縮む中国ファーウェイ、法人開拓急ぐ 1~6月6%減収

縮む中国ファーウェイ、法人開拓急ぐ 1~6月6%減収
デジタルやエネルギー・・・、20の専門「軍団」設立
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM182CX0Y2A710C2000000/

『【広州=川上尚志】中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の規模縮小が止まらない。12日発表した2022年1~6月期の売上高は前年同期比6%減だった。米政府の制裁や市場縮小などで主力のスマートフォン事業が低迷した。局面打開に向け、エネルギーなど20分野に「軍団」と呼ぶ専門部隊を設立。法人需要の開拓を急ぐが、スマホの穴を埋めるにはなお時間がかかる。

売上高は3016億元(約6兆円)。同期間としては2期連続の減収となった。20年11月に売却した低価格スマホブランド「オナー」の影響がなくなり、減収幅は前年同期(29%)より改善した。

事業別で見ると、スマホなどの端末事業が25%減と苦戦した。米政府による輸出規制の強化で半導体などが調達しづらくなり、スマホの生産に支障が出た。米調査会社IDCによると、同期間の中国スマホ出荷台数は上海市のロックダウン(都市封鎖)などで2桁減とふるわなかった。

ファーウェイは米制裁前には年2億台超のスマホを出荷する世界有数のメーカーで、端末事業が売上高全体の過半を占めていた。長引く制裁と需要の減退でスマホに代わる経営の柱が急務となるなか、目をつけたのが法人向け事業だった。

「情報通信技術がどのように(金融)業界を変え、持続的な成長に移行できるのかを探求していく。DBSと一緒に取り組めることをうれしく思う」

7月下旬、ファーウェイがシンガポール中心地のマリーナベイで開いた金融関連のイベント。同社の「デジタル金融軍団」の曹衝・最高経営責任者(CEO)は、シンガポール銀行最大手DBSグループ・ホールディングスのジミー・ウン最高情報責任者(CIO)と笑顔で握手を交わした。

両社は共同でイノベーション拠点を設立すると表明。「スマートでグリーンな金融」に向けた技術開発を進めるという。

ファーウェイはこれまでも金融業界向けにクラウドなどのサービスを提供している。21年末時点の顧客数は約60カ国で2000超に及び、世界の大手銀行100行のうち49行が含まれるという。こうした顧客との連携を一段と強化すべくファーウェイが5月に立ち上げたのが、デジタル金融軍団だった。

ファーウェイは21年10月以降、こうした組織を次々と立ち上げていった。「炭鉱軍団」「税関・港湾軍団」「スポーツ・ヘルスケア軍団」……。現在、その数は20に上る。

関係者によると、「軍団はまだ立ち上がったばかりで、構成や人数は定まっていない」。いずれも特定の業界に絞り、社内の様々な分野の専門家を組織し、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する点が特徴だ。

創業者の任正非(レン・ジェンフェイ)CEOは「基礎研究の科学者と、技術、製品、工程、販売、納品、サービスの専門家を1つの部門にまとめたものだ」と説明。「米グーグルの組織に学んだ」(任氏)という。

こうした組織が営業攻勢をかけるのは、現時点では中国国内の顧客が中心だ。特に炭鉱や税関、港湾といったインフラ分野で運営の省人化やデジタル化を支援する事例が目立つ。

なかにはデジタル金融のように、海外を志向するケースもある。象徴的なのが「スマート太陽光発電軍団」だ。
ファーウェイは太陽光発電の部品で世界有数のシェアを持つ(4月、広東省東莞市の同社工場)

ファーウェイは太陽光発電システムの基幹部品であるインバーターで世界最大のシェアを握り、欧州や日本を含む世界のメガソーラーで同社の機器が採用されている。この軍団が発足した21年10月にはサウジアラビアで世界最大規模の蓄電事業を受注しており、今後も国内外で事業を伸ばす考えだ。

法人向け事業はクラウドや人工知能(AI)などのサービスが中心だ。これらの分野で必要な半導体は、スマホ向けほど最先端でないとされる。ファーウェイは高速通信規格「5G」で、米国や日本の市場から排除された一方、スイスやドイツ、韓国やサウジアラビアなどでは通信網を構築している。
ファーウェイが5月に広東省深圳市の本社で開いた軍団の設立大会で演説する任正非CEO(同社従業員向けサイトの動画より)

こうした通信網と法人向けサービスを連携させることで、新たな収益源に育てる狙いだ。3月に開いた第2弾の軍団設立大会で、任氏は「我々はますます厳しい圧力に直面するなか、態勢を整え、柔軟で機動的な戦略・戦術を採る必要がある」と強調。今後も同様の組織を強化していく意向を示した。

ただ、事業ごとに細分化し組織を設けて深掘りする戦略は、スマホに匹敵する「金脈」を見いだせていないことの裏返しでもある。1年弱で20軍団という「乱立」状態にも焦りが透ける。経営の屋台骨を支えるだけの成果を収められるのか。ファーウェイの正念場はまだまだ続く。
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森川博之
東京大学大学院工学系研究科 教授
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分析・考察

「基礎研究の科学者と、技術、製品、工程、販売、納品、サービスの専門家を1つの部門にまとめた」軍団をグーグルの組織から学んだとあるが、ファーウェイは組織のあり方も時代に合わせて変化させ、事業につなげてきた。優れた技術があるのに事業に結びつかないとしたら、組織のあり方(リソース配分のあり方や人事のあり方など含む)を考えてみるのが近道だ。事業をうまく回している企業は、好適な組織のあり方を常に考え続けている。
2022年8月12日 22:55 』