NY原油、一時86ドル台 中国景気懸念で2月以来の安値

NY原油、一時86ドル台 中国景気懸念で2月以来の安値
米指標悪化も需要に不透明感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15BC40V10C22A8000000/

『【ヒューストン=花房良祐】ニューヨーク市場で15日、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物相場が前週末に比べて一時5%以上安い1バレル86ドル台となり、2月上旬以来の低水準となった。中国人民銀行(中央銀行)が金融調節の金利を引き下げたことなどで景気の先行き不安が高まった。米国の景気指標も悪化したことで原油需要に不透明感が漂っている。

終値は89.41ドルだった。中国人民銀行は15日、市中銀行に1年間資金を融通する中期貸出制度の金利を引き下げた。市場では景気下支えのため事実上の政策金利の引き下げに踏み切るとの観測が強まった。同日発表の7月の小売売上高や工業生産高もふるわなかった。

ロイター通信によると、同国の7月の原油処理量は2020年3月以来の低い水準。国有の製油所が計画外の停止をしたほか、独立系も生産量を減らした。新型コロナウイルス禍でロックダウン(都市封鎖)したことなどで景気が減速。世界最大の原油輸入国である中国の需要の弱さが意識された。

米国経済の先行きにも慎重な見方が台頭している。15日発表のニューヨーク連銀の製造業景況指数が大きく悪化し、事前予想を下回った。落ち込み幅は新型コロナウイルス禍が景気を直撃した20年4月に次ぐ規模だった。

供給は底堅いとの観測が強まったことも下落圧力につながった。

イラン核開発問題を巡っては、交渉の停滞を打開するために欧州連合(EU)がイランに新たな提案をしており、イランが15日にもEUに回答すると報じられた。交渉が進展すれば供給が増えるとの思惑で原油先物が売られやすくなっている。

ロシア産原油の生産は大きく減っていない。国際エネルギー機関(IEA)によると、ウクライナ侵攻後に一時減ったロシアの原油生産量は底入れしたもようだ。西側諸国がロシア産原油からの脱却を探るなか、アジア向けの輸出がけん引した。

【関連記事】

・中国生産、7月3.8%増 内需回復鈍く伸び鈍化
・イラン外相、核合意再建で「解決すべき課題」

ニューズレター
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
コメントメニュー

ひとこと解説

もっぱら需要の減少が警戒されて原油が下落した一日だった。東京市場の取引時間帯に発表された中国の景気統計が弱く、人民銀行が金利引き下げに動く兆候を見せたことが、最も大きな材料になった。世界的な景気悪化は、IMF(国際通貨基金)が成長率見通しを下方修正し続けていることから明らか。原油需要が減少するならば、仮に供給量が同じである場合、価格は下落する。再生可能エネルギーの不安定性やロシアのウクライナ侵攻などから原油や天然ガスの価格は高騰したわけだが、高値をつけたあと、米原油WTI先物で1バレル=100ドル±最大20ドル程度のレンジに移行したように見える。そして当面はその下限を模索することになりそうだ。
2022年8月16日 6:49 』