トランプ氏3つの疑惑 機密文書持ち出し・議会占拠・脱税

トランプ氏3つの疑惑 機密文書持ち出し・議会占拠・脱税
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『2022年8月9日 21:07 (2022年8月10日 6:33更新)

【ワシントン=坂口幸裕】米連邦捜査局(FBI)は8日、トランプ前米大統領がホワイトハウスから機密文書を持ち出した疑いで異例の家宅捜索に踏み切った。2021年1月の連邦議会占拠事件への関与や同氏の一族が経営する企業の脱税と合わせ、同氏は3つの疑惑に直面する。

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トランプ氏はバイデン現大統領に敗れた20年の選挙結果を認めていない。米メディアによると、司法省は結果を覆そうとした疑いで同氏の言動について関係者から聴取を始めた。トランプ氏自身が捜査対象になるかが焦点となっている。

21年1月6日の議会占拠事件は、議会での大統領選結果承認手続きの当日に起きた。下院特別委員会は、トランプ氏が暴力の扇動や議会の議事進行の妨害に関与した疑いを調査している。

特別委は6月から7月にかけ、議会占拠事件へのトランプ氏の関与を問う公聴会を複数回開催した。前政権の関係者らが、同氏が武装した支持者が議会に向かうことを容認したと証言した。

トランプ政権で大統領首席補佐官を務めたマーク・メドウズ氏の元側近キャシディ・ハチンソン氏の証言によるとトランプ氏は「支持者が武器を持っていても構わない。支持者は私を傷つけない」といった趣旨の発言をした。

特別委に訴追の権限はない。だが捜査権限を持つ司法省トップのガーランド長官は7月に米NBCのインタビューで「合法的な政権の権限移行を妨げる犯罪行為に関わった人物に対しては、誰であれ責任を問うつもりだ」と述べており、司法による追及が強まる可能性がある。

8日、FBIが実施したトランプ氏の邸宅「マール・ア・ラーゴ」の家宅捜索は、大統領在任中に扱った機密を含む文書をホワイトハウスから持ち出した疑いによるものとみられる。米国立公文書記録管理局が司法省に調査を要請していた。

トランプ氏側は最終的に同局への15箱相当の文書の引き渡しに応じたが、対応は同局から法的措置の可能性を指摘された後のことだったという。

米紙ワシントン・ポストは、トランプ氏が持ち出した資料には北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記ら外国の指導者からの手紙やメモもあったと伝えた。

トランプ氏は大統領在任中から手紙や機密が記されたメモを破り捨てることがあり、職員が破られた文書を回収してテープでつなぎ合わせるケースもあったとされる。

機密文書の持ち出しを巡る疑惑が強制捜査に発展したことについて、アンドリュー・マッケーブ元FBI副長官は8日の米CNNのインタビューで「FBIと司法省幹部があらゆる角度から評価し、法的に検証したものだ」と指摘した。大統領記録法に違反した疑いでトランプ氏が起訴される可能性に触れた。

トランプ氏は8日、FBIによる捜索を明らかにした声明で「私の金庫までこじ開けた」と反発した。「民主党リベラル派の攻撃だ」とも主張した。

これらの疑惑のほかにも、トランプ氏の一族企業が脱税した疑いも取り沙汰される。東部ニューヨーク州のマンハッタン地区検察は7月、「トランプ・オーガニゼーション」と同社のアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者(CFO)を起訴したと発表した。

ワイセルバーグ被告はトランプ氏に最も近い人物の一人とされる。脱税などの容疑にトランプ氏が関わったと判明すれば本人の起訴に発展するとの見方もある。

トランプ氏は在任中に2回弾劾訴追を受けた、初の米大統領でもある。

19年にはウクライナに軍事支援の見返りとして20年大統領選の有力候補だったバイデン氏の捜査を要求した権力乱用などで弾劾訴追された。21年には連邦議会議事堂の占拠事件を扇動したとして弾劾訴追を受けた。いずれも上院が無罪評決を下した。

ウォーターゲート事件のもみ消しに関する司法妨害などに問われた当時のニクソン大統領は1974年、下院で弾劾訴追が避けられなくなり辞任した。クリントン大統領は在任中の98年に自身の不倫疑惑を巡る偽証などで弾劾訴追されたが、上院が無罪評決を下した。

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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説

捜査の進展は大きな政治的な意味を持ちます。民主党支持者は「当たり前、遅すぎる」と捜査を強く支援。共和党支持者は捜査への反発から結束する可能性があります。「トランプ氏はぬれぎぬを着せられている、民主党はとんでもない」というレッテル貼りです。実際、共和党支持者の間では、議会襲撃事件をめぐる公聴会自体が「民主党政権が作った偽りのショー」と見られています。トランプ氏への捜査が本格化してきたとしても、「司法長官の陰謀」「バイデン政権の陰謀」と捉えられるとみられます。
2022年8月10日 4:42 (2022年8月10日 5:13更新)
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中林美恵子
早稲田大学 教授
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分析・考察

前大統領の居宅に突然家宅捜索が入ったのは史上初ではないか。トランプ支持層が結束に転じる可能性が高く、バイデン氏も距離を置き、捜索は聞いていなかったと主張。捜索令状が出たからといって有罪になるとは限らないが、禁錮3年の可能性もある中で、FBIや司法当局は何を見つけられると踏んだのか。余程の証拠が出ねば、トランプ氏にチャンスだ。共和党のマッカーシー下院院内総務は早速、トランプ氏の主張と怒りに支持を表明。彼は中間選挙後に下院議長に就く可能性が高く、その場合は司法当局に逆調査を仕掛ける可能性がある。これら全てを承知の上で当局が賭けに出た資料、そしてトランプ支持層の受け止め方に、注目が集まる。
2022年8月10日 2:30
鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

これだけトラブルを抱えながらも、共和党では圧倒的な人気を誇り(かつてほどではないにせよ)、2024年の大統領候補最有力として出てくるというところにアメリカの病理がある。警察力の強化、秩序の維持、犯罪の悪魔化を訴える人たちが、トランプの犯罪に関しては、全く不問にして、むしろ警察が悪であるかのような扱いをしている。この党派性にドライブされた一貫性のなさ、論理的な矛盾が問題とされないまま受け入れられている。こんな状態で2024年を迎えることの怖さが感じられていないところに、怖さがある。
2022年8月11日 0:07 』