世界経済、物価高で変調 4~6月マイナス成長

世界経済、物価高で変調 4~6月マイナス成長
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『世界経済の変調が鮮明だ。4~6月期は2年前の新型コロナウイルス禍当初以来のマイナス成長に陥り、先行きも不透明感が増す。米欧は物価高に手を焼き、景気後退のリスクをにらみながら利上げを進める難局に立つ。中国は感染封じ込めを狙うゼロコロナ政策が将来不安を強める。

4~6月期に日本は実質国内総生産(GDP)が前期比年率2.2%増え、コロナ前の水準に戻った。なお潜在成長率は低く自律的回復力は乏しい。頼みの外需が低迷すれば景気回復の足取りが重くなる。

米国やドイツ、英国、中国などはマイナス成長だった。米国は2四半期連続で、機械的には景気後退とみなされるテクニカルリセッションの状態だ。国際通貨基金(IMF)は世界全体としてマイナス成長になったと指摘する。SMBC日興証券の丸山義正氏の試算では世界のGDPは2.7%減った。

5四半期ぶりのマイナス成長となった英国は中央銀行のイングランド銀行が「10~12月期から景気後退に入る」との見通しを示す。4日公表の報告書は23年10~12月期までマイナス成長が続く厳しい予測を盛り込んだ。

日本経済新聞が15日、民間エコノミスト10人に聞いたところ、米国は3人、ユーロ圏は6人が22年後半~23年前半に景気後退に陥ると答えた。

コロナ後の世界経済をけん引してきたデジタル需要はここにきて陰る。「一部大口顧客が過去10年間では考えられないほど在庫を削減している」。米インテルのゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は7月末、パソコン向けの販売状況についてこう語った。4~6月期は17年10~12月期以来の最終赤字に転落した。

米調査会社IDCによると、パソコンやスマートフォンの4~6月期の出荷台数は前年同期からそれぞれ15%、9%減少した。米調査会社ガートナーは22年の半導体市場の成長率を13.6%から7.4%に引き下げた。

商品市況も変調の影が兆す。景気に敏感な銅の価格は15日時点で1トン8100ドル前後まで下がり、ロシアのウクライナ侵攻直後のピークより3割安い。アルミやニッケルといった工業用金属も軒並み侵攻前の水準を1~2割下回る。

先行きは見通せない。4~6月期の成長率が前期比年率換算で10.0%の大幅マイナスだった中国。上海市のロックダウン(都市封鎖)を解いた6月以降も不動産市場の調整が長引く。若年失業率は7月に19.9%と過去最悪を更新した。

ウクライナ危機の影響が大きい欧州はエネルギー不安に揺れる。ロシア国営ガスプロムは7月下旬以降、ドイツにつながる主要パイプラインのガス供給量を従来計画から8割減らした。化学大手BASFは供給量次第で操業を維持できなくなると警戒する。

家計も光熱費などの上昇に身をかがめる。ドイツの6月の小売売上高指数は実質で前年同月比8.8%低下し、統計を遡れる1994年以降で最大の落ち込みとなった。

ユーロ圏は物価上昇率が7月に8.9%と3カ月連続で過去最高を更新した。とまらないインフレに欧州中央銀行(ECB)は11年ぶりの利上げに動いた。7月27日、政策金利をマイナス0.5%から0%に戻した。

米国は6、7月連続の0.75%の大幅利上げで、政策金利は景気を温めも冷ましもしない中立金利とみられる2.5%に到達した。物価上昇率は7月に前月比で2年2カ月ぶりに下がった。前年同月比ではなお8%台の高水準だ。金融引き締めはこれからが本番で、政策金利は3%台後半までいくとの見方が多い。

物価上昇は、座視すれば家計を圧迫する。抑えようと利上げを急げば逆風下の経済を過度に冷ましかねない。米欧が向き合うジレンマだ。

米国は失業率が3%台半ばと半世紀ぶりの低水準で、景気は底堅いとの見方もある。ただ、テック企業で人員削減が広がるなど不安ものぞく。

7月末、米小売大手ウォルマートは23年1月期の業績予想を下方修正した。「インフレ率の高まりが消費行動に影響を与え、衣料品の値下げが必要になる」。マクミロンCEOは先行きを慎重にみる。

歴史的なインフレを鎮め、景気後退も避ける軟着陸は可能か。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は道が「狭くなっている」と認める。

物価高の根には分断がある。断層は台湾情勢の緊迫などで一段と広がる恐れがある。ロシア産の安いエネルギーや中国の労働力に頼ってきた先進各国は新たな秩序に移行するコストに苦しむ。米欧中の変調が長引けば世界経済はけん引役を失いかねない。

(マクロ経済エディター 松尾洋平、コモディティーエディター 浜美佐、江口良輔、ワシントン=髙見浩輔、ニューヨーク=斉藤雄太、大島有美子、堀田隆文、ベルリン=南毅郎、ロンドン=篠崎健太、北京=川手伊織)

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説

日本の4-6月期は実質GDPプラスも、実質GDI、実質GNIともマイナス成長ですから、実質マイナス成長でしょう。
たた、需要不足の日本とゼロコロナの中国を別として、インフレ懸念が強まっている欧米では経済の過熱を抑制すべく利上げしているわけですから、むしろマイナス成長になって経済の過熱が緩和された方が望ましいでしょう。
そして中国も意図的に経済を止めることでコロナを抑制しているわけですから、政策当局の意向通りに最も進んでいないのは日本と言えるでしょう。
2022年8月
16日 8:44 』