けたライバル候補に敗北したと認めた。

チェイニー氏が16日、ワイオミング州で演説して敗北宣言した。同氏は、ブッシュ(第43代)政権で副大統領を務めたディック・チェイニー氏の長女。2021年の連邦議会議事堂占拠事件を扇動した疑惑をめぐるトランプ氏の弾劾決議に賛成票を投じた。事件の調査委員会で副委員長を務め、トランプ氏の責任を追及している。

20年の大統領選で不正があったとのトランプ氏の主張を「破壊的なウソ」と激しく批判した。トランプ氏に真っ向から対抗する姿勢は共和党で激しい反発を生み、下院共和党指導部を追われた。抵抗勢力を排除するトランプ氏は予備選でチェイニー氏を最大の標的とみなし、ライバル候補の弁護士ハリエット・ヘイグマン氏を支持した。

トランプ氏は16日、SNS(交流サイト)に「米国にとって素晴らしい結果だ」と書き込んでチェイニー氏の敗北を喜んだ。「リズ・チェイニーは自らの行動や他人に対する悪意に満ちた独善的な言葉や行動を恥じるべきだ」と糾弾した。

チェイニー氏は20年の予備選で7割以上の支持を得て本選に進んだ。ヘイグマン氏の勝利は共和党でトランプ氏の求心力が依然として強いことを示す。

チェイニー氏は劣勢のなかでも「予備選の結果がどうなろうとトランプ氏を二度と大統領職に近寄らせないように闘い続ける」と強調し、トランプ氏に対する批判を緩めなかった。予備選の終盤には父のチェイニー元副大統領を広告に起用したり、民主党支持者の取り込みを図ったりして、なりふり構わない選挙戦を展開した。

トランプ氏の弾劾決議に賛成した共和党下院議員10人のうち、チェイニー氏を含む4人が予備選で敗退した。別の4人は引退を表明し、本選に残ったのは2人だけとなった。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
コメントメニュー

分析・考察

ワイオミングで反トランプの先頭に立つということは、共和党候補としては自殺行為に近いが、それでも戦うリズ・チェイニーはさすがディック・チェイニーの娘、と言ったところだろう。ここでトランプと戦ったことが、将来のリズにとっての資産になっていく可能性もある。今後も未来永劫トランプ的な共和党でい続けることは考えにくく、共和党自身がどこかで方針転換する時が来るかもしれない。その時こそ、リズ・チェイニーの出番となるだろう。
2022年8月17日 3:22 』

今この時代に梅毒がなぜ流行る?

今この時代に梅毒がなぜ流行る?
https://medley.life/news/5c7643bb5f510f79850057ae/

『日本で梅毒が流行しています。昔からあるこの病気はしばらく下火になっていましたが、2010年代前半から患者数が増える傾向にあり、2018年になっても未だに患者数は増え続けています。

古くは16世紀の書物に日本で流行の記載が残されているように、梅毒は500年ほど前から存在する感染症です。また、梅毒にはペニシリンという絶対的な治療薬があります。にもかかわらず、医療技術の進歩した現代で、どうして流行しているのでしょうか?梅毒の特徴から考えていきます。

  1. 梅毒という病気について

梅毒という名前を知っている人は多いと思います。しかし、梅毒について詳しく知っている人はそこまで多くはないかもしれません。梅毒は性病(性感染症)です。つまり、性行為によって相手にうつることがある、クラミジアや淋菌、HIV感染症と同じ類の病気です。

梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema Pallidum)が皮膚や粘膜の傷から体内に侵入して感染が起こります。性行為の際にコンドームを使用すれば基本的に梅毒がうつることはありません。にもかかわらず近年その患者数は増えている状況です。

梅毒の患者数*国立感染症研究所「日本の梅毒症例の動向について」より作成

梅毒という病気はとても昔から知られており、江戸時代にはすでに流行り病としての認識あったことが分かっています。当時は治療薬もなく、多くの人が梅毒に苦しんでいたと思われますが、どうしてそんなにも流行したのでしょうか。その歴史とともにもう少し掘り下げてみます。

