ソフトバンクG、アリババと蜜月転機

ソフトバンクG、アリババと蜜月転機 株放出で利益4兆円
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『ソフトバンクグループ(SBG)が保有する中国・アリババ集団株の一部を放出すると決めた。2000年に投資したアリババはSBGにとって虎の子の資産であり、アリババを活用して積極的に資金調達してきたが、財務の守りを優先する。市場変調で新規投資を抑制しており、投資会社化を進めてきたSBGの経営は大きな転換点を迎えている。

SBGの2022年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は2四半期連続で最終赤字となり、合計で5兆円強の巨額損失を計上した。高値局面での積極投資があだとなり、利上げ転換後の株安が収益を直撃した。

8日に記者会見した孫正義会長兼社長は「すべて私の指揮官としての責任」と語った。苦境が深まる中で、長年にわたって保有してきたアリババ株の持ち分をさらに手放すことを決断した。

今回の取引により、SBGの実質保有割合は6月末時点の23.7%から14.6%に低下する。アリババはSBGの持ち分法適用会社から外れる。

SBGとアリババの蜜月は20年以上前にさかのぼる。アリババが創業した直後、創業者の馬雲(ジャック・マー)氏に会ったSBGの孫氏は即座に2000万ドル(約27億円)の投資を決めたという。2000年に投資に踏み切ると、アリババは中国最大の電子商取引(EC)企業に成長した。14年には米国上場を果たすなど、世界有数のネット企業になった。

アリババ株は一時、SBGの保有資産価値の約7割を占めるまでに拡大した。SBGはアリババ株の価値上昇を最大限に活用してきた。具体的にはアリババ株の一部をデリバティブ(金融派生商品)の一種である先渡し売買契約に差し出し、金融機関から資金を調達してきた。こうした資金を新規投資や負債の返済に充ててきた。

ここにきてアリババ株を手放すのは、世界的なハイテク株安を受けてSBGの業績が悪化したためだ。資産見直しを進めるなか、アリババ株も例外ではなくなった。

今回の取引にはSBG側に大きく2つのメリットがある。1つが会計上の利益の計上だ。これまで顕在化していなかった含み益の実現に伴い、22年7~9月期の税引き前で約4兆6000億円の利益が発生する見込み。同年4~6月期に3兆円強の最終赤字を計上したSBGにとって、利益計上の効果は大きい。

もう一つはコスト削減効果だ。SBGは今回、同契約で差し出しているアリババ株の約7割を現物株で期限前に決済する。これにより契約を継続していた場合の利払い負担がなくなる。

SBGによると、先渡し売買契約の相手である金融機関は自らがリスクを抱えないように別途取引しており、今回の現物決済により「金融機関がアリババ株を市場で売却する必要はない」としている。

株放出のメリットが見込める半面、SBGとアリババの関係の行方には不透明感が漂う。中国政府による巨大テック企業への締めつけを受けて、アリババは中国当局に恭順の意を示してきた。米中関係の冷え込みで、米株式市場ではアリババが上場廃止の可能性がある銘柄に指定された。

政治リスクの高まりで、SBGは投資先企業の中国依存を低下させようとしてきた。今回のアリババ株の放出をこうした文脈に位置づけることもできる。アリババ株の保有比率の低下は、SBGにとって投資活動の原資が細っていくことを意味する。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

アリババは自分たちが社会主義国でビジネスを展開しているのを忘れたかのようで、締め付けられて、なすすべはない。そして、想定外だったのはゼロコロナ対策によって消費者の購買力が弱くなり、アリババの売り上げは減少に転じている。SBGは中国国内で起きていることを十分に理解できていない。キャピタルゲインを狙う投資会社に転身しているSBGは景気が減速する局面において苦労している。まあ、想定内のことではなかろうか
2022年8月11日 7:42 』