米大統領選にルール変更論 州議会権限最高裁が判断へ

米大統領選にルール変更論 州議会権限最高裁が判断へ
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『米国の共和党が大統領選挙のルールを決める権限は州議会にあると主張し、実現に動き出した。州議会の決定は裁判所の介入を受けないとの考えで、連邦最高裁が来夏までに合憲性を判断する。合憲になれば、郵便投票の大幅な制限などに道を開くとされ激戦州で議会多数派を握る共和党に追い風となる。連邦制の隙を突いた主張は三権分立を揺るがしかねない。

2024年の大統領選は民主党・現職のバイデン大統領が再選をめざす意向だ。共和党では、20年の大統領選で同氏に再選を阻まれたトランプ前大統領や南部フロリダ州のロン・デサンティス知事に出馬観測がある。

ルール変更を巡る共和党の主張は「独立州議会理論(ISLT)」と呼ばれる。合衆国憲法は「各州は立法府(legislature)が指示することができる方法で大統領選挙人を指名する」などと規定する。これを文字通りに解釈し、大統領選の方法を決める権限は州の立法府である州議会にあり、州の裁判所を含むいかなる介入も受けないと唱える。

ISLTが脚光を浴びるのは連邦最高裁が10月開始の新会期で、その合憲性を事実上判断すると位置づけられる審理を行うためだ。

南部ノースカロライナ州の選挙区割りをめぐる案件を審理するもので、共和党主導の州議会が決めた区割りについて、州最高裁は選挙は公正で自由でなくてはならないと指摘。恣意的に共和党優位になるとして却下した。

州議会はこれを違憲として連邦最高裁に提訴した。州議会に軍配が上がれば大統領選をめぐるルールについても州議会が自由に決められる可能性が出てくる。

24年の大統領選で激戦が予想される東部ペンシルベニアや中西部ミシガン、ウィスコンシン、南部ジョージア、西部アリゾナの各州はいずれも州議会で共和党が上下両院の多数派を占めている。

州議会の権限拡大は共和党優位に働くとの見方が広がる。

ペンシルベニアの共和党では新型コロナウイルスの感染拡大を受けて利用がしやすくなった郵便投票を大幅に制限すべきだとの意見が浮上している。20年大統領選では、バイデン氏支持者の郵便投票利用がトランプ氏支持者を上回っていた。

アリゾナでも共和党で、州議会が票集計後に選挙結果の承認か却下を決める案がある。州議会が民意を反映した選挙結果を覆す余地を残すものだ。20年はトランプ氏がアリゾナでの選挙不正を訴えていた。

最高裁は判事9人のうち6人を保守派が占め、ISLTは保守派の異端論と切り捨てられなくなっている。

20年の大統領選で民主党によるウィスコンシン州の不在者投票の受付期限延長要求を却下した判断では保守派のニール・ゴーサッチ判事が「憲法は州議会が選挙の規則を定める第一の責任を持つと明記している」と指摘した。

最高裁は憲法の拡大解釈を認めず、条文をそのまま適用する傾向が強まっている。人工妊娠中絶の権利を憲法が認めた権利だと位置づけた1973年の判決を無効とした判断でも中絶の権利が憲法に明記されていない点を理由のひとつに挙げた。
共和党支持が多い白人の人口は2020年の国勢調査で初めて減少した(写真はトランプ前大統領)

20年国勢調査によると、米国の白人人口(中南米系のヒスパニックを除く)は1790年の調査開始以来初めて減少した。白人有権者の支持が多い共和党の劣勢が固定化されていく可能性があることも、同党が制度見直しを探る理由だ。

イリノイ大のビクラム・アマル法学部長はISLTをめぐり「民主主義の主要素である三権分立のチェック・アンド・バランスを否定するものだ」と警鐘を鳴らす。

(ワシントン=芦塚智子、中村亮)

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