  1. 人類が梅毒とともにたどってきた歴史

梅毒が流行した起源は諸説ありますが、1492年コロンブスのアメリカ大陸発見が引き金となり、世界的に流行しだしたと考えられています。コロンブス一行が帰国した時期からスペインやイタリアで梅毒が流行りだしたという事実があるため、彼らが現地民と性交した際に感染し、ヨーロッパに持ちこんだと考える説が有力です。

ヨーロッパで流行した梅毒は、インドや中国や東南アジアに伝わり、その後日本にも渡ってきたと考えられています。1512年には日本国内で梅毒発症の記載が確認されており、当時の戦国武将の中にも梅毒に悩む人が少なくなかったようです。

このように梅毒はわずか20年ほどで日本へ広まり、世界的に流行したことになります。

日本で梅毒はどう流行していったのか

江戸時代になると芸者や遊女の業界(花柳界)関係者の間で梅毒が流行していたため、花柳病と呼ばれていました。当時は梅毒に対する適切な治療薬はなく、一部の人では梅毒の症状がどんどん進行してしました。最終的には鼻が取れたり(ゴム腫)、発狂(神経梅毒の症状)したりすることも知られていました。当時の川柳に梅毒のことがたびたび登場することからも、日本人は長きにわたって梅毒と付き合っていたことがうかがえます。

梅毒の日本到来から400年以上経って初めてペニシリンという治療薬が登場します。ペニシリンは梅毒に対してとても有効であったため、梅毒治療はそれまでと激変します。それ以前に水銀やヒ素を用いた治療薬が登場したことがありましたが、副作用が強く、効果も不十分でした。ペニシリンの登場により、梅毒は治療できる病気になったのです。

ペニシリンの出現のおかげで梅毒患者数は激減していきます。終戦直後には年間200,000-300,000人ほど梅毒にかかる患者がいましたが、段々と患者数は減っていき、21世紀になると新たな患者数は年間1,000人を下回る程度で推移していました。それに伴い梅毒は昔の病気とされ、注目されることも少なくなってきました。しかし、2013年ごろから徐々に患者数が増え続け、2018年には新規発症患者が6900人を超えました。

  1. 梅毒の症状は多彩である

梅毒の原因微生物である梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜の傷から体内に侵入すると、血液やリンパ液を介して徐々に全身へ広がります。一方で、梅毒トレポネーマが侵入してきても、免疫の作用によって感染を免れることもあります。また、梅毒に感染しても、すぐに症状が出ないことがほとんどです。

最初に梅毒の人に訪れる症状とは

感染してから3週間ほど経つと、皮膚が固くなる変化(硬結)が陰部を中心に肛門や口などにも見られることがあります。これを「硬性下疳(こうせいげかん)」といいます。最初にこの症状に気づく人はいますが、痛みやかゆみがほとんどない上に、気付いたらいつの間にかこの変化は消えてしまいます。そのため、気のせいで済ませてしまう人も少なくありません。

また、皮膚の硬結が見られる部位の周囲にあるリンパ節が腫れることがあります。これを「リンパ節腫大」といいます。皮膚の表面に近いリンパ節が腫れている人は、皮膚を押すように触ることで数mmから数cm程度の丸いしこりのようなものが現れます。リンパ節腫大も特に痛みがないことが多く、気がつきにくい症状です。

このように、梅毒の初期症状は「皮膚が固くなる」「リンパ節が腫れる」といったものが多いです。これらは日常生活に支障が出るものではありませんが、数週間以内に性行為をした人で症状が出た場合には、医療機関を受診して検査を受けるようにしてください。

梅毒が進行すると感じるようになる症状とは

梅毒は治療しないと進行する病気で、進行の程度によって見られる症状が変わってきます。皮膚や全身に症状が出たりと、内容はさまざまです。次の表に主な症状をまとめているので参考にしてください。

