[FT]児童労働黙認のタリバン、高値の石炭輸出で経済再建

[FT]児童労働黙認のタリバン、高値の石炭輸出で経済再建
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『北部バグラン州ナーレーンの鉱山では、8歳の子どもたちが炭鉱労働者として働いている。石炭をロバの背に載せて運び、カブール行きのトラックに積み替える。そこには機械も安全装置もない。

ウクライナ紛争や新型コロナウイルスに伴う物流の混乱により国際商品価格が高騰する中で、アフガニスタンの炭鉱が活況を呈している。1年前に政権を掌握したイスラム主義組織タリバンにとって、国際社会からの孤立や制裁で疲弊した経済の再生を目指す上で、石炭は重要な収入源になっている。

待機中のトラックに石炭を運ぶ手伝いをしていたマランさん(60)は「タリバンが政権を取った直後に石炭価格が上がった。彼らは運がいい」と話した。

北大西洋条約機構(NATO)の駐留部隊が撤退し、タリバンが欧米の支援を受けていた政権を倒すと、同国経済はあっという間に行き詰まった。前政権の予算の4分の3を占めていた国際援助が停止され、90億ドル(約1兆2000億円)にのぼる外貨準備が凍結された結果、2021年の経済規模は少なくとも20%縮小した。

タリバンは経済を立て直すべく石炭輸出を積極的に増やしている。環境や倫理的な問題は無視しながら、石炭以外の鉱物資源や果物などの輸出も奨励し、管理下に置いて課税収入を得ている。

パキスタン向け石炭輸出は倍増

石炭の多くは険しい山道を通ってカブールからパキスタンに運ばれ、さらに一部は中国に送られる。タリバン支配下での越境貿易について報告書を執筆したデビッド・マンスフィールド氏は、暫定政権の発足以来、パキスタン向けの石炭輸出が年間約400万トンに倍増したと推計している。

国連開発計画(UNDP)のアフガニスタン常駐代表、アブドラ・ダルダリ氏によると、前政権はグリーンエネルギーへの移行を模索していたが、タリバンは化石燃料を容認しているという。タリバンの政権掌握後、経済のグリーン化計画は「白紙撤回された。人々は争うように炭鉱の開発に着手し、石炭が活況になり始めた」と同氏は語る。

マンスフィールド氏によると、タリバンはこれまで驚くほど効果的に貿易を管理し、横行する賄賂や密輸を取り締まってきた。「とても大きな変化だ。タリバンは国境の規制・管理を極めてうまくやっている」という。タリバンの収入を増やすだけでなく、地方に割拠する軍閥の自主財源を断ち、自らの権力基盤を強化できると同氏は付け加えた。

輸入は急減しているものの、輸出総額は19年の12億ドルから、22年は約18億ドルにはね上がると国連は予想している。

同国の豊富な鉱物資源はかねて外国政府や投資家を魅了してきた。リチウムから宝石に至るまで膨大な埋蔵量は総額で1兆ドルの価値があるとの試算もある。しかし、数十年に及ぶ政情不安で探査や採掘が制限されてきた。

中国国有の中国冶金科工集団は07年、カブールの南東に位置し世界有数の銅の埋蔵量を誇るメス・アイナク銅山の権益を確保した。ただし、採掘作業はいまだに始まっていない。
タリバンはラピスラズリなどの宝石類からアヘンの原料となるケシの栽培まであらゆる取引を規制し、課税することで反政府活動資金の一部を調達してきた。

中国やロシアの投資家と協議

中国冶金科工集団は07年、世界有数の銅の埋蔵量を誇るメス・アイナク銅山の権益を確保したが、採掘作業はいまだに始まっていない=ロイター

アジジ商務相はインタビューで、タリバン政権が中国やロシアなどの投資家と鉱山採掘や石炭取引を巡って協議していると明らかにした。

アジジ氏は「(タリバンが自称する)アフガニスタン・イスラム首長国は過去のどの政権よりも貿易を重視してきた」と強調した。「経済的な取引を軍事問題と切り離して考えたい。我々は誰とでも取引する」

ただ、大型の国際案件はまだまとまっておらず、採掘権交渉は国内業者にとどまり比較的規模も小さいと同氏は述べた。鉱業・石油省によると、国内に80ある炭鉱のうち17カ所が稼働中で、その多くは北部にあるという。

採掘作業は往々にして過酷だ。ナーレーンの鉱山では作業員の約半数が10代かそれ以下とみられ、わずかな報酬を得るために危険な環境下で働いている。

鉱山で家族代々働く人たちも少なくない。ナジブラさん(35)は祖父や父とともに10代で働き始め、今では息子のヌールラさん(12)も加わっている。

児童労働はタリバン復権のかなり前からはびこっていたが、経済危機で学校に通えなくなり鉱山で働くようになった子どもが増えたとアナリストらは指摘する。

「ここではこの仕事以外に選択肢がなかった」と語るアティクラさん(14)は、8歳のときに鉱山で働き始めたという。「ここ以外になかったけど、地下数百メートルの坑道で働いて幸せな人なんて誰もいないよ」

農業を営んでいたモハマドさん(55)は洪水で農地を流され、ナーレーンの鉱山で働き始めた。タリバン復権後に石炭価格が上昇したおかげで炭鉱作業員の収入も倍増したという。

「労働者にとって政治なんてどうでもいい」とモハマドさんはいう。「大事なのは仕事に有り付いて稼げるかどうかだけだ」

鉱業・石油省のブルハン報道官は外国投資が増えて技術が進歩すれば、労働条件の改善や児童労働の防止につながるとの見解を示した。

ケシ栽培禁止も、法的強制力は不明

タリバンはケシの栽培を打ち切ると表明し4月には禁止令を公布したが、法的強制力を持つかどうかは不明だ=AP

タリバンはアフガンで最も不評の資源の1つで輸出規模も大きいケシの栽培を打ち切ると表明している。4月には禁止令を公布したが、法的強制力を持つかどうか判断するのは時期尚早だと専門家は指摘する。国連の統計によると、根絶に向けて数十億ドルが費やされたにもかかわらず、01年の米同時テロを受けて米軍がアフガンに駐留後、ケシの栽培量は2倍以上に膨らんだ。

国際的な銀行が制裁を理由に総じて外為取引の仲介を渋っているため、石炭輸出に伴う資金決済は主に高い手数料を取る闇金融業者に依存している。ほか代替手段もないため、彼らには稼ぎのいい商売になっている。

モハマド・アジムさんはタリバンの支配下で職を失った後、石炭取引を始めた。ナーレーンの鉱山で買い付け、カブールで売っている。アジムさんは輸出需要が極めて高いと言ってから表情をくもらせた。「このままではアフガンの人々が冬に買う石炭が残っているかわからない」

By Benjamin Parkin and Fazelminallah Qazizai

(2022年8月4日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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