日米共同訓練が5割増 1~7月、台湾有事念頭で海に重点

日米共同訓練が5割増 1~7月、台湾有事念頭で海に重点
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『自衛隊と米軍の共同訓練が増加傾向にある。1~7月は2021年の同時期と比べて5割増え、20年の同時期比では倍に当たる。台湾有事で最前線となる海上での訓練拡充が目立つ。対中国を念頭に抑止力の向上につなげる。

航空自衛隊と米空軍は9日、沖縄周辺で計10機の戦闘機による共同訓練をした。中国軍が台湾周辺で軍事演習を始めた4日も、日米の戦闘機が共同訓練をしていた。初めて「存立危機事態」を想定した訓練もするなど質の向上も狙う。

防衛省の公表に基づいて日米2国間の共同訓練の回数を日本経済新聞が集計した。22年1~7月は統合幕僚監部、陸海空の3自衛隊あわせて51回実施した。21年の同時期は34回、20年は23回だった。

そのうち最も回数が多かったのは海上自衛隊の29回で全体の半数以上を占めた。21年の同時期比で3割増えた。

日米の共同訓練が今年に入って増えた背景に、ロシアのウクライナ侵攻後、中国やロシアが日本周辺での軍事活動を活発にさせたことへの警戒がある。北朝鮮も大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を含むミサイルを複数回発射した。

中国軍は8月、台湾周辺で軍事演習を展開し、発射した弾道ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)に初めて落下した。台湾有事になれば日本にも影響が及びかねないとの現実味も増した。

海上からのミサイル迎撃や中国艦艇の監視などでは海自の対応が重要になる。日米は中国が海洋進出を強める東・南シナ海や沖縄県の尖閣諸島や先島諸島周辺の訓練を重視する。

海自の護衛艦と米軍の駆逐艦などは相互運用性を向上させて円滑な連携ができるよう、共同対処の方法を確認する。5月には関東沖の太平洋で米空母の「ロナルド・レーガン」も参加して敵の潜水艦を探知して攻撃する訓練をした。

5月の首脳会談の共同声明でも「戦略を整合させ、共同の能力を強化する」と明記した。米軍との共同訓練は「拡大抑止」の強化にもつながる。

日米がともに参加する多国間訓練や演習も合わせると回数はさらに増える。

2月下旬のウクライナ侵攻後、自衛隊は「Quad(クアッド)」構成国のオーストラリアとインド、欧州の英仏、東南アジア諸国などと20回程度訓練した。6月には自衛隊が北大西洋条約機構(NATO)軍とおよそ4年ぶりに訓練をした。

日米は回数だけでなく、実戦を念頭に置いた訓練の質の向上も進める。

8月4日まで米ハワイ沖で展開した「環太平洋合同演習(リムパック)」で、自衛隊が「存立危機事態」を想定した実動訓練に初めて臨んだ。リムパックには海自の護衛艦や陸上自衛隊の西部方面隊が参加した。

「存立危機事態」は日本と密接な関係にある他国が攻撃され、日本国民の生命などに危険が及ぶ状況を指す。集団的自衛権の限定行使が可能になる。一般的に米軍への攻撃を想定している。台湾有事で日本の自衛隊が戦闘に加わる根拠にもなり得る。

空自は22年に入り、北朝鮮のミサイル発射や中国軍機が日本周辺を飛行した直後に、日米共同訓練の様子を公開するようになった。共同訓練は事前に公表するもの以外は数日後に発表するのが慣例で、直後の公開は異例の措置といえる。

防衛省幹部は「日米がすぐに共同対処する様子を見せることは中国などへの効果的なメッセージになる」と話す。

岸田文雄政権は年末までに国家安全保障戦略など3文書を改定する。自民党は防衛計画の大綱を米国が持つ「国家防衛戦略」に衣替えし、部隊間で作戦の連動性を高めるよう促す。安保環境の厳しさが増すアジアで、日米一体運用は双方の課題になる。

元海上幕僚長の武居智久氏は「共同訓練の最大の目的は相互運用性を高めることだ。自衛隊は米軍の最新の戦術を学ぶことができ、米側は自衛隊の実力を評価する機会になる」と話す。

「政治的な必要に応じて示威を目的として訓練することもある。安保戦略改定を見据えた共同作戦能力の確認という見方もできる」と分析する。

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/U.S.-and-Japan-step-up-joint-drills-by-50-as-Taiwan-tensions-rise?n_cid=DSBNNAR 』