【梅毒が進行した人に見られやすい症状】
バラ疹 赤色や薄紅色の斑点(紅斑)。数mmから10mm程度の大きさで全身に見られる。
扁平コンジローマ 扁平に隆起したイボ。一部から感染性のある分泌液が出る。
丘疹性梅毒 隆起を伴う数mmから10mm程度の皮疹。バラ疹のあとに見られることが多い。
発熱 全身炎症の影響を受けて発熱が起こる。
関節痛 全身炎症の影響を受けて関節痛が起こる。
リンパ節腫脹 全身炎症の影響を受けてリンパ節腫脹が起こる。
全身倦怠感 全身炎症の影響を受けて身体がだるくなる。

上にあげた症状の中には発熱や関節痛のように風邪などの一般的な病気でもみられるものがあり、これらは梅毒へ直接結びつけにくいものですが、扁平コンジローマは梅毒に特徴的です。自分の症状が扁平コンジローマに似ている場合には必ず医療機関を受診するようにしてください。

梅毒がさらに進行し、重症化すると、骨や神経にまで影響を及ぼします。有名な変化が「ゴム腫」と「神経梅毒」です。

皮膚や筋肉、骨にゴムのようなしこりができることをゴム腫といいます。ゴム腫によって鼻の軟骨が破壊され、陥没したりすることから、鼻が取れる(鼻が落ちる)ような変化が起こることがあります。

また、脳神経に感染の影響が及ぶと、神経梅毒という状態に至ります。頭痛や耳鳴り・めまいなどを覚えるようになり、徐々に進行していくと記憶障害や麻痺、錯乱などが見られるようになります。

現在の日本では梅毒を調べる検査や治療が確立しているため、ゴム腫や神経梅毒といった末期症状が出る前に完治することがほとんどです。一方で、明らかに疑わしい症状があるのにもかかわらず放置していると、梅毒がどんどん進行して、こうした末期症状を招く恐れがあります。さらに、梅毒は性行為でうつる病気ですので、パートナーにうつしてしまう危険性もあります。思い当たる節がある人は早めに検査してもらうようにしてください。

梅毒の落とし穴に注意

梅毒がこれだけ流行している原因の一つとして、自分が梅毒だと自覚しにくいことが考えられます。気づかないうちにうつしあって、感染を拡大しているという構図です。

特に病気の初期に自分が梅毒であることに気づける人はあまり多くありません。その理由として次のことが考えられます。

 症状が梅毒に特徴的でないものが多く、他の病気と判断がつきにくい
初期の症状に気づいても、いつの間にか消えている

例えば梅毒と同じ性病であってもクラミジアや淋菌感染症の場合は、排尿時の違和感や尿道から膿がでるいった通常は経験しない症状が持続するため、発病した人が気づきやすいです。しかし、梅毒にかかって間もないうちは上記の理由から、見逃されやすく病気を疑うことが難しいです。

ここまで梅毒の症状の特徴を簡単に説明しました。梅毒の症状について詳しく知りたい人は、「梅毒の症状ページ」で写真付きで説明していますので、参考にしてください。

  1. こんな人は要注意

花柳界で流行が見られた当時は男性にも女性にも梅毒罹患者が多かったようですが、戦後は男性に多いことが特徴でした。特に同性愛者に多かったのですが、上のグラフにもあるようにここ最近は女性の患者も増えています。なぜ女性に患者が多いのかがはっきりしているわけではありませんが、セックスライフの変化が関与している可能性は否定できません。

繰り返しますが、梅毒は性行為でうつる病気です。それは今も昔も同じですので、仮に自覚症状がなかったとしても、コンドームを適切に使うことがとても大切です。

どんなタイミングで梅毒を疑う

上で述べた「硬性下疳」と「扁平コンジローマ」は梅毒に特徴的な症状です。これらは症状が現れたり消えたりするので、自然に治ったと思われがちですが、疑われる症状が現れたときには梅毒の検査を受ける必要があります。できるだけはやく医療機関を受診するようにしてください。

