トランプ氏、スパイ活動法違反の可能性 FBIが捜査

トランプ氏、スパイ活動法違反の可能性 FBIが捜査
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN130JJ0T10C22A8000000/

『【ワシントン=中村亮】米連邦捜査局(FBI)がトランプ前大統領の邸宅から多数の最高機密文書を押収した。機密を不適切に扱い、スパイ活動法に違反した可能性があるとみて慎重に捜査を進める。トランプ氏は押収物について、すべて機密を解除していたと主張して対決姿勢を強めている。

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FBIは8日、南部フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の邸宅マールアラーゴを家宅捜索した。裁判所が12日に公開した捜索令状や付属文書によると、裁判所はトランプ氏のオフィスに加え、トランプ氏やスタッフが利用する可能性がある全ての物置や部屋の捜索を幅広く認めた。

11つの機密文書を押収し、4つは「Top Secret(最高機密)」に指定されていた。これとは別に押収した「TS/SCI」とマークした文書は最高機密文書の中でも原則として厳重に管理した政府施設で閲覧するとされる。機密の内容は判明していないが、米メディアはFBIが核兵器や海外秘密作戦に関する文書を捜索対象としたと報じていた。

ガーランド司法長官は11日の声明で捜索令状について「相当な理由を認定した上で裁判所に承認された」と断言した。最高機密が漏洩するリスクを踏まえ、大統領経験者に対する異例の家宅捜索に踏み切った事情が浮かび上がる。

押収物リストにはトランプ氏に近いロジャー・ストーン氏への恩赦に関する文書もあった。ストーン氏は2016年の米大統領選で、トランプ氏のライバル候補であるクリントン元国務長官に打撃となる情報流出に関与した疑いがあり、恩赦は激しい論争を呼んだ。FBIは「フランス大統領に関する情報」と題するものも押収していた。

裁判所が公開した資料から、FBIが①スパイ活動法違反②捜査妨害を目的とした文書の処分や隠蔽③政府文書の違法な取り扱い――などの疑いでトランプ氏を捜査していることも分かった。

スパイ活動法については、国防関連の情報を無許可で所持したり、漏洩したりして米国の安全保障に打撃を与える場合に罪に問われる。トランプ氏は12日の声明で押収物について「全て機密解除したものだ」と主張したが、スパイ活動法が禁じる国防関連の情報の不適切な取り扱いは、情報が機密扱いかどうかを問わない。トランプ氏が機密解除について所定の手続きをとっていたかは明らかになっていない。

スパイ活動法は情報を適切な場所から移動させることも禁じている。FBIは原則として政府施設で保管するとされるTS/SCI指定の文書をマールアラーゴで押収しており、トランプ氏が文書を持ち出した経緯などを詳しく調べているとみられる。

捜査妨害を巡っては、トランプ氏が機密文書を隠す意図があったかどうかが焦点だ。

複数の米メディアによると、捜査当局は召喚状を出して機密文書の回収を目指していた。捜査当局者は6月にトランプ氏の邸宅を訪れてスタッフから機密文書を回収した。しかし訪問後に機密文書が邸宅にまだ残されているとの内部情報が寄せられて、今月8日の家宅捜索につながった。

FBIは当局者の訪問時にトランプ氏側が機密文書の一部を渡さなかった理由に加え、トランプ氏の指示や関与があったのかどうかを調べているもようだ。トランプ氏は「私の弁護士や代理人は(捜査当局に)完全に協力し、とても良い関係を築いていた」と繰り返し強調しており、隠蔽の意図を否定する意図があるようだ。

さらに大統領は公務に関する文書などの記録を保存して退任時に国立公文書記録管理局への提出を義務づけられており、トランプ氏は大統領記録法違反に問われる可能性もある。

CNNテレビによると、FBIの職員や施設に対する脅迫が「前代未聞」の件数に達し、FBIが捜査を進めているという。トランプ氏の邸宅への家宅捜索に反発する同氏や共和党の支持者が不満の矛先を捜査当局に向けている公算が大きく、米国社会の分断が進みかねない。』