バングラデシュに初の日系工業団地 住友商事が年内開所

バングラデシュに初の日系工業団地 住友商事が年内開所
Zoomインフラ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC097Z30Z00C22A8000000/

『バングラデシュで初の日系工業団地が2022年内に開所する。住友商事が建設・運営を主導し総事業費は130億円。円借款で周辺の電力インフラも整備し、日系を軸に製造業が集まる「ものづくり基地」に育てる。経済特区指定を受けた数少ない国際水準の団地で、地元政府も税優遇で支援する。人口1億7千万のフロンティア市場へのメーカー進出を後押ししそうだ。

総事業費130億円、JICAも出資

首都ダッカから東に約20キロメートル。田園地帯に完工間近の工業団地「バングラデシュ経済特区(BSEZ)」が姿を見せる。広さは190ヘクタールと東京ディズニーランド4個分に近く、最大400ヘクタールへの拡張余地を残す広大な敷地だ。

BSEZは日系を中心とする外資メーカーの進出を見込んで住商などが開発してきた。1日には国際協力機構(JICA)が新たに資本参加した。

「バングラデシュはインフラの脆弱さが進出先としての魅力を一段落としていた」。住商の渡辺優二・物流インフラ事業本部長は同国市場の潜在力と受け入れインフラのギャップを指摘する。

実はバングラデシュでは大小約100の経済特区が登録されているが、実際に稼働している場所は限られる。BSEZは日・バングラデシュの官民が前面に出ている点が特徴だ。アジアで7カ所の工業団地を手がけて経験豊富な住商と政府とのパイプが強いJICAが連携し、BSEZの開発や入居企業管理を担う特別目的会社を運営する。日本企業にとって進出のハードルが下がる。

若き人口大国、内需に照準

住商・海外工業団地部の田川智晴氏は「国際水準のインフラが整ったバングラデシュ初の経済特区だ」と自負する。低地の同国にあって、BSEZは盛り土や堤防により水害対策も徹底した。

人口約2千万の巨大消費地ダッカから近く、渋滞がなければ30分ほどで市内と団地を行き来できる。ダッカに住む駐在員も通勤圏だ。それでいて団地周辺の住民は少ない。用地の選定では「(住民の立ち退き問題が生じた)ミャンマーのティラワ経済特区の教訓を生かした」(JICA)。

バングラデシュでは中間層も着々と育っている(6日、ダッカの給油所)=ロイター

バングラデシュは世界8位の人口大国で平均年齢は約27歳。ホンダや味の素は成長が確実視される内需に照準を合わせた現地工場を10年代から稼働している。労働コストもまだ安く、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると21年のメーカー作業員の基本給は月105ドル(約1万4千円)とベトナムの半分以下だ。

日系企業の進出は10年で3倍の約340社に増えた。21年には三菱自動車が東南アジア製の部品で車両を組み立てる工場の検討を始めた。BSEZでも「新型コロナウイルス禍で決定が遅れているが、40社が進出を検討している」(住商)。

地元政府は税優遇

日本企業にとってアジアのフロンティア市場では、10年代にバングラデシュの隣国ミャンマーが急速に存在感を高めた。しかし21年2月のクーデターを境に多くの事業が中断を強いられた。最大都市ヤンゴン近郊で日・ミャンマーの官民肝煎りのティラワ経済特区を運営する住商にとっても誤算だった。

そのぶんバングラデシュは「ミャンマーの3倍の人口を持ち、政治も安定している親日国。ベトナムのように経済成長していく」(JICAの中沢慶一郎理事)といった大きな期待を背負う。

政府は縫製産業依存からの脱却を急ぐ(ダッカ郊外のアパレル工場)=ロイター

現地政府も外資の誘致に積極的だ。輸出の8割を縫製業が占めてきたが、人件費の安さ頼みの競争力は持続的でない。製造業の裾野を広げて産業の付加価値向上や輸入の削減につなげることが急務とみて、BSEZでは法人税などの減免でメーカーを支援。投資許認可などを一括で受け付ける窓口を設け、煩雑な手続きを円滑にする。

中国・インドも接近

BSEZの近隣では別の開発プロジェクトも進む。南東部のマタバリ地区では住商などが多目的商業港を建設。深さ16メートルの深海港で大型船が着岸でき、物流の増加に対応する。ダッカ近郊の国際空港のターミナル拡張工事や、空港と都市部をつなぐ鉄道の建設などでも日本勢が受注を重ねる。BSEZは国道でこれらのインフラにつながる。

もっとも、バングラデシュのインフラ開発に力を入れるのは日本ばかりではない。隣の大国インドはロシアと組んでの原子力発電所の建設や、石炭火力発電、港湾の開発を進める。中国は南部を中心に経済特区開発や国道の拡張、鉄道、石炭火力発電など手広く取り組み、将来の大型市場に浸透しようとしている。

経済成長底堅く 経常赤字にリスク

 バングラデシュは新型コロナ禍の影響が限定的で、20年度(19年7月~20年6月)の実質国内総生産(GDP)成長率は3.5%で踏みとどまった。8%超の19年度から鈍化したものの、国際通貨基金(IMF)は21年度以降も5%を超える成長が続くとみている。
 国連決議により26年には「後発発展途上国(LDC)」の分類から外れる見通し。ただ家電や自動車などの普及率は低く、内需の開拓余地は大きい。民主主義も定着し、フロンティア市場の中では政変リスクも小さい。

 ただ、商品価格の高騰などを受け、バングラデシュでも経常赤字が膨らんでいる。IMFは「多くの国々と同様、マクロ経済上の課題に直面している」と指摘している。
 バングラデシュの7月の外貨準備高は395億ドルと輸入の5カ月分はあるものの、前年同月の458億ドルから減少している。主力の観光業が低迷し20億ドルを割り込んだスリランカほど深刻ではないが、経済危機の連鎖を懸念する向きもある。
 地元紙は7月、バングラデシュがIMFに45億ドルの融資を要請したと報じた。IMFは「金額はまだ議論していない」と説明するが、同国は経済環境の悪化や将来の気候変動リスクに備えるための支援に関心を示しているという。

 低地の多い同国はかねて水害がビジネス活動における課題となっていた。今後は企業にとって経済成長に伴う人件費の急上昇や、イスラム過激組織によるテロのリスクも留意が必要だ。
(東京=宮住達朗、ムンバイ=花田亮輔)』