一方で、それ以外の症状に関しては、一般的な病気でも見られる症状ですので、梅毒と診断するための有力な根拠とはなりません。例えば、発熱や関節痛は風邪でよく見られる症状でですし、紅斑(赤い皮疹)も丘疹(盛り上がった皮疹)は麻疹などのウイルス性疾患でよく見られます。

梅毒を疑って検査を受けるべき人のポイントを押さえておくと便利です。以下を参考にしてください。

 皮膚に固くなる変化(硬性下疳)がある
皮膚に楕円形のイボ(扁平コンジローマ)がある
原因に思い当たるふしがないのに皮疹やリンパ節腫脹がある
数ヶ月以内にコンドームをつけないで新たなパートナーと性行為をしてから調子が悪い

一般的に、病気に特徴的な症状が見られた場合には診断の根拠になります。しかし、特徴的な症状が見られない場合には、生活や嗜好、内服薬などに手がかりがないかを確認します。

梅毒はコンドームを着用しないで性行為をするとうつります。性的な嗜好はプライバシーに関わるため、なかなか口に出しづらいものですが、上のリストに当てはまる人は医療機関で相談してください。

梅毒は早期発見早期治療すれば特に後遺症なく治る病気です。副作用が少ないペニシリンを2週間使用するだけでほとんどの場合完治します。このコラムに書いてある内容を参考にして、一度自分の状況を照らし合わせてみてください。

年々梅毒患者の数が増え、身近な感染症となっています。一人ひとりが知識を持ち、気をつけることで感染の拡大を食い止めることが期待できます。

執筆者 園田 唯(医師)』

戦国時代の男性 「5人に1人は梅毒などの性病だった」説も

戦国時代の男性 「5人に1人は梅毒などの性病だった」説も
https://www.news-postseven.com/archives/20160528_410773.html?DETAIL

『日本の歴史に名を残した英雄たちの死因は様々だが、意外にも「梅毒」で命を失った武将は多く、名軍師として名高い黒田官兵衛をはじめ、家康の次男で越前北ノ庄初代藩主の結城秀康、熊本の加藤清正などがこの病にかかっていたとの説がある。

 当時「唐瘡」「琉球瘡」と呼ばれた梅毒は、南蛮からもたらされたというのが定説。「その伝来は鉄砲よりも早く、1510年代に、中国人や琉球人が南蛮人から感染し、九州から全国各地へ伝播したと考えられる」というのは歴史研究家の川口素生氏。

 また、歴史作家の山崎光夫氏は「戦国時代は複数人と関係を持つことがステータスの一種で、家康は記録されているだけで16人の側室をもっていた。当時は男性同士が関係を持つことも珍しくなく、コンドームもなかった。この時代の人の5人に1人は梅毒などの性病に罹っていたはず」という。

 もちろん梅毒以外の性病が蔓延していたことも考えられるが、淋病は重症化し死因となることがまれで史料に残されることが少ない。

 江戸時代に入ると吉原などの遊郭が発達することで、梅毒の流行に拍車が掛かる。『解体新書』の著者で医師の杉田玄白の回想には「1000人の患者のうち、700~800人は梅毒だった」という記述も残されている。さらに幕末に西洋医学を日本に伝えたオランダの医師・ボンベは「日本人は夫婦以外との性行為に対する罪悪感がない。遊郭での性病対策もなく一般家庭に蔓延している」と指摘した。

 現代ではまれだが、梅毒は潜伏期間を含め感染から死に至るまで通常は10年以上かかる。仮に歴史上の偉人が梅毒に感染しても、重症化するまでに他の病などで命を落とすケースもあっただろう。その場合は死因として史料に残されることがないから、実際にはもっと多くの有名な武将が性病に悩まされていたと見ていい。

※SAPIO2016年6月号 』