中国、反日感情高まりの兆し 関連イベントも中止に

中国、反日感情高まりの兆し 関連イベントも中止に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM072DD0X00C22A8000000/

『【北京=羽田野主】中国で反日感情がくすぶっている。7月に南京市内の寺院で南京事件に関連して戦犯として処刑された日本軍人の位牌(いはい)が奉納されていたとの告発があり、インターネット上で猛反発が巻き起こった。日中は9月に国交正常化50年を迎えるが、日本を連想させるようなものに批判が集まるなど、反日感情が高まる兆しも出ている。

「だれの仕業だ?」。7月下旬、日本軍人の位牌奉納についてSNS(交流サイト)などで騒ぎが起き、南京市の共産党委員会と市政府が動く事態に発展した。寺の尼僧は逮捕された。

7月末には北京市の地下鉄駅で昔の北京の市場を表現したとされる壁画が「中国人ではなく日本人に見える」「画風が日本の浮世絵のようだ」として物議を醸した。

日本の夏祭りをイメージしたイベント「夏日祭」も、東北部の遼寧省から南の雲南省の一部の都市まで次々と中止に追い込まれた。安倍晋三元首相が死去した際には「今日はお祝いだ」「狙撃者は抗日英雄」と心ない書き込みがSNSにあふれ、いまも放置されたままだ。

反日感情が高まりやすいのは習近平(シー・ジンピン)指導部が対日強硬姿勢を維持してきたためだ。日米両政府が「台湾海峡の平和と安定」を唱えるたびに中国外務省は「内政干渉だ」と猛反発してきた。

ペロシ米下院議長の台湾訪問も重なり、習指導部の対日姿勢がさらに強まる可能性もある。中国共産党の機関紙、人民日報は15日付の重要コラム「鐘声」で「日本はかつて台湾を不法占拠し、60万人以上の台湾同胞を殺害した」と主張。「言動を慎むべきだ」と強調した。

中国外務省の鄧励外務次官は4日、日本の垂秀夫駐中国大使を緊急に呼び、台湾情勢に関する主要7カ国(G7)の共同声明を発表したことに抗議した。大使の呼び出しは異例で、習氏が自ら決裁した場合に可能とされる。

8月上旬の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合で林芳正外相の発言中に王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は途中退席した。中国外務省の華春瑩報道局長は5日の記者会見で「日本の指導者は最近、台湾問題でも態度が悪く、中国人の不満を買っている」と批判した。

中国は秋に共産党幹部の人事を決める党大会があり、3期目を確実にしたい習氏は日本に弱腰とみられたくないのが本音とみられる。

国交正常化40年だった2012年には民主党政権が尖閣諸島の国有化を決め、胡錦濤(フー・ジンタオ)政権(当時)が猛反発。国交正常化を祝う式典は吹き飛んだ。政治的に最も敏感な時期がまた近づき、習指導部も神経質になっている。

【関連記事】

・中国生産、7月3.8%増 内需回復鈍く伸び鈍化
・中国新築物件、値下がり都市6割弱に拡大 7月

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

川島真のアバター
川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
コメントメニュー

分析・考察

日本側に「身に覚え」があれば反日運動も「理解」可能だが、中国が自ら「問題」を設定し相手がそれを無視すると怒り出すなら、相手は反応できない。中国は、蔡英文政権を独立志向と見て、日本がその背後にいると見る。また、日本は50年台湾を統治し、現在も台湾に野心があると警戒し、日米が連携しているとする。だからこそ、アメリカが動くと中国の視線は日本に釘付けになる。だが日本側からすればこの独自の理論は理解困難だ。歴史認識どころか現状理解も日中でここまで異なれば対話も難しい。人事を控え、国内宣伝を強化して言説が保守化しているのだろうが、それが国境の外に溢れ出ても外国は受け入れられない。外国は国内とは異なるのだ。
2022年8月16日 8:10 』