楽天、「0円廃止」で契約23万件減

楽天、「0円廃止」で契約23万件減 財務負担なお重く
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『楽天グループは10日、携帯電話事業における自社回線サービスの契約数が6月時点で477万件となったと発表した。料金「0円プラン」廃止の発表前だった4月時点から約23万件減った。契約数の減少は2020年4月に本格参入してから初めて。同日発表した22年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が1766億円の赤字。4~6月期の携帯事業の赤字幅は1~3月期から改善したが、財務負担はなお重い。

「我々にとって優良なユーザーに変えていく」

楽天の三木谷浩史会長兼社長は10日の決算会見で、傘下の楽天モバイルで携帯電話の契約数が減少したことについて、そう言及した。

楽天は5月、月間のデータ量が1ギガバイト(ギガは10億、GB)まで0円で利用できる料金プランの廃止を発表。7月から最低料金を980円(税抜き)とする新たなプランを導入した。契約数の減少は料金を支払わない「0円ユーザー」が離脱した結果だ。三木谷氏は収益性の改善につながると強調した。

他社回線を借りる仮想移動体通信事業者(MVNO)サービス分を除いた、自社回線サービスの契約数は4月時点で500万件を突破していた。流出数は非公表だが、6月時点の契約数は23万件減って477万件となった。

20年4月に自社回線での携帯事業に本格参入してから初めて減少した。最近の月間純増数は10万件超で、2カ月分の契約が吹き飛んだ。

楽天からの流出は競合他社の契約数を押し上げていた。ソフトバンクの22年4~6月期の純増数は34万件と前年同期比36%増。KDDIも格安ブランド「povo(ポヴォ)」「UQモバイル」の6月時点の契約数は3月から80万件ほど伸びた。NTTドコモの格安プラン「ahamo(アハモ)」も「増加傾向にある」(同社幹部)という。

競合他社からは「数字としては非常にインパクトがある」との声が漏れる。楽天によると流出したユーザーの8割が0円ユーザーだという。同社は一定の流出については「致し方ない」とし、(実質0円が終わる)11月には落ちつくとみる。

0円ユーザーは、4月時点で全契約件数の3~4割程度あったとみられる。楽天は移行期間として、7月から4カ月間は1GBまでの料金を実質無料にしている。そのため、今回流出したのは一部で、契約数は実質無料期間が終了する10月末にさらに減少する可能性もある。

MM総研(東京・港)の横田英明研究部長は「解約を検討している0円ユーザーがすべて抜けきったわけではない。影響はまだ不透明だ」と指摘する。

同日発表した連結決算では、1~6月期の携帯電話事業の営業損益は2593億円の赤字で、赤字幅は前年同期の1972億円から拡大した。ただ四半期ベースでは4~6月期は1242億円の赤字で、1~3月期を底に約100億円改善した。基地局の建設が進んだことで自社回線エリアが広がり、回線を借りているKDDIに支払うローミング費用が減少した。

楽天の基地局数は現在4万局を超え、人口カバー率は97%に達する。23年中に4G基地局を6万局に拡大し、人口カバー率を99%以上にするとの方針も明らかにした。

ただ、財務面の不安は拭えないままだ。

楽天は基地局の建設などにこれまで約9000億円を投じてきた。資金は借り入れや社債で対応し、有利子負債(銀行事業を除く)は6月末時点で2兆5370億円と20年3月末時点の1.5倍に膨らんでいる。

負債に頼らない資本性の高い資金の調達に向け、楽天銀行や楽天証券を新規上場させる準備に入っている。だが、足元では市場環境の悪化が逆風になる。

人口カバー率と通信品質の向上には、一段の設備投資が必要になる。楽天は、設備投資費は今後縮小傾向になると説明する。それでも、クレディ・スイス証券の風早隆弘氏は「今後の投資資金の確保には、銀行と証券の上場に加えて他の選択肢も検討する可能性がある」と指摘する。

三木谷氏は契約数の目標値として、時期は明言しないものの1200万件を掲げた。今回の新プランの導入でARPU(契約者あたり月間平均収入)の上昇が見込めるとも強調。自社回線エリアの拡大や通信品質の向上で顧客獲得も加速するとの見通しを示した。

ただ、クレディ・スイス証券の風早氏は「(楽天が目標とする)23年12月期の単月黒字化に向けた道筋は現時点では厳しい印象だ」と指摘する。0円ユーザーでも流出してしまえば、将来的に料金を支払うユーザーに転換させる機会も失うことになる。

楽天は、電子商取引(EC)の「楽天市場」や金融の「楽天カード」といった幅広いサービスを手掛ける。「楽天ポイント」を付与するなどして複数のサービスに携帯ユーザーを回遊させれば、全体として収益性が高まると期待する。

MM総研の横田氏は「重要なのは、楽天の『経済圏』にどれだけ人を呼び込めるかだ」と指摘する。1200万件の目標を達成するには、「0円プラン」をしのぐ強力な施策が必要となる。(西城彰子、秦野貫)

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